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【第8条、11条、12条、13条、25条】DPI日本会議 総括所見の分析と行動計画⑩

2023年04月18日 障害者権利条約の完全実施

ひらめき 意識啓発のイメージ

DPIでは、昨年9月に国連障害者権利委員会から日本政府に出された総括所見を分析し、今後改正が必要な法制度についてまとめた「DPI日本会議総括所見の分析と行動計画」を策定しました。

今回はDPI各部会に横断的に関連する条文の①総括所見と②懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)、③DPIの行動計を掲載します。

本記事は「第8条 意識改革」「第11条 危険な状況および人道的緊急事態」「第12条 法律の前にひとしく認められる権利」「第13条 司法手続の利用の機会」「25条 健康」です。

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是非ご覧ください。


【第8条 意識改革】
総括所見(外務省仮訳)

19.委員会は以下を懸念する。

  1. 社会及びメディアにおける、障害者の尊厳及び権利に関する意識を向上させるための努力及び予算配分が不十分であること。
  2. 障害者、知的障害者及び精神障害者に対する差別的な優生思想に基づく態度、否定的な定型化された観念及び偏見。
  3. 「心のバリアフリー」に関する教材のような、意識向上のための率先した取組の準備における障害者の参加及びそれら措置の評価が不十分であること。

20.委員会は、締約国に以下を勧告する。

  1. 策定、実施及び定期的な評価に障害者の緊密な参加を確保しつつ、障害者に対する否定的な定型化された観念、偏見及び有害な慣習を排除するための国家戦略を採用すること。
  2. メディア、一般公衆及び障害者の家族のための障害者の権利に関する意識向上計画の策定と十分な資金調達を強化すること。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. 社会やメディアで障害者の尊厳と権利に関する認識を高めるための努力と予算配分が不十分(19a)
  2. 障害者等に対する差別的な優生思想、否定的な固定観念、偏見が蔓延っている(19b)
  3. 「心のバリアフリー」テキストなどの啓発施策の作成に障害者が十分に参画できず、評価もできていない(19c)

(2)勧告

  1. 障害者に対する否定的な固定観念、偏見、有害な慣行を排除するための国家戦略を策定し、十分な予算を確保する(20a)
  2. 国家戦略を策定するために障害者団体等と協議して、実施する。(20a)
  3. 政策委員会等で定期的な評価を行う(20a)
  4. メディア、一般市民および障害者の家族のために、障害者の権利に関する啓発プログラムを開発する(20b)

(3)DPIとしての評価


2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)障害者基本法の改正

  1. 第7条(国民の理解)をDPI試案の通り改正する(20b)
(国民の理解)

国及び地方公共団体は、障害者差別の禁止および社会的障壁の除去をはじめとした、基本原則に関する国民の理解を深めるよう必要な施策を講じなければならない。

(2)人権教育及び人権啓発の推進に関する法律

  1. 所管が法務省と文部省(法務省中心)であるが、両省以外にも厚生・労働省をはじめ、全府省庁に人権教育・啓発は関係している。附帯決議の中でも「人権政策は、政治の根底・基本に置くべき重要課題であることにかんがみ、内閣全体でその取り組みに努めること」と指摘されている。早急に所管を内閣府に移すべき(20a)

(3)人権教育・啓発に関する基本計画の改定

  1. 人権教育・啓発に関する基本計画に障害者権利条約に合致した内容にする(20a、20b)

(4)男女共同参画社会基本法の改正

  1. 第6条(家庭生活における活動と他の活動の両立)を男女共同参画社会基本法案に対する附帯決議にあるように「子の養育、家族の介護については、社会も共に担うという認識に立って、その社会的支援の充実強化を図る」と記述し、ヤングケアラー問題を解消する(20a、20b)

(5)政策委員会での議論

  1. 人権教育のための世界計画及び第4フェーズ行動計画の推進と、第5フェーズ行動計画に当事者団体が関与する(20a)
  2. 各世代に持続可能な人権教育をしていくために必要な予算を確保する(20b)
  3. 障害者基本計画の世論調査等において障害者権利条約の周知状況、及び人権モデルの市民理解を定期的に把握し公表する(20a、20b)

