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【ポイントまとめました】「総括所見を活用し、障害者権利条約の国内実施を進めよう!」(DPI政策論「全体会」報告後半・感想)

2022年12月27日 イベント権利擁護障害者権利条約の完全実施

昨日掲載した12月3日(土)第11回DPI障害者政策討論集会 全体会の報告続きになります。

▽前半の報告はこちら

また参加した感想を杉田宏(DPI特別常任委員、ピアサポートみえ)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

第2部「ジュネーブ概要報告」
曽田夏記(DPI特別常任委員)

尾上浩二(DPI副議長、内閣府障害者施策アドバイザー)

崔 栄繁(DPI議長補佐)

今後のDPIの取り組みについて

(敬称略)

詳細は下記「報告全文」をご覧ください。


報告全文

◎第2部「ジュネーブ概要報告」

第2部ではジュネーブで行われた建設的対話やロビーイング活動の報告、19条と24条に焦点を当てた総括所見の内容に関する報告、今後の取り組みについて実際にジュネーブの建設的対話の場面に立ち会ったみなさんからお話しいただきました。

曽田と降幡

■報告:曽田夏記(DPI特別常任委員)

建設的対話自体は政府と障害者権利委員会のもとで22日と23日に行われました。障害者団体としては、その直前に日本の場合は2日間にわけて市民社会の公式ブリーフィングに参加しました。

金曜日に委員からパラレルレポートで報告書を読んだ上で、60以上の質問が出され、それに対して月曜日に2回目のブリーフィングで回答しました。その他に建設的対話の間でも政府の回答が誤っていたりとか、もう少し正確な情報を伝えたい場合は、その場でメールなどもしました。文字通り18人の委員を追いかけ回して、自分たちが当事者として伝えたいことを委員の人に伝えるということで、5日間全員が全力を尽くした時間でした。

総括所見が出て、それを見たうえでロビー活動を振り返って思うことを3つまとめました。

1つはパラレルレポートの内容が真摯に反映されていること。現場のロビーイングだけでなく、書面で丁寧な情報提供をしたことが今回の分厚い総括所見の内容に反映されていると思います。

2つ目には、現場でのロビーイングもすごく意義があったと思います。特にそう思った点は、脱施設とインクルーシブ教育が日本における緊急課題として総括所見で特記されたことです。私は3年前、2019年のDPI政策討論集会でも事前質問事項へのロビーイングに関するジュネーブ報告をさせていただきました。

そのとき話したのは、脱施設とインクルーシブ教育について、2019年のときはしっかり伝えている当事者、家族、関係者の姿がとても少なかったことです。今回は、脱施設についてもそうですし、今写真で出していますが、障害児や親御さんもとても多くジュネーブにいらしていて、そこで自分たちの言葉で伝えていたのは、現場で見ていた委員の心にも響いていると感じました。

最後3つ目、現場での本番のロビーイングも大事だが、それまでの過程も大事だと思いました。

このような会で取り上げるのは19条や24条ですが、限られてきますが、それ以外JDFの場合、1から33条までやりましたし、その中でそれぞれの障害種別や色々な立場で、こんなことでくやしい思いをしてきたと、5年の積み重ねの中で私自身も知ることができました。JDF自体も同じ意見ばかりではなく、ときには対立する意見もありますが、それでもまとまって一緒にジュネーブでロビーイングしていく方法を探していく過程は、今後一緒に運動をしていくことを考える上でもすごく大事だと思いました。

パラレルレポートは、個人でも1つの団体でも出せます。その方が結果的にはジュネーブのロビーイング時間が多くとれますが、それでも複数団体で、意見が違う同士でレポートを作ることも、将来的に長い目でみたら運動の力になると改めて思いました。

今回、いい総括所見が出ましたが、これはジュネーブに行った100人だけで勝ち取ったわけではありません。日本に残り、支援をしてくださった方はもちろん、私がジュネーブで思ったのは、これまで運動してきて先輩方と多くの歴史の中でここまで来たことを改めて思いました。

ミヨンさんも、なぜ閉会の辞で涙したかを話してくれましたが、そう思いを全力でやっていくことが、自分たちが政府を動かしていくことにつながっていくと、改めて思っています。

