障害のある人もない人も同じように暮らせる社会へ

報告:12月13日(金)アメリカにおける脱施設戦略

2019年12月13日 地域生活イベント権利擁護

会場の様子
本日「アメリカにおける脱施設の取り組みについての学習会」が開催されました。(主催:全国自立生活センター協議会(JIL)関東ブロック・東京都自立生活センター協議会(TIL))

まず最初に日本の障害者施設の状況、地域移行への取り組みについて報告がありました。

日本の障害者施設の状況、地域移行への取り組み

崔

崔栄繁(DPI日本会議議長保佐)からは「日本の脱施設に関する概況」というテーマで報告をしました。日本では新規の施設入居者があまり減らず、入所への順番待ちの人もたくさんいる。またグループホームは大規模化の傾向がある。精神科病院については、病床数、入院患者数、入院日数、身体拘束数が日本は世界一。

日本で脱施設が進まない背景は、国が自治体任せにして、病院も民間化され利益追求という形になっている。また家族依存ベースの障害者福祉制度からの転換が出来ていない。障害者の地域生活の権利を明記した法律が無いことなどがある。

今後の地域移行に関する取り組みについては、障害者権利条約をより活用すること。障害者差別解消法の改正をし、この法律を育てること。「親亡き後の不安」を持っている人たちの不安を減らすということが大切だと話をしました。

淺川さん(自立生活センター・小平)からは「日本の脱施設に関する具体的取り組み」について報告されました。自立生活センター小平で施設入所者と接点を持つ機会は、①その施設出身の自立した障害者が施設を訪問して、講演をし、入居者と直接繋がること。②HPや機関紙を見た人から相談が来る。③長期ILP(自立生活プログラム)のお知らせを見て受講しに来ることの3つ。

特に最重度障害者の自立支援にこだわってきて活動を続けてきた。2003年脱施設の手法が広まり、地域移行の希望者がさらに増えたが、2010年ごろから施設からの自立希望者が減ってきた感触がある。現在は、施設には望んで入居している人と意思を表明できないことで施設に入居できない人が増えていると感じる、高齢化による影響も大きいと思う。地方には脱施設の手法を知らない人が多いので、多方面からの支援が必要。

重度の知的障害を持ち自閉症の利用者の地域生活については、利用者で実際にいて、その方は親元を離れて暮らすことが出来ている。服薬や病院は家族ではなく、コーディネーターが管理をできていると言うことでした。

アメリカの地域移行の取り組み

スザンヌバーモンド

スザンヌ・バーモントさん(ニューヨーク自立生活協会)からは「アメリカの脱施設に関する具体的な取り組み」というテーマで、アメリカでどのように地域移行が進んできて、自立生活センターがどのように関わってきたのか、実施しているプログラムについて、また課題について報告されました。

アメリカで地域移行に関する活動が始まったのは、1975年ウェイド・ブランク氏が、一人ずつ施設から地域移行の活動を始めたところからである。1983年にADAPTというグループができた。

最初は交通の問題を取り組んでいていて、1990年にはADA法を制定する為に特に注力した。この法律があることによって、地域生活の権利が奪われた場合は、訴えることが出来るようになった。

ADA法の中には公共のプログラム、公共の空間は障害者を受け入れなければいけないし、それに伴う合理的配慮もしなければならないと書かれている。

ADA法が制定された後の重要な判決は、1999年のオルムステッド判決がある。2人の障害を持つ女性が地域生活をしようとしたが、州政府は地域生活に必要なサービスを提供せず、この女性たちは裁判を起こした。最高裁までいき、判決は包括的にインクルーシブな生活を営む権利があるとこの女性は勝訴し、この判決は全ての州に適用されるようになった。州はどのように地域生活を可能にするか明確にしなければならなかった。

