【ポイントまとめ】「食べたいものでお店を選べる社会へ! 〜小規模店舗と歴史的建造物のバリアフリー義務基準の策定を〜」DPI全国集会「全体会」報告・感想
DPI全国集会「全体会」について、報告を佐藤聡(DPI事務局長)が、感想を数矢雄さん(メインストリーム協会)が書いてくれましたので、ご紹介します!
こんなことが報告されました(ポイントまとめ)
(敬称略)
1.高木 直人(国土交通省住宅局参事官(建築企画))
- 国土交通省から、小規模店舗のバリアフリーに関する取り組みについて報告がありました。
- 2021年に「建築設計標準(ガイドライン)」を改正し、段差のない出入口、幅80cm以上の出入口、幅90cm以上の通路、可動式椅子の設置などを盛り込みました。
- 今後は、義務付け対象規模の見直しや、テナントへの実効性ある対応策について検討していくことが示されました。
2.赤羽 一嘉(衆議院議員/元国土交通大臣)
- 小規模店舗のバリアフリー義務基準について、「この問題は取り組まなければならない」と前向きな発言がありました。
- 「バリアフリーは国の品格を示すもの」「非常識を常識に変えていくことが政治の仕事」と述べ、制度化の必要性を強調しました。
- 歴史的建造物のアクセシビリティについても、ヨーロッパの基準などを調査し、丁寧に議論しながら基準づくりを検討していく考えが示されました。
3.盛山 正仁(衆議院議員/元文部科学大臣)
- 店舗のバリアフリー義務基準の策定について、前向きな発言がありました。
- 与党側の取りまとめ役として、実現に向けて取り組んでいきたいとの考えが示されました。
- 歴史的建造物のアクセシビリティについても、丁寧な話し合いを重ねながら検討していく必要があるとの発言がありました。
4.佐藤 聡(DPI事務局長)
- 車いす使用者は、今も「食べたいもの」でお店を選べない状況にあります。
- 新築であっても、段差や固定椅子のために車いすで利用できない店舗がつくられ続けています。
- アメリカや韓国などでは、小規模店舗のバリアフリー化が国レベルで進められています。
- 日本でも、新規開店や大規模改修を行う店舗について、段差解消、出入口幅80cm以上、可動式椅子の設置など、最低限のバリアフリー基準を義務付ける必要があります。
- 歴史的建造物についても、日本には国レベルのアクセシビリティ基準がなく、基準策定が必要です。
5.石田 長武(AJU自立の家)
- 名古屋城天守閣木造復元におけるバリアフリー問題の経過について報告がありました。
- 現在の天守閣には23人乗りエレベーターが2基ありますが、木造復元計画では4人乗りの小型昇降機のみが予定されています。
- そのため、大型の電動車いすやストレッチャー型車いすでは利用できないという課題があります。
- この問題は、歴史的建造物の復元においてアクセシビリティをどう確保するかを考える重要な事例として共有されました。
詳細は下記報告をご覧ください。
分科会開催の経緯

2000年に交通バリアフリー法が施行され、日本の公共交通機関のバリアフリー化は劇的に進展しました。さらに、東京2020オリンピックパラリンピックを契機として2回バリアフリー法が改正され、新幹線や特急のバリアフリー基準の引き上げ、ホームの段差と隙間の目安値の策定、劇場やスタジアムのバリアフリー基準が策定等、大きく進展しています。
一方で、建物のバリアフリー基準は1994年のハートビル法以来ほとんど進展がありません。小規模店舗や共同住宅は義務基準がないため、バリアフリー化は全く進んでいません。電車やバスに乗って移動はできるようになったが、お店には入れない、住める住宅がないという状況が続いているのです。
DPIでは長年に渡って小規模店舗のバリアフリー義務基準の策定を国交省に要請しており、ようやく検討が始まりつつあります。誰もが日常的にお店を利用できるようにするためには、新規開店するお店は最低限のバリアフリー整備を義務付けることが不可欠です。これまでバリアフリーに熱心の取り組んでこられた与野党の国会議員をお迎えし、小規模店舗のバリアフリー整備の基準策定について議論することにしました。