(6)障害者団体との協議

  1. 総務省に働きかけ、人権トレーニングのカリキュラム作成に当たっては、障害団体が参画し、作成する(20a)
  2. 人権トレーニングを国会議員及び地方議員や行政職員、司法関係者、各種専門職向けに企画・実施する。特に政府には、やまゆり園などの事件など優生思想を問う事件などが起きた時に「優生思想は許さない」など強い姿勢を示していくよう促す(20a)
    *例)オーストラリア人権トレーニング(国家人権委員会が主導、2つの研修があり、それぞれ20人定員で3,000~5,000欧州ドル/回の費用がかかる)
  3. 東京オリパラ、関西万博などで「UD行動計画2020」といった指針に必ず人権ポリシーなどを掲げ、様々な角度から差別禁止等を徹底する(20a、20b)
    *例)FIFAワールドカップ人権ポリシー

(7)メディア等すべての国民に向けた取組

  1. 意識改革の象徴としてチャリティーモデルの代表でもある「24時間テレビ」を人権モデルに転換する。その際、関心のあるジャーナリストなどにも呼び掛け協力を仰ぐ(20b)
  2. テレビ(バリバラ、B面談義)・ラジオ(人権Today(TBSラジオ)、ラジオ深夜帯(NHKラジオ第1)、視覚障害ナビ・ラジオ(NHKラジオ第2)など)・SNSで障害者権利条約や人権モデルの周知を図る(20b)
  3. ペアレントトレーニング、義務教育課程のプログラム、障害平等研修(DET)、障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修、相談支援従事者研修、ピアサポーター研修、あらゆる職業のカリキュラムなどで障害者権利条約や人権モデルの内容を加える(20a、20b)
  4. 人権教育のための世界計画及び第4フェーズ行動計画で示されている研修(就学前教育、小学校、中学校、高等学校、大学、大学院、社会教育、生涯学習)に障害者権利条約や人権モデルの内容を加える(20b)
  5. メディアにおける表象(何かを用いてあるもの(対象)を表すこと)は、障害者を含むあらゆるコミュニティに関する社会の認識を形成するうえで大きな影響力を持っている。しかし、障害者について、社会モデルではなく医学モデルに基づいた表象や、信憑性に欠け、歪められた見方によって描写されていることが多々ある。そして、この誤った表象は、一般市民が、障害者について、広く正しく理解する機会を奪うことになる。障害者を取り上げる全てのメディアが、「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」という言葉に基づいて、当事者による表象、または、当事者の体験に基づいた丁寧な表象を行うことを強く求める。これらのことを踏まえて、障害者を正しく表象するためのガイドラインを政策委員会の下で制定する(20a)

短期、中期、長期計画

(1)短期 2022-24年

  1. 全てのメディアの中で障害者権利条約や総括所見について特集してもらう。
  2. 放送倫理・番組向上機構(BPO)に対し、チャリティーモデルや感動ポルノを主体とした番組作りについて問題提起する。
  3. 政策委員会で障害者基本法改正に向けた検討、改正を行う。
  4. 2023年9月に「人権教育のための世界計画決議)」の人権理事会で決議されるので、第5フェーズ行動計画(2025~2029年)のテーマ設定においては、「障害」、「人権モデル」に関連するよう働きかける。

(2)中期 2025-27年

  1. 全てのメディアの中でチャリティーモデルや感動ポルノを主体とした番組から人権モデル主体の番組が出てくる。
  2. 人権モデルへの転換10ヶ年戦略を掲げる。

(3)長期 2028-30年まで

  1. 全てのメディアで人権モデルの番組が基本となる。
  2. 次回のパラレポに意識改革が一歩でも前進したような記述ができるようになる。

【第11条 危険な状況および人道的緊急事態】
総括所見(外務省仮訳)

