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【第29条、31条、33条】DPI日本会議 総括所見の分析と行動計画⑪

2023年04月19日 障害者権利条約の完全実施

ポイントにはっと気づくイメージ ふきだし

DPIでは、昨年9月に国連障害者権利委員会から日本政府に出された総括所見を分析し、今後改正が必要な法制度についてまとめた「DPI日本会議総括所見の分析と行動計画」を策定しました。

今回はDPI各部会に横断的に関連する条文の①総括所見と②懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)、③DPIの行動計を掲載します。

本記事は「第29条 政治的及び公的活動への参加」「第31条 統計及び資料の収集」「第33条 国内における実施及び監視」です。

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是非ご覧ください。


【第29条 政治的及び公的活動への参加】
総括所見(外務省仮訳)

61.委員会は、以下を懸念をもって留意する。

  1. 投票の手続、設備及び資料の利用の容易さ(アクセシビリティ)が限定的であること、及び障害者の多様性に応じた選挙関連情報が不足していること。
  2. 特に障害のある女性が、政治的活動及び行政に参加すること及び役職に就き公務を遂行することへの障壁。

62.委員会は、以下を締約国に勧告する。

  1. 投票の手続、設備及び資料が、適当かつ利用しやすいものであり、全ての障害者にとってその理解及び使用が容易であることを確保するため、政権放送及び選挙活動を含む選挙関連情報についての合理的配慮を提供するとともに、公職選挙法を改正すること。
  2. 障害者、特に障害のある女性の政治的活動及び行政への参加の促進が確保され、支援技術及び新規技術の利用促進、及び個別の支援【パーソナルアシスタント】の提供により、効果的に役職に就き全ての公務を政府のあらゆる段階で遂行することができること。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. 投票環境(投票方法等)及び選挙に関する情報アクセシビリティと合理的配慮(61a)
  2. (特に障害女性にとっての)被選挙権の行使、行政の審議会等への当事者参画(61b)

(2)勧告

  1. 公職選挙法改正(投票環境・情報アクセシビリティ改善のため)(62a)
  2. (特に障害女性にとっての)政治参加促進のための合理的配慮の提供・仕組み作り(62b)

(3)DPIとしての評価

  1. 勧告にて、公職選挙法の改正が明記された点が評価できる。
  2. また、政治参画については、障害女性について特筆されている点も評価できる。
  3. 勧告で明記された「パーソナル・アシスタンスの提供」の利用制限が、障害者の政治参画を阻んでいる点について、他条項とあわせ取り組む必要がある。

2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)公職選挙法の改正

  1. 46条:原則自書 ⇒ マークシート方式・○×方式・電子投票等
    ・第一項にて、「原則自書」としている記載ぶりを改正する
    ・関連し、第二項にて、「地方選挙」に限定している「記号式投票」の範囲を広げる。
  2. 48条2項:代理投票の補助者を投票所係員に限定⇒当事者が支援者を選べるように
  3. 49条2項:郵便投票「身体に重度の障害があるもの」⇒医学モデルではない要件へ。
    ※実際の運用は身体障害2級以上等の医学モデルに基づくもの。
  4. 第10条・11条の「被選挙権」に関連し、障害を理由とした差別を禁止する条項を設け、選挙期間中における合理的配慮(パーソナルアシスタントの利用等)が確実に提供されるようにする。

(2)障害者基本法の改正(28条:選挙等における配慮)

  1. 現行法では、投票所の環境整備のみが記載されているため、投票方法や情報アクセシビリティの改善について追記する。

(3)重訪利用制限を課す厚労省告示の改正

  1. 被選挙権の確保 (議員活動時の重訪利用制限)という観点からも、求めていく。(62bでもパーソナルアシスタンスの提供について明記)
    ※27条勧告58(d)にて重度訪問介護の利用制限問題・法規制撤廃は盛り込まれている。

