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障害のある子どもの合理的配慮を考える集い
―保護者の学校つきそいを中心に―報告

2017年05月16日 インクルーシブ教育

 5月11日(木)に参議院議員会館101会議室において、「障害のある子どもの合理的配慮を考える集い―保護者の学校つきそいを中心に―」が開催されました。100名近くの参加者が集いました。

 はじめに、DPI日本会議常任委員で自立生活センター・東大和の海老原宏美さんから開会挨拶として話がありました。海老原さんは、「親のつきそいがなければ学校に通えない子どもがいることを議員の方々に知ってもらいたいと思います。子どもたちと大人の感覚は全然違います。平等な感覚を子どもたちは持っています。そういう感覚を大事にするのが学校ではないでしょうか。学校は勉学だけではなく、将来どのように生きていきたいかを考える場です。生きていく力を身につける場として、障害を持った子達が一緒に学ぶということは意義深いです」と述べました。
 
 続いて国会議員の皆さんからご挨拶いただいたのち、NPO法人フローレンスの駒崎弘樹さんからの「親待機問題は総合支援法施行の今、解消されなければならない」との力強いメッセージが司会より紹介されました。

 次に、文部科学省の森下平企画官より報告がありました。看護師配置に補助金をつけるなどしているが、まだ足りていないのが実情です。医療的ケアの障害児の数についてですが、8,000人が特別支援学校に行っていますが、訪問教育はうち2,000人。学校の都合で、看護師が常駐しているのに親がつきそいをしているところもある。教育と福祉の連携が大事です。安全性の観点から、たんの吸引は慎重になりますが、医師などの意見を聞きながら個別に対処しています。高度な医療的ケアの必要な子どもにはどのような支援があればよいのか、新規事業として展開を考えており、今後とも文部科学省として、つきそいをなくすということに努めていきます、と発言がありました。
 
 シンポジウムでは、大阪府と岡山県から実際につきそいをされている親御さんたちが登壇されました。最初は、医療的ケアが必要な全介助の障害児のお子さんのご両親のお話でした。障害があっても地域の学校へ通うことを決意しましたが、様々な壁にぶつかり、現在は「インクルーシブ教育推進室」が、給食のペースト加工する人員を雇いましたが、衛生管理などの問題は多いとのことでした。

 次は、医療的ケアが必要な子どものつきそいをしていましたが、母親が第二子を妊娠したことで悪阻などの体調不良になり、結果的に父親が仕事を休んでつきそったという話です。とても大変な時に助けてくれたのが、同級生やその兄弟だったといいます。紹介された写真では、みんなでおそろいのサングラスの写真をかけたり、カードゲームや地域の祭などを楽しんだりする姿が写っていました。文部科学省は看護師を増やすと言っていますが、看護師がいるのに保護者のつきそいを強制されているケースでした。
 
 続いてバクバクの会の折田みどりさんから、出席できなかった方の代理での報告がありました。こちらの方も、看護師が常駐しているにも関わらず親が付き添わなければいけない状況でした。あまりにひどい状況に、娘と登校を拒否したこともあるそうです。みんなと一緒にランチルームで給食を食べたいけれど、学校看護師から生徒一人のために看護師をつけられないと言われました。学校看護師が学校の活動を制限し、ひどい時は参加させないこともあるとのことでした。人工呼吸器をつけているという一つ目のハードル、そして意識障害があり二つ目のハードルがありますが、医療的ケアも含めて先生と看護師一緒にやってほしいということを実現できている学校もありますが、まだまだ少ないのが実態です。

 続いて、医療的ケア児の親でもある国会議員の方からご挨拶がありました。仲間たちと児童福祉法の改正に取り組むことができ、医療的ケア児はようやく障害児の仲間入りをしたこと、普通学級への入学を早くにあきらめ、ケアが手厚いだろうと思って特別支援学校に決めたが、そこでも医療的ケアを受けられないという壁にぶつかっていることが述べられました。医療的ケア児の課題には、医師法の改正という問題があります。それは17条です。法律成立当時の「医療的ケア」は、いわゆる「終末期ケア」であり、その中の医療的ケアは病院の中のことでした。今の「医療的ケア」は家の中のことです。これは医療なのか、介護じゃないのか。それを切り分けるのは法律なのか、という問題があるのです。加えて看護師の不足が挙げられます。眼科の看護師が急に医療的ケアをできるわけではない。経験者でよく知っている人ならば、看護師でなくていいのではないか、「医療ケア士」というような資格制度を作ればいいのではないか。医療職と親の間を埋める存在が必要である、と具体的な提案をされました。
 