最後に、ひとつになって、と書きました。総括所見や条約は政府にとっては実現できないものと思われているかもしれませんが、自分たちにとっては、確実に実現していく未来像だとあらためて思いました。私たちのほうで、時間がかかるかもしれないが、そこをめざし続ける、あきらめない運動をやっていくということが大事だとジュネーブであらためて感じました。

2回目の審査が何年後になるか分かりませんが、より多くの人と、ジュネーブに行けたらいいと思います。そのためにも総括所見を武器にして運動していくというところに、今の時点からより多くの人が参加できるように、一緒に出来るようにということを目指したいと思います。

■指定発言:降幡 博亮(DPI常任委員)

ジュネーブの現地では、権利委員の皆さんたちからの、私たちのパラレルレポートとロビーイングに対する積極的な対応を感じました。権利委員の人たちとの関係は、建設的対話があって、その場で形成されたわけではなく、DPIを含めた当事者運動が長い時間をかけて作ってきた世界のリーダーたちとの関係の中で生きてきたのだと感じます。

キム・ミヨンさんもそのお一人だと思います。先ほどの報告で、北東アジアの障害者の一人としてとおっしゃっていたし、20年以上も日韓の障害者運動の交流の中で培ったものだとおっしゃっていました。私が聞いたのは、差別禁止法の制定に向けて日韓の当事者の情報交換の運動の交流を通じて、強い関係をつくってきた。DPI世界会議とかアジア太平洋のネットワークだとか、国際的なつながりで作られた関係が、建設的対話のとき、総括所見に生きてきたと感じています。

今後、将来に向けて次の建設的対話もありますが、普段からの国際協力は、大事だと感じています。曽田さんの話にもあったパラレポを作る中で、さまざまな方向性のある当事者間の一致する協力を見いだしたこともありました。今後政府とのやりとり、総括所見、権利条約の上でも一致点を見いだせる粘り強い積み上げもできると思います。

■報告:尾上浩二(DPI副議長、内閣府障害者施策アドバイザー)

9月9日に日本への総括所見がだされました。注目ポイントはたくさんあります。

全75パラグラフ、A4で18ページ。他の国は10ページ程度ですので、かなり詳細に書かれているということです。肯定的側面もしっかり押さえています。つまり丁寧に日本の現状を見たうえでの総括所見であるということです。肯定的側面としてあげられるものを紹介します。

等々が肯定的側面として見ていただいています。

その上で、1~33条まで全条文に関して「懸念」と「勧告」が書かれました。それだけ課題が多いということです。特に19条、24条とか項目の多い条文を見ると、目指すべきビジョン、方向性の明確さ。それに向けて行うべき措置の具体性、ビジョンの明確性と行うべき措置の明確性の2つを兼ね備えているのが特徴です。

パラグラフ71ではすべての項目が重要だが、特に緊急措置をとるべき課題として、「脱施設(精神病院も含む)」「インクルーシブ教育」の2つがあげられています。

全体的には医学モデル、パターナリズムが強いので、人権モデルに変わっていかないといけない。「分けた上で手厚く」という日本流対応への根本的問いかけがなされていると思っています。

次回の審査は2028年2月20日です。向こう5年間で、緊急課題をはじめ書かれたことすべてに対して、日本政府へ実施を求めないといけない。我々の運動の責務もますますあると思っています。

次に総括所見が教育について指摘していることを見ていきます。懸念と勧告がセットになっています。

1点目、分離された特別教育が存続。医学モデルにより通常の学校はアクセスしにくくなっている、そういう懸念を指摘しています。分離された特別支援教育をやめ、インクルーシブ教育の権利を認めること、そのために国家行動計画を採択し、すべての障害のある子どもが合理的配慮と個別支援を受けられるようにすること、そういったことが勧告されています。

2つめの懸念として、普通学校への入学拒否、障害のある子どもが半分以上の時間を普通学級で過ごしてはならないとする4.27通知に対して、それは分離を強化することだとして、普通学校への通学を保障し、就学拒否禁止条項・方針を作るよう求められました。普通学校への入学拒否は禁止、認めなさいということです。4.27通知は撤回するようにと勧告に盛り込まれた。

