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「在日外国人無年金障害者問題」の解決を求めて、昨年2回の厚生労働省交渉を行いました。

2023年02月08日 雇用労働、所得保障

橋の上でたたずむ男性

現在、日本に住む外国人(外国籍を有する人)のほとんどは、障害認定日・初診日・国民年金保険料納付などの要件を満たせば、障害基礎年金を受給することができます。

しかし、1982(昭和57)年1月1日時点で20歳を超えていた在日外国人障害者(及び1986(昭和61)年時点で60歳を超えていた在日外国人高齢者)は国民年金加入の対象とされず、無年金障害者・無年金高齢者として取り残されています。

この問題は、日本が1981年に難民条約を批准(1982年に発効)したことに伴い、1981年12月31日に国民年金法の国籍要件が撤廃された際に、それまで国民年金制度に加入できなかった在日外国人に無年金者を生じさせないための経過措置を行わなかった制度不備によるものです。

一部の自治体では障害年金や老齢年金を受給できない在日外国人に対し福祉給付金等の支給による一定の救済を図っていますが、まだ多くの人が放置されています。

在日無年金当事者の李幸宏さんらは、2018年にスイス・ジュネーブで人種差別撤廃条約の日本審査が行われた際、人種差別撤廃委員会に訴えるため渡航しました。同委員会からは政府が改善策を講じるよう勧告が出ており、この実現に向けて厚生労働省等と交渉を行っています。

以下、DPI障害者差別解消ピアサポート相談員でもある李さんからの報告です。


旧植民地出身者とその子孫の障害者への無年金問題解決を

年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会 代表 李 幸宏(イ ユキヒロ)

<問題と要望、現状>

1982年当時に20歳以上(現在60歳以上)ですでに障害を持っていた在日外国人(ほとんどは在日コリアン等旧植民地出身者)は、無年金のままです。

昨年は、5月18日と12月9日の2回の厚生労働省交渉を行いました。

要望内容は、以下の通りです。

在日外国人の無年金障害者は最も若い人でも現在60歳以上となり、老齢年金を受け取る世代になっています。国民年金法の国籍条項そのものは廃止されているので、在日外国人の無年金障害者も掛け金を払った分の老齢年金は支給されます。

日本人の場合であれば、障害基礎年金を受け取っている人は65歳を過ぎると老齢年金か障害年金かのどちらかを選ぶことになります。老齢年金が低くても、障害基礎年金を受けてきた人はそちらを選べば今までの金額を維持できます。

在日の無年金障害者はそういうわけにはいきません。老齢年金が低くてもそれしかありません。いろいろな就労差別もある中で、障害基礎年金以上の老齢年金をもらえる人はごくわずかです。老齢年金の時代になっても不平等は終わりません。

12月9日に厚労省交渉を行いましたが、国側の出席者は国際年金課の係長と主査二人だけでした。質問や意見に対する回答は判で押したような回答が続きました。在日外国人の無年金障害者についての実態調査も今のところやらないという姿勢のままでした。

<問題の背景>

在日コリアン等の無年金問題ではこれまで大阪・京都・福岡で裁判が行なわれています。いずれも最高裁で敗訴が確定しています。判決では、在日外国人に対する社会保障の適用は国に大きな裁量があるというのです。

難民条約を批准したので、これから定住する外国人には社会保障を平等にするが、条約はすでに住んでいる在日外国人への遡った適用まで求めていないので、旧植民地出身者やその子孫を救済しなくても構わないというわけです。

在日の旧植民地出身者とその子孫は、日本がアジア侵略と植民地支配をしたから日本に住むことになったのです。一般的な在日外国人の社会保障差別をなくす時代になっても、旧植民地出身者永遠とその子孫たちに、それ以上の社会保障の不平等を残しても憲法違反ではないというのが日本の最高裁です。

学生無年金の問題では裁判で勝訴することができましたが、在日の無年金問題では司法が行政の裁量権を大きく認めて司法の役割を放棄していることが大きなマイナスになっています。

1952年のサンフランシスコ条約で日本は独立しましたが、在日コリアンは社会保障から排除または権利が大きく制限されることになります。サンフランシスコ条約直後に作られた戦傷病者戦没者遺族等援護法から排除されます。

生活保護は申請できますが、不服申し立てができません。児童扶養手当は受けられず、公営住宅の申し込みも最初はほとんどできません。国民年金法からは国籍条項で一律排除です。

当時は国民健康保険からさえ多くの人が排除されていました(全額自己負担の医療!自治体が認めれば入れるという形になっていました)。日本国籍ではなくなったからというのがその理由でしたが、誰一人意思を確かめたわけではありません。

サンフランシスコ条約の後、一片の通達で一方的に日本国籍をなくしたのです。一方的に日本国籍をとりあげておいて、日本人でなくなったから社会保障から排除するというのは露骨な詐欺としか思えません。

欧米で植民地支配をした国は、自国に住む旧植民地出身者に、国籍の選択権とどの国籍を選んでも社会保障の平等を保障するのが植民地支配の責任の取り方として一般的です。日本国はもちろん知っていて逆の事をしています。

国際人権規約や難民条約という黒船で社会保障上の差別は随分と少なくなりました。しかし日本国の政治の中心では、アメリカに無謀な戦争をしたという反省はあるものの、アジアの植民地支配の反省などないので、こういうことが続いているのだとしか思いません。

日本国による複合差別の問題です。ご理解・ご支援お願いします。

<参考資料>

▽飯山由貴(2020年)映画『オールドロングステイ』(予告編:東京国際ろう映画祭2021)

▽中村一成(2005年)『声を刻む  在日無年金訴訟をめぐる人々』インパクト出版会

▽日本弁護士連合会(2010年) 2008年度第10号 人権救済申立事件)勧告書


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