25.委員会は、以下を懸念している。

  1. 災害対策基本法において、合理的配慮の否定を含む、障害者のプライバシー及び無差別の権利の保護が限定的であること。
  2. 危険な状況や人道上の緊急事態における避難所や仮設住宅の利用の容易さ(アクセシビリティ)の欠如。
  3. 地震や原子力発電所の災害に関するものを含む、防災や気候変動緩和に関する過程の計画、実施、監視、評価について障害者団体との不十分な協議。
  4. 知的障害者に対する緊急警報制度の利用の容易さ(アクセシビリティ)の確保を含む、危険な状況、災害、人道上の緊急事態について、情報の利用の容易さが限定的であること。
  5. 熊本地震、九州北部豪雨、西日本豪雨、北海道胆振東部地震における仙台防災枠組2015-2030の実施の欠如。
  6. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対する情報、ワクチン、保健サービス、その他の経済・社会計画への利用する機会の欠如を含む、障害者を包容した対応の欠如、及び未だ施設に入居している障害者に対するパンデミックの過重な影響。

26.委員会は、締約国に以下を勧告する。

  1. 防災・減災、危険な状況及び人道上の緊急事態に関して、合理的配慮を含め、障害者のプライバシー及び無差別の権利を強化するために災害対策基本法を改正すること。
  2. 危険な状況及び人道上の緊急事態において、提供される避難所や仮設住宅等のサービスが、年齢やジェンダーを考慮した上で、障害者も含め利用しやすく、障害を包容するものであることを確保すること。
  3. 安全かつ利用可能な集合場所、緊急時の避難所及び避難経路について確認し、地域社会が中心となり、個別の緊急時の計画や支援制度を策定すること、障害者とその家族を含む地域社会全体が災害予防や減災の計画づくりに関与することによって、強靱な地域社会を構築すること。
  4. 危険な状況及び人道上の緊急事態において、全ての障害者及びその家族が、利用しやすい様式及び適当な機器において、必要な情報を得られるよう確保すること。
  5. 仙台防災枠組2015-2030に従って、あらゆる段階の気候変動における防災に関する計画、戦略、及び政策が、障害者とともに策定することを確保すること。また、あらゆる危険な状況における障害者特定のニーズに明示的に対応すること。
  6. 新型コロナウイルス感染症の負の影響に対応するためのワクチン、保健サービス、そのほかの経済・社会計画の均等な機会の確保を含め、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応やその復旧計画において、障害者の権利を主流化すること。また、緊急時に障害者の脱施設化の措置をとり、地域社会で生活するための適当な支援を提供すること。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. 避難所や仮設住宅の合理的配慮の提供、アクセシビリティの確保が不十分(25a、25b)
  2. 原発事故を含む災害時のリスクの見通し、対策、評価などの検討の際、障害者団体の参画が不十分(25c)
  3. 知的障害者を含むあらゆる障害のある人への、緊急時の情報アクセシビリティが不十分(25d)
  4. 東日本大震災後にできた「仙台フレームワーク2015−2030」の実施不足(25e)
  5. 障害者へのCOVID-19に対する情報提供、保健サービス(検査、ワクチン接種、入院、介護等)、その他のプログラムのアクセシビリティ、対応が不十分(25f)
  6. 施設入所者へのCOVID-19感染拡大(25f)

(2)勧告

  1. 法律を改正して、被災時の合理的配慮の提供、プライバシーの保護などを強化する(26a)
  2. 避難所、仮設住宅、その他の災害関連のサービスは、年齢と性別を考慮しつつインクルーシブでアクセシブルなものにする(26b)
  3. 障害者、家族が参加して地域の防災計画、個別避難計画、避難所のあり方などを検討し、地域全体の防災を強化する(26c)
  4. すべての障害者と家族が被災時、緊急時の情報が得られるよう、適切な方法や手段を講じること(26d)
  5. あらゆる災害対策は、「仙台フレームワーク2015−2030」に従い、当事者参加の上で対策をとること(26e)
  6. COVID-19への対応は、障害のある人が不利益を生じないよう対策を講じること(26f)
  7. COVID-19パンデミックのような緊急時においても、脱施設を進めること(26f)

(3)DPIとしての評価

2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)障害者基本法の改正(26a、26b、26d)

