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「障害者差別解消法改正に向けて」(5月30日(日)DPI全国集会in東京 全体会報告)

2021年07月13日 権利擁護障害者権利条約の完全実施

青空とおぼろげな太陽

5月30日(日)第36回DPI全国集会in東京で開催した全体会についてDPI事務局次長の白井誠一朗からの報告と、参加者である自立生活夢宙センターの岸本慶子さんに感想を書いて頂きました。

是非ご覧ください。

全体会「障害者差別解消法改正に向けて」

◆報告「障害者差別解消法の見直し」
尾上浩二(DPI日本会議副議長)

◆特別報告「障害者権利委員会の最新の動向と脱施設ワーキンググループの取り組み」
キム・ミヨン(国連障害者権利委員会副委員長)

◆報告「虐待防止法の改正に向けて~神出病院の虐待事件から考える~」
加藤眞規子(DPI日本会議常任委員・精神障害者ピアサポートセンターこらーる・たいとう)


全体会開催の経緯

2016年に施行された障害者差別解消法(以下 差別解消法)は、内閣府障害者政策委員会での議論や国会での審議を経て、施行後初めてとなる改正法案が成立しました。改正法では、民間事業者の合理的配慮義務化や相談体制の強化などが盛り込まれましたが、差別の定義、ワンストップ相談窓口、障害女性の複合差別等、多くの課題が基本方針の見直しの中で議論されることになっています。

そのような情勢の中で、差別解消法の見直しの経過や改正法の概要、そして、基本方針の見直しをはじめとする今後の取り組みについて広く共有するために本全体会を開催しました。

また、障害者権利条約の日本の建設的対話(審査)を控えている中、障害者権利委員会の最新の動向について共有するとともに、脱施設・地域移行の促進や施設・病院における虐待の防止など、国内施策の重要課題に対する取り組み強化につなげていきたいという思いも込められた企画となりました。

全体会で報告・議論したこと

まず、尾上さんから差別解消法の見直しについてご報告いただきました。
尾上さんは、まず障害者差別解消法が障害者権利条約を批准する上での基礎となる法律であったこと、また、法律の制定にあたっては多くの課題がありながらも、まずは法律ができたこと自体が大きな成果であったと当時の状況を振り返りました。

①差別の定義がない
②事業者への合理的配慮は努力義務どまり
③障害女性等の複合差別解消の規定がない
④紛争解決の仕組みがない

尾上

こうした主だったもの以外にも多くの課題がある法律として差別解消法は成立し、その課題を補うような形で例えば東京、滋賀、大阪の茨木市など各地で条例が作られてきました。DPIで3年後の見直しを見据えて差別事例を収集し、集まった500件ほどの差別事例から差別解消法の課題を整理したところ、法の対象範囲、関連差別、間接差別、ハラスメント、民間事業者における合理的配慮、紛争解決、障害女性の複合差別など、法制定時の差別解消法では十分な対応ができない実態が浮かび上がってきました。

尾上さんはこうした国内の動きに加え、権利条約の国際的なモニタリングの仕組みを有効に活用できたことが5月に成立した差別解消法の改正につながったとしています。

2019年2月に障害者政策委員会でスタートした差別解消法の見直し議論は2020年6月に意見書としてまとめられましたが、この間には障害者権利委員会がパラレルレポートを参考に作成した事前質問事項の中で日本の障害者差別解消法の弱点を鋭くつく質問を出してくれたことも大きな追い風になったそうです。

また、検討の途中には、事務局草案に対して、障害者権利条約の批准後の見直しとしては不十分として、委員の半数から意見がだされる事態となったというお話もありました。こうした一連の経過から条約のモニタリングにおいて国際的なモニタリングの仕組みと国内のモニタリングの仕組みが両輪となって機能することの重要性があらためてわかります。

尾上さんはこの一連の経過を振り返りながら、障害者政策委員会の意見書が出されて以降、昨年12月段階までは運用の見直しにとどまり、法律改正されない可能性もあったと指摘しました。そこから5月の法律改正に至った、このこと自体は大きな前進であったと評価しつつ、改正内容とその課題について説明されました。

  1. 事業者による合理的配慮の提供を義務化(第8条2)
  2. 国及び地方公共団体の連携協力に係る責務の追加(第3条)
  3. 基本方針の相談体制の拡充を追加する(第6条2)
  4. 障害者差別に関する相談体制の整備として人材の育成及び確保などを明確化(第14条)
  5. 地域における障害者差別に関する事例等の収集(第16条2)
  6. 公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する(附則)

尾上さんは、民間事業者の合理的配慮義務付けは附則に3年以内とあるが、早期実施すべきとしています。また、相談のたらい回しを防ぐためにもワンストップ相談窓口の設置や国・地方での相談人材の育成・確保、差別事例の収集が必要だとしています。
その他、差別の定義や複合差別の解消など、法律の条文には入らなかった課題について、基本方針の見直しの中で盛り込ませることが重要だと述べました。

まとめの中では条約審査を見据えた今後の取り組み課題として、差別解消法の再改正、障害者基本法の改正を挙げた上で、遅々として進まない脱施設、インクルーシブ教育といったパラダイムシフトを視野に入れた力強い運動を進めていこうと呼びかけました。

次に、国連障害者権利委員会副委員長のキム・ミヨンさんから障害者権利員会に設けられた脱施設ワーキンググループで実施している脱施設コンサルテーションについて、韓国の脱施設運動についてそれぞれお話しいただきました。

キム・ミヨンさんは冒頭で権利条約の立場から見れば、障害者を集団で収容する入所施設は条約に違反するもので人権を剥奪し、尊厳を一番深刻に損傷させる人権侵害の政策だと明確に指摘しました。

