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アメリカでは減税法案が成立し、障害者の地域生活が危機的状況に! NCILのジェシカさんにアメリカの状況を聞きました

2025年07月17日 地域生活権利擁護国際/海外活動

ヒアリングに参加した皆さん

7月4日(金)にアメリカで減税法案が成立したというニュースが流れました。この法案には、個人の所得減税の恒久化、チップや残業代への課税の一定期間免除、国境警備の資金増額、気候変動対策の事業廃止や縮小等が盛り込まれていますが、障害者への影響が大きいのが、メディケイドの歳出削減策です。

メディケイドとは低所得者を対象とした医療費を援助するプログラムで、障害者の介助サービスや補装具の支給、手話通訳等の情報保障費等もここに含まれています。そのため、障害者が利用している介助サービスが大幅にカットされかねない危機的状況になっています。

7月16日(木)に全米障害者自立生活センター協議会(The National Council on Independent Living:NCIL)の権利擁護と公共政策ディレクターのJessicaさんにお話を伺いましたので、ご報告します。

Jessica Podesaさんからお聞きしたこと

この法案を阻止するために12週間ワシントンD.C.に滞在してロビー活動を展開してきた。痛ましいことに法案が通ってしまったのは本当に残念だが、中身のいくつかは阻止することができた。例えば、メディケイド改正案によって、州が病院に多くの税金を課す(政府はお金を出さない)ことは阻止した。

この法案はダイレクトにメディケイドの予算をカットするのではなく、メディケイドの運用方法や、州の負担割合、受給資格など、いろんなことを変更して予算をカットするもの。結果として1700万人がヘルスケアを受けられなくなるのではないかと言われている。

この法案が通ったことで、各州でどのくらいの影響があるのか、財政力がある州とない州では違いがあるし、障害者施策に積極的に取り組んでいた州とやってこなかった州は大きな差が出るだろう。

州ごとのプログラム(介助サービス等)を出来るだけ削減させず、充実させるように私たちは頑張らなければならない。心配しているのは、利用者主体の介助サービスが私たちの理念だが、その文言が明確に入っていないため、州によっては事業者がやりやすい介助サービスに変わってしまい、利用者主体の介助サービスでなくなってしまうことだ。

安楽死の法制化を認める州が増えてしまうのではないかということも懸念している。”Not Dead Yet”(まだ死んでいない)と長年パートナーを組んできた患者の権利ファンドがある。そこと協力して、優生思想とみなされる事案には裁判を起こし、全米で優生思想的な方向にいくことを食い止める活動をしたい。障害者の支援が困った時に尊厳死・安楽死が問題解決の1つのような安易な考えは認められない。

大事なことはここからの取り組み。来週にはNCILのカンファレンスが予定されており、脱施設をテーマに例年よりも大規模なデモを準備している。デモの後には国会議員へのロビー活動を展開し、より多くの情報を集めたい。法案の細則はこれから決まっていくので、どうやったら問題を最小限に食い止められるか、新しい法案を作ることによって変えられないかということも検討している。

来年には国会議員の選挙があるので共和党の議員の中にはこの法案を通した後で、相反する法案を出して、障害者の敵にならないようにしよう考えている議員もいる。対話をする機会を設けることによって、議員や役人にプレッシャーをかける。法案を通した議員にはどう責任を取るのか追求し、必ず責任を取らせる。

危機的状況になったが、一方で危機だからこそ新しいチャンスは必ずくると信じている。危機をチャンスに変えて、一丸となって運動を展開し、障害者が地域生活を送れる法案を新たに作っていくようにしたい。

この運動の原点は、施設にいた障害者が起こした。彼らにできたんだから、我々に出来ないはずがない。やるしかない。

以上


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