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2023年度の活動方針

startと書かれたヘッダー

1.障害者権利条約の完全実施

(1)国内法整備等
(2)障害者権利条約の完全実施等

2.地域生活

(1)改正障害者総合支援法を機能させる取り組み
(2)「全国地域生活支援拠点等協議会(仮称)」の設立に向けて
(3)報酬改定に合わせた制度運用の改善を求める取り組み

3.交通・まちづくり

(1)バリアフリー基準3課題見直しへの取り組み
(2)小規模店舗のバリアフリーの推進
(3)共同住宅のバリアフリーガイドラインの策定
(4)鉄道駅バリアフリー料金制度と地方のバリアフリー整備の推進
(5)その他の課題

4. 権利擁護

(1)障害者差別解消法改正に向けた取り組み
(2)障害者基本法改正に向けて
(3)精神障害者の社会的入院を解消し、人権回復と地域生活を確立させる
(4)DPI障害者差別解消ピアサポートとの連携

5. 教育

(1)法令の改善等に向けた取り組み
(2)地域での取り組みと関係団体との連携

6. 雇用・労働・所得保障

(1)雇用・労働
(2)障害者の所得保障の確立

7. 障害女性

8. 国際協力

(1)世界・地域レベルの活動
(2)途上国、特にアフリカや南米の障害者のエンパワメント
(3)政府の対外政策での障害の強化
(4)SDGsジャパン

9. 尊厳生

10. 優生保護法と優生思想

11. 欠格条項をなくす

12. コロナ禍への対応

13. 文化芸術

14. 次世代育成

各事業、組織について

◯広報・啓発

◯普及・参画

(1)加盟団体への支援、ネットワーク強化に向けて
(2)講師派遣、点字印刷
(3)DPI 障害者政策討論集会

◯権利擁護に関する事業

◯組織体制整備

(1)会員および支援者の増大にむけて
(2)事務局の体制整備について
(3)財政および予算執行について

◯部会とプロジェクト

(1)部会について
(2)プロジェクトについて

2023年度活動方針全文

Ⅰ.活動方針

1.障害者権利条約の完全実施

(1)国内法整備等

総括所見等を踏まえて作成しているDPI行動計画に基づいて、障害者基本法の改正や差別解消法の課題、インクルーシブ教育の実現のための法整備、脱施設・地域生活の確立のための総合支援法等の法制度の見直し、成年後見制度の見直しなど障害者関連法制度全般について、権利条約に則した見直しに向けた活動を着実に行う。今年度はDPI行動計画を周知するためのタウンミーティングを全国5か所程度で開催する。

DPIとして三法と位置付けている「障害者基本法」、「差別解消法」、「障害者虐待防止法」について、今年度は長年の悲願である障害者基本法の改正に全力を注ぐ。具体的には次の通常国会の改正案上程と審議、改正にむけて、これまで行ってきた関係団体との連携をさらに強化し、作成中のDPI改正試案を利用しながら、国会ロビー活動や各種の集会などを行っていく。また、差別解消法については、第204回国会の改正法の成立をうけて現在進行中である対応指針の改定において、DPIで蓄積した事例などを道具に、権利条約や総括所見に則したものにするために強力な運動を展開する。関係団体と協力しながら、政策委員会等で取り組んでいく。障害者虐待防止法の改正については、厚労省との意見交換や研究者や団体関係者を交えた学習会の開催などを通して、改正の実現に向けて引き続き取り組んでいく。

その他、権利委員会が進める脱施設の動きを総合支援法の改正に反映させるための運動を展開し、脱施設・地域移行をさらに推し進める。また、インクルーシブ教育の実現などの重要課題もDPI行動計画に則した形でそれぞれ取り組んでいく。

(2)権利条約の完全実施等

権利委員会の日本への総括所見を国内に広め、権利条約の目ざす政策を勝ち取るための運動を展開する。総括所見に基づいてバージョンアップした「DPIビジョン2030」や「DPI行動計画」を国や地域における運動の柱として、政策論も含め、全国的にさまざまな形で集会を開催する。これらの運動では国内の関係団体との連携をさらに深めていく。また、韓国をはじめとする総括所見を踏まえた運動を展開している諸外国の団体とも連携をし、権利委員会や諸外国の最新の動向を国内に紹介する活動も行っていく。同時に権利委員会の一般的意見の策定などの活動にも積極的に関与していく。

さらに、総括所見に使われている「人権モデル」(=社会モデル/人権モデル)について理解を深め、具体的な課題にその理念を落とし込み運動を展開するためのプロジェクトを実施する。