さらに3点目。障害のある子どもへの合理的配慮が不十分であるとして、障害のあるすべての子どもにインクルーシブ教育を確保するための合理的配慮の保障という勧告が書かれました。

4つめ、教師の技術不足、インクルーシブ教育への否定的態度について懸念が示され、インクルーシブ教育・人権モデルに関する教員・教育関係者の研修が勧告されました。

5つめ、手話言語教育、盲ろう児など、情報コミュニケーションの欠如、手話言語教育、ろう文化の促進、盲ろう児教育さらに、大学入試や課程など高等教育の政策の欠如の懸念が出され、高等教育における全国的な総合政策の策定をするよう勧告されました。

9月9日に出された総括所見は私たち団体からすれば、パラレルレポートやロビーイングを反映した素晴らしいものを出して頂いたと思います。

しかし、それからわずか4日後、文部科学大臣は記者会見で、「現在は多様な学びの場において行われます特別支援教育を中止することは考えていない」と話しました。その3日後、厚労大臣は「総括所見は法的拘束力を有するものではない。障害者の希望に応じた地域生活の実現、また一層の権利擁護の確保に向けて、今回の総括所見の趣旨も踏まえながら、引き続き取り組んでいきたい」、としました。総括所見で取り組めるところは取り組むというような、あいまいなお茶を濁す感じでした。

総括所見で問われているのは、日本社会は分離に慣れ親しんできた社会なのだということ。だからこそ、脱施設、インクルーシブ教育が緊急課題になったのだと思います。総括所見は日本のこれから、ということでは歴史的な転換点にできるかどうか、それが私たちに課せられているミッションだと思います。

医学モデル、パターナリズムが根強いと先ほどお話しました。分離した上で手厚くという日本的対応が社会の隅々に行き渡っている、その根本的な捉え直しが求められています。

アメリカの公民権運動で、ブラウン判決が大きな転換点となりました。分離すれども平等といわれていたのが、ブラウン判決で分離は差別であると、それから大きく公民権運動が発展していった。今回の総括所見がアメリカのブラウン判決と同じような転換点にできるか。

分離すれども手厚くから、「分離せず、合理的配慮と必要な支援」への歴史的な転換点を勝ち取れるかどうかのその入口にこの総括所見は、私たちを押し上げてくれたことを確認したいと思います。

■崔 栄繁(DPI議長補佐)

総括所見の内容を理解するためには、先ほどキム・ミヨンさんからも出ていた一般的意見ついての理解が必要です。今日の報告は、19条に関してですが、総括所見を見る前に、一般的意見5「自立した生活と地域社会へのインクルージョン」の重要な部分を見てみます。

まず、条約19条の「自立」とは障害者運動の自立生活運動からきたものです。普通なら独立と訳すのを、「自立」と訳しています。この自立は着替え、食事、仕事など一人でなんでもできるのが自立ではなく、自分がどこで誰とどう生きるかを必要な支援を受けながら生きること、これが自立であるという新しい考え方。この考え方が一般的意見の5の基礎となっていて、それが総括所見に反映されている。ここをしっかりとおさえていただきたいです。

一般的意見5の簡単な紹介をします。ここには、自立した生活とはどういうものかということがいろいろ書いてありますが、簡単にまとめると自立とは選択とコントロールの自由といえます。

一般的意見では2つの権利があると言われています。1つは、地域社会にインクルージョンされる権利があるということ。地域、社会の側が責任を持って受け入れる。そうした地域を作って行くことになる。この「地域をつくること」が、脱施設という19条や総括所見を理解するのに、大切なキーワードのひとつになると思います。

自立生活の体制とは、どういうことか。施設収容型や自立した生活というのは、特定の建物や環境における生活施設だけを問題にしているのではない。ここをまずしっかりとおさえる。

特定の生活や生活施設を強制した結果、個人の選択と自律が失われることを問題にしています。

100人を超える大規模施設も、5人、8人のより小規模なグループホームも施設を特徴付ける施設収容の要素が挙げられる場合、自立生活施設と呼ぶことはできない。グループホーム、施設自体というよりは、そこでどういった生活が送られているかにきちんと着目してください、と言っています。

