1月31日(土)日韓インクルーシブ教育国際シンポジウム報告

2026年1月31日、コロナ禍明けとしては久々に対面を含む国際シンポジウムを開催しました。「インクルーシブ教育を推進し、実現するための日韓国際シンポジウム」(以下、日韓国際シンポ)です。対面とオンラインのハイブリッド方式で開催し、対面会場は東京・新橋にあるNIKAIという会議場で行いました。13時から16時30分までの長時間にわたるプログラムでした。
本シンポジウムは、真如苑による助成金事業として実施したもので、DPI日本会議が主催し、2023年にフルインクルーシブ教育事業に関する連携協定を結んだ、東京大学大学院教育学研究科バリアフリー教育開発センター(東大バリアフリー教育開発センター)の後援をいただきました。また、韓国側のコーディネートを担当していただいた韓国DPI、そしてDPIともこれまでさまざまな活動を共にしてきた、教員などを中心とする団体であるスクールボイスプロジェクト(SVP)にも、協力団体としてご一緒していただきました。
今回の日韓国際シンポは、隣国である韓国と日本におけるインクルーシブ教育の実施状況と課題を比較・整理・共有し、今後のインクルーシブ教育を進めるための政策提言などの活動に生かすことを目的として開催しました。簡単に言えば、日本におけるインクルーシブ教育の実践と、韓国における法制度を互いに学び、共有し、今後も継続した取り組みとしていくことを目指したものです。
崔は本業以外に、アジア経済研究所という研究所において10年以上、韓国の障害関係法制度の調査研究に携わってきました。韓国は教育分野に限らず、さまざまな分野で10年前と比べて大きく変化しています。こうした隣国の変化を知ることは、日本の運動にとっても非常に重要であると、これまで強く感じてきました。今回、韓国からは13名の方が来日され(自費で来られた方も多くいらっしゃいました)、また、結果として参加者は約300名にのぼりました。心より感謝申し上げます。
開会の挨拶では、DPI日本会議議長の平野みどりより、「日本はいまだに分離教育からインクルーシブ教育への移行が進んでおらず、全国各地で行われているインクルーシブ教育を求める実践も、メインストリームにはなっていない現状がある。韓国の動向を学ぶ貴重な機会である」との発言がありました。
また、木村えいこ参議院議員にも駆けつけていただく予定でしたが、急な衆議院選挙のため、メッセージの代読という形になりました。さらに、真如苑の藤本氏からもご挨拶をいただきました。長年にわたるご支援に、あらためて心より感謝申し上げます。協力団体からは、韓国DPI会長のイ・ヨンソク氏、そしてSVP理事の武田みどり氏からもご挨拶をいただきました。

写真:イ・ヨンソク韓国DPI会長
続いて崔からは、今回の日韓国際シンポを開催した理由について説明を行い、障害者等に対する特殊教育法などを含む資料の解説を行いました。
基調講演をしていただいたのは、中部大学のキム・ギリョン教授です。キム教授は、大学生の頃から障害者支援サークルで活動してきた、活動家としてのバックグラウンドを持つ研究者です。韓国における特殊教育(韓国ではそのように呼ばれています)の実践や法制度改革にも深く関わってこられました。講演では、韓国の特殊教育の歴史や現在の動向について、非常に詳細な報告をしていただきました。

写真:キム・ギリョン教授
形式だけのインクルーシブ教育体制、いわゆる統合モデルから、フルインクルージョンへと転換していこうとする韓国の方向性について、非常にわかりやすく説明していただきました。制度を少しずつ整備していく韓国においては、障害者等に対する特殊教育法の改正と、韓国政府による「仲睦まじい学校」モデル事業、ソウル市による「さらなる共感教室」モデル事業の今後の動向が、極めて重要であると感じられました。
次に韓国側からは、SET-UP(セットアップ)という特殊教育の教員団体に所属する4名の先生方より、小学校(韓国では初等学校)、中学校、高校、そして特殊学校(日本でいう特別支援学校)の教員として、それぞれの立場からインクルーシブ教育の実情と課題についてご報告をいただきました。非常に整理された、わかりやすい報告でした。

写真:SET-UP(セットアップ)の教員4名
強い能力主義のもとにある教育体制は、日本と非常によく似ており、現場の課題もほぼ共通していることが示されました。校長の考え方一つで現場が大きく変わること、これまで教員個々の力量に依存してきたこと、高学年や上級学校になるほど、通常学校から転校する障害のある子どもが増えていることなど、多くの共通点が指摘されました。ここでも、法制度の改革が現場にどのように届いていくのかが、大きな注目点であると感じられました。
これらの報告を受けて、東京大学教授の小国喜弘氏から、日本と韓国を比較しながらのコメントをいただきました。小国氏からは、「根底に強固な能力主義がある限り、インクルーシブ教育は実現できないこと」「インクルーシブ教育は能力主義を打破するものとして正面から対峙させるべきであり、今こそ闘いが必要である」という、非常に力強いお話をいただきました。

写真:小国 喜弘教授
最後は時間の都合により、ディスカッションの時間が十分に取れず、2~3の質疑応答にとどまってしまったことは残念でしたが、質疑応答を終えて、DPI日本会議副議長の尾上浩二が閉会の言葉を述べました。
尾上副議長は、青い芝の会のメンバーなどとして、40年以上にわたり共生・共学運動を進めてきた当事者の一人です。尾上副議長は、「たかが制度、されど制度」という言葉を、崔がDPIに入った当初から語ってきました。制度だけで100点満点のものを作ることはもちろんできませんし、そのような幻想を持ったこともありません。しかし、全国的に合格点に達していない現状を、60点、70点へと引き上げることは可能です。
今回のシンポジウムを一つの契機として、今後も、日本における素晴らしい実践(ごく一部の地域ではありますが)と、法制度改革に着手した韓国との相互の情報共有、学び合いを継続していきたいと考えています。
最後にあらためて、真如苑の皆さま、来日してくださった韓国の皆さま、ご参加くださった皆さま、東京大学の皆さま、韓国DPI会長のイ・ヨンソク氏、スクールボイスプロジェクトの武田さまに、心から感謝申し上げます。事務局の皆さんも、本当にお疲れさまでした。
報告:崔(議長補佐)












