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第11回移動等円滑化評価会議が開催されました ~航空機利用時のバッテリーチェック簡略化へ大きな動きあり~

2024年04月04日 バリアフリー

羽田空港第一ターミナル

3月29日(金)に国土交通省で第11回移動等円滑化評価会議が開かれました。

この評価会議は2018年のバリアフリー法の改正で設けられたもので、高齢者、障害者等の当事者等が参画し、定期的にバリアフリー化の進展の状況を把握し、評価するものです。

障害者団体、事業者団体、学識経験者、地方公共団体等34人で構成されています。

今回の議題は以下の5つです。

  1. 移動等円滑化の進展状況について
  2. 移動等円滑化評価会議における主なご意見と国土交通省等の対応状況
  3. 当事者目線に立ったバリアフリー環境の課題等に関する最終取りまとめ案について
  4. 国土交通省におけるバリアフリー関係の取組事例について
  5. その他

このうち特に注目は、4の国土交通省におけるバリアフリー関係の取組事例について(資料6)です。2つピックアップします。

1.「電動車椅子利用者の航空機における搭乗手続等の時間短縮に向けた取組」

航空機利用時のバッテリーチェックに長時間かかっている問題があり、国交省に改善を働きかけておりました。このたび調査結果と取り組みが発表されましたので、経過を含めてご説明します。

●現状の問題

電動車いすユーザーが航空機を利用する場合、バッテリーチェックに長時間かかっているのです。

予約時にバッテリーについて伝え、当日のチェックインカウンターでも同じことを聞かれ、さらに、保安検査場でも、シップサイドでも同じことを繰り返し聞かれチェックされるのです。

さっき同じことを答えてチェックしましたよ、と言っても情報が共有されておらず、同じことを繰り返されます。バッテリーチェックは現物のバッテリーを見ないと確認できないといわれ、場合によっては車いすから降りて、車いすを分解してチェックすることさえあるのです。

さらに問題なのは、バッテリーチェックをする係の人が、車椅子のバッテリーについての知識がほとんどないことです。

マニュアル片手に、あちこちに電話したりしながらやるので、ひどいときは1時間~1時間半もかかる状態です。アメリカなどでは担当者がバッテリーチェックについて知識が豊富なため、10分程度で終わります。

そのため、これは日本の航空会社が研修を十分やっていないことに原因があると考えています。

バッテリーチェックを何度も行う、担当者の知識が不足している、この2つが日本の問題点です。

●改正障害者差別解消法 基本方針

この問題について、改正障害者差別解消法の基本方針の改定時に、国交省と意見交換をおこないました。

基本方針の改定を議論していた内閣府障害者政策委員会でも、事業者のヒアリングで「バッテリーチェックに時間がかかるので、早く空港に来てほしい、時間がかかるのは正当な理由があり不当な差別的取扱いではない」という意見がありました。

しかし、上記のように日本の航空会社のバッテリーチェックの問題を伝え、改善の余地が大きいので、できるだけ時間は短くしてほしいと要請しました。

最終的に基本方針には以下のような記述になりましたが、「十分な研修を受けたスタッフの配置」「関係者間の情報共有により所要時間の短縮を図った上で」という文言が入り、改善点が明確化されました。

(正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例)

●国交省の取り組み

こういったことが契機となり、国交省は国内空港のバッテリーチェックの実態を調査し、その結果が今回公表されました。

国内5つの空港に行き、実際に電動車いすユーザーが搭乗する様子を見学し、バッテリーチェックの所要時間を調査したのですが、概ね10分と、実態とはかけ離れた短時間になっています。

これは国交省が調査に来るということで、各社バッテリーチェックの知識と経験が豊富なエースを送り込んだためだと思います。

検討会ではDPIを含め3人の委員から、「実態とはかけ離れた短時間だ」という意見が出されました。

●国内定期航空保安協議会での取り組み~保安検査場でのバッテリーチェックを省略へ~

注目はここです。国内線運行航空会社12社で構成されている国内定期航空保安協議会で、保安検査場でのバッテリーチェックを省略する方向で検討しているということです。まだ確定していないので時期は未定ですが、今年の夏までには実施される見込みです。これが実現すれば、時間短縮に向けて、ひとつ大きく進展すると思われます。

●バッテリーの仕様確認(ANA/JAL共同)

電動車椅子のバッテリー等の仕様を簡素に確認できる方法を、ANAとJALが共同で確立したそうです。

ANAとJALのホームページに、電動車椅子メーカーのホームページ(電動車椅子の仕様等のページ)へのリンク一覧を掲載し、航空会社及び航空機利用者がバッテリー等の仕様を簡素に確認できる方法を確立したということです。

●まとめ

今回、保安検査場でのバッテリーチェックを省略する方向で検討されていることが公表され、これは大きな前進だと歓迎しております。

ただ、日本の問題は簡略化とともに、担当者のバッテリー知識の向上が不可欠です。バッテリー仕様を簡素に確認できる方法も出来ましたが、事業者の研修を強化するなど、さらなる取り組みが必要です。

また、国内線だけでなく、国際線でも同じ取り組みが必要です。今後も引き続き改善を求めていきたいと思います。

2.「バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会」が2024年度に開催

バリアフリー法は、2000年に出来た時からバリアフリー整備目標(基本方針)を設けて整備に取り組んできました。

第一次基本方針は2010年まで、第二次は2020年まで、第三次からは5年計画となり2025年までとなっております。

2026年以降の第4次計画をこの検討会で議論します。

また、2020年に改正したバリアフリー法も、2025年で法施行5年が経ち、法施行状況の検討をする時期になりました。

これらを踏まえ、2024年度早期に「バリアフリー法及び関連施策のあり方に関する検討会」を開催し、学識経験者、障害当事者団体及び事業者団体等の参画の下、約1年程度かけてバリアフリー法及び関連施策について議論を行うことになりました。

法改正を含めて、今後のバリアフリーの推進の方向性を決める会議となりますので大注目です。

▽当日の資料は下記国交省のサイトからダウンロードできます

報告:佐藤 聡(事務局長)


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