【報告】成果報告会「インクルーシブ教育の実現に向けた学校バリアフリー推進を!」(キリン福祉財団助成事業)
2026年05月12日 バリアフリーインクルーシブ教育障害者権利条約の完全実施

2026年3月19日(木)に衆議院第一議員会館で成果報告会「インクルーシブ教育の実現に向けた学校バリアフリー推進を!」(キリン福祉財団助成事業)を開催しました。
DPI日本会議は、2025年度から新たな3か年事業として、公益財団法人キリン福祉財団の助成を受け、「障害者権利条約の次回審査に向けた脱施設・インクルーシブ教育推進プロジェクト」の取り組みをはじめました。
本事業は、2022年10月に国連の障害者権利委員会が日本政府に対して発出した総括所見を踏まえ、障害者権利条約の次回審査委に向けて、総括所見において早急な措置をとるよう強く要請されている脱施設化・地域移行およびインクルーシブ教育の推進を目的としています。
本報告会では、3か年計画の1年目の取り組みについての報告、関係省庁による行政報告の他、インクルーシブ教育の推進に欠かせない学校BFの取り組みについてのシンポジウムをおこないました。
冒頭、DPI日本会議議長の平野より開会あいさつの後、日ごろから障害者施策の推進にご尽力いただいている超党派の議員も駆けつけてくださり、ご挨拶いただきました。
成果報告
成果報告に入り、事務局次長の白井から今年度の取り組みと成果について報告しました。脱施設やインクルーシブ教育をテーマに、京都、熊本、群馬の3か所で開催されたタウンミーティングや関係団体との共催による集会開催の他、地域移行に積極的に取り組まれている障害者支援施設の視察などの取り組みについて報告しました。
行政報告
続いて、内閣府、厚労省、文科省から行政報告をしていただきました。
内閣府からは、内閣府障害者施策担当の古屋勝史参事官に障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画の具体的な内容についてご説明いただきました。また、行動計画の策定以降の取り組み状況についてもご報告いただき、内閣府では国家公務員のための障害者差別解消に向けた研修の実施、障害者差別の解消に関する事業者等の取り組み状況調査、ともともフェスタ2025の実施報告をしていただきました。
厚労省からは、障害保健福祉部障害福祉課長の大竹雄二さんに障害福祉施策の動向についてご報告いただきました。主に第8期障害福祉計画及び第4期障害児福祉計画に係る基本指針の策定に関する検討の経過と改正後の概要について、ご説明いただきました。また、令和7年度に設置された障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会での議論の状況やこれまでの議論のまとめについてもご報告いただきました。
文科省からは、大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課の梅崎聖企画調整官に学校施設におけるバリアフリー化の一層の推進をテーマに、学校バリアフリーの取り組みのこれまでの経緯と現状についてご説明いただきました。令和7年度末までの整備目標の達成に向けた進捗状況が十分でない中で、令和8年度~12年度末までの新たな整備目標の策定や学校施設バリアフリー化推進指針の改訂の主なポイントなどについてもご報告いただきました。
シンポジウム「学校施設のバリアフリー整備に向けて」
後半の「学校施設のバリアフリー整備に向けて」をテーマとするシンポジウムでは、地域での具体的なエレベーター設置の好事例の共有と、今後の展望についての議論が行われました。
■熊本県水俣市の事例報告
熊本県水俣市の事例ではDPI日本会議議長の平野みどりより、小学校入学を控えた車椅子を利用する児童(Hさん)のエレベーター設置を求めた活動が報告されました。
当初、市側は耐震化工事を優先し、設置まで数年かかるとして「イス式昇降機」での対応する方針を示していましたが、母親を中心としたグループによる1,447筆の署名活動と要望書の提出により、市の方針を転換することができたという事例です。結果として、2026年10月に小型エレベーターが完成する見込みとなりました。
■千葉県流山市の事例報告
続いて、千葉県流山市の事例について、深澤友紀さんに保護者の立場からご報告いただきました。
脳性まひのある子どもの入学に際し、当初導入された「キャタピラ式階段昇降機」は操作が困難で文科省も推奨しない実用性に欠けたものだったことから、市長に手紙でエレベーター設置を求めましたが、良い回答は得られなかったそうです。その後、DPI等からの助言を受け、個人ではなく地域団体として要望書を提出したことで、2024年3月にエレベーターが設置されたという事例です。
エレベーター設置が実現できたポイントとして、①個人ではなく、団体として取り組んだこと、②文科省通知など訴えの根拠を明確に示したこと、③学校(特に校長先生)とも足並みをそろえたことの3点が挙げられました。
設置後、子どもは「助けてもらう存在」から「自ら行動する主体」へと変化したということで、具体的には部活動への入部や児童会選挙への当選など、可能性が大きく広がったことが報告されました。エレベーター設置が単なる環境整備にとどまらず、障害のある子どものエンパワメントにつながることが示唆された事例報告でした。
■学校バリアフリーガイドの紹介
また、文科省の大臣官房文教施設企画・防災部施設企画課の田中佳幹課長補佐からは文科省が進める「学校バリアフリープラットフォーム」の主要機能として作成中の「学校バリアフリーガイド」について紹介していただきました。
このガイドは、学校のバリアフリー整備のポイントや好事例、当事者参画の手法などを集約したもので、自治体が計画的に整備を進められるようにするためのコンテンツとして段階的に情報がアップデートされていくということでした。本成果報告会の開催時点ではまだ学校バリアフリーガイドはリリースされていませんでしたが、現在は以下のURLに掲載されています。
ディスカッション
事例報告後のディスカッションでは、地域での学校バリアフリー整備を加速させるための戦略についてパネルディスカッションが行われました。
現状の把握と働きかけとして、菅原麻衣子さんからは文科省の実態調査を活用し、自らの自治体の整備率や「整備計画」の有無を確認することの重要性が指摘されました。バリアフリー化が後回しにされないよう、「避難所としての機能」や「障害者差別解消法」などを根拠として声を上げることが有効であると述べられました。
また、DPI日本会議副議長の尾上浩二からは2026年度からの新目標として、原則全ての学校設置者での整備計画策定や、大規模改修時の当事者参画が掲げられていることが紹介されました。その上で、学校のバリアフリー整備を妨げている最大の壁は教育関係者の意識のバリアであるとして、文科省通知で書かれていることと自治体の現場とのギャップを埋めていく取り組みの重要性を指摘されていました。とりわけ重要な取り組はバリアフリー整備計画策定や大規模改修時における当事者参画であるとして、当事者が計画段階からきちんと参画することによって学校を社会モデルへと変えていく必要があるとしました。
以上のように今年も成果報告会を開催することができました。本報告会の開催を通じて、教育の場における医学モデルから社会モデルへの転換、インクルーシブ教育の実現に向けた一歩として学校のバリアフリー化が進むことを期待しています。
年度末の忙しい中、ご参加くださった皆さま、助成くださっているキリン福祉財団の皆さまに、改めて御礼申し上げます。
報告:白井誠一朗(事務局次長)
こんな記事も読まれています
現在位置:ホーム > 新着情報 > 【報告】成果報告会「インクルーシブ教育の実現に向けた学校バリアフリー推進を!」(キリン福祉財団助成事業)


