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2.地域生活

2022年、権利委員会から示された「総括所見」と「脱施設化ガイドライン」は、DPIビジョン2030で掲げる「2030年までに脱施設の法制化」の実現に向けて大きな後押しに成り得る、かなり踏み込んだものだった。DPIの目指す「脱施設」とは、家族介護・入所施設に依存しない地域社会の構築である。「入所施設は、そもそも緊急対応や看取りも含めて家族介護を前提とされ過ぎたために家族が疲弊し、地域の中でも受け止められず、地域社会から排除されてきた結果、必要とされてきたものである」という視点から取り組んでいくことが、脱施設を進めていく上で重要である。隔離、分離といった負の歴史にも家族介護依存にも戻ることなく地域移行が進められるよう、より一層関係団体との連携を維持強化して、立法府、行政府への積極的な働きかけを行う。

(1)改正障害者総合支援法を機能させる取り組み

障害者総合支援法の改正(2024年4月施行)にあたり、他団体と連携して働きかけた「地域生活支援拠点等の機能強化」は、市区町村に拠点設置の努力義務を課すという形で一定の前進があった。しかし、その具体的な内容、役割等は、今年度中に行われる報酬改定検討チーム内だけで進められてしまいかねないことから、報酬改定検討チームによる団体ヒアリングの場等で的確な指摘と要望を行う。特に拠点コーディネーターについて、地域移行に特化した支援を担う者としての位置付けを明確にするとともに、その報酬が相談支援事業の加算程度で済まされてしまわないよう、ヒアリングの場を含め多方面から働きかける。

(2)「全国地域生活支援拠点等協議会(仮称)」の設立に向けて

地域生活支援拠点等の機能強化策を具体的に進めていくことで、総括所見で「強い要請」と「取るべき緊急の措置」とされた「病院からの退院を含む脱施設」に取り組む。そのためにこれまで共同してきたアメニティフォーラム実行委員会の構成団体が中心となり「全国地域生活支援拠点等協議会(仮称)」の設立を目指している。この協議会では、地域移行コーディネーターの研鑽及び人材育成を行う『人材育成』事業など複数の事業に取り組む予定である。DPIは積極的にこの協議会活動に参加し、総括所見と脱施設化ガイドラインの活用についても検討し、各地のフォーラムやバリアフリー演劇等の文化芸術活動も活用して、より多くの団体と脱施設に向けて協働していけるようにする。

(3)報酬改定に合わせた制度運用の改善を求める取り組み

① 分科会等による働きかけ

全国集会、政策論等で「自治体により著しく支給決定に差が生じている問題」に焦点を当てた分科会を行い、問題点の共有化と改善策を模索する。

② 報酬改定ヒアリング、障害者の地域生活確立の実現を求める全国大行動実行委員会、個別意見交換等による働きかけ

以下のような問題が生じている現状と、その大きな要因として立ちはだかる自治体の独自運用(ローカルルール)による社会的障壁を、関係団体とも連携しながら情報収集を行い、報酬改定による運用変更の機会も活用しながら、支給決定における地域間格差の是正に向けた取り組みを行う。これらの解決策の柱として、重訪のシームレス化を引き続き求めていく。

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3.交通まちづくり

2023年度も国交大臣への直接要望を行い、2022年に権利委員会から出された総括所見を踏まえた、各種基準の見直しを働きかけたい。

(1)バリアフリー基準3課題見直しへの取り組み

第4回建築設計標準フォローアップ会議で、2023年度にバリアフリー基準のうち、建築物内に設ける「バリアフリートイレ」「駐車施設の設置数」「車椅子使用者用客席」について、当事者団体、施設管理者関係団体等を交えた「バリアフリー基準の見直しに関する検討WG」を設置し、基準見直しを検討することが発表された。この3課題はDPIが国交大臣に要望したものであり、東京オリパラのレガシーとして未来を見据えた基準が策定されるように積極的に働きかけを行う。

(2)小規模店舗のバリアフリーの推進

国交省が2022年に実施した調査では、新規店舗のうち小規模店舗のバリアフリーガイドラインを遵守した整備を行っているものは、飲食店で25~45%程度にとどまっていることが明らかになった。これを踏まえて、実行力のある義務基準の策定を働きかける。

(3)共同住宅のバリアフリーガイドラインの策定

住宅のバリアフリーガイドラインは2009年に改正された「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針」があるが、浴室の入口に段差を認めるなど不十分なものである。DPIの要請で2022年1月に「高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の見直し等に関する検討会」が開かれ、「障害者が居住する住宅の設計ガイドライン」を作成する予定だったが、2022年度は開催されなかった。
総括所見でも、「民間及び公共住宅に適用される法的拘束力のある利用の容易さ(アクセシビリティ)基準を定めること、及びその実施を確保すること(60C)」」という勧告が出され、住宅確保の重要性が指摘されている。2023年度に開かれることになった「障害者の居住にも対応した住宅の設計ガイドラインに関する検討会」で、居室内も含めた適切なガイドラインとなるように働きかける。

