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なにわ一水(松江市):「障害者も誰もが泊まりたくなる宿!」-バリアフリー・ユニバーサルデザインの温泉旅館

2025年10月16日 バリアフリー

10月7日に松江市にある温泉旅館なにわ一水さんを視察させていただきました。なにわ一水さんは、今年5月にバリアフリー化の取り組みを評価されて、イギリスのブルーバッジアクセスアワードで、最優秀国際賞を受賞されたのです(日本初)。

私はその新聞記事を見て、ずっと見に行きたいと思っていたのです。たまたまお会いしたエッセイストの山崎まゆみさんにこの話をしたら、社長をご紹介くださり、なんと、今回の視察が実現したのです!(山崎さんありがとうございます!)。

CIL松江の曽田夏記さんとCIL星空の村上志保さんと3人でお邪魔し、勝谷社長に館内をご案内いただき、じっくりお話をお聞きすることが出来ました。

フロント

フロント
最初にお!っと思ったのはフロントのカウンターが低いことです。車椅子の高さにバッチリ合っています。一般のお客様も椅子に座ってもらえるように低いカウンターにしたそうです。説明を聞いたり、書類を書くのも楽で、とても喜ばれているということです。

館内は、入り口も廊下も段差なく、音声付きエレベーターも完備されており、車椅子でストレスなく自由に移動できます。

大浴場

大浴場1 大浴場2
入り口から浴槽まで段差なく、車椅子でスムーズに移動できます。浴槽の高さも車椅子から移るにはちょうど良く、縁もお尻を載せる幅があり、手すりもあるのでとても入りやすそうです。さらに、入浴用のチェアー(スライドして浴槽に入れる)があるそうです。

入浴用のチェアー

そして、素晴らしいのは、脱衣室に横になれるベッド状の椅子がありました。これがとても重要なのです。私も車椅子に座ったままでは着替えができないので、横になれるベッドが欲しいなと温泉に行くといつも思っていたのですが、ここにはありました! わかってるな〜と思いました。素晴らしい!

お部屋

(1)室内、露天風呂

室内、露天風呂 室内、露天風呂 室内、露天風呂 室内、露天風呂 室内、露天風呂 室内、露天風呂 室内、露天風呂
部屋はバリアフリー・ユニバーサルデザインのお部屋が10部屋あります。3−4部屋見せていただいたのですが、いずれも「泊まりたい!」と思う素晴らしく綺麗な部屋です。

室内には段差が全くなく、通路幅も確保されて車椅子で移動しやすい。さらに、宍道湖が一望にできる見晴らしの良さ(美しい!) 部屋によってはベランダに露天風呂あります!(入りてぇー)。1つ1つのお部屋が違う作りで、かつ、日本の伝統的な和の建築で統一されており、素晴らしく美しいのです。

(2)洗面台

洗面台 洗面台
右と左で2つ洗面台があります。左は車椅子用で、車椅子で近寄れるように足の蹴り込みのところ、板を外せるように工夫されていました。

(3)ホームシアター

ホームシアター
大きなテレビとオーディオシステムが備わったホームシアターが完備した部屋もありました。車椅子の人は映画館に行っても、同じ場所でしか観られないからつまらない、という声を聞いて、それならここにホームシアターをつくろう!と思ったのだそうです。

(4)トイレ

トイレ
トイレは部屋によって広さはいろいろですが、結構広いものもありました。狭い部屋でもドア幅を広くして、利用しやすいように工夫されていました。

(5)ベッド

ベッド
電動ベッドが完備した部屋もありました。

(6)天井

天井
驚いたのは天井です。ベッドに寝て天井を見た時も楽しくなるように、天井もデザインされており、一部屋ごとに違うのです。ベッド上での生活が長い人は、天井ばかり見ているわけですが、天井はつまらないという声を聞いて工夫したそうです。

(7)聴覚障害の方向けに

筆談ボード
聴覚障害の人が利用できるようにFAXや筆談ボードが完備した部屋もありました。

(8)送迎バスもリフト付き車両

リフトがついた車椅子も乗車できるマイクロバスもあるそうです。これ、めっちゃ助かります。

食堂

食堂 食堂
もともと120畳の大宴会場だった場所を、フローロングにして、仕切りを設けて個室にしたそうです。人数が多い場合は仕切りを外して広くすることもできます。段差なく、広さも十分で大きな電動車椅子でも利用できます。

