【ポイントまとめ】『令和6年度障害者の地域支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る調査研究』の報告書の注目ポイントと令和7年度在り方検討会への反映-DPI全国集会「地域生活分科会」報告・感想-
DPI全国集会「地域生活分科会」について、報告を下林慶史(日本自立生活センター・DPI常任委員)が、感想を林 淑美さん(社会福祉法人 創思苑)さんが書いてくれましたので、ご紹介します!
こんなことが報告されました(ポイントまとめ)
(敬称略)
1.吉野 智(PwCコンサルティング合同会社)
- 「障害者の地域生活も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る調査研究」の目的は、今後の検討会に向けた材料整理、委員及び協力団体の意見収集と実態把握・情報整理
- 主な調査内容は①基本情報②利用者の生活状況③障害者支援施設の役割や機能④地域移行後の障害者の地域支援。各項目でクロス集計を実施し、関係性をまとめた
- 検討委員や協力団体から寄せられたアンケートに関する意見や今後の分析の方向性については7つの論点が挙げられた
2.野澤 和弘(植草学園大学)
- 「障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会」ができた経緯として、入所施設をよくしていこうという内部からの声も多かった
- 入所施設の個室化が依然として進んでおらず、6割以上の施設でプライバシーが守られていないことは大きな課題である
- 地域移行に取り組んでいない施設が35%もある
- 職員は施設介助のスキルはあるが、地域移行のノウハウやモチベーションがないのではないか
- 強度行動障害の方の多くは入所を断られる現実があるが、地域でこそ共生を実現できるのではないか
3.佐々木 桃子(全国手をつなぐ育成会連合会会長)
- 地域移行を推進する際の受け皿や人材育成が必要と感じている
- 強度行動障害や医療的ケアの必要な方の行き場のなさや地域移行に取り組んでいない施設のがアンケートに「入所者にとって施設での支援が1番適切であるため、地域移行は不要」と回答したことを危惧している
- 施設職員の意識を変えることや、さまざまな関係機関との連携が重要
4.今村 登(DPI日本会議事務局次長)
- 今後の「障害者の地域生活支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る検討会」の論点について、障害者権利条約は無視できないという認識は広まっている
- 親亡き後や障害の重度化・高齢化、看取りなどが課題とされているが、入院依存を減らすこと、家族介護依存や施設入所依存からの脱却が地域移行推進の鍵である
5.田中 恵美子(日本女子大学)
- 「障害者の地域支援も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る調査研究」というタイトルの「地域生活『も』」に違和感がある
- 調査結果については、地域移行に取り組んでいる施設が少ない
- 地域移行に向けた環境整備の視点がないのではないか
詳細は下記報告をご覧ください。
分科会で報告・議論したこと
6月1日(日)に行われた地域生活分科会では、令和6年度の報酬改定や障害者支援施設の調査研究の状況を踏まえつつ、そのポイントや概要を共有し検討会の動向を含め、議論が展開されました。
最初の登壇者は、実際に調査を担当したPwCコンサルティング合同会社の吉野氏から「障害者の地域生活も踏まえた障害者支援施設の在り方に係る調査研究」の概要報告を行なっていただきました。
吉野氏によれば、この調査は今後の検討会に向けた材料整理、委員及び協力団体の意見収集と実態把握・情報整理を目的としているとのことでした。
主な調査内容は①基本情報②利用者の生活状況③障害者支援施設の役割や機能④地域移行後の障害者の地域支援があり、各項目でクロス集計を実施し、「建物の形態と地域移行の実績」や「地域移行の実績と施設での活動状況」、「地域移行の取り組みと活動状況」などについての関係性をまとめられたとのことでした。
なお、検討委員や協力団体から寄せられたアンケートに関する意見や今後の分析の方向性については①地域移行の取り組みに関する懸念②人材不足③意思決定支援、移行確認の課題④家族の意向⑤日中活動の場⑥個室化、ユニットケアの課題⑦地域生活支援拠点等の実施が挙げられました。