(4)鉄道駅バリアフリー料金制度と地方のバリアフリー整備の推進

2023年から鉄道駅バリアフリー料金制度がはじまった。事業者がバリアフリー整備計画を策定するときには、多様な障害当事者の意見を反映するように働きかける。また、これまで都市部の事業者に出していた国からの補助金が地方に手厚く配分されるようになるので、これを契機として、地方のバリアフリー整備が推進されるように働きかけていく。さらに、乗務員による携帯スロープを活用した乗降介助の拡大も働きかける。

(5)その他の課題

駅ホーム全体の段差と隙間の解消の推進、高速バスのバリアフリー車両の導入促進(基準適用除外廃止への働きかけ)、多様な当事者参画のシステム化、エレベーターの最低基準の見直し、UDタクシーの乗車拒否の撲滅と大型の車いすもスムーズに乗降できる新しい認定基準策定への働きかけ、建て替えが予定されている明治神宮野球場のバリアフリー整備、国立公園のバリアフリー化等に取り組んでいく。

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4.権利擁護

DPIビジョン2030「脱施設及び社会的入院解消を進め、障害を理由とする差別や虐待がない社会を創る」ことを目標に、差別解消法および障害者基本法改正、施設入所、社会的入院の解消に関する活動を中心に取り組みを行う。

(1)障害者差別解消法改正に向けた取り組み

本年度は、前半に中央省庁の対応要領・対応指針の改定が予定されている。DPIでは2023年2月から3月にかけて差別事例の収集を行い、約300の事例を集めた。これを差別解消法PTで分類作業をし、5つのチームに分かれて、厚労省、国交省、文科省、総務省、法務省、経済産業省、農林水産省等の主な省庁ごとに意見書を作成し、働きかけを行う。

(2)障害者基本法改正に向けて

障害者基本法は、国内における障害者の生活全般に関わる重要な法律である。2011年改正以来、手つかずの状態が続いている。今こそ、条約の理念や総括所見における指摘事項を盛り込んだ、新障害者基本法を目指さなければならない。そのために、次期通常国会に向け、政策委員会での議論や国会議員へロビーイング、各地でのタウンミーティングを開催する。

(3)精神障害者の社会的入院を解消し、人権回復と地域生活を確立させる

総括所見では、本人の同意のない強制的な入院や強制的な治療、身体拘束や隔離、虐待的取り扱いなどが厳しく問われ、障害者に対する著しい人権侵害が追及された。それに対し、政府は真摯に対応する姿勢を見せようとせず、放置されているのが現状である。また、2021年に行われた日弁連の人権大会では、強制入院をなくしていくという決議が採択された。この問題を具体的に解決するためには、精神医療を一般医療体系に組み込むこと、退院後の生活を支えるための地域基盤整備や所得保障の充実、他の診療科での受診拒否の要因となっている法制度の改正等が必要である。精神障害者の人権確立を目指し、昨年に引き続き精神障害当事者の登壇による院内集会の開催や、DPI障害者差別解消ピアサポートに寄せられる差別事例に丹念に取り組む。

(4)DPI障害者差別解消ピアサポートとの連携

2023年度も、相談事例を共有し、事例の集積・分析を行い、関係法令の改正のための基礎データとして活用していく。

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5.教育

障害のある子どももない子どもも地域の幼稚園・保育園、小・中学校の通常学級、高校、大学・専門学校等で共に学び育つインクルーシブ教育の仕組みを作り、実践を推し進めるための活動を行う。引き続き改正バリアフリー法による小・中学校のバリアフリー化実現に向けた取り組みを進める。

また地域の学校を原則就学先とする就学決定のあり方、教育の場における差別解消法上の不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の獲得の推進、障害に基づくハラスメントの防止といった課題に対する、政府や国政レベルでの活動とともに、地域の活動についても積極的に支援を行う。

(1)法令の改善等に向けた取り組み

教育の総括所見では、いまだに分離を進める日本の障害児教育に対して、「分離教育を終わらせるために」「インクルーシブ教育を受ける権利があることを認識し」「予算を伴った行動計画を採択すること」など、強い要請が記された。しかし文科省は、特別支援教育の下で分離・選別を続けており、総括所見が出された後もその方向性は変えないと明言している。

