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【報告】第5回DPIインクルーシブ教育推進フォーラム ~障害者権利条約がめざすインクルーシブ教育の実現に向けて行動しよう!~

2021年03月30日 インクルーシブ教育

青空に校舎

3月6日(土)にインクルーシブ教育推進フォーラムを開催し、約200名の方にご参加いただきました!
開催に当たりご支援頂きました方々に、改めて御礼申し上げます。

文科省からの報告

佐々木さん

障害者権利条約の批准国としてインクルーシブ教育を進めるうえで私たちには何が求められるのかという視点にたって、まず、文部科学省の佐々木企画官より今年1月に取りまとめられた「新しい時代の特別支援教育を考える有識者会議報告書」についてご報告いただきました。

佐々木企画官からは、特別支援学校における教育環境の整備として、特別支援学校の設置基準を策定することや医療的ケアを必要とする子どもたちに向けて拠点校を設置すること通常の学級、通級による指導などといった連続性のある多様な学びの場の一層の充実をはかることなどについて報告がなされました。

この報告に関連して、多様な学びの場の充実ではなく、障害の有無に関わらず、普通学級に通うことにしたらよいと思うという古市理代さんからの発言は、参加者の多くが深く頷いたのではないかと思います。

「今こそ進めよう!学校バリアフリー」

尾上

次に、「今こそ進めよう!学校バリアフリー」と題してDPI日本会議の尾上より報告いたしました。地域の小中学校は、教育の場だけでなく、災害時の避難所としての機能や選挙の投票所としての役割があります。しかしながら、2020年にバリアフリー法が改正されるまで、地域の小中学校はバリアフリー義務化の対象ではありませんでした。

改正バリアフリー法改正を受けたかたちで、文部科学省は、2020年9月に学校施設のバリアフリー化等の推進に関する調査研究協力者会議による緊急提言をまとめ、12月には学校施設におけるバリアフリー化の加速に向けて~誰もが安心して学び、育つことができる教育環境の構築を目指して~と題する報告書をまとめました。

報告書では、バリアフリー化を進めるうえでの基本的な考え方として、障害等の有無にかかわらず、誰もが支障なく学校生活を送ることができるようにすることや障害のある教職員が働きやすい環境となるように整備すること、既存施設を含めた学校のBF化を一層推進することが謳われています。

既存施設については、今後5年間の整備目標を設け、移動に困難を抱えている生徒や教職員が在籍している学校には、エレベータを100%設置することが盛り込まれ、バリアフリー化に伴う国の補助率も1/3から1/2に引き上げられ、バリアフリー化に向けては、地域の障害当事者の意見を聞きながら取り組むことなどが学校施設バリアフリー化推進指針に盛り込まれました。

さらに、文部科学省から教育長に対して出された「公立小中学校等施設におけるバリアフリー化の加速について」(通知)や「学校施設におけるバリアフリー化の一層の推進について」という二つの通知を活かして、インクルーシブ教育を推進していくための突破口として、私たちも教育委員会などと関わりをもち、私立学校も含めて学校のバリアフリー化を進めていこうと呼びかけました。

川崎就学訴訟報告

続いて、重度障害を理由に希望する地元の川崎市立小学校への通学を認めず、県立特別支援学校を就学先に指定したのは差別に当たり違法だとして、人工呼吸器を付けて暮らす小学生と両親が市と県に小学校への就学を認めるよう求めた川崎就学訴訟について事務局より報告がありました。

2020年3月18日、横浜地裁が原告の訴えを退ける不当な判決を下しました。ご本人とその家族は、東京都世田谷区に引っ越し、現在は地域の学校へ通っています。しかし、違法な処分によって奪われた2年間が戻ってくることはありません。インクルーシブ教育を受ける権利や共生の機会を奪われたことへの賠償を求めて、東京高裁で控訴審が現在進められています。今後も裁判の傍聴や集会への参加をお願いしますと呼びかけがありました。

「邪魔だと思う人は手を挙げて」事件の報告

沖縄県では、2020年6月に、小学校教員が普通学級で一緒に授業を受けていた特別支援学級の子どもが騒いだ際に、「邪魔だと思う人は手を挙げて」と発言した事件について報告がありました。DPI常任委員である報告者の長位鈴子からは、地元の障害者団体とともにDPI日本会議も抗議文を出し、その回答について、声明文も出しました。

一人の教員の責任にせず、インクルーシブ教育を進めていくための障害があるから特別な学校に行けばいいという意識を変えていきたい。障害のない子どもたちも生きづらさを感じている状況をなんとかしていきたいと話されました。

シンポジウム

教育フォーラムのメインであるシンポジウムでは、中学校で通常学級で学び、今年度から高校生活を送っている重度の自閉症がある平田和毅さんと中学3年間担任をされた曽我部先生、5名の中学校の同級生と保護者であり障害児を普通学級へ・道北ネット事務局長の平田江津子さんからインクルーシブ教育の実践を映像も交えながら報告していただきました。

保護者の江津子さんからは、特別支援学級では真の友だちになれないので、中学校から普通学級に在籍し、みんなと一緒に授業などを受けてきたことが話されました。

曽我部さんと生徒たち

元担任の曽我部先生からは、クラスのみんなから「カズおいで」と声をかけてくれると、みんなの中に入って、自然に活動に参加できたこと、職員室やクラスのなかで、和毅さんの話をする機会を多く持ち、元素記号を覚えるプリントを繰り返し行っていることや誕生日をみんなで祝いました。そうしたなかで、クラスの生徒が保護者に話をすることで、保護者へも理解も深まったと思いますと話されました。

また、他の生徒が教えると、パソコンで絵が描けるようになったりしました。周りの子も他の子に教えることがふつうになり、できないことは恥ずかしいことではないとみんなが思うようになりました、と報告されました。

一緒に学んできた同級生からは、カズのことを普段関わることの少ない他のクラスの人にご本人の良さを知ってほしくて学校の文化祭で発表したことや、和毅さんが好きなアンパンマンマーチを一緒に歌えたことがとてもよかったという感想や、ダンスが好き。真似をするのが好きで、すぐに行動に移す。カズキの動きがかっこいい。だから僕らの方がマネをしたという思いに触れることができました。

さらに、小学校から一緒だった同級生からは、小学校の時に、廊下でぴょんびょん跳ねていて、中学校の時にいろいろ勉強して、足の筋肉をみてすごいと思った。小6の時に会って、なんで跳ねてるんだろうと思ったが、元気が伝わってくる。人を偏見で見るのではなく、ちゃんと面と向かって話さないといけないんだと気づきましたという感想もあり、こんなに仲良くなれると思わなかった。一つ一つの行動がおもしろくて、一緒にいて楽しいという声も聞くことができました。

現在、和毅さんは、元気に高校に通っていますが、高校入試の面接練習も同級生のみんなが手伝ってくれたそうです。また、高校入試に関わったDPI常任委員の山崎恵から、和毅君が高校受験をする前に、受験の際にコミュニケーションの支援を行う介助員を付けてもらえなかったり、定員内不合格になってしまったりした事例がある。このことから和毅さんが受験する際に、北海道教委に対して要請書を出すなどの取り組みを行ったとの報告がなされました。

今回のシンポジウムを聞きながら、真の共生社会の実現は、インクルーシブ教育からなのだと再認識することができました。旭川から届いたインクルーシブ教育の風を全国各地で実践していくことができるよう、特別支援教育の目標や目的を変えていく取り組みも進めていかなければいけないと思いました。

報告:杉田 宏(ピサポートみえ、DPI特別常任委員)

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