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APFSD2026参加報告―障害当事者の声を地域の持続可能な開発へ―

2026年03月23日 国際/海外活動障害者権利条約の完全実施

APPFSD会場の様子

写真:APPFSD会場の様子

2026年2月22日から23日にかけて、タイ・バンコクで開催された「Asia Pacific Peoples’ Forum on Sustainable Development 2026(APPFSD)」に参加し、続いて2月24日から27日まで開かれた「Asia-Pacific Forum on Sustainable Development(APFSD)」に出席しました。

APFSDは、アジア太平洋地域におけるSDGs(持続可能な開発目標)の進捗や課題について、各国政府、国連関係機関、市民社会などが意見交換を行う地域会議です。

一方、その直前に開催されるAPPFSDは、市民社会側がそれぞれの現場で起きている課題を持ち寄り、APFSD本会議に向けて提言を整理するための重要な場です。政府間会議だけでは十分に届きにくい当事者の声を持ち込み、「誰ひとり取り残さない」というSDGsの原則を実質化するうえで、大きな意味を持っています。

アジア太平洋地域には約6.9億人、実に6人に1人の障害者が暮らしているとされます。しかし、こうした大きな人口規模にもかかわらず、APFSDの場では障害課題が独立した重要テーマとして十分に扱われず、「marginalized people(周縁化された人びと)」という大きな枠の中に埋もれてしまうことが少なくありません。つまり、障害のある人の暮らしや権利に直結する問題が、他の課題に比べて見えにくくなりやすい現実があります。

そのため、APPFSDでは、パキスタンやネパールの障害当事者をはじめ、地域の仲間たちとつながり、障害セクターとして今回何を重点的に発言すべきかについて何度も打ち合わせを重ねました。限られた参加人数の中で、誰がどの分科会に出席し、どの場面で障害の視点を盛り込んでいくかを確認し合いながら、できるだけ効果的に発言できるよう準備を進めました。

こうした事前調整を経て、本会議では障害セクターとしてまとまった提言を行い、障害が開発の議論の中で取り残されないよう、明確にアピールすることができました。

打ち合わせの様子1 打ち合わせの様子2
▽写真:何度も打合せをしている様子

2月24日のAPFSD本会議では、集まった各国のメンバーで、障害のある人を「福祉の対象」として後から配慮するのではなく、最初から社会の仕組みや政策の中に位置づけるべきだという考えのもと、障害に関して主に次のような提言を行いました。

障害者とその代表組織が政策決定やSDGs報告に完全に参加できるようにすること、国家の開発計画や予算の中に障害インクルージョンを位置付けること、合理的配慮とアクセシビリティを確保すること、ICT・交通・建築・住宅などにユニバーサルデザインを導入すること、障害別データを収集・分析して実態を可視化すること、複合差別を含む差別禁止の法整備を強化すること、障害のある女性や若者の意思決定参加を進めること、災害時の人道支援や避難所のアクセシビリティを確保すること、さらに国際協力やODAの中にも障害インクルージョンを組み込むことなどです。

本会議の様子。文字通訳、手話通訳がありませんでした。
▽写真:本会議の様子。文字通訳、手話通訳がありませんでした。

私は防災に強いまちづくりに関する分科会にも参加し、避難所のアクセシビリティ確保や、障害当事者によるモニタリングの重要性について発言しました。実際に障害当事者が参加して点検しなければ、図面上は問題がなく見えても、現場では使えない設備や動線が残ってしまうことが多くあります。

この点は、日本国内でDPI日本会議が取り組んできた当事者参画の経験とも重なっており、国際的な議論の中でも十分に共有すべきテーマだとあらためて感じました。

会場の様子、 右:発言をする笠柳
▽写真左:会場の様子、右:発言をする笠柳

一方で、会議そのものにもアクセシビリティ上の課題が残されていました。

会場では、手話通訳や文字通訳などの情報保障がほぼ付いておらず、また、スロープが急すぎて一人では上がれない場所も見られました。持続可能で包摂的な社会について議論する国際会議であっても、開催運営そのものがアクセシブルでなければ、障害者の実質的な参加は確保されません。この点は、理念と実践のギャップとして非常に残念に感じました。

会場となったESCAPの入り口。坂が急こう配すぎて一人で登れず、毎回警備員の人に手伝ってもらっていました
写真:会場となったESCAPの入り口。坂が急こう配すぎて一人で登れず、毎回警備員の人に手伝ってもらっていました。

また、2月27日には、SDGsジャパン設立9周年記念イベントにおいて、「バンコクからの中継:開催中の国連アジア太平洋地域・持続可能な開発フォーラム(APFSD)からの最新ニュース」のセッションにオンラインで登壇し、APFSDの現地の様子や障害分野に関する提言内容、現地での取り組み、さらに会場におけるアクセシビリティ上の課題などについて報告しました。

オンライン登壇の様子
写真:SDGsジャパン設立9周年記念イベント オンライン登壇の様子

今回の参加を通じて、アジア太平洋地域の障害当事者や市民社会団体との新たなつながりを築くことができたことは大きな成果でした。特に、パキスタンやネパールの仲間たちと議論を重ねながら、障害セクターとして共通の課題意識を持ち、具体的な提言にまとめて本会議で発言できたことには大きな意義があります。

また、障害がしばしば周縁化されてしまう現状そのものを共有し、障害を独立した重要課題として前面に押し出していく必要性を問題提起できたことも成果の一つです。

写真:今回知り合った各国の障害セクターのみなさんと
写真:今回知り合った各国の障害セクターのみなさんと記念撮影

今後、SDGsの達成期限である2030年が近づく中で、単に目標の進捗を確認するだけでなく、その先の「Beyond SDGs」を見据えた議論も重要になります。その中で、障害の視点を防災、都市、交通、教育、エネルギー、国際協力などあらゆる分野に横断的に組み込み、当事者の参加を前提とした政策づくりを進めていくことが求められます。

DPI日本会議としても、今回得られた地域のネットワークと学びを生かしながら、アジア太平洋地域の仲間たちと連携し、障害インクルージョンの実現に向けた発信と提言を引き続き強めていきます。

最後に、今回の派遣に際し多大なるご支援を賜りましたSDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)の皆様に、心より御礼申し上げます。

報告:笠柳大輔(DPI日本会議事務局長補佐)


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