自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟総会へ出席、各省庁と政策を議論
2025年06月03日 バリアフリー
5月29日(木)に自由民主党ユニバーサル社会推進議員連盟の総会が開かれ、13の障害者団体等が出席し、中央省庁から2025年度の障害関連予算の説明がありました。中央省庁の主な取り組みと、障害者団体からの発言を報告します。
1. 中央省庁の主な2025年度取り組み
- 内閣府:障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」は2024年度までの施行(相談4602件)を踏まえて2025年度から本格的に実施。
- 警察庁:歩行空間のバリアフリー化の整備(視覚障害者用付加装置、高齢者等感応、歩車分離式信号機、エスコートゾーン)。
- 消費者庁:高齢者等の消費者被害防止のための見守り活動の充実。
- こども家庭庁:良質な障害児支援の確保、地域における障害児支援体制の強化とインクルージョンの推進、専門的支援が必要な障害児への支援の強化。
- デジタル庁:政府情報システムに係る調達における対応(「情報アクセシビリティ自己評価様式」の書式に基づいてアクセシビリティへの対応状況等の記載を求める)。
- 復興庁:被災者支援総合交付金。
- 総務省:字幕番組制作費等の助成、アクセシブルなICT機器等の総合的な開発の普及推進、高齢者等に向けたデジタル活用支援の推進、テレワークの推進、電子投票機の技術的条件の適合確認等、政見放送での手話通訳の促進。
- 法務省:人権侵害による被害者救済活動の実施、人権擁護委員活動の実施、全国的視点に立った人権啓発活動の実施、人権関係情報提供活動等の委託等、地域人権問題に対する人権啓発活動の委託。
- 外務省:政府開発援助を通じて開発途上国のニーズを踏まえた障害者支援を継続、スポーツを活用した外交の推進、障害者の文化芸術活動を含む日本文化・芸術の海外発信の推進。
- 文部科学省:公立学校施設整備、インクルーシブな学校運営モデル事業、ICTを活用した障害のある児童生徒等に対する指導の充実、切れ目のない支援体制整備充実事業、教科書デジタルデータを活用した拡大教科書、音声教材等普及促進プロジェクト、障害学生学習支援、障害者等による文化芸術活動推進事業等。
- 厚生労働省:良質な障害福祉サービス等の確保、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築、意思疎通支援者の確保・養成・質の向上等、情報取得・社会参加等に資する機器等の開発・普及の促進等、身体障害者補助犬による社会参加への支援、心のバリアフリーを広めるための取り組み、共生社会の実現を推進するための認知症基本法等に基づく施策の推進。
- 農林水産省:農副連携の推進、農林水産業・農山漁村におけるバリアフリー化の推進。
- 経済産業省:介護テクノロジー社会実装のためのエビデンス構築事業、介護テクノロジー利用の重点分野及び開発・導入促進体制。
- 国土交通省:持続可能な地域公共交通ネットワークの実現、地下鉄・鉄軌道駅のバリアフリー化の推進、ホームドア整備の推進、旅客船ターミナル・空港のバリアフリー化の推進、公共交通機関におけるインバウンド対応の推進、都市のバリアフリー化の推進、道路・河川空間・官庁施設・公的賃貸住宅等のバリアフリー化の推進、宿泊施設等におけるユニバーサルツーリズムの推進等。
- 環境省:国立公園満喫プロジェクト等推進事業の一部(主要な利用施設のUD化等)
2. 障害者団体からの主な意見
- 総括所見を踏まえて、障害者基本法の改正を願っている。
- 改正障害者差別解消法で事業者合理的配慮の提供が義務化された。差別事例の相談も各地からあり、相談体制が受け皿で終わらず、自治体と連携して適切な体制整備を作ってほしい。
- 意思疎通支援は、過重な負担ならやらなくても良いというものなのか。財政措置の再考を願いたい。
- 飲食店、販売店はセルフレジが普及しており、タッチパネルで視覚障害者は使えない。デジタル機器の開発段階から視覚障害者を入れて検討してほしい。
- 政見放送の全てに字幕、手話を義務化してほしい。
- 手話通訳者は選挙運動員ではない。聞こえない人には情報を全て得られるようにするためには手話が必要。改正してほしい。
- 車椅子駐車施設の不適切利用は、罰則がないからモラルに頼っている。パーキングパーミット制度は対象者を広げすぎて、車椅子使用者が使えない。
- 障害年金不支給問題について、人為的な要因で判定に差が出るのは看過できない。事実を調査し、必要なら不支給の人への補償を検討して欲しい。
- 発達障害の中には聞こえすぎ、見えすぎ、過敏で動けなくなる人がいる。災害時の警報、警音、光で逆に動けなくなる。熊本でも東日本でも逃げられずに亡くなる事例があった。逃げられないことを前提とした対応をしてほしい。
- 生活のしづらさ調査において、19歳から65歳未満の知的障害者は90%家族同居。地域移行が進まないだけでなく、実家から出ていない。支援基盤が整っていない。
- 共生社会の充実に向けてインクルーシブ教育が重要。選べることが重要。権利。
- 道路のペイントで、逆走を防ぐ取り組みについて。暗い赤は黒と見分けがつかない。明るいJIS安全色(オレンジ色等)にしてほしい。
- 歌の著作権問題。聴覚障害者がコンサートに行って歌詞カード貸してというと、著作権を理由に断られる。字幕がついても、歌のところは歌詞が出てこない(著作権)。聞こえる人と同じ料金を払っていても情報を得られないことは不平等。
3. DPI意見
(1) 新幹線・特急の車椅子席のWEBでの予約と決済
- インバウンドでみどりの窓口はいつも行列。さらにみどりの窓口自体も減らされてきており、WEBでの予約決済は重要。JR各社ではアプリ等で切符の予約・決済ができる。利用してみて、問題があることがわかった。
- JR東日本のえきねっと→車椅子席の予約と障害者割引乗車券で購入できるが、障害者と介助者がセットだと購入できない→窓口に行かないと買えない。
- JR東海EXプレス予約→車椅子席は予約できるが、障害者割引乗車券を購入できない→窓口に行かなければ買えない。
- 私たち障害者は特別の権利を求めているわけではない。健常者が得ている移動の自由と同じ機会を得られることを求めているだけ。このように著しく大きな格差が生じている。是非とも、迅速に改善していただけるように、働きかけをお願いしたい。
(2) 高速バスのバリアフリー化
- ノンステップバスの普及は現在71%だが、リフト付きバスは現在9%しか導入されていない。これはバリアフリー法ができた当初からほとんど増えていない。バスターミナルのバリアフリー化は93%と進展しているのに、車椅子では乗れるバスがほとんどない。これは基準適用除外申請という制度があり、事業者が申請したらバリアフリー化が免除されるためである。バリアフリー法ができた2000年頃はリフト付きバスは開発されていなかったが、今では複数のメーカーから車両が開発され、空港アクセスバスで導入が進められている。高速バスでしか行けない地域もあり、バリアフリー化は不可欠。
- この基準適用除外制度を廃止して、高速バスのバリアフリー化を進展していただきたい。
4. 盛山正仁会長代行
- 相手の立場に立つことが大事。20年前から心のバリアフリーと言っていた。障害をお持ちの方の本当の気持ちは理解できていないのが現状。何がお困りなのか、各省の皆様も、要望に対して準備をして会議を開いていただいているが、もう一歩、自分が障害を持ったらどう思うか考えてUD議連の議論を通じて、暮らしやすい社会環境が進むようにご協力を賜りたい。
報告:佐藤聡(事務局長)