また、名古屋城天守閣の木造復元計画では、「史実に忠実な復元」の名のもとにエレベーターを設置しない計画で、地元障害者団体が反発し、市主催の討論会で差別発言もあり、社会問題となっています。諸外国では歴史的建造物のアクセシビリティ基準が策定されてバリアフリー整備が進んでいるが、日本にはありません。歴史的建造物のアクセシビリティ基準の策定についても議論しました。
報告・議論したこと
1.行政報告
はじめに行政説明として、国土交通省住宅局参事官(建築企画)の高木直人様にご登壇いただき「小規模店舗のバリアフリーについて」国交省の取り組みについてご報告いただきました。
- バリアフリー法では、床面積2,000㎡以上の特別特定建築物(公立小中学校、百貨店、物販販売業の店舗、官公署、飲食店、サービス業を営む店舗等)は建築物移動等円滑化基準の適合義務がある。2,000㎡未満と既存建築物は努力義務。
- 1994年ハートビル法制定→2002年改正→2006年バリアフリー法に統合。
- 2020年のバリアフリー法改正で公立小中学校バリアフリー基準適合義務の対象に追加、2024年の政令改正で車いす使用者客席の義務基準を創設、2025年建築基準法省令改正で劇場等のサイトラインの確保等における実効性の確保。
- 2018年にホテルのバリアフリー客室の基準を改正し1%以上義務化。
- 2025年6月から政令を改正し、バリアフリートイレは原則各階に1ヶ所以上。
- 小規模店舗のバリアフリーについては、2021年に建築設計標準(ガイドライン)を改正し、出入口は段差を設けない、有効幅員80cm以上、通路幅90cm以上、可動式の椅子を設ける等を盛り込んだ。パンフレットを作成し、周知を図っている。
- バリアフリー法14条に基づき、地方条例で基準を上乗せすることができる。制定している地方公共団体は20団体(都道府県14、市区町村6)。
- 2021年に高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準に関するフォローアップ会議を設置。当事者から小規模店舗について検討の項目に入れてほしいと要請あり。
- 今後の方向性は、適合率の低い建築物特定施設は要因の分析を行う。義務付け対象規模(2,000㎡以上)の見直しの可能性を検討する。テナントについては、事業者にヒアリングを実施し、課題を整理し、実効性のある担保策を検討する。
2.シンポジウム

盛山正仁衆議院議員(元文部科学大臣)、赤羽一嘉衆議院議員(元国土交通大臣)、佐藤聡(DPI事務局長)、石田長武(AJU自立の家)にご登壇いただき、①小規模店舗のバリアフリー、②歴史的建造物のアクセシビリティ基準の策定について議論しました。
①小規模店舗のバリアフリー
佐藤から以下の問題提起と提言がありました。
- 食べたいものでお店を選べない。新築なのに段差があり、固定椅子で車いすでは入れない店舗が続々と出来てしまっている。
- アメリカでは車いすで入れないお店はほとんどない。ADAで障害者が利用できないお店は差別をしているとみなされ、裁判で必ず負けるためだ。日本のある牛丼チェーン店は固定椅子で車いすでは入れないが、アメリカに出店したら全てのお店がバリアフリーで入れるようになっていた。同じ会社なのに、日本では車いすで入れず、アメリカでは入れる。アメリカにはADAがあるが、日本には店舗内のバリアフリー義務基準がないからこうなっている。
- 韓国では、「みんなの一階」という国賠訴訟があり、2024年に最高裁で障害者団体が勝った。判決では、障害者便宜法では300㎡以上の建物のスロープが義務化されていたが、2007年の障害者差別禁止法策定以来24年間障害者の小規模店舗のアクセス権を侵害してきた。障害者のアクセス権は基本的人権と認められた。今後、1階の店舗のバリアフリー化が着実に進むだろう。
- このように諸外国では小規模店舗のバリアフリー化は国レベルで義務化されている。日本は床面積2,000㎡以上の特別特定建築物にしかバリアフリー整備義務はなく、店舗内のバリアフリー義務基準がない。建物はバリアフリー化されて入口や通路、トイレは使えても、そこに入っているテナントは段差があって入れない。
- DPIの提案は、新規・大規模改修する店舗には最低限のバリアフリー基準(段差の解消、ドア幅80cm以上、椅子は可動式)を義務付ける。新築時ならバリアフリー化してもコストは増えない。新築を義務化すれば10年後、20年後は入れるお店が確実に増える。
