3月5日(木)「南アフリカ国障害者自立生活センターの拡大と持続的発展」中間報告会を開催しました

2026年3月5日、JICA東京別館にて、JICA草の根技術協力事業「南アフリカ国障害者自立生活センターの拡大と持続的発展」の中間報告会を開催しました。
本事業は、南アフリカのハウテン州における障害のある人の自立生活を促進することを目的として、2013年にDPI日本会議の加盟団体であるヒューマンケア協会により開始され、その後DPI日本会議に引き継がれて実施されてきたものです。
これまでの取り組みを通じて、ヨハネスブルグ市のソウェト地区とエクルレニ市のジャーミストン地区の2か所にソウェト自立生活センター(ILC)およびレメロスILCが設立され、障害当事者によるピア・カウンセリングや自立生活プログラム、介助サービスの提供、住宅改造や移送サービスの試みなどが進められてきました。
現在進行中のフェーズ3では、これまでの成果を基盤としながら、ハウテン州全域に自立生活の理念と実践を広げていくことを目指しています。今回の報告会では、事業の全体像とこれまでの歩み、2026年2月に実施した中間評価ミッションの報告、そして今後の活動の方向性について共有しました。
開会あいさつ
開会にあたり、JICA東京課長の池田様よりご挨拶をいただきました。これまでの事業により、ハウテン州で2か所の自立生活センターが設立され、障害のある人の地域生活に必要な支援が提供されるようになったこと、また住宅や交通アクセスの改善など地域に具体的な変化が生まれていることが紹介されました。あわせて、フェーズ3では既存の自立生活センターの能力強化や運営基準の整備、支援ノウハウのマニュアル化などを通じて、さらなる拡大と持続的発展が期待されることが述べられました。

続いて、DPI日本会議事務局長の佐藤が挨拶を行いました。2015年に南アフリカを訪問した際の経験に触れながら、国や人種が違っても、障害のある仲間同士が互いをエンパワーし合うことの大切さは共通していること、そして自立生活センターの活動が障害のある人の力を引き出し、地域や社会を変えていく力になっていることが語られました。

ハウテン州での草の根技術協力事業の概要(報告:降幡 博亮 DPI日本会議常任委員)

本事業の背景とこれまでの経緯について報告しました。
はじめに、DPI日本会議と南アフリカとの関係づくりの歴史が紹介されました。DPI世界大会やJICA課題別研修を通じて、南アフリカの障害者リーダーや行政官との交流を積み重ねてきたこと、そうした関係性を土台として、2013年からハウテン州での草の根技術協力事業が始まったことが説明されました。
事業のフェーズ1では、ヨハネスブルグ市とエクルレニ市を中心に、自立生活センター設立のための人材育成を進めました。ピア・カウンセラーや介助コーディネーター、介助者の育成、障害当事者のエンパワメントを支える活動を通じて、自立生活支援のモデルづくりが行われ、その結果、ソウェトILCとレメロスILCという2つの自立生活センターが設立されました。
フェーズ2では、アクセシブルなまちづくりを通した自立生活センターの能力構築に取り組みました。自立生活支援だけでなく、住宅改造や移送サービスのモデルづくり、行政官の日本視察なども行い、地域に暮らす障害のある人の生活環境を改善する取り組みを進めました。たとえば、自宅の出入り口にスロープを設置して車いすで自由に出入りできるようにした住宅改造や、地域と既存の公共交通機関をつなぐ移送サービスの試行などが紹介されました。
これらのフェーズ1・2を通じて、自立生活に対するニーズの高まりや、より多くの障害当事者の人材育成の必要性が明らかになりました。また、事業終了後も活動を継続していくためには、制度化や運営基準の整備、マニュアル作成などが不可欠であることも共有されました。
現在のフェーズ3は、2024年2月から2028年1月までの4年間で実施されており、対象地域もハウテン州全域の5市・地域へと広がっています。ソウェトILCとレメロスILCを中心に、ツワネ市、セディベン郡、ウェストランド郡など新たな地域での人材育成やセミナー開催、支援体制づくりが進められています。ハウテン州における自立生活コンセプト・ペーパーの見直し、自立生活プログラムマニュアルや住宅改造・福祉移送サービスの事例集、介助者育成テキストなどの作成も進められており、実践と制度づくりの両面から基盤強化が図られています。
また、2025年5月には州社会開発担当大臣らの日本視察受け入れも行われ、行政との連携も継続して進められていることが報告されました。
中間評価ミッション報告(崔 栄繁 DPI日本会議議長補佐、パラリーガルアドバイザー)