もちろん、権利委員会では収容型は隔離・拘禁だという強い立場をとっていますので、それはしっかりとおさえて、そこでどういう生活をしているかということです。

脱施設化は構造改革の問題です。構造改革とは地域が変わることです。施設を閉鎖すればよいということに留まることではないということです。第19条には自立した生活の権利と地域社会にインクルージョンされる権利という2つの権利がある。

そして、どこで誰とどのように暮らすかを選択し決定することが自立した生活と地域社会へのインクルージョンの権利の中心的な考え方。これらを踏まえて総括所見の内容をみていきます。

19条と24条ではurge、と強い言葉が使われています。もうひとつ、強制入院、強制収容の14条についても、要請と勧告で強い書きぶりになっています。

簡単に14条について見ます。委員会はこう言っています。

a項で障害者の強制入院を、障害を理由とする差別であり、自由の剥奪に相当するものと認識し、障害者の強制入院。それが危険であると認識される一般的な判断に基づいた障害者の強制入院は自由のはく奪となるので、今の精神保健福祉法の強制入院制度は廃止しろということ。

b項では、同意をしない治療についてもそれを正当化するすべて法的条項を廃止して、それを保証するための監視機構を設置する、ということが14条の勧告に書いてあります。精神障害のある方の世界で4分の1くらいのベッドが日本にある。

そこで17万人以上1年以上入院している。平均入院日数が270日というのは世界一。

精神障害者の政策は隔離分離政策、精神障害者の病院収容政策となった。これは19条の長期入院の問題にもつながってくる。

19条に対しても24条や精神障害者、障害女性の状況と同様に関心の高い条文で多くの委員から質問が出ていました。

ロバート・マーチンさんからやまゆり園事件を経てどう変わったかという非常に的確な質問がありました。地域から施設や特別支援学校など、分ける施設や学校を必要としたのは地域です。排除していったわけです。

これは政府とともに、地域で暮らす私たちが受け止めることが必要だと私は思っています。タイのサワラック・トーンカイさんからは、具体的にどのようなステップをとっているか。総合支援法の改正の動きも伝わっているので、それに適応した的確な質問もいただきました。その他に日本担当のヨナス・ラスカスさんは、障害児の入所の状態について非常に関心を持ち、質問されていたり、アマリア・ガミオ委員、フェトゥシ委員など多くの方から地域移行や脱施設への質問がされました。

それに対する日本の政府の回答は残念な内容で、日本には桜という花があります、という回答がありました。これは昔のアメリカなどの大規模な隔離施設は日本にはなく、もう少し小規模な施設からも桜を見る環境にあると伝えたかったのだと思いますが、一般的意見や脱施設化ガイドラインからも、委員会の委員はそういうことを聞いているのではありません。

実際に施設入所者を減らすとかのために、どんな方策や政策をとったのかを聞いているわけで、ちょっとかみ合っていなかったと、これは残念に思います。

日本政府もどんな質問が出るかは予想できていたと思います。次の審査では、しっかりと政府も団体も準備をしてしっかりとした対応を目指すことを期待したいと思います。

19条の勧告の内容を簡単に紹介します。強く要請すること。

a項では障害児を含む障害者の施設収容を廃止するために予算配分を入所施設から、障害者が地域社会で他の人と平等に生活ができるように分配の仕組みを変えることを言っています。

b項では精神科病院に入院している障害者のすべてのケースを見直し、というところがポイントで、無期限の入院をやめ、これは、重度慢性の障害がある方は病院から地域移行の計画から外されています。それを反映している。

c項では、グループホームを持っている事業所から質問をうけたりしますが、一般的意見の内容を紹介した通りです。そこでどういった生活を送っているかをきちんと検証してと訴えていきたいと思います。

d項は、地域移行をきちんと期間を区切った国家戦略をたててください、そのために、都道府県も実施の義務づけをしてください、という勧告が出されています。今後、非常に有効な勧告内容だと思います。

e項は住宅のことです。

f項では、福祉サービスの支給決定の仕組みを医学モデルから人権モデルに基づいたものに変えていくことが勧告されている。

総括所見は懸念事項と勧告をセットで見ること。19条の実現のためにはその部分だけを見てもダメです。施設にいる方々の意思決定、支援をどうするかとなると、12条が必要になる。そもそものインクルーシブな社会をつくるには、小さなころから分けられないインクルーシブな環境が必要です。