これをうけて、盛山議員、赤羽議員からは、ご自身のこれまでのバリアフリーの取り組みについてお話しくださるとともに、店舗のバリアフリー義務基準の策定について積極的な発言が相次ぎました。この問題は取り組まないといけない、与党は盛山議員がまとめ、野党は赤羽議員にまとめてもらって実現したいという具体的なご発言もありました。

△写真:左から石田長武氏、佐藤DPI事務局長、盛山議員、赤羽議員
②歴史的建造物のアクセシビリティ基準の策定
石田長武氏から、名古屋城天守閣木造復元におけるバリアフリー問題の経過が説明されました。
- 2016年名古屋市が木造復元計画決定。
- 2018年河村市長が史実に忠実を理由にエレベーターを設置しない方針を表明。
- 2022年日弁連が憲法、障害者権利条約、障害者差別解消法に違反する恐れがあるとしてエレベーターを設置するように市長に要望書提出。
- 2023年市民討論会で差別発言。市長や職員は発言を制止せずに放置。
- 現天守閣は23人乗りエレベーターが2基あり、5階展望室までアクセス可能だが、木造復元計画では4人乗りの小型昇降機のみ。大型の電動車いすやストレッチャー型車いすは利用できない。
佐藤事務局長からは以下の発言があった。 - 日本には史跡や歴史的建造物のバリアフリー整備基準がない。バリアフリー化するかどうかは自治体の判断に委ねられている。熊本地震で被災した熊本城はエレベーターを設置したが、名古屋城天守閣は新築なのにエレベーターがつかない。
- ヨーロッパには史跡のバリアフリー基準がある。日本も国レベルで基準が必要。バリアフリー法に史跡や歴史的建造物も加えるか、文化庁で新たにバリアフリー基準を作ることが必要。
- 私たちはすべての史跡や歴史的建造物にエレベーターをつけろとは言っていない。可能なものには整備してほしい。特にこれから新築する公的な建築物にはバリアフリー化は不可欠。
これを受けて盛山議員、赤羽議員からは、ヨーロッパの基準を調べたい、丁寧な話し合いが必要で、その上で何らかの基準を検討することが必要。こちらは丁寧にやる必要があるので、しばらくかかるがしっかり取り組みたい、といった前向きなご発言がありました。
今後の取組
DPIとしては、この2つは重要課題と位置づけており、義務基準の策定を目指してしています。今回のシンポジウムで、盛山議員、赤羽議員から前向きなご発言をいただいたので、強力な味方が出来たと思い、連携して取り組んで行きたいです。
赤羽議員からは「バリアフリーは国の品格を示すもの」「非常識を常識に変えていくことが政治の仕事」といった印象的なご発言もいただきました。なんとしても、着実に義務基準を策定し、真にインクルーシブな社会を創っていきたいです。
佐藤 聡(DPI事務局長)
参加者感想
全体会では「食べたいものでお店を選べる社会へ!~小規模店舗と歴史的建造物のバリアフリー義務基準の策定を~」がありました。
当日は、赤羽一嘉衆議院議員(元国土交通大臣)、盛山正仁衆議院議員(元文部科学大臣)をシンポジストに迎え、小規模店舗におけるバリアフリー整備や、歴史的建造物のアクセシビリティ確保についてAJU自立の家の石田さんやDPIの佐藤さんからの事例も踏まえながら議論されていました。
私は車椅子ユーザーで、居酒屋などで店内には入れてもトイレが狭く利用できないケースが多い現状と、その対策について質問しました。これに対し、すべての店舗で広いトイレを確保することは難しい一方で、食べログなどのサイトにバリアフリー情報の掲載を義務づけることも考えたいと赤羽議員が述べられたことが印象に残りました。
また、歴史的建造物については、私が以前のダスキン愛の輪基金の研修でバリアフリーチェックとしてイタリアのコロッセオに行った際のことを思い出しました。コロッセオは西暦80年に建てられた歴史的な建物ですが、エレベーターが付いていて私も他の人と同じように観光を楽しめました。
このように日本も誰でも楽しめる歴史的な観光スポットが増えてほしいので、赤羽議員がおっしゃっていた「バリアフリーは国家の品格」という言葉を信じ、一刻も早い法整備を望みつつ、私たちも「当事者の声」を行政や事業者などに届け続けたいと思います。
数矢 雄(メインストリーム協会)
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