アメリカの自立生活運動のリーダー セス・ホデレウスキー講演会報告 〜トランプ減税法で介助制度予算切り下げ、アメリカの障害者はいま〜

7月17日(金)に東京都議会議事堂の会議室をお借りして、セスさんの講演会を開催しました。セスさんはアメリカのペンシルベニア州にあるリーハイ・バレー自立生活センター(LVCIL)の事務局長をされており、全米自立生活センター協議会(NCIL)からの紹介で今回の講演会が実現しました。
アメリカでは昨年7月に減税法が成立し、高額所得者は減税されるのですが、その穴埋めとして障害者のヘルパー予算が削減されてしまいました。講演では現在のアメリカの状況についてお話しいただいたのですが、特に印象的だった2点についてピックアップします。
1. オルムステッド判決に関する司法省の最近のメモ
オルムステッド判決とは、1999年のアメリカ連邦最高裁判所による歴史的な判決です。障害者が不必要に隔離施設への収容を強いられることは、障害者法(ADA)に基づく差別に当たるとし、地域社会で生活する権利を認めた重要な決定です。これにより多くの障害のある米国人が、家族や友人のいる自宅や地域で暮らし、学び、働き続けることができています。
今年の6月にOffice of Legal Counsel(法律顧問室)がオルムステッド判決に関する見解を出しました。見解では、支援を必要とする障害のある人々に対し、州は在宅ケアや地域ベースのケアを提供する必要はないと主張しています。
「連邦政府が、障害のある人々が地域に統合されるために州にこうしたサービスの提供を求めなければ、財政難の州はそれらを削減し、かつて一般的だった慣行に戻る可能性があると、支援者や法律専門家は警告している。つまり、障害のある米国人がナーシングホームや大規模施設に事実上隔離されることである」(National Public Radio)
この解釈が連邦政策になれば、障害者アドボケイトは次のような懸念を抱いています。
- 地域統合を執行する連邦政府の役割が弱まる
- 不必要な施設入所に異議を申し立てることが難しくなる
- 障害政策が地域ベースの支援から分離された環境へと移行する
- OlmsteadとADAのもとで達成された数十年の進歩を損なう
これらの動きはまだ変化の途中ですが、全国の障害者アドボケイトにとって重大な懸念です。
2. インクルーシブ教育
教育省(DOE)にある特別支援教育が保健福祉省の管轄へ移されようとしています。(6月16日発表)
「これらの合意は、連邦の障害・教育・公民権政策とその実施の中核的基盤を損なうものです」と、議会に移管を拒否するよう求めた共同声明で各団体は述べました。「議会は、障害のある人々を早期介入から学校、高等教育、雇用へと支える教育・職業リハビリテーションの連続的な支援体制を意図的に築いてきました。
OSERS(教育省に設置されている障害者教育・リハビリテーションサービス局)をHHS(米国保健福祉省)へ、公民権局(OCR)をDOJ(司法省)へ移すことは、この連携した一体的なアプローチを解体し、障害のある学生の教育・雇用・公民権上の成果を進めてきた数十年の前進を脅かします」(Disability Scoop)
OSERSとOCRを教育省の外へ移すことは、障害のある学生を再び分離することになります。障害のある学生とその家族の機会を減らし、障害を医学モデルでとらえることになります。障害を、治療されるべき『問題』として扱い、IDEA(障害者教育法)が示す、すべての学生に無償で適切な公教育を保障する公民権とインクルーシブ教育のアプローチではなく、分離された専門的な場で対応すべきものとして扱うのです」と、AAPD会長兼CEOのマリア・タウン氏は述べました。
減税法の成立により、障害者の地域での自立生活が脅かされ、インクルーシブ教育まで危機に晒されているということでした。全米の障害者は団結してこの危機に立ち向かっています。私たちも応援するとともに、日本でもこのようなことが起きないように注視して行きたいと思います。


最後に今回の講演に際して、NCIL事務局長のテオさんからメッセージをいただきましたのでご紹介します。
全米自立生活協議会(NCIL)事務局長 テオ・ブラディ氏 メッセージ
今回のセス氏の訪問は私たちの団体同士の関係をさらに強化し、日本と米国の障害者コミュニティが長年にわたって築いてきた協力の歴史を、今後も継続していくための素晴らしい機会です。
■課題に立ち向かう自立生活運動
多くの課題がある中でも、障害者コミュニティはこれまでになく強く連携して取り組んでいます。
NCILは、地域で暮らす権利を守り、障害者の権利を前進させるため、国内の他の自立生活団体、障害者権利擁護団体、アドボケイト、草の根のリーダーたちと、引き続き緊密に連携しています。
私たちは、引き続き以下の活動に重点を置いています。
- 政策立案者への啓発
- 草の根のアドボケイトの結集
- 自立生活センターへの支援
- 連邦公民権法の保護
- 地域生活を支えるサービスの擁護
- 必要に応じた政策対応の準備
自立生活運動はその歴史を通じ、組織化、権利擁護、連携によって数々の課題を乗り越えてきました。
■今後に向けて
米国と日本の関係は、常に自立生活運動の重要な一部を担ってきました。
数十年にわたり、両国は互いに学び、考えを共有し、リーダーを交流させ、世界の障害者権利運動を強化してきました。
今こそ、私たちが共に学び続けるための、もう一つの重要な機会です。
両国にはそれぞれ異なる政策や制度がありますが、私たちは共通の価値を大切にしています。
- 自由
- 尊厳
- 当事者主導
- 自己決定
- 地域生活
- 機会均等
これらの価値観が、世界の自立生活運動を一つに結びつけています。
結びに、日本の仲間の皆さまへ、NCILが長年にわたる友情とパートナーシップを心から大切にしていることを、ぜひお伝えください。
私たちが今日直面している課題は、障害者の権利が常に守られ、さらに前進させられなければならないことを改めて教えてくれます。進歩が永遠に保証されることはありません。先の世代が多大な努力によって築いた権利を守り、さらに強固なものにする責任が、すべての世代にあります。
私たちは、これからも互いに学び合い、世界中で自立生活を前進させるために共に取り組んでいくことを楽しみにしています。
報告:佐藤 聡(DPI事務局長)
こんな記事も読まれています
現在位置:ホーム > 新着情報 > アメリカの自立生活運動のリーダー セス・ホデレウスキー講演会報告 〜トランプ減税法で介助制度予算切り下げ、アメリカの障害者はいま〜