全てがある意味根っこでつながっているとみていくと、いろいろな条約や勧告の説明するときにしやすいと個人的には思います。

◎「ロビー活動報告」

岡本、川端さん、藤原さん

■司会:岡本直樹(DPI常任委員、CILふちゅう)

私たち傍聴団は、JDFの構成団体、DPIの一員としてジュネーブに行きました。ただJDFは、日本の障害者団体の集合体のため、考え方の幅が広く、地域移行や教育、労働などでも団体ごとに考え方に違いがあるので、私たちのロビー活動では、8つのCILと筋ジスプロジェクトが連携し、DPIとは別に独自で取り組みました。
今日は、主に2つの重要課題「脱施設」と「教育」ついて取り組んできたことを、傍聴団を代表してメインストリーム協会の藤原さん、ほにゃらの川端さんにそれぞれ報告をしていただきます。

■報告:藤原勝也(メインストリーム協会)

筋ジスプロジェクトのロビーイング報告をします。筋ジスプロジェクトと言いましたが、その説明からさせてもらいます。正式名称は、筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクトです。北陸地方の長期入院の病院で、最初の自立支援ということで全国からCILを中心とする仲間が集まり支援をしましたが、そのときのサポートメンバーが中心となって、このプロジェクトをつくりました。

筋ジス病棟でよく問題になるのは、病院の先生の理解がなく、地域にでるかどうかは障害者の権利なのに、本人が希望しても無視されることなどがあります。これは病院の在り方自体や国の法律や制度にも問題があるなと僕らは思いつきました。

この状態を政策的に、体制的に変えるために、全国の仲間が集まって始まったのがこの活動でCILの障害者当事者だけでなく、大学の研究者、医療、法曹関係の人達が集まってやっています。

コロナ禍で今回、ジュネーブで審査があるということで、日頃の施設の問題や病院の問題を理解してもらうために、アピールしたいということで、今回ロビーイング活動に参加することにしました。

ロビーイング活動ですが、議場入口などで、各国の議員が通りかかるところにポスターを見せて、英語でわかるようにした写真などを使い、施設に何人入っているかとか、施設生活の写真とか、すぐに読んでわかる内容を見せました。

また、アンケートで入所している人の声をまとめた紙も、英語訳しました。病院では異性介助の問題があります。特に施設系であれば、入浴介助をするときに女性の当事者に男性の職員が入ることもあり、実際に困っている人もいたので、その課題もアピールしました。

ロビーイングして思ったのは、権利委員の方とか、ポスターを真剣に見てくださり、話もしっかり聞いてくださいました。わざわざ遠方でも、現地で直に会うことが大事だなと思いました。実際に、重度障害者がそこに行って、直接姿を見てもらうことがすごく大事だなと思いました。

今思っているのは、今回の総括所見でも日本の課題が指摘され、活動していく僕らにとって、良いことを書いてくれたと思いますが一方でこれから責任が重たいということです。

いい指摘がでても僕たちが何もしなかったら、社会は全く変らないということです。国連に言われたから、ちゃんとよくしましょうって、政府が簡単にやってくれるものでもないと思います。前の文部科学大臣の発言もありましたが、他の省庁なども本音を言わないだけで、実際には同じようなことを考えているかもしれないと思うと、すごく恐ろしいと思っています。

JDFの枠組みでやることも大事なのですが、JDFだけでは、それぞれの団体もあるし、言いにくいこともあるかもしれません。僕らのプロジェクトはそうしたところに所属しているのではないので、より踏み込んだ脱施設や長期療養を無くすことなどを、はっきりと言っていきたいと思っています。

■報告:川端舞(つくば自立生活センターほにゃら)