しかし、この判決によって地域で全ての人が住めるようになったわけではなった。地域でサービスがあっても、施設退所の制度が不十分だったからである。

2014年に自立生活センターでやらなければいけないコアサービスとして、施設から地域移行するサービスを加えた。CDR(Center for Disability Rights、アメリカの自立生活センター)では、「地域移行スペシャリスト」の人材育成に力を入れて、地域移行を進めた。

地域移行スペシャリストの役割は、施設内での本人・家族/後見人との面会、地域で利用可能なサービスに関する客観的な情報の提供、ニーズに最も合致するプログラムと個人をつなぐ支援をする。地域移行計画を作成し、地域移行後、支援が機能していることを確認するための1年後とのフォローアップをする、地域生活のほうが満足度が高いことを示す生活の質の調査を実施することである。

もしニューヨーク州で障害者が施設から地域へ移行するといくら経費が節約になるのか調査をし、2001年から2017年までに少なく見積もって、約25億ドル削減できると試算をした。州政府にこうすべきだということも伝えるが、地域移行によって予算がいくら削減できるのか、同時に財政的なメリットも調査し伝えるようにすることは大変重要である。

マネーフォローズ・ザ・パーソン(MFP)という制度がある。これは2005年に作られたプログラムで、施設から地域へ移行した人の人数に応じて、連邦政府が州政府へ追加の資金を支払う制度である。まず私たちはニューヨーク州で、施設で地域移行したい人を見つける為、施設に出かけること(アウトリーチ)から始めた。その後、2014年にニューヨーク州が「移行センター」というプログラムを開始し、私たち自身は自立支援、地域移行の仕事をしてきたから応募をした。

ピアサービスについては、障害者は地域で生活できないと思っている人が多い、障害を持ち地域で暮らしている人が個人の経験を共有し、障害があっても地域生活できると思ってもらうことが大切である。

地域移行の活動で、直面した大きな障壁は主に2つあった。1つ目は地域移行を希望する人がいても施設職員が利用者の情報を提供しないことだった。2018年に施設職員を研修するため、研修の機会とアウトリーチの専門家を増やした結果、施設職員からの情報提供数は前年比35%増加となった。

2015年にプログラムを始めてから、ニューヨーク州で15,793件の相談があった。地域移行した人は3,657人で、2018年施設職員への研修に力を入れてから、急激に増えてた。地域移行スペシャリストが、全ての施設を2年に1回は訪問をするようにしている。

2つ目は金銭的に負担可能でかつ利用可能(アクセシブル)な住居を見つけるのが難しいことである。
2017年ニューヨーク州はオルムステッド住宅補助を設立し、CILの住宅スペシャリストが住居を見つける。過去2年間施設に入っている人たちに対して、補助が使える。家賃については、所得の35%を支払い、残りを住宅補助がまかなうという形。

これにより地域移行がより進みやすくなった。私たちのケースの25%がこの制度を使用している。DIA法(障害統合法)は、ADA法の権利をより強めるものである。この法律により地域移行のスピードを速めたいと思っている。

地域生活についての定義も書かれている。崔さんの報告で、日本のグループホームの話しがあったが、アメリカではグループホームは自立生活には当てはまらない。

政府はHCBESという住む環境に関する取り組みをしていて、4名以上の無関係の人たちが住む場合、施設と同じと定義している。グループホームも小規模でなければならず、施設内のグループホームは認められない。大規模施設があり、同じ施設にグループホームがあることも認められない。

障害者のみの建物も認められない、それは施設と同じ環境になるから。DIA法の中で一番好きなのは、州政府は介助者に対して十分な賃金補償をしなければいけないと書かれていること。アメリカでは、マクドナルドのアルバイトよりも介助者の給料は低い現状があり、介助者の数が不足している。

介助者がやっている仕事を賃金へ反映したら、もっと賃金は高くなる。州政府が介助者へ賃金保障をしないなら、個人が州政府を訴えることも可能である。

脱支援をする人を専門的に雇用し育てることで、ニューヨーク州で2015年から2019年で3,657人の地域移行を可能にしているとのことでした。まだ少ないと思っているので、これでも60名の地域移行スペシャリストをもっと増やしていきたい。

