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【ポイントまとめました】「どう変える!?障害者総合支援法~権利条約の完全実施につながる法改正を!~」(DPI政策論「地域生活分科会」報告・感想)

2021年12月17日 イベント地域生活

DPI障害者政策討論集会2日目「地域生活分科会」について、報告を下林慶史(日本自立生活センター・DPI常任委員)が、感想を内山裕子さん(ヒューマンケア協会)が書いてくれましたので、ご紹介します!


こんなことが報告されました(ポイントまとめ)

(敬称略)

1.鈴木 良(同志社大学)

2.田中 正博(全国手をつなぐ育成会連合会専務理事)

3.丹羽 彩文(全国地域生活支援ネットワーク事務局長)

4.尾上 浩二(DPI日本会議副議長・内閣府障害者施策アドバイザー)

詳細は下記報告をご覧ください。


最初の登壇者である同志社大学の鈴木良氏からは、障害者権利条約で言われている脱施設化を進めるために必要な4つの論点が提起されました。①脱施設化の目標値、②地域移行支援の担い手、③地域移行支援の対象や方法、④地域移行後の生活のあり方に関わることです。

①については、障害者自立支援法制定以降、年々下げられていますが、目標値を定める際には、新規入所者、入所待機者をゼロにすること、新規施設の開設停止、期限と施設削減数を含めること、コロナ禍が緊急事態であるという視点を持つこと、脱施設化の対象者を広げること、これらを行うための予算措置を講じることを挙げられました。

②については、日本では従来、施設職員が地域移行支援を行なっており、支援の利用率も極めて低いが、カナダでは第三者機関が支援を行う仕組みを作り成功した。日本も自立生活支援に実績のある一般事業所が相談支援拠点や地域移行支援コーディネーターを設置し、主要な役割を担う必要がある。このとき、同時に施設内にも調整を行うコーディネーターが必要であると述べられました。

③については、意思決定支援法の制定、自立生活の体験の機会、ピアサポートを含む家族支援、家族同居などの在宅者も一般相談支援の対象にすることを検討する必要があるとのことでした。

④については、個別ケアの可能な重度訪問介護を様々な人々が柔軟に利用できるようにすることが権利条約の理念に則していると述べられました。

続いて全国手をつなぐ育成会専務理事の田中正博氏に登壇していただきました。田中氏は「会の概要・現状と課題」について述べられました。会の現状については、高齢化が進んでいる一方で、障害児は増えており会としての運動の継続は大きな課題であるとのことでした。そのような中でも会としての発信・提言は行なっており、その内容について大きく3つに分け、報告されました。

1つ目は強度行動障害に対する実践的な支援体制の整備強化を挙げられ、特に支援者のスキルアップが要であること。

2つ目は育成会と入所施設との関わりで、現在入所している人の生活環境の向上や第三者によるサービスチェックの仕組みをつくること、入所者の高齢化が進んでいることを踏まえて個別性に着目した地域生活への移行を促進してほしいとおっしゃっていました。特に入所者の高齢化の対応と地域移行への注力は強調され、施設が終の棲家という幻想は捨ててほしいと述べられていました。

3つ目はレスパイトなどの一時預かりについて、本人の生活の質を大きく変化させないこと、家族の関わりを損ねるような支援をしないでほしい、本人が家族の和から外れる一因となる支援はしないでほしいと言った点を原則として進められるよう求めているとのことでした。

次に登壇されたのは全国地域支援ネットワーク事務局長の丹羽彩文氏でした。丹羽氏からはまず、団体の活動紹介として年に一度行われているアメニティーフォーラムについて解説され、アメニティーフォーラムはDPI日本会議も共催団体として催しの運営に関わっており、今年はコロナ禍により中止でしたが来年は開催されることがその場で報告されました。

加えて、DPI日本会議、育成会、全国地域で暮らそうネットワーク、全国地域生活支援ネットワークの4団体が共同で提出した要望書の主旨について語られました。その内容は

「現に入所施設で暮らしている知的障害者の生活環境向上を図るため、また、施設内における新型コロナ蔓延防止の観点からも、居室の完全個室化を早急に進めてください。」

「真に施設入所を必要としている人(医療的ケアや強度行動障害のある人、家庭での対応が限界に達している世帯など)の利用を促進するため、たとえば当該施設の平均支援区分が一定以下である場合に全体の報酬を減算するといった対応を図ってください。」