 今回は、永田町子ども未来会議にかかわっている議員の方が多くいらっしゃいました。永田町子ども未来会議は、議員だけではなく様々な人が関わっているものです。その結果が2016年5月の総合支援法の改正であり、医療的ケアを法律用語とした画期的な法案です。委員は50人ほどだったといいますが、医療的ケアという言葉を知っていたのはほんの2~3人でした。それから広まっていったのです。看護師配置を文部科学省はやめようとしていましたが、それはまかりならない、と他の予算を削った経緯がある、とのことでした。

 続いて、実際に親につきそわれた経験をもつ当事者からの発表がありました。最初は脳性まひの女性で、小学校の臨海学校の時に、親の都合で最後まで友達といられなくて大変悲しい思いをした経験を話してくれました。二人目にはDPI日本会議の五位渕真美が登壇し、同様に親につきそわれたことでつらい思いをした経験を話しました。
 
 これらの発言に対してコメンテーターの尾上浩二より、以下のような発言がありました。
「給食ペースト加工の話について、合理的配慮では負担が大きすぎるものは例外としているのですが、ペースト状にするのが介助者の負担でしょうか。教育委員会がわざと大げさな話にしている気がします。二番目の事例では、看護師を確保してない、しようとすらしていないのではないのでは。看護師がいるのに、親のつきそいを求めるものです。制度ができたというのは議員さんのご尽力のたまものではありますが、さらにボリュームを増やしていくことが大事です。『医療的ケア』を『生活支援行為』に認めるべきです。合理的配慮は、総合支援法において公立の学校においては法的義務であるということを学校現場はわかっていないのではないでしょうか。合理的配慮をしない裏返しに親の付き添いが求められているのです。差別解消法では、障害を理由にした差別的取り扱いも差別としています。健常児の親は付き添いを求められないので、差別的取り扱いとは、障害者でないものには付さない条件を障害者につけることも含まれます。保護者の負担軽減のために看護師や介助員をつけましょうとなっていますが、まず保護者がやるという前提がおかしいです。日本には障害者には一律にこうするという勘違いした平等があります。障害のある子どもが他の子と遊んだりする機会が制限されているという問題点もあります」。

 つきそいの悪影響、弊害について、登壇者のお一人は「子どもが自分で考える機会が奪われるのが弊害だと思います」と答えました。お二人目は、「先生の理解が進まないのが一番の弊害です」と答えていました。

 バクバクの会の副会長の林智宏さんからは、つきそいの実態調査の報告がありました。地域間格差、限定的につきそうなどの人が文部科学省の調査では含まれていない、本人の体調以外の理由で通学を断念せねばならないことが起こっている。権利条約や差別解消法にのっとって制度を整備してもらうことが重要だという報告がされました。

 また、障害者の生活保障を要求する連絡会議(障害連)の尾上裕亮さんから、つきそいの問題点として、障害者差別解消法に抵触すると考えること、医療的ケアがあるからつきそえ、というのは明らかに法律違反であるということ、また、その後の親子関係の悪化や自立するタイミングが遅れるなどの悪い影響があることが発表されました。

 閉会あいさつとしてバクバクの会の会長である大塚孝司さんから、「医療的ケアは生活支援行為であり、今まで医療行為とくくられてしまった経緯をきちんと振り返り、出来る人は増やしていこうという運動が展開されています。地域で暮らすための医療行為を出来る人を増やすのが大事と、活動している方々もいます。そもそも、親のつきそいが社会を変えるという方に全然いってないのです。現状を変えるために私たちに何ができるか。文部科学省は、看護師がいるにも関わらず親のつきそいがあるのは問題だとは感じているようですが、リアリティをもって問題を分かっているのは、親や身近な関係者です。事例の数だけでなく、こういう切実な問題があるんだ、と訴えていくことが大事です。親の付き添いが子どもの自立を阻害しているという実態がよく分かったのではないでしょうか。障害や難病を個人や家族の問題としてではなく社会の問題として捉えていかなければならないです。個人で抱えるのは不可能なので、社会全体としてこういう人たちがいるということを理解しなければなりません」と発言がありました。
 
 学校教育全体で、医療的ケア児と呼ばれる子を受け入れるためにどういう実態があるのか、何をどうしてほしいのかというのを、切実な声を合わせて提案していくことが今後求められます。

(文責:DPI日本会議事務局 鷺原)

<会場の様子>

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