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ファンタスティック・オーケストラ
~みんなで集えるコンサート~を聴いて

2018年10月19日 イベント障害者文化芸術

10月9日(火)11時~12時に、川崎市ミューザ川崎シンフォニーホールにて東京交響楽団による「ファンタスティック・オーケストラ~みんなで集えるコンサート~」が開催されました。
普段、クラシック演奏会にあまり馴染みのない層を対象に、広く親しんでもらおうと開かれた演奏会です。

DPI日本会議にアドバイスと評価の為、主催者方からご招待頂いたので、上薗(全盲の当事者)と白井(難病の当事者、簡易電動車いす使用)が行ってきました。
この演奏会は、例えば夜の時間帯に外出の難しい高齢者や小学生、知的障害などのため声を出したり長時間じっとしていられなかったりする人、そして種別を超えて様々な障害のある人たちが聴きに来ていました。10月9日が川崎市の公休日のため、この日に演奏会が設定されたようです。

料金は一般1,000円、こども(4歳~中学3年生)、シニア(65歳以上)、障害者手帳所持者500円という設定でした。演奏会は12時まででしたが、13時半~15時で、演奏会の評価をする座談会も設けられました。

〇よかったところ

障害児も障害のない子たちもみんながあまり声を出さずに、音楽に聴き入っていました。曲目が聴きなれた短い曲で構成されており、なじみやすいということもあり、とても聴きやすかったです。また、曲の解説とアナウンスが入っていたのでわかりやすかったです。それから、どこにどんな楽器があるかの説明がありました。

また、ホールの入り口には100分の1の模型が置いてあり、私のような視覚障害者はもちろんのこと、楽器の配置図が立体でわかるのでオーケストラを知らない人には役立つなと感じました。ステージではオーケストラを構成する楽器の一つ一つが、例えば「これがホルンです」のように音を鳴らしてくれ、わかりやすく面白かったです。

ヴァイオリニストの大谷康子さんがアンコールで「チャルダッシュ」という曲を弾いたのですが、演奏しながら客席に降りてきてくれました。クラシックを身近に感じ、個人的に思い入れのある曲ということもあって、とても感動しました。

アナウンスや司会ではPC文字通訳が流されましたが、ヴァイオリニストがイレギュラーなやりとりをして台本通りいかなかった部分があり、そこでオーケストラの事務員が急きょタイピングをしたという場面がありました。臨機応変な対応が良かったと思います。

〇改善の余地を感じたところ

今回はバリアフリー音楽会ということもあって、運営側が点字のプログラムを用意してくれていたようです。受付の人がどのような応対をしてくれるかを知りたくて、自分からは視覚障害者だと表明せずに(白杖は持っていたのですが)、ついに向こうからは声をかけられませんでした。積極的に声をかけてほしかったです。

また、手話通訳の位置と聴覚障害者の座る位置が「見えづらい」という声があったので、そこをちゃんと考えてほしいと思います。

また、今回はボディーソニック(振動装置)の席があり、これは聴覚障害のためのものでしたが、振動しても高音(ヴァイオリン、ビオラ、フルートなど)はあまり表現されないように感じました。バリアフリー演奏会として、一緒に障害者と障害のない人も楽しむ機会はいいと思います。ただし、サポートの需要、必要な配慮は各々違うので、それに全部対応するのは大変なことです。一挙に同じことをすればいいということではないので、一人ひとりに丁寧に応対することが大切です。

〇座談会

座談会には楽団の事務局員の方、ホールの施設長や事務局の方、演奏会の評価者として芸術大学の特任教授である新井鷗子さん、そして入所施設の施設長と私達が参加しました。この「ファンタスティック・オーケストラ~みんなで集えるコンサート~」は今年の3月にも開催されたそうですが、今回は3月より良かったと高く評価していた評価者の方もいました。

クラシック演奏会はそもそも長時間で、非日常の特殊な空間です。しかし、ロビーコンサートなどであれば障害児も高齢者も色々な人が来られます。今回のような1時間くらいの演奏会をもっと開催してほしいです。金銭面(料金設定)、サポートや配慮の面(声を出してもいい、視覚障害者には誘導をしてくれる、など)、環境整備(車いす席が点在している、相応の数の車いす用トイレがあるなど)という配慮を徹底するのはいいことだと思います。

〇まとめ

主催者側(障害のない人)に、障害当事者と一緒に何かをするということにためらいや戸惑いがあるのではないかということを感じました。また、「サポートを失敗してはならない」という気負いもあったのではないかと思います。クラシックの演奏会は特殊な環境です。すべての人に、完全・完璧には難しくても、各々に必要なサポートを提供することは大事なのではないでしょうか。

実際に行うことによって「こうすればいいのだな」ということがわかるし、障害者とのコミュニケーションはあまり構えずとも大丈夫だということをわかってもらえばいいと思います。演奏会をきっかけにして、もっと障害者への理解を深めてほしいです。

(事務局 上薗和隆)

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