全ての人が希望と尊厳をもって
暮らせる社会へ

English FacebookTwitter

相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見

2016年08月03日 要望・声明尊厳生

2016年8月2日午前、相模原事件についての政党ヒアリングが行われ、障害者団体としてDPI日本会議も出席をし、意見書を提出しました。

他に出席された団体からも、「施設の安全確保」「措置入院制度の見直し」に対する危惧、反対意見が述べられました。
議員からも障害者団体の意見をふまえて、省庁に対して質問・意見が述べられました。

DPIの意見書に述べている通り、今回の事件をきっかけにして、障害者を隔離、排除していく施策が進められるならば、容疑者がいう「障害者なんていなくなればいい」という社会に突き進んでいくことになります。

そうしたことにならないように、私たちの側から「優生思想を許さない」、「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」というメッセージを発信し続け、取り組んでいきたいと思います。

▽8月2日相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見(ワード)

以下全文
———————————————————————–

 

2016年8月2日

相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり

日頃より障害者の権利の増進のためにご尽力いただき、心より感謝申し上げます。
わたしたちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害の種別を越えて障害者が障害のない人と共に生きることができる社会づくりのための運動を行っている団体であり、北海道から沖縄まで91の団体で構成されている障害当事者団体です。

2016年7月26日未明に相模原市の障害者施設で起きた障害者大量殺傷事件によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りし、負傷された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
また、深い悲しみや恐れを持たれているご家族に対しても心からお見舞い申し上げます。

私たちは、事件の全容と背景の解明を行うことを最優先とし、推測などをもとにした拙速な対応は、障害者への偏見や差別を助長する恐れがあるため、避けるべきであると考え、以下、意見を述べます。

1.今回の事件に関する基本的な立場
相模原での障害者大量殺傷事件で問われるべきは、むき出しの優生思想に基づく行為とそれを生み出す社会状況である。排除的な社会ではなく、インクルーシブな社会への転換が求められる。

2.で述べる通り、現在打ち出されている「再発防止」は、障害者を社会から隔絶、排除する方向に進む危険性を有していると考える。
もし、そうした方向が打ち出されるならば、今回の事件の目的として言われている「障害者がいない世界」に私たちの社会は進んでいくことになる。
あってはならない今回の事件に対して、その問題点をしっかりと受け止めた上で対応をしていくことが求められる。
あやふやな情報を元にした「対策」によって、方向を見誤らないようにして頂きたい。
・DPI日本会議声明
・共同通信2016年7月27日配信記事

2.「再発防止」として示されている事項について
(1)「施設の安全対策」について
通常の社会生活における安全対策は必要であろうが、「防犯」名目の下、障害者入所施設がより社会から隔絶された状況になり、入居者の外出や地域の人々との出会いが制限され、入居者のQOLが低下することになってしまわないか、大きな懸念を持たざるを得ない。

(2)「措置入院の在り方の見直し」について
報道によると、容疑者は犯行後、警察の取り調べに対して「障害者なんていなくなればいい」と語ったという。
また、重度重複の人たちを狙い撃ちにしたこと、家族に対しては「突然関係を絶つことになり申し訳ない」と述べているが、障害者本人に対する謝罪はないとも伝えられている。絶対認められない考えではあるが、「優生思想」という点では一貫したものを見て取れる。しかし、「思想」の問題を精神医療の対象とするのは間違いである。そもそも、容疑者が措置入院の対象者であったかについても検証が必要である。今回の事件を受けて、「措置入院の在り方」を見直すのは、さらなる誤謬である。こうした検討は精神障害者への偏見と隔離を強めることになり、私たちは検討会の設置に反対する。

3.今回の事件を受けてなすべきこと
2014年に批准した障害者権利条約や、それに基づく改正・障害者基本法、障害者差別解消法などに示されている、「障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会」(インクルーシブな社会)を基本とした対応がなされるべきである。

(1)施設からの完全な地域移行計画と地域生活支援の飛躍的拡充を今回の事件の背景に、とりわけ重度の知的障害のある人、重複障害のある人、高齢の障害のある人の地域移行が遅々として進んでいない状況があるのではないか。
事件に遭われた施設の管理体制を直接批判するものではないが、今後の在り方として入所施設ではなく、地域での生活を基本に進めていくべきである。
国も「施設からの地域移行」を掲げて10年余り経つが、今回の事態をきちんと受け止めて抜本的な地域移行策を打ち出すべきである。
施設や病院に誰も取り残されることなく完全な地域移行が可能となるような計画と、どんな重度の障害があっても地域で暮らせるように重度訪問介護などの地域生活支援を飛躍的に拡充して頂きたい。

(2)「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」との毅然としたメッセージを社会全体で
多くの障害者、関係者は今回の事件に強い衝撃と怒り、悲しみとおそれを抱いている。
私たちDPIは優生思想を絶対認めない。「殺されてよい命、死んでよかったというような命はない」といったメッセージを社会全体で共有していくことが求められている。

優生思想というと、戦前のナチス時代にあった過去のことと受け止められがちである。
しかし、日本では「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に掲げた
優生保護法が1996年まで続いた。

障害者や関係者の粘り強い運動でようやく廃止されたが、優生保護法下で行われた不妊手術などの被害者に対する謝罪や補償は、いまだになされていない。
過去を反省し、「優生思想は認めない」とのメッセージを託し、政府は優生保護法の被害者に対する謝罪・補償を早急に行うべきである。
なすべきは、措置入院制度の在り方検討会の立ち上げではなく、まず優生保護法の被害者への謝罪を行い、検証・補償の検討会の立ち上げを行うことである。

以上

 

LINEで送る
Pocket

現在位置:ホーム > 新着情報 > 相模原市障害者大量殺傷事件に対する意見

ページトップへ