質疑応答

会場からはアメリカの状況について多くの質問がされました。一部ご紹介します。

Q.介助の時間は最長でどれくらい認められているのか。

A.サービスのシステムによって違うが、24時間介助が認められるケースはほとんど無い。施設から出てきて、いきなり24時間を取るというのは大変難しいので、最初は12時間にして、地域移行をしてから徐々に増やしていくというのが現実的な戦略。政府は介助時間数に制限は設けていないというが、現実は制限されていて、事実ではない。

Q.精神障害者の地域移行について教えてほしい

A.アメリカでは精神病棟にいる精神障害の当事者は地域移行のサービスが使えない、それには変な理由がある。16人以上いる精神病棟ではメディケイドが適用されない。精神病棟にいる人は、州政府の予算でサービスを利用しなければいけない。16人以上いる病院を適用外にしたのは、大きな精神病棟をなくそうという国の政策。

Q.地域移行した障害者の障害種別はどれくらいか。

A.知的障害者の割合が一番多い、次に高齢者、身体障害者。知的障害者向けの入所施設はここ5年間でほぼ閉鎖されてきたので、地域移行をした知的障害者の割合は減ってきている。ニューヨーク州には施設は2つしかなくて、150人ほどが入所をしている。家族が亡くなって入所した知的障害者がほとんど。

Q.これまで地域移行した人の中で人工呼吸器ユーザーの方はいたか?

A.この仕事を初めて、一番最初に地域移行をした利用者が人工呼吸器ユーザーだった。私自身は難しいと思わなかったので、地域移行のサポートをした。アメリカでは介助者が吸引や服薬を行うことは認められていないので、それが障壁となっている。

もし人工呼吸器ユーザーが地域で生活する場合は、医療的ケアを行う人や家族、また介助者を雇用して研修するという形しかない。24時間分の介助者を雇用して研修するというのは大変だと思う。

最後に

アメリカでは障害者が施設から地域移行をすると、それに対するお金が政府から出る仕組みがあります。そして、このお金を地域移行スペシャリストの雇用、教育に当てることができることができ、さらに地域移行を加速させることができる良い循環が生まれていることがわかりました。

日本は地域移行の活動に対し報酬がつくサービスとしては、地域移行支援、地域定着支援、自立生活援助があるにはありますが、その報酬は著しく低く、この事業単体で地域移行を専門に活動する人材を雇用し、育てるという事までは難しいのが現状です。

日本政府も言葉だけの地域移行ではなく、アメリカのように実際の政策で主導的に地域移行を進めていけるように支援をしていくべきだと感じました。

今後の脱施設、地域移行への取り組みの大きなヒントを得ることができたと思います。

笠柳 大輔(DPI事務局)


■プログラム:

(1) 「日本の脱施設に関する概況」
崔 栄繁 氏 (DPI日本会議)

(2) 「日本の脱施設に関する具体的取り組み」
淺川 氏 (自立生活センター・小平)

(3) 「アメリカにおける脱施設の具体的取り組み」
スザンヌ・ボーモント 氏 (ニューヨーク自立生活協会)

(4) 質疑応答

■スザンヌ・ボーモント氏 略歴

スザンヌ・ボーモント氏

ニューヨーク自立生活協会(NYAIL)理事、オープンドアトランジションセンター理事。
1995年からアンダーソン自閉症センターで自閉症児と関わる。2005年にニューヨークの自立生活センターに最高執行責任者として参加、施設からの地域移行を可能にするためのサービスに人々をつなげるプログラムを実施した。

2014年からはニューヨーク自立生活協会で、地域移行支援を行う25の自立生活センターへの助成金制度を構築。現在、60人の地域移行スペシャリストと共に、オープンドアトランジションセンターの運営をおこなっている。

スザンヌのリーダーシップのもとで、3500人が施設生活から地域生活へと移行した。

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