  1. 第26条(防災及び防犯)に「等」を加える
  2. 「」部を追加
    国及び地方公共団体は、障害者が地域社会において「差別なしに」安全にかつ安心して生活を営むことができるようにするため、障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、「あらゆる災害を想定しつつ復興復旧等を含む」防災及び防犯に関し必要な施策を講じなければならない
  3. 次の条文を新設
    国及び地方公共団体は、防災に関する施策の立案(復興復旧等を含む)等について、障害者の意見を聞き、障害者の特性に応じた必要かつ合理的な配慮を的確に実施すること。ならびに基本原則にのっとり、障害の有無によって分け隔てられることのない地域づくりを原則とした復興復旧計画を策定すること。

(2)災害対策基本法の改正

  1. スフィア基準適用の義務化(26e)
  2. 合理的配慮提供の義務化を明記(26a、26b、26d)
  3. 避難所運営ガイドライン(内閣府作成)の活用に強制力を持たせること。(26c)
  4. ガイドラインの内容についても確認の上、必要な見直しをさせる。(26c)

(3)災害救助法の改正(26b)

  1. 仮設住宅のUD化の義務化
  2. 復興住宅のUD化の義務化

短期、中期計画

(1)短期 2022-24年

  1. 障害者基本法の改正
  2. 避難所運営ガイドラインの見直し

(2)中期 2025-27年

  1. 災害対策基本法の改正
  2. 災害救助法の改正

【第12条 法律の前にひとしく認められる権利】
総括所見(外務省仮訳)

27.委員会は、以下を懸念する。

  1. 意思決定能力の評価に基づき、障害者、特に精神障害者、知的障害者の法的能力の制限を許容すること、並びに、民法の下での意思決定を代行する制度を永続することによって、障害者が法律の前にひとしく認められる権利を否定する法規定。
  2. 2022年3月に閣議決定された、第二期成年後見制度利用促進基本計画。
  3. 2017年の障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドラインにおける「the best interest of a person(本人の最善の利益)」という言葉の使用。

28.一般的意見第1号(2014年)法律の前にひとしく認められることを想起しつつ、委員会は以下を締約国に勧告する。

  1. 意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が、法律の前にひとしく認められる権利を保障するために民法を改正すること。
  2. 必要としうる支援の水準や形態にかかわらず、全ての障害者の自律、意思及び選好を尊重する支援を受けて意思決定をする仕組みを設置すること。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. 民法の後見制度による行為能力の制限と代替意思決定のしくみ。(27a)
  2. 2022年3月に承認された成年後見制度の利用促進に関する基本計画。(27b)
  3. 2017年の厚労省が作成した「障害者福祉サービスの提供に係る意思決定支援ガイドライン」の「本人の最善の利益」という用語の使用。(27c)

(2)勧告

  1. 法的能力の制限は障害者差別であり、差別的な法制度の廃止、民法の改正による成年後見制度の廃止。(28a)
  2. 障害者の自律、意思、選考を尊重する支援付き意思決定のメカニズムの確立。(28b)

(3)DPIとしての評価

  1. 民法改正による成年後見制度の廃止と意思決定支援のメカニズムの確立、民事訴訟法の訴訟無能力制度の廃止、意思決定ガイドラインの改定が盛り込まれたため、高く評価できる
  2. 「法的能力」について、民法などの主要な法律の根幹を変える作業となるため、高齢者関係を含む他の市民社会団体、研究者、法実務家などの関係者をまじえた丁寧な議論が必要。
  3. 成年後見制度の改正のための検討会の委員との連携が必要。

2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)民法

  1. 成年後見類型に関連して、第七条、第八条 第九条 、第十条(28a)
  2. 保佐類型に関連して、第十一条、第十二条、第十三条、第十四条(28a)
  3. 補助類型に関連して、第十五条、第十六条、第十七条、第十八条(28a)
  4. その他、審判相互の関係について第十九条、制限行為能力者の相手方の催告権について第二十条、 制限行為能力者の詐術について第二十一条(28a)

(2)民事訴訟法

  1. 民事訴訟法31条の「未成年者及び成年被後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない」の規定の「成年被後見人」の部分の削除(現行法は未成年と成年被後見人は絶対的訴訟無能力者。民事訴訟法では、民法と若干異なり、未成年者と成年被後見人の行為は、取消の意思表示がなくても、最初から無効)。(28a)
  2. 民事訴訟法28条の見直し。(28a)