食堂

また、災害時は避難所にもなるように、備蓄もされていました。

工夫

(1)アロマディフューザー

アロマディフューザー アロマディフューザー
いろんな工夫が館内にあるのですが、これは各階に置いてあるアロマディフューザーです。エレベーターに音声案内が付いてない時に、視覚障害者がどの階にいるかわかるように苦肉の策として考えたのが、階ごとにアロマの香りを変えることです。すごい工夫ですね。

今はエレベーターに音声案内が付いたそうですが、楽しいので今でも各階の香りを変えているということでした。

(2)廊下の格子模様

廊下の格子模様 廊下の格子模様
視覚障害の方に、日本の伝統文化を触ってもらえるように、触れるように作ったそうです。少し弾力性を持たせて、触っても折れにくいように作ってもらったということでした。視覚障害者と外国の方、子どもにも大人気だそうです。

台車

台車
ユニバーサルデザイン・バリアフリーは働く人にとっても、労力を減らして働きやすい職場環境づくりになっているそうです。段差がないと動きやすいし、動く動線も短くなるように工夫したそうです。さらに素晴らしいのがこの台車。腰を曲げずにものを運べるように、台車の高さを高く作ったそうです。

SPA-雫-

SPA-雫-
スパもあるのるのですが、ここはどんな障害があっても断らないというポリシーでやっているそうです。どうやったら出来るか話し合って、工夫してやっているということです。合理的配慮を提供するための建設的対話の見本のような取り組みで、素晴らしいですね。

喫煙室

喫煙室 喫煙室
玄関横に喫煙室があるのですが、ここもちゃんと車椅子で入れます。障害のある人だってタバコ吸う人はいるでしょう、小さい喫煙室で、車椅子で入れなくて苦労している人を見て、バリアフリーの喫煙室を作ったそうです。

勝谷社長のお話

みんなで記念撮影
2006年からバリアフリー化に取り組んできたそうです。建物は古いのですが、コツコツとユニバーサルデザイン・バリアフリー化に取り組み、バリアフリー化をしない改修はやってないということでした。

2024年からは嚥下食にも取り組みを始めたそうです。ペースト状の食事ですが、見た目は普通の日本料理と同じように整えてあります。例えば、ステーキはペースト状になっているのですが、ステーキの形に整えて、焼き目も入れて、本物のステーキと見分けがつきません。嚥下食の方も、家族やお仲間と同じ日本料理を楽しめるように研究し、工夫されていました。本当に美しい出来栄えでした。

興味深かったのは、バリアフリー化してから収益が上がったということです。バリアフリー化することによって高齢者、障害者の方が泊まれるようになり、さらに一緒に泊まる家族やお仲間もいるので、コストはかかっても新たな顧客も増えて、収益は確実に増加したそうです。私もバリアフリーの運動をしている中で「コストがかかって収益は増えないからやりたくない」と言う声を聞くことがよくありましたが、このお話にはとっても励まされました。

他の旅館からバリアフリー化の相談を受けたことありませんか?その時は教えるんですか?と聞いてみると、全部教えるということでした。隠す必要は何もなく、みんながバリアフリー化を進めて、そういう社会になる方がいいと思っている、とおっしゃっていました。この言葉、心に響きました。

まとめ(感想)

素晴らしい温泉旅館でした。全室バリアフリー化はまだ出来てないということでしたが、改修する時は必ずバリアフリー化するそうですので、将来的には車椅子ユーザーも、どの部屋にも泊まれるようになるのだと思います。

一部屋ごとに造りが違い、それぞれの良さがあって、何度も訪ね、いろんな部屋に泊まりたくなる。宍道湖を眺めながら、ゆっくり温泉に浸かって疲れを癒す、誰もが泊まりたくなる宿だと思いました。もちろん障害者も同じように楽しめる、そういう旅館を創るんだという勝谷社長の思いが伝わってきました。

私の経済力では気楽に泊まるのは難しいのですが、いつかは泊まりたい、絶対行くぞ!と思っています。世界で表彰されるのも納得の、日本最高レベルのバリアフリー・ユニバーサルデザインの旅館でした。

建物外観

報告:佐藤 聡(事務局長)


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