(4)障害者差別解消法

  1. 立法府で適用されないことが、議員活動時の差別・合理的配慮の不提供につながる。

(5)選挙関連の情報アクセシビリティ

  1. 障害者基本法(22条)、情報アクセスコミュニケーション推進法等とも関連、
  2. 公職選挙法そのものの改正よりは、運用基準(選挙公報、政見放送等)への働きかけを行う。

短期、中期、長期計画

(1)短期 2022-24年

  1. 2023年度に障害者政策委員会において、総括所見を受けた障害者基本法改正に関する議論を行う。
  2. 障害者基本法改正
  3. 国政選挙等を見据えた運用面での働きかけ
  4. 重訪利用制限の厚労省告示撤廃に対する働きかけ

(2)中期 2025-27年

  1. 公職選挙法改正

(3)長期 2028-

  1. 障害者差別解消法改正(立法府・司法府への適用検討)

【第31条 統計及び資料の収集】
総括所見(外務省仮訳)

65.委員会は、以下を懸念をもって留意する。

  1. あらゆる活動分野を対象とする、障害者に関する包括的で分類された資料の欠如。
  2. 居住型施設及び精神科病院の障害者が、実施済みの調査においては見過ごされていること。

66.障害に関するワシントングループの短い一連の質問、及び経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会(DAC)の障害者の包容及び自律的な力の育成に関する政策指標を想起しつつ、委員会は締約国に、年齢、性別、機能障害の形態、必要とする支援の形態、性的指向及びジェンダー自認、社会経済的地位、民族、居住施設及び精神科病院を含む居住地といった様々な要因により分類された、あらゆる活動分野における障害者の資料収集システムを開発することを勧告する。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. 障害の有無に関係なく生活に関する全ての分野を網羅するきめこまやかなデータがない(65a)
  2. これまでの調査において入所施設(特に筋ジス病棟)や精神科病院にいる障害者の情報が見落とされている (65b)

(2)勧告

  1. 障害に関するワシントン・グループの短い質問集と、障害者の包摂と権利拡大に関する経済協力開発機構の開発援助委員会の政策マーカーを想起する(66)
  2. 政府が生活に関わる全ての分野における障害者に関するデータ収集システムを開発する(66)
  3. 年齢、性別、障害の種類、必要な支援の種類、性的指向と性自認、社会経済的地位、民族性、居住施設や精神病院などの居住地の様々な要素によって細分化されるように推奨する(66)

(3)DPIとしての評価

  1. 統計とデータ収集については適切な内容となっており、また一般的意見第4・5号で教育、脱施設。特に筋ジス病棟や精神病院などの取り残されていた人々の調査を進めることの記述は、評価する。

2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)障害者基本法の改正

  1. 13条(年次報告)を以下の通り修正する。
    ・「政府は、毎年、国会に、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書及び障害者権利条約の実施状況における定期報告を提出しなければならない。」
  2. 新たに統計及びデータの収集の項目を設ける。
    ・文案「(統計及びデータ収集)国及び地方公共団体は、政策を立案し、及び実施することを可能とするため、障害の程度・種別、性別、年齢、居住する場所、所得など生活の実態などの情報(統計資料及び研究資料を含む。)をしなければならない。また、これらの統計がすべての障害者にとって利用しやすいものでなければならない。」

(2)統計法の改正

  1. 障害者基本法の各則に新設された「統計及びデータ収集」に合わせ障害者調査を紐づけし、法的に義務付ける。
  2. 各省庁に働きかけ、あらゆる分野の障害者調査を総務省の統計審議会で検討する。特に障害女性の団体を含む障害者団体が参画し、統計調査の企画、実施、分析、普及と活用を促す。
  3. 既に実施予定の二つの調査について、その効果を障害者団体等が分析し問題点があれば正しい情報が得られるよう総務省に働きかけ改善を行う。

(3)障害者に特化した調査について

  1. 第19条関連
    ・入所施設利用者や精神科病院の長期入院者を対象にした地域生活への意向調査を実施する。
  2. 第24条関連
    ・障害のある人が質の高いインクルーシブ教育を継続して受けられるようあらゆる障壁を取り除くための効果的な措置の採択を可能にするため、教育に関するデータを集める。
  3. 第27条関連
    ・障害のある人がインクルーシブな労働及び雇用に継続して就けるようあらゆる障壁を取り除くための効果的な措置の採択を可能にするため、労働及び雇用に関するデータを集める。