今回の国連の対日審査には、現在、実際に普通学校に通われている障害児のご家族もジュネーブに行き、日本の教育の現状を、ブリーフィングなどで直接、国連の権利委員に伝えてくださいました。

その中で自分がジュネーブでできることは何だろうと考えた時、日本の現状に問題意識を持っている障害当事者も多くいることを、権利委員に感じてもらうことではないかと思いました。

そこで、ブリーフィングや対日審査の合間に「私は日本でインクルーシブ教育の権利を促進したい」と英語で書いたカードを、権利委員の方々にお渡ししました。委員の方々は私のカードを笑顔で受け取ってくださり「日本にとって教育は重要な問題だと認識している」と言ってくださった方もいました。

ブリーフィングの合間に権利委員を見つけてカードを渡していると、他のCILの人から「あの委員は教育に高い関心を持っているから、カードを渡したほうがいいよ」と教えてもらうこともありました。

脱施設を訴えるロビー活動にも参加させていただき、団体の境を越えて互いに協力するからこそ、それぞれの団体が同じ方向を向いて、パラレルポートを出せたり、ブリーフィングができるのだと感じました。

多くの人が協力して動いた結果として出された総括所見を最大限生かせるように、また自分のできることをひとつひとつ続けていきたいです。

「今後の運動」

尾上、崔、佐藤

■佐藤聡(DPI事務局長)

総括所見を活用した今後のDPIの運動として、役員会、常任委員会で、議論をしています。まず総括所見の分析と行動計画の策定に取り組みます。DPIには8つの部会があり、そこで担当するものと、部会でカバーできない条文は総括所見プロジェクトで進めています。

1つは分析、どういったものが総括所見に書かれているか分析する。
2つめは具体的に法制度の改正課題をリストアップする。
3つめは短期・中期・長期の行動計画を策定するということに取り組みます。
これができたらDPI2030ビジョンを昨年作りましたが、これを総括所見を踏まえたものにバージョンアップします。来年また新しいビジョンを示し、皆さんと運動したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

■崔 栄繁(DPI議長補佐)

行政機関と国会・司法・市民社会の働きかけが、きちんと全方位でやっていく体制が必要だと思います。実際に裁判になったとき、国際人権条約や総括所見、委員会の見解などが裁判の中で取り上げられることが日本は少ない。人権委員会がないのも大きいですが、全方位で働きかけていく運動展開が必要です。

他の団体と調整をしないといけないときはする必要もあるが、思い切って当事者の目線で運動を進めていってもいいのかなと思っています。それをDPIは、きちんと当事者団体として、一緒になってやっていくことが必要だと思います。

なぜ司法の話をしたかというと、今回も幸運なことに、韓国のNGOの人達もジュネーブにたくさんいらっしゃいました。今回は40名程度とおっしゃっていましたが、その中に裁判官がいました。団体の一員として総括所見、建設的対話を傍聴しにきているのはすごくいいなと思います。前は韓国では検事さんや国会議員も何人か来ていたということで、上手にやっているなと昔から感じていました。

DPIは全国団体というか、国会や政策提言をやっている団体でもあるので、そういうところにきちんと目を向けること、例えば日弁連さんなどと一緒にやっていくことも必要だと思います。

仕組みとして決定的に欠けているのは、国内人権機関のないことです。あるとないとでは全く違うと思います。今まであまり全面的にやってこなかったと思いますが、DPIとしては、パリ原則に基づいた国内人権機関の設置を運動方針の前面に掲げていく必要があるのではないかと思います。

■尾上浩二(DPI副議長、内閣府障害者施策アドバイザー)

JDFの中で私が33条担当でしたが、今日強く思ったのは、国内人権機関をちゃんとつくるということと、同時にそこに当事者が参画しないとダメだということです。

今、なんとか障害政策委員会は、当事者が参画した委員会になっています。知的障害の当事者が2014年から参加できていないという課題はありますが、この障害者政策委員会の強化とあわせて、国内人権機関を他の人権分野、他の市民社会の分野の方達、あるいは日弁連も含めて幅広いネットワークで33条に対応した形の取り組みをしていかないといけない。

