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「障害者差別解消法の改正」に関する質問と回答
(DPI全国集会in東京@全体会)

2021年06月10日 権利擁護

QandA
先日開催しましたDPI全国集会の全体会で、尾上浩二(DPI日本会議副議長)が「障害者差別解消法の改正」について報告を行いました。

後日寄せられたご質問について参加者の方に個別に回答しました。
「障害者差別解消法の改正」に関するご質問と回答をこちらでも公開します。

ご質問1

障害者差別解消法改正による「事業者に対する合理的配慮の義務化」は画期的ですが、一方「職場内介助は合理的配慮として企業が行うべき」というような論拠として使われる可能性もあると思います。

このあたりの懸念に対してDPIとしてはどのように考え、取り組むお考えでしょうか。

回答

ご質問ありがとうございます。まず、ご質問に関わる法律は、直接的には障害者雇用促進法となります。

ご存知の通り、障害者雇用促進法は2013年の改正時点から民間企業も含めて事業主には合理的配慮の提供が義務となっています。その意味では、今回の障害者差別解消法改正による事業者の合理的配慮の義務化は、直接的には影響しないものと考えます。

ただし、ご指摘の「職場内介助は合理的配慮として企業が行うべき」といった形での「論点構成」は、すでに2015年の障害者総合支援法の改正議論の際に「通勤・通学等」に関連して

【障害者の通勤・通学等に関する移動支援については、全てを福祉政策として実施するのではなく、関係省庁とも連携し、事業者や教育機関による「合理的配慮」の対応や教育政策との連携等を進めていく必要があるのではないか。】(社会保障審議会障害者部会(第72回)資料1より)

という形で以前より提示されており、注意が必要な点であることは変わりありません。

また、合理的配慮義務には過重な負担の場合は免除されるという規定があるため、企業の規模等によって、通勤・勤務中の介護費用が過重な負担とされ、就職先による格差が生じる懸念は払拭できていません。

障害者総合支援法の第1条の2(基本理念)で「(前略)障害者及び障害児にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資することを旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。」と謳っている点からも、障害福祉サービスが通勤・勤務中の介護ニーズへの対応を制限している現状は、除去するべき社会的障壁と考えます。

DPIとしては、先日開催された、障害者部会(第111回)における障害者総合支援法見直しに関するヒアリングにおいて、「雇用・福祉施策の役割分担についてどう考えるか」との設問に対して、

【③社会全体で支える観点から、他のサービスと同様に障害福祉予算(税財源)で行って問題はないと考えるが、障害者差別解消法の施行に伴う事業者や教育機関による「合理的配慮」との関係を課題とする指摘が障害者部会でなされていたこと等を勘案し、複数財源による基金方式も選択肢の1つであると考える。④ただし、サービスを利用する場所や、その目的別に財源が変わることで、事業者、介助者を変更せざるを得ないような運用は認められない。】

といった意見を表明してきているところです。

特に、通勤・勤務中介護の財源に関して雇用保険からの拠出などは、「企業責任」を社会的に果たしていく意味からも大いに検討されるべきだと考えます。


ご質問2

差別解消にむけた国会議員、官僚の考え方など当事者の意見と現実とのギャップ、また、脱施設、インクルーシブ教育へのパラダイム転換にあたって最も重要なポイントは何でしょうか?

回答

ご質問ありがとうございます。

今回、与野党を超えた心ある国会議員のご尽力を得て、障害者差別解消法改正を実現することができました。全体会報告でもふれましたが、昨年12月時点においても担当の内閣府は「法案提出について検討中」という対応でしたが、その後、与党各党での議論を経て法案提出の運びとなりました。

その際、DPIのみならず、育成会や地域支援ネットなど他団体とも共同した取り組みが功を奏したと考えています。

ご質問頂いている、脱施設・インクルーシブ教育へのパラダイム転換を巡っては、多くのハードル・困難が予想されます。

まずは、私たちDPIをはじめとする障害者運動に携わるものが、当面の困難にたじろぐことなく固い決意をもって粘り強く取り組むことが必要であると考えています。

その点に関連して、全国集会・一日目のNPO総会で採択された議案書には、DPIビジョンに関連して、【2021年から2030年までの10年間は、政治・経済状況の変化、テクノロジーの進化、「生活様式」の変化など、私たちを取り巻く環境がより早く、大きく変化していくことが予想される。どんな時代になろうとも、権利条約の完全実施を旗印に全ての人が尊厳と希望をもって暮らせるインクルーシブな社会を創っていこう、長年の障害者運動の懸案課題である脱施設やインクルーシブ教育などを含めた取り組みを進めよう、そういう強い想いと決意が、このビジョンには込められている】と、その位置づけを記しています。

そうした自覚のもと、DPIビジョンに基づいて、脱施設、インクルーシブ教育を具体化してためのプロジェクトや試行事業を進めて行きたいと思います。

また、その際、脱施設やインクルーシブ教育に関して、他の障害者団体や学者・研究者などとも共通認識を形成しながら取り組みを進め、世論を形成していくことも重要課題であると考えます。


ご質問3

障害者差別解消法改正について、ワンストップ相談室や紛争の解決方法などの具体的にどのようになっていくのでしょうか?

回答

ご質問ありがとうございます。

障害者差別解消法改正法案の国会審議で、ワンストップ相談窓口の設置は重要テーマとして取り上げられ、衆参の附帯決議にも盛り込まれました。

担当の内閣府は、国会審議において「効果的な相談体制のあり方について調査研究を行ない、一元的な相談窓口なども含めて相談体制のあり方を検討し、適切な仕組みが整えられるように取り組む」と答えています。さらに、国会議員の質問により「調査研究において障害当事者も含めて意見を反映しながら調査研究を進めていく」との答弁が引き出されています。今後、「障害当事者も参画した調査研究」チームがつくられ検討されていくことになります。

また、同時に、障害者政策委員会において基本方針の検討も進められていくことになりますので、これらの場でのワンストップ相談窓口をはじめとした相談・紛争解決の仕組みの検討・議論が進められていくものと思われます。

以上

 


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