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第10回移動等円滑化評価会議(国交省)が開催されました ~障害当事者がバリアフリーの進展状況を評価する~

2023年10月05日 バリアフリー

都市とアクセスのイメージ

9月28日(木)に国交省で第10回移動等円滑化評価会議が開かれました。この検討会は2018年のバリアフリー改正で設けられ、高齢者、障害者等の当事者が定期的にバリアフリーの進展状況を把握し、評価するものです。

高齢者・障害団体等(18)、事業者(3)、事業者団体(8)、地方公共団体(2)、学識経験者(3)で構成されています。国交省で取り組まれているバリアフリー関係の動きがすべて報告される非常に重要な検討会です。

▽第10回「移動等円滑化評価会議」の配付資料の公表について(外部リンク:国土交通省)

議事

  1. 当事者目線に立ったバリアフリー環境の課題等に関する整理について
  2. 移動等円滑化評価会議における主なご意見と国土交通省等の対応状況
  3. 国土交通省におけるバリアフリー関係の取り組み事例について
  4. その他

■当日配布資料。全部で118ページもあります。

■ピックアップ

印象的だったものを3つピックアップします。

1.G7交通大臣宣言

6月16日(金)から18日(日)まで「G7三重・伊勢志摩交通大臣会合」が三重県志摩市で開催されたそうです。G7に合わせて様々なテーマで大臣級の会合が開かれるのですね。

テーマは「イノベーションによる誰もがアクセス可能で持続可能な交通の実現」で、G7交通大臣宣言を採択しました。今回初めて、「地域における移動手段の確保」、「バリアフリー化の推進」を主要テーマとして議論したそうです。国際的にもバリアフリーが主要テーマになっているのは、とっても良いですね。

交通大臣宣言

「[アクセス可能で公平な交通]

13.高齢者や障がい者など、移動に困難を抱える人々に対し、アクセス可能な交通の提供を増やすことの重要性と経済的・社会的価値を我々は認識する。この認識に照らし、G7各国が設定する目標とユニバーサルデザインの概念に基づき、交通部門における安全かつバリアフリーなアクセスを促進し、実施することの重要性を確認する

2.住宅局の取り組み

住宅局では、「建築物のバリアフリー基準見直しに関する検討WG」を立ち上げ、バリアフリートイレと車いす用駐車施設の基準引き上げ、劇場等の車いす用客席の基準の策定に取り組んでいます。バリアフリートイレは現状、建物に1つあれば良いという基準ですが、デパート等の商業施設は、週末などは行列ができるほどで、全く足りていません。ぜひ、商業施設は各階に複数のバリアフリートイレを設置する基準にしてほしいです。

3.公立小中学校等施設のバリアフリー化に関する取り組み(文科省)

2020年のバリアフリー法改正で、公立小中学校のバリアフリー化が義務付けられ、文科省では2025年までの5カ年計画を立てて整備に取り組んでいます。

バリアフリートイレは、2025年の目標は避難所に指定されているすべての学校に整備となっていますが、2022年時点で校舎70.4%、屋内運動場41.9%。

エレベーターは要配慮児童生徒が在籍するすべての学校に設置となっていますが、2022年時点で校舎29.0%、屋内運動場70.5%となっています。委員からはこのままでは目標が達成されないので、さらなる取組が必要ではないかという意見が出ておりました。

DPIからの意見

当日は多くの委員から、様々な課題が指摘されました。時間がなかったので後日文書で提出したのですが、DPIからの意見は以下の通りです。

  1. 建物のバリアフリー基準見直し
    ・バリアフリートイレは、業種別に最低基準を策定してほしい。デパートなどの商業施設は各階に複数のバリアフリートイレを設置してほしい。
    ・車いす使用者駐車施設は、現状1%程度設置されているので、アメリカの基準並の2%としてほしい。
    ・劇場等の車いす用席は、総席数5%以上+サイトラインの確保+同伴者席は横+前の手すりは80cm以下+垂直水平分散の5点をセットで義務化すべき
  2. JR東海でもwebでの障害者割引をお願いします。
    ・JR東とJR西は来春からwebで障害者割引を実施することになった。8月18日の東京新聞の報道では、JR東海は実施しないということだった。ぜひとも、JR東海も実施していただきたい。
  3. 新幹線からの乗り換え時間の問題の改善をお願いします。
    ・来年北陸新幹線が敦賀まで繋がります。敦賀駅で、新幹線から特急への乗り換えは8分を想定しているという報道があった。これは健常者を前提とした時間で、歩行困難者は想定していない。
    ・8分では車いす使用者等は乗り換えができず、次の特急(1時間後?)に乗らざるを得ない。他の者との平等という視点で考えたら、健常者のみを想定した乗り換え時間の算定を見直す必要があると思う。障害者も含めた乗り換え時間の設定をお願いします。
  4. 航空機のバッテリーチェックの問題を改善するために、事業者、障害者団体、国交省で意見交換会を立ち上げてください。
    ・電動車いす利用者が航空機を使うときに、バッテリーチェックに長時間かかるのは、これまでも発言してきたが大きな問題。予約時、当日のチェックインカウンター、保安検査場、シップサイドと何回も同じこと(バッテリーのタイプ)を繰り返し聞かれる。さらに、なれない担当者が目視でのバッテリーチェックを行うため、長時間時間がかかってしまう。アメリカなどではバッテリーの方を伝えるだけで目視確認はしておらず、非常にスムーズ。長時間かかっているのは日本だけの問題。
    ・来年4月から改正障害者差別解消法も施行されるので、この機会に長年のこの問題を少しでも改善するために、事業者、障害者団体、国交省とで意見交換会を作ってほしい。鉄道ではこのような意見交換会を定期的に開いており、非常に効果を上げている。
  5. 設計者のユニバーサルデザインの研修
    ・昨年、国連権利委員会から日本政府に出された総括所見では、「建築家、設計者、技術者、プログラマーのためのユニバーサルデザイン及び施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)基準に関する継続的な能力構築計画を強化すること。(22b)」とされた。
    ・この勧告を踏まえて、設計者等の専門家の研修に、障害当事者が講師として関わるプログラムの創設が必要だと考えます。なんらかの研修ができないか、ご検討いただきたい。
  6. 新基準での新幹線車両、特急車両の導入状
    ・新幹線と特急車両の義務基準が改正され、ぞくぞくと新型車両が導入されています。
    ・現在、各社でどのくらい導入されているのか、導入実績と導入計画を教えてください。
  7. 移動等円滑化評価会議の進行に関する提案
    ・第10回では、委員のみんなさんから活発に意見がでてとても良かったと思います。ただ、2時間だけでは足りないので、たとえば、テーマ別意見交換会で、それぞれの団体に課題と思っていることを出してもらって、整理して、全体会にかけるということもやってみてはどうでしょうか。

まとめ

2018年から始まった評価会議も第10回となり、多くの委員から各自が課題と考えている問題について意見提起が相次ぎ、活発な会議となりました。この会議の下にテーマ別の意見交換会も設けられているので、それを活用し、委員から提起された多くの課題を集約し、改善していく仕組みを作っていってほしいと思います。

報告:佐藤 聡(事務局長)


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