障害者権利条約の完全実施
私たちのことを私たち抜きで決めないで
国際連合の人権条約、「障害者の権利に関する条約(以下、障害者権利条約)」をご存知ですか。
この条約は、「私たちのことを私たち抜きで決めないで(Nothing About us without us)」を合言葉に世界中の障害当事者が参加して作成され、2006 年に国連で採択をされました。日本政府は2014 年 1 月に批准(条約に書かれたことを守ると約束をする事)をしています。
障害者権利条約は、障害者が障害のない人と同じように、地域でどこで誰と住むか選択でき、建物や交通機関を利用でき、情報が保証されることや、障害のない人と共に学ぶインクルーシブ教育を受ける権利などを定めており、障害を持つ人が障害のない人と同じように生活することができるようになる事を目的に作られました。
また障害者が生活を行う上での様々なバリアは、障害そのものに原因があるのではなく、社会との関わりの中で障害が生まれるという「障害の社会モデル」の考えを取り入れています。
例えば車いすを使っている人は、段差があってもスロープがあればお店に入ることができますよね。でもこうした配慮がないと、お店に入ることができず、「障害」になってしまいます。
つまり社会の仕組みに問題があり、結果として障害が生まれると定義しています。
障害がない人も、怪我をして杖を使って歩く事や、ベビーカーを押したりすることもありますよね。
いつ怪我、病気になって、障害を持つかはわかりません。
障害のある人もない人も、一人一人の違いが尊重されて、同じように生活できるようになること、それがこの条約の考え方です。この条約は障害のある人もない人も含めて、私たちの生活に大きく関わる条約なのです。
日本政府は本条約を 2014 年 1 月に批准をしました。私たちDPI日本会議はこの条約で日本政府が約束したことが国内できちんと実行されるように、障害者関連の国内法の整備に関する運動など、様々な取り組みを行っています。
■障害者権利条約
- 全文 川島聡・長瀬修仮訳
- 全文 日本政府の公定訳
- 障害者の権利に関する条約について(外部リンク:外務省HP)(リンク内に「第1回政府報告に関する障害者権利委員会の総括所見 英文/和文仮訳」もあります)
障害者権利条約の完全実施に向けて!
障害を持つ人が行きたいお店に入る、障害のない人と同じ場所で勉強をする、働くのに必要な配慮を受けながら働くなど、まだまだ障害のない人とある人が同じように暮らせる社会にはなっていません。
2009 年に日本政府は障害者関連の国内法の整備を行なうため、障がい者制度改革推進本部が発足し、内閣府に障がい者制度改革推進会議が何度も開催され、2011 年に障害者基本法の改正、2012 年に障害者総合支援法制定し、さらに 2013 年に障害者差別解消法制定などを行いました。
この後 2014 年 1 月に、日本政府は障害者権利条約の批准をしましたが、まだまだ障害者権利条約の理念や規定と日本の現状は乖離が大きく、障害のある人とない人が同じように暮らせる社会にはなっていません。
DPI 日本会議では、障害の種別問わず、様々な分野で障害者権利条約の理念が実施されるよう、国内法整備の議論、集会の開催、政府への呼びかけなど運動を進めています。
さらに 2012 年 7 月からは障害者制度改革推進会議を発展解消した形で、障害者基本法計画の策定、調査審議、計画の実施状況について、監視や勧告を行なうために、障害者政策委員会が発足しました。
私たちの声を国の施策に届けるために、DPI 日本会議から佐藤聡事務局長が政策委員として参加をしています。
国連障害者権利委員会へ私たちの声を届けます
2016 年 6 月に日本政府は障害者権利条約の批准国として、国内の条約の実施状況などをまとめた最初の政府報告書を国連障害者権利委員会へ提出しました。
この報告書に対して、私たちNGO(市民社会団体)はパラレルレポートを作成し、国連障害者権利委員会へ報告をすることができます。
障害当事者側からの意見を国連権利委員会へ届け、政府に対する国連の意見に反映させるための大変重要な取り組みになります。
DPI ではパラレルレポート作成のために、日本障害フォーラム(JDF)と共に、取り組みを進めてまいります。
オンラインミニ講座「障害者権利条約の国連審査(建設的対話)」
障害者権利条約を国内で実施する時に、どのような監視・モニタリングのシステムがあるのか
障害者権利条約の国内の流れ、報告制度などについてわかりやすく解説をしていています。