(3)(障害者基本法の改正(第23条 「相談等」)

  1. 「国及び地方公共団体は、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならない。」の「成年後見制度」の部分の削除。(28b)

短期、中長期計画

(1)短期 2022-24年

  1. 厚生労働省「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」の見直し
  2. 意思決定支援(支援を受けた自己決定支援)のメカニズムの確立について、日常生活自立支援事業の活性化、ピアサポートを含む相談支援事業の見直し、イギリスの意思決定能力法やニュージーランドのファミリーグループカンファレンスなどの諸外国の法制度や実践を参考にしながら総合的に検討を行い、一定の方向性を定める
  3. 障害者基本法の第23条の改正で、「成年後見制度」という文言を削除し、あらたに、「障害者の意思や選考を最大限尊重した意思決定支援」という文言を挿入

(2)中長期 2025-30年まで

  1. 民法改正による成年後見制度の廃止と意思決定メカニズムの法定化
  2. 民事訴訟法の改正による訴訟無能力条項の廃止
  3. 成年後見利用促進法の改廃

【第13条 司法手続の利用の機会】
総括所見(外務省仮訳)

29.委員会は、以下を懸念している。

  1. 意思決定を代行する制度の下に、訴訟能力の欠如を事由として施設入居障害者、知的障害者、精神障害者の、司法を利用する機会を制限する民事訴訟法及び刑事訴訟法の規定。
  2. 障害者の効果的な参加を確保するための民事・刑事及び行政手続における、手続上の配慮及び年齢に適した配慮の欠如。障害者にとって利用しやすい情報及び通信の欠如。
  3. 裁判所、司法及び行政施設が物理的に利用しにくいこと。

30.委員会は、障害者の権利に関する特別報告者によって作成された、障害者の司法を利用する機会に関する国際原則及びガイドライン(2020年)並びに持続可能な開発目標のターゲット16.3を想起し、締約国に以下を勧告する。

  1. 障害者が司法手続に参加する権利を制限する法的規定の廃止。他の者との平等を基礎として、あらゆる役割において、司法手続に参加するための完全な能力を認識すること。
  2. 障害者の全ての司法手続において、本人の機能障害にかかわらず、手続上の配慮及び年齢に適した配慮を保障すること。これには、配慮に要した訴訟費用の負担、情報通信機器、字幕、自閉症の人の参考人、点字、「イージーリード」及び手話を含む、手続に関する公式情報及び通信を利用する機会を含む。
  3. 特に、ユニバーサルデザインにより、裁判所、司法及び行政施設への物理的な利用の容易さ(アクセシビリティ)を確保し、障害者が、他の者との平等を基礎として、司法手続をひとしく利用する機会を保障すること。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. 成年後見制度における訴訟能力の欠如と司法へのアクセスの制限(29a)
  2. 民事、刑事上の司法への「手続き上の配慮」の欠如(29b)
  3. 司法機関へのアクセスの物理的な制限(29c)

(2)勧告

  1. 訴訟無能力、制限訴訟能力制度による司法へのアクセスを制限する法制度の撤廃(30a)
  2. 訴訟費用の負担や情報へのアクセスを含め、すべての司法手続き上の便宜を保証すること(30b)
  3. 裁判所の建物など物理的なアクセスをユニバーサルデザインによって障害のない人と平等に司法へのアクセスを保証(30c)

(3)DPIとしての評価

  1. 手続上の配慮についての規定をすべての法分野において要求している点、ICTを用いた司法手続におけるアクセシビリティの確保、訴訟費用の敗訴者負担制度の改善を具体的に述べており、これらの点は高く評価できる
  2. 服役中の障害者への配慮、裁判傍聴する障害者への配慮については、総括所見に含まれているのか否かについて検討が必要。

