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3日目報告!!障害者権利条約に関する台湾政府の報告書審査

2017年11月06日 障害者権利条約の完全実施

●11月1日審査最後の日 午前(24~26条)

9時から審査委員会とNGOの対話が開始されました。今日の午前中は24条(教育)・25条(健康)・26条(ハビリテーション及びリハビリテーション)の3条だけです。

NGOの発言の後、ダイアン・リッチラーさんよりコメント:24条は教育のニュー・パラダイム。障害者権利委員会による一般的意見4では、排除、分離や隔離、既存の施設や制度の残したままの統合を禁じている。すべての生徒にとって利益となる学校、学級のリアルオーガナイジングが必要で、真にインクルードされることが必要、などが出されました。その後、委員から質問がされました。例えばラツカさんは、学校におけるパーソナル・アシスタンスについて、ノートテイクやトイレ介助は誰が行っているのか、学校でスタッフを雇っているのか、教員が障害についての教育や訓練を受けているのか?医療的ケアが必要な児童の教育の状況は?手話について、台湾手話を含むいくつかの手話があり、そこには中国語対応手話も。障害者団体などとの議論を通して検討する。2条の言語の定義。台湾政府がどれくらいろう者の団体とコミュニケーションをとったのか。今、手話通訳している手話通訳者の手話は台湾手話なのか、政府が雇った中国語対応手話なのか、などの質問がされました。

それに対してNGOからは、聴覚障害者から生まれた子供は台湾手話を学ぶ機会があるが、早期介入により普通学校などに行くことになれば口語などでコミュニケーションを行うようになる、早期介入について、医療サービスを5万人が受けていて16,8億元の予算がついていて、27,000人以上増加しているとのことでした。また、教員の訓練の時間はほとんどない、という報告がされました。


写真:カナダのダイアン・リッチラーさん(右)と平野議長。ダイアンさんはインクルーシブ教育制度に大変お詳しい方です。

25条に関して、民間の保険会社は障害者の保険加入を拒否する、ということです。深刻ですね。

10時半から政府との建設的対話が始まりました。「大家早安(おはよう)!」と長瀬さんが中国語であいさつ。

リッチラーさんからは、インクルーシブ教育は社会が障害者、障害のある子どもを尊重するパラダイム・シフトするもので既存の教育システムを進の障害者がインクルードされたシステムへ変革が必要、というコメントのあとに委員から質問がされました。インクルーシブ教育制度への変革(transformation)についてどのようなプロセスをとるのか、病院で訪問教育を受けている子どもの数、教員の障害についての教育、訓練、などなど。ラツカさんからは学校におけるパーソナルアシスタンスについて、介助者はだれが決めてどのように使うのか、などの質問が出されました。また、長瀬さんからは台湾手話と中国語対応手話について、キングストンさんから盲ろう者についての教育についての質問が出されました。

 

政府の回答では、99%が学校教育に就学しており、重度の障害児は訪問教育(1987年に実施)をしている。教員のほか、理学療法士、言語療法士などの協力で個別教育計画(IEP)ミーティングを行っている、ということが報告されました。また、パーソナルアシスタンスについては、教育の場のアシスタントはホームヘルプのパーソナルアシスタンスとは異なる、ということでした。盲ろう者については、重複障害の子供について、IEPチームでPA、特別のテキスト、重複の子供には特別教室を提供している、視覚と肢体の重複障害児、ということで「重複」という形でカテゴライズしている、という回答がありました。盲ろう者という概念がきちんと押さえられていないようでした。

これに対して、パーソナルアシスタンスと教育のアシスタントは分けるべき、ということや言語としての台湾手話のこと、委員からは様々な意見が出されました。

ラツカさんはパーソナルアシスタンスについて、「一般的意見5においても、パーソナルアシスタンスは一対一で、一人の個人に対してつけられるもの、とされている。学校や家族に雇用された場合、たとえば、障害のある子どもが学校のトイレでタバコを吸うとする、こういったことは障害のない子どももすることがあるが、学校や親が雇った介助者ではそのような体験ができない、これは学校生活の上で他の子供との平等な条件ではない。」というコメントが出されました。人生経験における平等の話でとても大切な話ですが、自立生活運動を知らない人にどれだけ伝わったのか(笑)

教育については非常に関心が高く、1条項あたり一番時間をかけていたと思います。台湾では1994年に特殊教育法という法律ができ、3回ほどの改正を経て現在に至っているようです。障害のある子どもたちは普通学級ですべて学ぶ子ども、普通学級にいて課目によってリソースクラスを使う子ども、特別クラスにいる子ども、特殊学校にいる子ども、病院などへの訪問教育を受ける子どもがいるようです。普通学校・学級に通う障害のある子どもが多いようです。政府は世界のトレンドであるインクルーシブ教育に向けて努力する、と言っていたと思いますが、法制度や実態について詳しく調べたいと思います。


写真:3日目の弁当!

