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在日外国人無年金障害者問題の解決を求めて

2022年08月19日 雇用労働、所得保障

ひまわり

現在、日本に住む外国人(外国籍を有する人)は、障害認定日・初診日・国民年金保険料納付などの要件を満たせば、障害基礎年金を受給することができます。

しかし、1982(昭和57)年1月1日時点で20歳を超えていた在日外国人障害者(及び1986(昭和61)年時点で60歳を超えていた在日外国人高齢者)は国民年金加入の対象とされず、無年金障害者・無年金高齢者として取り残されています。

この問題は、日本が1981年に難民条約を批准(1982年に発効)したことに伴い、1981年12月31日に国民年金法の国籍要件が撤廃された際に、それまで国民年金制度に加入できなかった在日外国人に無年金者を生じさせないための経過措置を行わなかった制度不備によるものです。

一部の自治体では障害年金や老齢年金を受給できない在日外国人に対し福祉給付金等の支給による一定の救済を図っていますが、まだ多くの人が放置されています。

在日無年金当事者の李幸宏さんらは、2018年にスイス・ジュネーブで人種差別撤廃条約の日本審査が行われた際、人種差別撤廃委員会に訴えるため渡航しました。同委員会からは政府が改善策を講じるよう勧告が出ており、この実現に向けて厚生労働省等と交渉を行っています。以下、李さんによる報告です。


旧植民地出身者とその子孫の障害者への無年金問題解決を

年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会 代表 李 幸宏(イ ユキヒロ)

<問題と要望、現状>

1982年当時に20歳以上(現在60歳以上)ですでに障害を持っていた在日外国人(ほとんどは在日コリアン等旧植民地出身者)は、無年金です。これまで私たちは、

  1. 国民年金法の一部を改正し、障害基礎年金を受給できるように改正すること。
  2. 最低でも2004年に成立した特定障害者に対する特別障害給付金の支給対象にすること。

を求めてきました。

2022年5月、コロナ禍の中で中断していた在日コリアン無年金障害者問題の解決に向けての交渉を厚労省と行いました。特別障害給付金の付帯決議では、支給対象に在日コリアンを入れることを検討するとあるにもかかわらず、今回も厚労省は実態調査を行う姿勢すら見せず、なんら進展のない交渉となりました。この姿勢はずっと続いています。

<問題の背景>

戦前日本は植民地支配を広げ、朝鮮半島は1910年から日本の支配地となりました。また日本の政策もあり日本には多くの旧植民地出身者が住むこととなりました。日本敗戦まで、それら旧植民地出身者とその子孫は日本に住む日本国籍者でした。1952年サンフランシスコ条約で日本は独立しましたが、同時にやったことは、戦後様々な事情で日本に住み続けた旧植民地出身者に対して、本人の意思を問うこともなく、日本国籍を喪失させ、社会保障から排除することでした。

植民地支配をした欧米諸国では、自国に住む旧植民地出身者に対して、植民地支配終了時から、国籍選択の自由と、選んだ国籍に関わらず社会保障の平等を実施しています。日本政府の日本に住む旧植民地出身者に対しての無責任さは、先進国として際立っています。

1982年社会保障の内外人平等を原則とする難民条約が日本でも発効され、国民年金法からも国籍条項がなくなりました。ところがその前に20歳を過ぎすでに障害を持っている者は、生涯にわたって障害者福祉年金(現在の障害基礎年金)の対象にならないとしたのです。

社会保障の内外人平等を原則とする難民条約を締結することになっても、これまでの排除を反省するどころか、意図的に排除し続けたのです。高齢者も老齢福祉年金から排除されています。

1982年以来自治体からも多くの要望が出され、16大都道府県障害福祉主管課長会議や47都道府県などからも改正要望が出されました。また多くの自治体では金額は不充分ながら代替支給制度も作られました。国連からも何度も改正勧告が出されました。日弁連は1996年と2010年に2度にわたって勧告を日本政府に提出しました。

しかし、裁判では、障害者は2007年、高齢者は2009年にそれぞれ最高裁判所で敗訴が確定しています。「国籍要件や救済措置は立法府の広い裁量に委ねられており、憲法違反とはいえない」という内容で、責任放棄です。問題は放置されたままです。

この問題は、日本政府による民族・国籍差別の問題ですが、在日障害者に対しては障害者差別との複合差別の問題です。該当する障害当事者のほとんどは老齢年金の世代ですが、障害基礎年金額以上の支給のある人はめったにおらず、問題はなおも続きます。ご理解・ご支援お願いします。

<参考資料>

▽飯山由貴(2020年)映画『オールドロングステイ』(予告編:東京国際ろう映画祭2021)

▽中村一成(2005年)『声を刻む  在日無年金訴訟をめぐる人々』インパクト出版会

▽日本弁護士連合会(2010年) 2008年度第10号 人権救済申立事件)勧告書


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