2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)刑事手続き関係

  1. 刑事訴訟法を改正し、司法機関に対し取り調べから公判までのすべての段階で、障害を持つ被疑者、被告人、被害者その他のすべての関係者への手続き上の配慮の提供義務付け
  2. 刑事訴訟法を改正し、取り調べの全過程を録音、録画することを定める規定
  3. 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律を改正し、刑務所等において、障害を持つ被収容者への配慮提供義務付
  4. 裁判員法を改正し、障害に関する事項について裁判所の情報提供の義務付け
  5. 裁判所法を改正し、障害者が裁判員に選出された場合の手続き上の配慮提供義務付け

(2)民事手続き関係

  1. 民事訴訟法を改正し、障害を持つ関係者への裁判所等による手続き上の配慮提供を義務付け。
  2. 民事訴訟費用等に関する法律を改正し、障害者に対する手続き上の配慮にかかる費用の国庫負担を規定。

(3) 鑑定留置制度の改善:刑事訴訟法の改正

(4) 各種裁判手続のIT化への対応

(5) 裁判傍聴に関する配慮の確立

  1. 障害者による裁判傍聴の機会を確保するため、合理的配慮を義務付けた法律の新設。

(6) 司法関係者への研修の実施

短期、中期計画

(1)短期 2022-24年

  1. 各種裁判手続のIT化への対応について
  2. 民事訴訟法関係では「障害者の民事私法アクセスの拡充に関するワーキンググループ」が設けられており、その中で改善を求めていくこと
  3. 障害者が裁判傍聴をする場合の配慮については
  4. 裁判所の「対応要領」の中で障害者が裁判傍聴する際の合理的配慮を明示するよう改定
  5. 司法関係者への研修について
  6. 運用上の改善とするか、裁判所法67条(修習・試験)の第3項「修習及び試験に関する事項は、最高裁判所がこれを定める」とされているので、この内容として障害者関係の研修を含めるよう働きかけていく方法もあるのではないか。

(2)中期 2025-27年

  1. 民事訴訟法、刑事訴訟法の改正による手続上の配慮を定める規定の設置。
  2. 必要な手続上の配慮に関する費用の敗訴者負担について
  3. 民事訴訟法の費用に関する法律の改正を求めるのか、韓国の法制度を参考として、特別法の制定を求めるのかについて、検討が必要。
  4. 刑訴法上の鑑定留置制度の改善について

【第25条 健康】
総括所見(外務省仮訳)

53.委員会は、以下を懸念をもって留意する。

  1. 利用しにくい保健施設及び情報を含む保健サービスへの障害者、特に障害のある女性及び女児及び精神障害者、知的障害者が直面する障壁、合理的配慮の欠如、及び保健部門従事者が持つ障害者に関する偏見。
  2. 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定される、精神科医療の一般医療からの分離及び地域社会に根ざした十分な保健サービス及び支援の欠如。
  3. 全ての障害者、特に障害のある女性及び女児が、他の者との平等を基礎とした、質の高い年齢に適した性及び生殖にかかる保健サービス及び性教育を利用する機会を確保する措置が限定的であること。
  4. より多くの支援を必要とする者を含め、障害者への医療費補助が不十分であること。

54.本条約第25条と持続可能な開発目標のターゲット3.7及び3.8との関連性を考慮し、委員会は以下を締約国に勧告する。

  1. 施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)基準の実施及び公的及び民間の保健提供者による合理的配慮の提供を確保することを含め、全ての障害者に質が高くジェンダーに配慮した保健サービスを確保すること。
  2. 保健サービスに関して、点字、手話及び「イージーリード」等、全ての障害者に利用しやすい様式で情報が提供されることを保障すること。
  3. 保健の専門家の研修に障害の人権モデルを統合すること。全ての障害者がいかなる医療及び手術治療を受ける場合も、事情を知らされた上での自由な同意を得る権利を有していることを強調する。
  4. 精神障害者団体との緊密な協議をし、非強制的で地域社会に基づく精神保健支援を策定し、精神保健を一般医療と区別する制度を廃止するための、必要な法的及び政策的対策を採用すること。
  5. 質の高い、年齢に適した性及び生殖に関する保健サービス及び包括的な性教育が、全ての障害者、特に障害のある女性及び女児に対して、障害者を包容し、かつ利用しやすいことを確保すること。
  6. 費用負担能力に基づいた医療費補助金の仕組みを設置し、これらの補助金を、より多くの支援を必要とする者を含めた全ての障害者に拡大すること。