キムミヨン、崔

障害者権利条約が制定されてから16年たちましたが、新型コロナが浮かび上がらせたものは、施設に住んでいる障害者、とくに精神・知的障害者が集団で感染して、なすすべもなく、医療体系から排除され、公然と死に追いやられる悲惨な現実であるとし、こうしたひどい状況から権利委員会は、脱施設がどれだけ急がれているか、緊迫な状況を悟ったそうです。

そのうえで、これからは障害者の人権運動は地域や国家主義を捨てて、全地球的、共同体としてネットワークをつくり、少しでも早く脱施設のための、施設から脱出するための運動を始めなければならない、と国際的なネットワークの連携による脱施設の運動が必要であると述べました。

こうした問題意識をもつことになったのは、ハンガリーの脱施設運動を行っている障害者団体から、障害者権利条約の選択議定書、第6条をもとにして調査をしてほしいという依頼に対して、実際にハンガリーの調査を行い、ハンガリー政府に対して勧告を出した一連の動きによるものであり、そのことが委員会(脱施設ワーキンググループ)を作ることになった契機になったということです。

5月12日に行われたアジア太平洋地域の脱施設コンサルテーションについての報告では、事前に文章で提出した件数は、34件で、時間の関係で、この中から24名の団体を選定し、口頭発言の機会が持たれたことが報告されました。このアジア太平洋地域のコンサルテーションでは、施設にいる当事者の発言があったこと、他の地域に比べて、精神障害者の団体の強力な発言があったことなどが共有されました。

キム・ミヨンさんからはその他、韓国の脱施設運動についてもご紹介いただきました。韓国の入所施設の対する問題は2005年から本格的に提起されるようになったそうです。当時、未申告施設というものがあり、そこに行政と韓国の障害者団体が一緒になって調査をした結果、個人の自由や自立性がまったく保障されていない現実が明らかになった。これをきっかけに韓国で脱施設の運動がはじまり2020年12月には脱施設支援法の法律案が韓国の国会議員69名の支持を得て国会に上程されたということです。

この法律は脱施設が障害者の権利であることを明示し、すべての施設を10年以内に閉鎖することが書かれているほか、障害者が施設を出たあと、住宅や介助者への活動支援、所得保障、脱施設早期の地域生活において起きる様々な問題への支援を政府や自治体が義務として行うという規定もあるなど、日本における脱施設の取り組みを進めていく上で非常に参考になる報告でした。

加藤さんからは「虐待防止法の改正にむけて~神出病院の虐待事件から考える~」をテーマにご報告いただきました。加藤さんが障害者虐待の問題に本気で取り組むことになったのは、水戸事件の被害者で知的障害をもつOさんという女性が加藤さんの運営されているこらーる・たいとうに利用者として来られ、虐待を受けていることを訴えても誰も相手にしてもらえなかった、そういう話を聞いたことがきっかけだったそうです。

加藤さんは、障害者虐待防止法はこうして明るみになった数々の虐待事案の契機に作られたものである一方で、法制定時の付帯決議に盛り込まれた見直しの規定については、いまだ法改正がされてないと指摘しました。

加藤

そして、精神病院における虐待については2020年2月に明らかになった、兵庫県神戸市にある神出病院の事件を取り上げ、そこでは以前から入院患者への虐待が行われていたことや虐待をしないと先輩の職員から自分が冷たくあしらわれてしまう、そういう認識を看護師がもっており、先輩を見習う形で虐待の連鎖が続いていることが大きな問題であると指摘しました。

そのほか、身体拘束の問題にも触れられ、こうした虐待、差別的な行動が起こる背景には精神科特例や入院医療に大きく偏った精神科医療に問題があるとしました。障害者に対する虐待事例とその背景にも触れながら、報告のまとめとして、障害者虐待を防止していくには、現行の法律では通報義務の対象になっていない病院や学校、保育所、官公署などを通報義務の対象に加えることが必要であるとしました。

今後に向けて

今回の全体会では差別解消法の見直しを中心としつつ、国連障害者権利委員会、とりわり脱施設に向けた取り組みについての報告や改正の必要性が指摘され続けている中で深刻な事案が後を絶たない障害者虐待の問題など、多くの重要課題が共有されました。
権利条約の完全実施、インクルーシブ社会の実現に向けて、これらの重要課題に障害者運動全体で一丸となって取り組んでいく必要性をあらためて感じました。

(DPI日本会議 事務局次長 白井誠一朗)

参加者感想

最初に尾上さんから、障害者差別解消法の見直しについて説明がありました。ちょうど差別解消法改正案が参議院で可決されたところでした。

間接差別や関連差別といった差別の定義、障害女性の複合差別などたくさんの課題があります。自治体の半数以上が障害者差別に関する相談件数を把握していないというのは驚きました。しかし、今回の改正で、民間事業者の合理的配慮の提供が義務になったことは大きな1歩だと思いました。できるだけ早く法律が施行するようにみんなで働きかけていくことが大切だと思いました。

次にキムさんから、身体・精神の制限を持っていること自体が尊重されること、脱施設は福祉政策の転換という意味だけではなく、人間の尊厳を取り戻し自由が保障されることだとお話しされていたのが印象に残りました。コロナは入所施設にいる障害者の医療へのアクセスを制限し、死に追いやることになったという、脱施設の必要性を意識できた内容でした。キムさんに日本の権利条約の実施状況の審査を担当していただけるので、非常に心強いです。

最後に加藤さんから、虐待がなくならない現状、法律の見直しがされていないことについて実例を交えて話がありました。福祉制度は少しずつ充実してきていますが、まだまだある権利侵害の現状を考える時間になりました。

(自立生活夢宙センター 岸本慶子)


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