さきほど省庁任せにしてはならないと話しましたが、1つは役所ではなくて、議員にもしっかりとインプットしていく重要性が1点。
もうひとつは、権利条約のモニター機関として総括所見でも評価されているのが政策委員会です。

だとするなら、何よりも総括所見を受けて、評価と課題というか、何が言われていて、何をどう変えないといけないかという検討を政策委員会ですべきだと思います。その議論を障害者基本法の改正に繋げていきたいと思います。2011年に障害者基本法が改正されました。この時は条約批准のためでしたが、それからもう10年以上経ち、改正が必要になってきています。

次の改正は総括所見を受けて、条約の実施のために改正するということで、障害者権利条約と基本法がどういう関係があるかということを目的や原則として明確にしたり、差別の定義、あるいは障害女性の複合差別の解消を明記する。地域生活やインクルーシブ教育を原則にする。

そして、障害者政策委員会は権利条約のモニタリング機関である。従って、行政だけでなく立法や司法に対しても必要なときには意見を述べるといった役割や機能を明確にする。そうした議論をぜひこの政策委員会で繰り広げてほしい。

それと並行して、例えば学校教育法、総合支援法、精神保健福祉法などの改正や廃止といった取り組みが必要です。

自治体や地域の取り組みとして、自治体で脱施設やインクルーシブ教育の取り組みを国より先行して進めさせていけないか。特に入所施設、病院、親元等からの大幅な地域移行計画を作る。あるいは地域生活支援拠点に地域移行コーディネーターを置いて、自立体験室を活用して地域生活に繋げていくとか。あるいは、地域での住まいでは、バリアフリー改造助成や住宅手当など住まい確保も重要。

原則インクルーシブ教育制度と就学拒否禁止条項など、障害のある子どもの早期支援、インクルーシブ学童も進められたらと思います。

さらに総括所見への誠実な対応を国に求めることを地方議会で意見書を採択できないか。私自身がかかわった明石市ではいち早く今年3月にインクルーシブ条例を作ったり、あるいは優生保護法被害者等支援条例などがある。こういった取り組みを全国あちこちで広げていけたらと思います。

省庁任せにしないというのはいろんなレベルで言えると思います。私たち自身が総括所見をいろんな場面生かして取り組んでいくことがとても重要だと思います。

今後の取り組み

今回の全体会は8月のジュネーブでの取り組みや建設的対話の様子について、また、9月に発表された総括所見の内容などについて様々なエピソードも交えながら報告されました。

この全体会を通して見えてきたことは総括所見を踏まえて数多くの課題に取り組まなければならないということです。まずは総括所見が出るずっと以前から取り組んできた障害者基本法の改正です。

総括所見が出されたこの機会を逃すことなく、今回こそ基本法の改正を実現しなければなりません。基本法の改正は総括所見で指摘された数多くの課題に対する個別の法律などの改正にもつながっていく重要課題ですので、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

白井誠一朗(DPI事務局次長)

◎参加者感想

障害者権利条約に日本が批准し、初めて実施された国連による審査には、100名を超える私たちの仲間が現地に赴き、国連の委員の方たちに直接私たち自身の声を届けようと活動が展開されたことや、その前段となる市民社会の側が提出するパラレルレポートをひとつのものとしてとめる過程も非常に意味があったとの報告がありました。

こうした取り組みの積み重ねと全体会で報告いただいたミヨンさんをはじめとする権利委員のみなさんが、真摯に私たちの思いを受け止めていただいたからこそ、権利条約の完全実施に向けて、厳しい総括所見・改善勧告が出されたのだと実感しました。

総括所見・改善勧告では、「脱施設」「インクルーシブ教育」が、日本における緊急の課題として明記されましたが、まずは、自分の住んでいる地域で、総括所見の内容を理解するための学習会を開催し、変えるべき方向性などについて、共有していくことができればと思っています。

分離されることなく、合理的配慮や必要な支援を受けて地域で生活を送ることのできる「ごちゃまぜの社会」、そして、その礎としてのインクルーシブ教育の実現のために、私たち一人ひとりが総括所見を基に、国の法律や制度政策などをつくりかえていきたいと思います。

杉田 宏(ピアサポートみえ)


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