短期、中期計画

(1)短期 2022-23年

  1. 障害者基本法の改正
  2. 統計法の改正
  3. 国民生活基礎調査、社会福祉基本調査の実施、データ検証

(2)中期 2024-25年

  1. 各省庁による統計に障害者調査の項目を網羅する
  2. 追加的障害者実態調査の実施
  3. 入所施設利用者や精神科病院の長期入院者自身を対象に、意向調査を実施する

(3)長期 2026-

  1. 統計調査の企画、実施、分析に障害者団体が参加する
  2. 障害者調査の情報を元にあらゆる政策に反映する
  3. 次回の建設的対話に障害者調査を基にパラレルレポートを作成し、国連障害者権利委員会に提出する

【第33条 国内における実施及び監視】
総括所見(外務省仮訳)

69.委員会は、以下を懸念する。

  1. 締約国に人権の保護及び促進のための国内機構の地位に関する原則(パリ原則)に則した国内人権機構が存在しない。
  2. 本条約に基づく監視の仕組みとして内閣府に設置された障害者政策委員会は、範囲が限られており、委員間において障害の多様性の代表性及びジェンダー衡平が不十分である。

70.委員会は、締約国が、独立した監視枠組みに関する指針及びその委員会の活動への参加を考慮すること、人権の保護に関する広範な権限、及び十分な人的、技術的及び財政的資源を伴うパリ原則に完全に沿った国内人権機構を設置すること、また、その枠組みのなかで本条約の実施を監視するために、独立性、委員の障害の多様性及びジェンダー衡平の代表性を保障しながら障害者政策委員会の公的能力を強化することを勧告する。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. パリ原則に基づく国内人権機関の不在(69a)
  2. 障害者政策委員会が条約の監視機関でありながら、政府から独立しておらず、監視対象が限定されていること、委員構成で多様性やジェンダーバランスに欠けていること(69b)

(2)勧告

  1. パリ原則を遵守し、人的・技術的・財政的資源を備えた国内人権機関の設立
  2. ①の枠組みの中で、障害者政策委員会の機能強化を行い、独立性と多様性・ジェンダーバランスの保障

(3)DPIとしての評価

  1. 肯定的側面の一つに「条約の実施の監視を担当する機関として障害者政策委員会を設置」が盛り込まれた上で、国内人権機関と障害者政策委員会の両方に対する勧告が出された点は、JDFパラレルレポートなどをふまえた適切な内容となっている。特に、障害者政策委員会の根拠法は障害者基本法改正であることから、障害者基本法改正の動きをつくる突破口という点からも33条に関する勧告は評価できる。

2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)障害者基本法の改正

  1. 第1条(目的)に「障害者権利条約の規定を踏まえながら」との記述を追加する。
  2. 第32条2(障害者政策委員会の所掌事務)に、「四その他障害者の権利に関する条約を踏まえた法令や施策の実施状況を監視すること」との記述を追加する。
  3. 第33条(政策委員会の組織及び運営)2に、「障害の多様性を踏まえた構成とし、障害者の参画においてはその種別や性別等に十分配慮」との記述を追加する。
  4. 第35条「前二条に定めるもののほか、政策委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める」に関連して、事務局体制の強化が必要

(2)国内人権機関設置法の制定

短期、中期計画

(1)短期 2022-24年

  1. 2023年度に障害者政策委員会において、総括所見を受けた障害者基本法改正に関する議論(33条以外も含めた、全ての条文に関して)
  2. 2024年度 障害者基本法改正
  3. 国内人権機関設置法に関する学習・検討、広範なキャンペーン活動
  4. 国内人権機関設置法の提案・制定

(2)中期 2025-27年

  1. 障害者政策委員会の事務局体制整備

以上


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