●午後(27~33条)

「大家好」

いよいよ、総括所見の作成に向けた最後の対話の時間となりました。

まず、14時からNGOとの対話です。

委員から、第27条に関して障害女性の雇用・終了の実情について、第30条について文化生活において人権侵害を受けた時の救済の仕組み、手話について国語法における規定を行うのか、手話の担当部署が特殊教育部局なのか勧告などのように国語などを担当する文化担当部局になるのか、第32条の国際協力、第33条に関して障害者団体として障害者施策の実施の監視にどれだけ参加していると感じているか、などです。

29条の政治参加では、後見制度によって投票権について、政治家や公的機関などについて障害者の候補者をどのように参加させるのかなどの質問がされ、政府からは、中央選挙管理委員会では、法律の規定により、後見制度の下、精神障害などによって意思の表明が不可能であるとし投票は出来ないことになっている、社会のすべての分野への障害者の参加はキャンペーンを行っている、という内容のものでした。

後見制度と投票権に関する政府の答弁に対して、再度委員から確認の質問がされ、権利条約が求める法的能力の確保についての説明が政府に対して行われると会場から拍手がわきました。

30条については、台湾手話を国語として承認する計画があるかどうか、特殊教育の部局か言語を取り扱う部局どちらで扱うのかという質問について政府からは、国語ではなく、手話の教育については特殊教育の部署であると回答がありました。手話文化については将来の課題です。

写真:リーさん。聴覚障害者で、手話について発言。去年のダスキン研修生です!

写真:台湾手話を!

31条の統計データについて、障害者の総数が5%であるということなどについて「厳しい」質問がされ、5年ごとに生活実態調査がされていて、65歳以上では障害者の比率が高いと回答がありました。

32条の国際協力については、SDGsについての言及もあり、国連加盟国ではなく政治的状況から参画が難しいとの政府の回答に対して、委員からは台湾の国際開発のプログラムにSDGsの枠を使ってほしい、と委員から意見が出されました。

33条の国内実施の監視についてですが、ここも非常に大切な条項です。委員より正直な意見を聞かせてほしい、とまず委員から政府にお願いがありました。

政府からは、地方ではカウンターパートとなる人権委員会が存在し、中央の独立した機関としては監察院が対外的に人権の監視・救済機関として認められていて、公的機関や公務員、民間について調査などを行う、という回答がありました。

うーん、これは、条約が求めている三権から独立した人権保護・救済機関と違うんじゃないの、と思いますが(;’∀’)。

 

そして、ついに終わる時間が来ました。

最後に委員から一言ずつ感謝等の言葉がありました。また、法的能力についてはキングストンさんから精神障害者(知的障害者)が法的能力を持たない最後の人たちになっている、ということが付け足されもしました。

委員長の長瀬から最後にジュネーブの委員会と比べ、今回の委員構成はジェンダーバランスが素晴らしいということ、こうした独立した見当の場が台北で持たれたことがとてもラッキーだったこと、ろう者のコミュニティなど声が出せなかった集団がこうした機会に様々な意見を表明できたこともよかったということ、人権は台湾の政治的状況からユニークであり、それは利益ににもなり不利益にもなり得るものだ、独立した国内人権委員会を作っていただきたいしその力がある、ということなどを話しました。


長瀬さんのアテンダントの高さん。立命館大の留学生。大変なお仕事、本当にお疲れ様!

長い長い時間、委員の皆さん、台湾の皆さん、本当にお疲れさまでした。

私たちはあとは総括所見を待つだけですが、しかし、委員の方たちはまだまだハードな作業が続きます。

言うまでもないことですが、私たちは今日の反省会をするために夜の市場(士林夜市)に向かったのでした。あくまでも今日の委員会の審議を振り返るという目的で……。


写真:夜市士林

※※※この三日間の記録は通訳の英語を聞き取ったもので、全てを正確に反映したものではありません。政府とNGOのやり取りの記録が公開されるとのことです。これはあくまでもメモであり、後日、特に重点項目(条文)について改めて整理して皆さんにお伝えする機会を設けたいと思います。

(議長補佐 崔 栄繁)

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