「入所施設の特性である施設内での完結性が、ときとして閉鎖性(虐待などの権利侵害)につながっていることも踏まえ、外からの視点で、サービスをチェックできる仕組みをお願いしています。」

「入所者の高齢化が進んでいることを踏まえた、個別性に着目した地域生活への移行を促進してください。」などが挙げられていました。

続いて、DPI日本会議副議長の尾上浩二は、地域移行の取り組みと地域移行支援拠点の機能強化について話しました。

まずは、10年前と比較しても地域移行が進んでいない現状、新規入所者・入所待機者が減らない状況について率直に述べ、その原因として、本当に施設に入りたいわけではなく、高齢化などの将来の不安や親亡き後の不安なとから、新規入所者が増えていくのではないかと提起されました。

脱施設化を進めるためには施設入所者・入所待機者をゼロにすること、親元からの地域移行が大きな課題であり、そういった点に対応する地域移行コーディネーターを配置し、地域移行支援拠点の開設、機能強化し再定義されなくてはならないとのことでした。

こうした仕組み制度をつくるためにアメリカや韓国など諸外国の取り組みを参考にし、さらに丁寧な移行調査やピアスタッフの配置、自立体験室の設置、加えて病院にも地域移行担当スタッフを置くこと、支援金・住宅確保などができるようにすれば、だいぶ状況は違ってくるのではないかと語られました。

そして2022年には国連の審査を控えており、非常に大事な年になるので、ガイドラインに地域移行の仕組みが盛り込めるよう頑張らなければならないと強調されていました。

ディスカッション

登壇者の方々からの報告が終わりディスカッションに移ると育成会の田中氏からは、知的障害者の本人・親共に高齢化が進んでいること、新たな社会資源を様々な人と一緒に開発する必要性、地域生活拠点・地域移行支援コーディネーターの整備についてコメントされ、次いで丹羽氏からは、相談支援やモチベーションを向上させるサポート、自立体験室や住宅整備のための基金創設などを引き続き要望していきたいと語られました。

加えてコーディネーターの尾上氏からは、病院・施設、親元からの地域移行を進めるには何をどうすれば良いか、しっかりと議論をしていかなければならないこと、そのためには障害者権利条約の完全実施という視点が重要だと述べられました。

ディスカッションの最後で、鈴木氏からは、地域移行は様々な課題が複雑に絡み合っているが、分科会の中で繰り返し述べられている施設入所者・入所待機者に関してどのように対処するのか、家族同居者や家族のレスパイトについても併せて考えていかなければならない。そのためには地域移行拠点・地域移行コーディネーターの配置、促進など、地域生活の基盤整備が重要であると締め括られました。

最後の質疑応答では、参加者から脱施設の方向性はもちろん賛成だが、重度訪問介護の担い手が募集してもなかなか集まらないが、どうすれば良いか?という筆問が寄せられ、それに対して、鈴木氏から重度訪問介護の報酬単価を引き上げることを大前提として、それだけでなく障害当事者どの関わりの中でやりがいを見出せる仕組みづくりをする必要があると答えられていました。他にも多数、質問が寄せられていましたが、時間の関係で後日、メールでの回答を送らせていただく形がとられました。

(日本自立生活センター 下林慶史)

参加者感想

2024年障害者総合支援法見直しに向けた課題である地域移行について、DPI日本会議副議長の尾上浩二さんが発表された「地域移行パッケージ」の提案はとても興味深いものでした。特に地域移行コーディネーター制度(仮)の創設と地域生活支援拠点の機能強化と、そこにしっかりと予算を付けるという部分に、私自身の地域移行の経験からも強く共感しました。

私が施設から地域移行したのは2010年でしたが、当時入所していた施設には「地域移行コーディネーター」という名目の職員はいるものの、実際は他の部門の仕事との兼務で日々の業務に忙殺されており、地域移行コーディネーターとして100パーセントの時間と労働力を使うのはとても困難です。また、この状況は現在も変わっていません。

このような状況の中ですべての地域移行を希望する施設入所者に地域生活に関する情報が十分に提供されているとは考えにくく、この状況を解消し一人でも多くの人の地域移行を実現するためにも総合支援法の見直しが権利条約の完全実施につながるものになることを願っています。

(ヒューマンケア協会 内山裕子)


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