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子ども権利擁護施策の動きと本の紹介『アドボカシーってなに?ー施設訪問アドボカシーのはじめかた』

2021年06月22日 書籍紹介権利擁護

本の表紙
アドボカシーってなに? ー施設訪問アドボカシーのはじめかた

著者:栄留里美、鳥海直美、堀正嗣、吉池毅志
出版社:解放出版社
発行年:2021年
※テキストデータ引換券付き


本書の特徴

本書は、施設に暮らしている子どもの意見表明の権利を支援する方法の1つである、イギリスのアウトリーチ型の訪問アドボカシーモデルを日本で実施した試行実践に基づいて書かれました。2017年から2019年の間に、児童養護施設と障害児・者施設において著者らが行った訪問アドボカシーで学んだことを基礎編と実践編に分け、実践的な訪問アドボカシーの手引として編まれています。

本書はまた、アドボカシーとは何か、どんな形があり、実施している人はどんなことに悩んでいるのかを学ぶすべての人に向けた入門Q&Aでもあります。

特に、子どもたちに彼ら自身が持っている意見を表明する権利をどう説明していくかのさまざまな試みが紹介されており、その中にはアニメ「子どもアドボケイトってなぁに?」(ショートバージョン(1分半))も含まれています(施設や里親家庭で暮らす子どもに向けた4分版もYoutube上にあります)。また施設で暮らす子どもが自分の自立支援計画票に意見を反映するためにアドボカシーを活用する取り組みも紹介されています。

背景にある施策の動き

さて、この本の元になった訪問アドボカシー試行実践には、大阪の多くの団体が協力しており、自立生活支援センター(CIL)複数も参加しています(9頁)。

昨年2020年12月14日には、厚生労働省「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」(以下、厚労省WT)での障害児施設入所経験者のヒアリングにおいて、試行実践に協力した団体の1つであるCILムーブメントで当事者スタッフとして働いている井上龍之介さん(写真)が自身の経験を話しました。以下、本書の内容から離れ、傍聴したメモに基づく、井上さんの話の概要を紹介します。


(写真:2020年12月14日、厚生労働省「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム」障害児施設経験者ヒアリングが終わった後。左からCILムーブメントの前島慶太さん(相談員)、中村優太さん(ヘルパー)、井上龍之介さん(当事者スタッフ)、構成員の奥山眞紀子さん(日本子ども虐待防止学会理事長))

井上さんは、脳性まひがあり、6歳から入所施設(学校は施設内だった)にいたこと、現在は24時間の重度訪問介護を受け、自立生活を初めて6年目であると自己紹介しました。さらに、高校卒業後に施設に定期的に訪問してきたOB(退所した人)の話を聞いて、それまで施設の中で知らなかった、介助派遣制度を使って地域で暮らす自立生活のことを知り退所を決めたと話しました。

厚労省WTの構成員からの質問には、施設にいる子どもがもっと定期的に自立生活している人の話を聴けたらよいと思っていること、子どもに「意見を聴かれる権利」があることをもし施設入所中から知っていたら、バリアフリー/多目的トイレが足りないことなど、不便と思っていたことについてもっと言えだろう、など話しました。

厚労省WTのとりまとめ

井上さんのヒアリングが行われたこの厚労省WTは、2019年成立の「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律」の施行2年後までに子どもの権利擁護の在り方について検討し必要な措置を講じる(同法附則第7条第4項)ため、2019年12月19日~2021年5月21日間で11回行われたものでした。本書の著者4人のうち2人(栄留さん、堀さん)が構成員としてこのWTに参加していました。

この厚労省WTの報告書「子どもの権利擁護に関するワーキングチーム とりまとめ」(PDFは2021年5月27日に公表され、そこでは行政措置により子どもの処遇が変更される際、子ども自身の意見を聴くことを児童福祉法で義務付けること、また自治体に子どもの意見を聴く支援を整備する努力義務を課すことが提案されています。今後、この「とりまとめ」の方向性に沿った実施に向け、厚労省で検討が続けられる見込みです。

特に、児童福祉施設の1つである障害児入所施設に関しては、「とりまとめ」に「契約で入所している子どもにおいても、意見を聴かれる機会が確保されることは重要である。」(9頁)と書かれています。なお、障害児入所施設の今後に関しては、昨年2020年2月10日に「障害児入所施設の在り方に関する検討会 最終報告」が出され、その中で「障害のある子ども達の意見表明について(中略)社会的養護分野で導入の検討が進められているアドボケイト制度を参考に進めていく必要がある」(15頁)と書かれています。

「私たち抜きに私たちのことを決めないで」(Nothing about us without us)

DPI日本会議の加盟団体であるAJU自立の家が参画した、東海地方4施設調査(下記、参考資料)では、施設にいる障害のある若者の多くが、家庭での養育が困難であることを理由に子どもの頃から障害者施設に入所していること、高校卒業前後の16歳や18歳で障害者施設に入所する人もいることが明らかになりました。

また入所時に子どもだった障害のある当事者の声として「選択肢はここしかなかった、親が決めてしまい、自分で決められなかった。話もなかった」「本当はうちで暮らしたかった。悲しかった」などが報告さされています。

障害のある子どもの「自己に影響を及ぼす事項について自由に自己の意見を表明する権利」(障害者権利条約第7条3項)実現への課題はJDF(日本障害フォーラム)障害者権利条約パラレルレポートにも指摘されています。
各地で子ども権利擁護の取り組みは既にさまざまな形で行われていますが、今後、特に、意見を聴かれる子どもの権利(子どもの権利条約第12条)の実現に向けて、研修や振り返りの機会を持つ際にきっと本書『アドボカシーってなに?』が参考になるのではないかと思います。

参考資料

障害者の地域移行、地域生活支援のあり方研究会 (2017年)「障害者差別解消法施行後における地域移行、地域生活支援のあり方に関する研究」(概要版)PDF

障害者の地域移行、地域生活支援のあり方研究会 (2017年)「障害者差別解消法施行後における地域移行、地域生活支援のあり方に関する研究」(報告書本編)PDF

報告:浜島(事務局)


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