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【開催御礼】地域で暮らすを当たり前に――政策討論集会(全体会)報告と参加者感想

2025年12月22日 イベント地域生活

全体の様子

去る11月29日、30日に戸山サンライズにてDPI日本会議 第14回政策討論集会を開催いたしました。2日間で全国各地から約200名の皆さまにご参加いただき、会場は熱気に包まれました。ご登壇いただいた皆さまをはじめ、開催にあたりご協力・ご支援をお寄せくださったすべての皆さまに、心より御礼申し上げます。

1日目全体会では「本気で進めよう地域移行〜家族や入所施設に頼らない地域生活の実現に向けて〜」と題して、障害者権利条約の総括所見や勧告をきっかけとして脱施設化・地域移行、インクルーシブ教育を具体的に進めていくためにどうすればよいかという議論がなされました。

下記1日目に開催した全体会報告と参加者感想をご紹介します。

こんなことが報告されました

(敬称略)

■第1部:海外・国内の事例報告

■第2部:パネルディスカッション


報告全文

■第1部:海外・国内の事例報告

登壇者1

進行としては2部構成で、第1部は海外と国内の事例報告でした。まずは、脱施設ロードマップを先んじて運用している韓国の取り組みについて長野大学准教授の相馬氏とDPI日本会議の崔氏より報告をしていただきました。相馬氏によれば韓国では、612施設24214人を対象とした調査を実施され、その中で6035人にインタビューをし、35.5%の方が地域移行を希望があったとのこと。こうしたデータを根拠にロードマップを作成されたそうで、政権や親の障壁、影響が大きいが運動と調査研究が連動して政治を動かしていくことが大切であるとのことでした。

次いで崔氏からは、ソウル市の自立生活条例と脱施設条例、住宅支援条例の解説をしていただき、制度づくりに自立生活センターが深く関わっていたこと、制度があることの大切さについて述べられました。

国内事例としてメインストリーム協会の粘り強い取り組みの報告を当事者スタッフの木村氏より報告していただきました。ピアサポートやILP、介助派遣の実践などを通して数多くの方の地域移行や地域生活をサポートされていますが、市役所とのやり取りの中で、支給決定の際に難色を示されることが増えたと話され、その理由として支給決定の費用は市が全額負担している事実が判明したそうです。つまり地域移行等を頑張っている自治体ほど負担が増え、財政が逼迫している実情があるとのことでした。

■第2部:パネルディスカッション

登壇者2

第2部のパネルディスカッションでは、厚生労働省障害福祉課長の大竹氏や国土交通省住宅局安心居住推進課長の田中氏、西宮市役所健康福祉局生活支援部長の松本氏に加わっていただき、情勢や取り組み、実情の報告をしていただきました。

厚生労働省の大竹氏からは、障害者福祉施策について、障害者福祉計画の見直しに関する議論や「障害者の地域生活も踏まえた施設のあり方検討会」で話し合われた、施設入所者の生活環境改善や意向確認の義務化、財政と人材の課題などについて語っていただきました。

続いて国土交通省の田中氏からは、今年10月に2度目の改正がされた住宅セーフティネット法について解説していただきました。田中氏によれば、今までは、公営住宅の活用が主であったが、老朽化などもあり民間住宅の活用も求められる。その一方で民間住宅の大家は、障害者の入居に拒否感がある方が一定数おり、福祉制度を知らない人も多いとのこと。行政と福祉、住宅関係者がそれぞれ違う視点を持ちながら一体となって連携体制をつくることが大切であると指摘をされました。

次に西宮市の現状について、松本氏より報告していただきました。西宮市の障害福祉課は、長年に渡り障害当事者とともに地域生活の支援に奮闘してきた実績があるとのこと。そのため、年間予算も毎年増え続けており他部署からも指摘を受けている現状があるそうです。「西宮市のガイドラインは甘い」という声もあるが必要な方に支給している自負があると熱い思いを述べられ、そんな中でもお金と人材について逼迫している切実な実態があるとのことでした。

パネルディスカッションの後半では、今村氏からDPI日本会議としての地域移行・脱施設化に向けた考えなどが冒頭に述べられ、その後の議論が展開されていきました。今村氏からは総括所見や勧告をきっかけに立ち上げられた会議体の名称がただの「障害者支援施設のあり方検討会」から「障害者の地域生活も踏まえた障害者支援施設のあり方検討会」に変更された経緯の説明や、どんなに重度な障害があっても地域生活は可能であるということを前提にして議論をしていくこと、居住支援の必要性、今後は「地域生活支援のあり方検討会」を立ち上げていくことが必要であると訴えかけられました。

今村氏の発言を受けてパネリストの方々からは、どの自治体でも同じ支給決定が下りる形が望ましい。広域で支給決定を考える形にできないかといった提案が出されました。自治体に対して国が何をできるかを考えていきたい。住宅施策と福祉施策が一体となって連携することが重要と考えているとの声がありました。

加えて、介助者の人材確保については、近年増えている外国人留学生介助者への期待や「介助」という仕事の魅力をどのように伝えていけばよいのかといった点や給与面の保障に話がおよびました。

最後に会場からの質疑応答では、施設からの地域移行だけではなく、親元からの地域移行についても力を入れるべきではないかという意見や精神病院からの退院促進についてどう考えているのかという質問、管理の厳しいグループホームもありグループホームの施設化が見受けられるといった点や国は施設入所に関して、もっと自分ごととして捉え、ガイドラインを作成するべきではないかという率直な指摘をいただきました。

■全体を通して

今回の全体会を通して、単に「脱施設」ということでなく地域に出てからの生活をどのように組み立て、保障していくかというところも含めて考える足がかりになったのでないかと感じています。これまでの実践や粘り強い取り組みから学ぶことも多く、また現在直面しているさまざまな障壁を解消するための一体となった連携が欠かせないのだと学びました。また特別報告として「電子図書館のアクセシビリティ対応ガイドライン」について解説をしていただきました。

報告:下林 慶史(日本自立生活センター、DPI日本会議常任委員)

参加者感想

■「本気で進めよう!地域移行・脱施設~家族や入所施設に頼らない地域生活の実現に向けて~」に参加して

自分が活動している以外の地域の実践や現状を聞くことができ、「そうそう同じ」と思ったり、「そこは違うな」と考えさせられたり、普段の活動の振り返りと今後の参考になりました。国・自治体・現場それぞれがお互いを知っていくことが重要だと思いました。もちろん、私たちが地域生活していくための十分な制度は必要であるけれども、他の分野と比べて予算がどうなっているのかなど、全体を把握して必要な制度を勝ち取っていかなければ、自分たちの主張だけで終わってしまうと考えさせられました。自分ができていないところだと感じました。

最後のシンポジウムはとても有意義だったと思います。田中先生が「アイディア出しをしましょう」とおっしゃってくれて、できるできないは別としてこういう場から発信されたものが、よりよい制度につながっていってほしいと思いました。少しでも多くの仲間たちが地域生活していけるように、私自身、このような集会で知識をアップデートして活動に取り組んでいきたいと思いました。

秋元妙美(自立生活センター CILちょうふ)


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