講師はDPIの崔栄繁です。(手話、字幕あり)
提言一覧
▽パラレルレポート(NGOレポート)作成に向けた資料「DPIレコメンデーション(2018年3月29日暫定版)」PDF版、テキスト版(ワード)
障害者権利条約批准前後の主な動き、取り組み
- 2021年3月 JDF総括所見用パラレルレポートが障害者権利委員会に提出される(外部リンク:日本語版PDF)
- 2020年11月21日、22日「障害者権利条約がめざす差別のない社会へ~いのちと尊厳が守られる社会をつくる~」をテーマに第9回DPI障害者政策討論集会をオンライン開催
- 2019年9月23日 障害者権利条約の日本政府に対する事前質問事項を検討する作業委員会にJDF(日本障害フォーラム)から総勢30余名がジュネーブでのロビイング(権利委員への働きかけ)に参加(▶ロビイング報告はこちら 第1回、第2回)
- 2019 年6 月 約2年間の議論を経てまとめたJDF事前質問事項用パラレルレポートが障害者権利委員会に提出される(外部リンク:日本語版PDF)
- 2018年12月1日 第7回DPI障害者政策討論集会で「JDFパラレルポート特別委員会によるレポート作成経過と今後の取り組み」をテーマに全体会を開催
- 2018年11月10日 障害者基本法改正に向けた北海道フォーラム
- 2018年10月20日 基本法改正フォーラムin熊本「今、障害者基本法改正を~障害者権利条約審査を前に」
- 2018年8月18日 障害者基本法改正を目指して、ADF地域フォーラムが開催された
- 2018年6月27日 国連障害者の権利条約推進議員連盟総会に参加しました
- 2018年3月29日 「障害者権利条約を国内施策に活かすための院内学習会」を開催
- 2017年10月~11月 障害者権利条約に関する台湾政府の報告書審査傍聴 事前学習会、1日目、2日目、3日目、4日目、最終日
- 2016年 日本政府が障害者権利条約批准国として、政府報告書を国連障害者権利委員会へ提出
- 2014年 障害者権利条約批准
- 2013年 障害者差別解消法、障害者雇用促進法の制定、学校教育法施行令の改正
- 2012年 障害者総合支援法、障害者虐待防止法制定
- 2011年 障害者基本法改正
- 2009年 日本政府が障害者権利条約が批准する動きがあったが、国内から時期早々と強い反対があり延期。日本国内の障害者関連法の整備の為、障がい者制度改革推進本部が発足
(DPI 日本会議から尾上浩二副議長(当時事務局長)が構成員として参加)
関連資料(書籍)
関連資料(障害者権利員会の一般的意見&総括所見集)※以下すべて外部リンク
- 障害者権利員会の一般的意見(英語)一覧(Latest general comments)
- 一般的意見第1号(2014年)第12条:法律の前における平等な承認
(仮訳:日本障害者リハビリテーション協会)- 一般的意見第2号(2014年)第9条:アクセシビリティ
(仮訳:日本障害者リハビリテーション協会)- 一般的意見第3号(2016年)第6条:障害のある女性及び少女
(仮訳:日本障害フォーラム 訳者:真下弥生、DPI女性障害者ネットワーク協力 監訳:石川ミカ)- 一般的意見第4号(2016年)第24条:インクルーシブ教育を受ける権利
(仮訳:石川ミカ、日本障害者リハビリテーション協会 監訳:長瀬修)- 一般的意見第5号(2017年)第19条:自立した生活及び地域社会への包容
(仮訳:日本障害フォーラム 訳者:石川ミカ)- 一般的意見第6号(2018年)第5条:平等及び無差別[差別しないこと]
(仮訳:日本障害フォーラム 訳者:石川ミカ)- 一般的意見第7号(2018年)第4条3項および第33条3項:条約の実施及び監視における障害児を含む障害者の代表団体を通じた参加(仮訳:日本障害者協議会 訳者:佐藤久夫、岡本明)(※リンク先ページ下段【参考5】)
- 一般的意見第8号(2022年)第27条:労働と雇用
(仮訳:日本障害者協議会 訳者:佐野竜平、松井亮輔、佐藤久夫)(※リンク先ページ中段<●第27条(労働と雇用)に関する一般的意見 確定版(2022年10月)(wordファイル)>)- IDA(国際障害同盟)作成:CRPD総括所見集(2024年4月更新)(IDA’s compilations of CRPD Committee’s Concluding Observations updated by April 2024)※英語