1.懸念・勧告で指摘していること(課題の抽出)、DPIとしての評価(コメント)

(1)懸念

  1. 障害者、特に女性障害者、精神または知的障害者の保健福祉サービスへのアクセシビリティが不十分。(53a)
  2. 一般医療とは別の枠組みで精神科医療が提供されており、地域の保健サービスや支援が不十分。(53b)
  3. 障害者、とくに障害女性に対して性と生殖に関する保健サービスや性教育へのアクセスが障害のない女性と比べて制限されている。(53c)
  4. 医療費助成を必要とする障害者に十分支援が行き届いていない。(53d)

(2)勧告

  1. 医療機関へのアクセシビリティや合理的配慮の確保およびジェンダーに配慮した医療サービスの提供(54a)
  2. 保健サービスに関する情報へのアクセスをきちんと保障すること(54b)
  3. 医療従事者の養成・研修内容を障害の人権モデルやインフォームド・コンセントの権利を踏まえたものにあらためること(54c)
  4. 精神保健福祉法の廃止を含む精神医療に対する一般医療への編入。(54d)
  5. 質の高い、年齢に応じた性と生殖に関する保健サービスおよび包括的性教育が、すべての障害者、特に障害女性と少女に対して、アクセス可能であること。(54e)
  6. 応能負担による医療費助成制度の対象を支援を必要とするすべての障害者に拡大すること。(54f)

(3)DPIとしての評価

  1. JDFパラレルレポートをおおむね踏まえた内容となっているが、患者の権利を明記した法律の制定については盛り込まれなかった。また、医療費助成の対象拡大が勧告に入っているが、現行の医療費公費負担制度を前提として考えるのか、制度間の統廃合を含めて考えるのかなど、具体的な改善方法について検討する必要があるのではないか。
  2. 評価できる点としては以下の2点が挙げられる。
    ・特に女性や少女である障害者、精神障害者に関して医療・保険サービスにおけるアクセスや情報保障、合理的配慮の欠如があることを指摘し、その背景に医療・保険の専門家の偏見等があることを認識している。
    ・特に女性や少女である障害者に関して、SRHR(性と生殖に関する健康・権利)及び包括的性教育が否定されがちであることを認識し、アクセス可能とすることを指摘している。

2.法律・制度・施策の改善ポイント

(1)障害者基本法の改正

  1. 新設条文として障害のある女性と精神障害者を追加する(54a・54c)
  2. 権利条約に関する関係者への研修プログラムづくりとその実施についての規定を設ける(54c)

(2)精神保健福祉法の将来的な廃止

  1. 現在、別建てになっている精神医療を一般医療への組み込むための改善が必要(54d)

(3)重度心身障害者医療費助成制度(マル障)、難病法、児童福祉法(小児慢性特定疾病)における医療費助成制度

  1. 指定難病と小児慢性特定疾病における医療費助成のトランジション問題の解消(54f)
  2. 障害や病気の重さという医学モデルにもとづく医療費助成制度から人権モデルにもとづく医療費助成制度への転換に向けた検討(54f)

(4) 学習指導要領(特別支援学校含む)

  1. 学習指導要領の中に記載されている「妊娠の経過は取り扱わないものとする」という通称「はどめ規定」を撤廃し、学校教育の中で性教育がきちんと行われるようにする(54e)
  2. 人権と自主自律に根ざした本来の包括的性教育が行われるよう、現行の「生命の安全教育」の手引きを回収し、内容について根本から見直す必要がある(54e)

(5)包括的性教育推進法(仮)の新設(54e)

短期、中期計画

(1)短期 2022-24年

  1. 政策委員会で障害者基本法改正に向けた検討、改正
  2. 学習指導要領の改正(54e)
  3. 包括的性教育推進法(仮)の新設(54e)

(2)中期 2025-27年

  1. 指定難病と小児慢性特定疾病における医療費助成のトランジション問題の解消(54f)

以上


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