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11月22日(火)「障害者権利条約の総括所見(勧告)について」をテーマにタウンミーティングを開催しました(キリン福祉財団助成事業)

2022年12月27日 イベント地域生活権利擁護インクルーシブ教育障害女性

前に進んでいこう 飛行機雲

11月22日(火)障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議(障大連)が行う年4回の集まりで、「障害者権利条約の総括所見(勧告)について」をテーマに学習会を行いました。

参加者は来場が約20名、リモート参加が約40名程度でした。学習会が終わった後も録画データがあれば見たいという問い合わせが複数あるなど、関心の高いテーマであったと思います。

前半は曽田夏記さん(DPI日本会議特別常任委員/自立生活センターSTEPえどがわ)の講演で「総括所見のポイント」を主に話して頂きました。

後半桐原さんから精神障害に関するお話をして頂くことになっていたので、曽田さんからピックアップして頂いた項目は、

  1. 1-4条:医学モデル・優生思想
  2. 5条:差別解消/相談・救済の仕組み
  3. 17条:旧優生保護法被害・強制不妊手術
  4. 19条:地域での自立した生活+脱施設ガイドライン
  5. 21条:情報アクセス・コミュニケーション
  6. 24条:インクルーシブ教育
  7. 33条:条約の実施状況を監視する体制

それぞれ権利委員会から出された懸念と勧告をもとに、お話頂きました。

19条では、勧告として

  1. 施設収容の廃止に向けた迅速な措置(予算の転換:施設⇒地域へ)
  2. 無期限の精神科入院の廃止・全入院ケースの見直し
  3. どこで誰と暮らすかを選択する機会の保障
  4. 地域移行に関する法的枠組み・国家戦略の策定 ※実施:都道府県の義務
  5. 地域で自立生活を送るための環境整備(住宅、介助等)
  6. 支給決定を医学モデル⇒人権モデルに基づいたものに

※パラ42:「一般意見第5号」と「脱施設化ガイドライン」を参照しながら……というように、各項目とも箇条書きでわかりやすく示して頂きました。説明の中では、19条・24条、そして14条(身体の自由および安全)については、他の項目と違って、強い表現で勧告が出されていること。

また19条・24条では具体的な内容に踏み込んで書かれていることがあること。19条は同日に出された「脱施設ガイドライン」に沿った内容になっており、ガイドラインでは「施設の閉鎖」や「新規入所停止」などさらに踏み込んだ内容となっていることなどを伝えて頂きました。

また項目に沿うだけでなく、例えば6条の障害女性の課題は様々な項目に書かれていること、この19条の⑤に関しても28条の「障害者年金の水準」や「公的住宅のバリアフリー化」とも関連するなど、「総括所見全体を横断的に読む必要性」を伝えて頂きました。

曽田さんご自身はJDF(日本障害フォーラム)のパラレルレポートの作成などに長期・長時間に渡り携わる中で、良い総括所見を引き出すと同時に、JDF内での互いの課題をよく知り合うための丁寧な積み重ねが、長く運動を続けていくために大切なことと感じたこと。

またジュネーブでの当事者と権利委員とのやり取りや、事前に権利委員の皆さんがパラレルレポを読み込んでくれていたことが、「1項目あたりの分量が多い総括所見」につながったことなどを、お話して頂きました。

全体として、パラレルレポート作成などの丁寧な準備、ジュネーブでの権利委員との直接のコミュニケーションの大切さ、そして総括所見は項目ごとと同時に全体を俯瞰していくことで今後の具体的な国内運動につなげていくことなどをお伺いすることができました。

障害者権利条約をめぐる全体が、点・面というよりも、立体的につながっていることを感じることができるお話であったと思います。

後半は全国「精神病」者集団の桐原尚之さんから「障害者権利委員会第1回総括所見を活用した闘いに向けて」というタイトルでお話を頂きました。

国内の概況として、国内の約151万床ある病床のうち、約3分の1の33万床が精神病床であり、閉鎖的な環境で今なお多くの虐待事件が繰り返し行われていること。

国内法としては措置入院や医療保護入院など「精神保健法に規定された非自発的入院」が行われており、身体拘束や隔離や閉鎖処遇などの行動制限が、精神保健法に規定されていることなどの説明がありました。

また障害者権利条約第12条(法律の前に等しく認められる権利)については、障害者権利委員会としては、「成年後見制度は障害者権利条約に違反する」という立場だが、日本政府は「(権利委員会が言う)法的能力とは、権利能力だけのことで行為能力は含まない」という解釈から、「成年後見制度は障害者権利条約に違反しない」としていること。

第14条(身体の自由および安全)については、障害者権利委員会は「非自発的入院は障害者権利条約に違反する」という立場だが、日本政府は「追加で自傷他害の恐れがあるなどの場合は、障害のみを理由としたものではない」という解釈から「非自発的入院は障害者権利条約に違反しない」としていること。

その解釈を変えるハードルは高いため、良い内容の勧告を取り、それを形にしていく、障害者権利条約の解釈の水準を引き上げていくことで、現状を変えていく必要があるのではないかということが伝えられました。

12条・14条についての勧告は、

(12条)委員会は、法の下の平等な承認に関する一般的意見第1号(2014年)を想起し、締約国に対して勧告する。
(a)代理意思決定体制の廃止を視野に入れ、すべての差別的な法規定と政策を廃止し、すべての障害者が法の下で平等に認められる権利を保障するために、民事法制を改正すること。

(14条)(a)障害者の強制入院を、障害を理由とする差別であり、自由の剥奪に相当するものと認識し、実際の障害または危険であると認識されることに基づく障害者の強制入院による自由の剥奪を認めるすべての法的規定を廃止すること。
とあり、それぞれ「成年後見制度の廃止」「強制入院の廃止」ということは政府としても認識している、ということ。

また25条(健康)には、(d)精神障害者の組織と緊密に協議しながら、強制力のない地域ベースの精神保健支援を開発し、精神保健医療を一般医療から分離する制度を解体するために必要な立法措置および政策措置を採用すること。とあり、25条でもこのような勧告が出たことは良かったとのこと。

また今後については、各地の組織が最前線で先進的な取り組みを進める、例えば各地の計画で、条約の考え方に基づき病院からの地域移行の具体的な人数をあげる、などの行動につながっていけば、とのことでした。

言葉の端々に、日頃から行政等と対峙している中で感じる、精神障害者の現在置かれている厳しさがにじみ出ていたと思います。本音で言うと仰っていた中に、「勧告はもっと具体的に書いてもらわないと現在の日本の状況だと行政や病院等に逃げ込まれる可能性がある」という旨の発言の中にもそれを感じました。

私たちの中でも、今回の総括所見をどのように活かしていくかが、真の課題であることを改めて認識することができたお話であったと思います。

西尾元秀(DPI常任委員)


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