続いて植草学園大学教授の野澤氏からは検討会ができた経緯について、入所施設をよくしていこうという内部からの声も多かったことを冒頭に触れられました。
また、調査報告書に関する感想については、入所施設の個室化が依然として進んでおらず、6割以上の施設でプライバシーが守られていないことに驚愕され、大きな課題であること述べられました。
加えて、地域移行に取り組んでいない施設が35%であることについては、職員は施設介助のスキルはあるが、地域移行のノウハウやモチベーションがないのではないかと指摘されていました。
また、強度行動障害の方の多くは入所を断られる現実があるが、地域でこそ共生を実現できるのではないかとの旨を語られ、今後について戦略的に考えていかなければならないと締め括られました。
次に、手をつなぐ育成会連合会会長の佐々木氏からは、冒頭、地域移行を推進する際の受け皿や人材育成が必要と感じられていることや、会員の中には施設入所を語る声が多くある現状について語られ、アンケート調査結果に関しては、親・家族として感じた注目ポイントについて報告されました。佐々木氏も個室化が進んでいないことを1番に上げておられました。
他には強度行動障害や医療的ケアの必要な方の行き場のなさや地域移行に取り組んでいない施設の理由について「入所者にとって施設での支援が1番適切であるため、地域移行は不要」との回答が32%あったことを危惧されており、職員の意識を変えることやさまざまな関係機関との連携が重要であるとされました。
DPI日本会議常任委員で地域生活部会長の今村からは、検討会の今後の論点について、Chat GPTも用いて整理した結果などについて述べられました。今村さんによれば、障害者権利条約は無視できないという認識は広まっていること。論点の立て方をどうするかが非常に重要であること。
親亡き後や障害の重度化・高齢化、看取りなどが課題とされているが、入院依存を減らすこと、家族介護依存や施設入所依存からの脱却が地域移行推進の鍵である旨を述べられました。
日本女子大学教授の田中氏は今回の調査について「地域生活も」というタイトルに関しても違和感があると述べられ、調査結果については、地域移行に取り組んでいる施設が少ない。地域移行に向けた環境整備の視点がないのではないか。
入所施設以外で強度行動障害や医療的ケアが必要な方は支えられている場合が多いのではないかなど、率直な指摘をされていました。
最後のパネルディスカッションでは、「施設をなくすためにはどうすればよいか」や「環境整備についてどう考えればよいか」といった旨の質問が寄せられました。
施設を無理やりなくすのではなく、環境を整えて自然に無くしていくのがベスト。何もしなかったらそうはならないという意見やいろんな分野での法改正が必要。シームレスな制度設計。総合力が大切。障害者だけでなく国民運動にしていかなければという意見がパネリストの方々から語られました。
下林慶史(日本自立生活センター)
参加者感想
■変わらない現実を、変えていく力に
地域生活分科会で心に残ったのは、「施設はその役割を終えつつある」という言葉でした。
けれど、地域で暮らしたくても、その道はまだまだ整っていません。親や家族の不安は、決して個人の責任ではなく、社会みんなで支えるべき課題です。
今こそ、国連の権利条約に立ち返り、「そもそも何が問題なのか」という問いそのものを見直す時期に来ているのだと思います。
私は、知的障害のある人たちが自己決定や地域で暮らす支援をしています。
でも、これまで「施設で暮らしたい」と語った人には出会ったことがありません。みんな、地域で、あたりまえに、自分らしく暮らしたいのです。
そのためには、重度訪問介護の年齢や障害の制限をなくすこと、申請時に断られない制度づくりが急がれます。
そして今、大規模なグループホームで虐待が増えている現実にも目を向ける必要があると考えます。もっと小さく、顔が見える暮らしを。入居者委員会など、当事者の声を活かすしくみも必要です。
変わらないとあきらめるのではなく、気づいた今こそ、声をあげ、動き出す時。
仲間とともに進む力をもらいました。
林 淑美(社会福祉法人 創思苑)
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