続いて、崔より、2026年2月9日から13日にかけて実施した中間評価ミッションの報告が行われました。
今回のミッションでは、レメロスILCとソウェトILCでの聞き取り、セディベン郡での活動視察、さらに南アフリカ障害者法制度に関するワークショップへの参加を通じて、プロジェクトの進捗と課題を確認しました。
レメロスILCでは、ピア・カウンセラーやプロジェクトマネージャーから活動状況について聞き取りを行いました。ピアサポートグループの活動も各地で広がっていることが紹介されました。
一方で、制度に基づく安定的な財源がないことから、介助者の賃金を引き上げることが難しく、利用者一人あたりのサービス提供時間を十分に確保できないなどの課題も共有されました。また、日本から導入したリフト付き車両について、長い手続きを経てようやく活用の目途が立ったことも報告されました。
ソウェトILCでは、利用者45人、介助者30人という規模で活動が行われており、ピア・カウンセリングには約200人が登録していることが紹介されました。活動そのものはしっかりと続けられており、自立生活運動の理念も現場で共有されている一方で、こちらも制度化の遅れや財源不足などが大きな課題となっていることが報告されました。
特に、リフト付き車両が事故で故障したことで、対面でのピア・カウンセリングや介助者派遣に影響が出ている状況が共有されました。
セディベン郡では、地域の団体と共催で自立生活セミナーが開催され、70人以上が参加しました。車いす利用者だけでなく、聴覚障害、視覚障害、知的障害、重度障害のある人や障害のある子どもの家族など、多様な参加者が集まりました。
障害種別を越えて地域で学び合う場が実現していたことは、大きな成果として報告されました。その一方で、移動手段の確保や、今後自立生活センターを立ち上げていくための資金確保など、引き続き大きな課題があることも確認されました。
さらに、ミッションの最後には、ハウテン州とDPI日本会議が共催した「南アフリカ障害者法制度に関するワークショップ」に参加しました。このワークショップでは、国連障害者権利条約19条を中心に、自立生活に関わる法制度や政策について、日本、韓国、タイの事例紹介も交えながら意見交換が行われました。
南アフリカ側からは、南アフリカの障害者の権利に関する政策の経緯、「ニューロダイバーシティ」という発達障害を指す新しい概念の紹介、中央政府の女性・青年・障害者省および社会開発省による障害者権利条約の国内実施への取り組みなど、制度化や財源確保をどう進めるかを考えるうえで、多くの示唆が得られる機会となりました。
崔からは、現地のセンターのメンバーの熱意や活動の広がりを強く感じた一方で、その思いだけでは活動の継続や拡大には限界があり、今後は制度・政策づくりや財源確保の仕組みをどう築いていくかが重要であるとの指摘がありました。
質疑応答

質疑応答では、南アフリカにおける介助サービスの仕組みや利用者負担の実態、行政との連携の状況、今後の制度化の見通しなどについて多くの質問が寄せられました。
また、地域でのピアサポートグループの広がりや、障害種別を超えた参加の実現、資金不足のなかでも活動を継続している現地スタッフの努力に対して、参加者から関心と共感の声が上がりました。
日本と南アフリカの制度の違いを踏まえながらも、自立生活を支える仕組みづくりという共通の課題について活発な意見交換が行われました。
今後の活動
最後に、降幡常任委員より今後の活動について説明しました。
今後は、ツワネ市やウェストランド郡など新たな地域での人材育成やステークホルダー会議、学習会、マニュアル共有などを継続しながら、ハウテン州全域で自立生活の理念と実践を広げていく予定です。
現地への定期的な訪問を重ね、ワークショップや意見交換の機会を設けることで、地域にインパクトを残しながら活動を積み重ねていく方針が示されました。
また、国際障害者デーや南アフリカの障害者権利月間なども活用しながら、現地での発信や働きかけを強めていくこと、そして2027年の最終評価ミッション、最終報告会に向けて、制度化や持続可能性の確保に向けた取り組みを進めていくことが共有されました。
まとめ
本報告会では、南アフリカ・ハウテン州における自立生活センターの拡大と持続的発展に向けたこれまでの歩みと、現地で生まれている具体的な変化、そして制度化や財源確保といった今後の課題を共有することができました。
DPI日本会議では、今後も現地の障害当事者や関係機関との連携を深めながら、誰もが地域で自分らしく暮らせる社会の実現に向けて、本事業に取り組んでまいります。
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