この状況の中で、総括所見後の取り組みを考える時、1つは、本人・保護者が希望する就学と在学時に必要な合理的配慮をできるだけ実現できるようにすること、昨年の文科省通知にある「障害の状態によっては半分以上の時間数を特別支援学級で学ぶ」ことを変えるために新たな人員配置の可能性を探るなど、現状に則した対応を行うことが必要である。

もう1つは、障害児の教育は、学校教育法でいまだに障害の克服という医学モデルで定められていることに対し、抜本的な変更を求めるなど、分離が無くならない本質的な原因に対して働きかけることが必要となる。

これらの課題に対して、文科省の初等中等教育局と粘り強く意見交換を行っていくこと、また世論全体に働きかけるために障害者自身の声を発信するなど、具体的な方策を行っていく。

また学校バリアフリーについては、文科省も進める方向性であることを踏まえ、エレベーター設置等が加速されるよう、国・自治体への働きかけを続けていく。

これら取り組みについては、引き続き公教育計画学会等関係団体との連携を図っていく。

(2)地域での取り組みと関係団体との連携

各地の小・中学校における医療的ケア児の看護師配置・保護者付き添いの状況、就学指導のあり方や合理的配慮の実態、差別発言等不適切な対応、高校入学における定員内の不合格問題等、加盟団体、教育研修参加者等を通じて把握し、制度を変更する取り組みに結びつける。

また、障害に基づく様々なハラスメントに対応できる知識について、障害者自身が学校教育でどのように得られるか、精神障害を含めた障害理解がどの程度進められているか等について、学習会等を通じて、実態と課題を把握するよう取り組みたい。

教職員への障害者の採用・人事配置については、引き続き「障害のある教職員ネットワーク」と連携をとりながら運動を展開していく。

2016年度から開始した「インクルーシブ教育推進フォーラム」を、2023年度も開催し各地のインクルーシブ教育の拡充・啓発を進める。

バリアフリー法改正に伴い、2025年度末までに「小・中学校を緊急かつ集中的」に整備する施策に対しては、各地の好事例や情報を伝える等、地域との連携を更に密に行えるよう進めていく。また学校バリアフリーは単なる環境整備ではなく、インクルーシブ教育を実現するための社会モデルの考えを広げる機会として捉え、今年度もJILのインクルーシブ教育プロジェクト(JIEP)と共同し取り組みを行う。

また、若い障害者がインクルーシブ教育への理解を深め、運動の主体となるための取り組みとして教育研修を2023年度も行う。参加者が各地の教育課題に継続的な関わりを持ち、深めていけるようになるよう、内容を改めて検討していきたい。また近年の参加者が何らかの形で、運動に関わっていくような仕組みについても模索する。

さらに2023年度も、地域でともに生きともに学ぶ取り組みを進める団体(親の会等)との交流を進めていく。

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6.雇用・労働・所得保障

(1)雇用・労働

DPIは、障害者雇用については権利条約に基づく平等性と労働者性を確保し、障害の有無や種別及び程度等に関わりなく共働できる職場及び雇用・労働環境の実現と勧告で指摘された課題を改善するために厚労省への働きかけと関係団体と連携した取組みを進める。
一般就労、福祉的就労及び第三の働き方とされる社会的事業所等の課題については、「障害者の安定雇用・安心就労の促進をめざす議員連盟(インクルーシブ雇用議連)市民側」と連携して取り組む。

また、新たな課題である「障害者雇用代行ビジネス」についても連携して取り組むが、法定雇用率の引上げや除外率の引下げが「障害者雇用代行ビジネス」を促進することを理由に反対する意見には、DPIとして容認しない姿勢を明確にする。なお、一般就労については、日本労働組合総連合会(連合)、全日本自治団体労働組合(自治労)とも引続き連携して取り組む。

具体的な課題としては、一般就労については、障害者があらゆる場面において障害のない人と同等の機会、処遇を確保するとともに、障害に基づく差別の禁止と合理的配慮を確保し、働き続けることができる職場及び雇用・労働環境を整備する。特にそのために必要な支援制度等の見直しと福祉と雇用施策の横断的利用と実効性ある相談体制の構築と2019年の改正障害者雇用促進法の附帯決議を実現するために取り組む。なお、除外率・除外職員制度の撤廃も引き続き取組む。

就労継続支援事業A型等の福祉的就労については、一般就労への円滑な移行や利用者負担及び賃金改善等のための取組みと社会的事業所等といった第三の働き方に関する議論を深める。

国際的には、国連が定めた「ビジネスと人権に関する指導原則」を受けて日本政府が「行動計画(NAP)」を策定し、その実施と充実を求める「ビジネスと人権市民社会プラットフォーム(BHRC)」の幹事団体として参画し、DPIとしての視点から意見反映に努める。
DPIに寄せられている労働相談や訴訟等については、それぞれの状況に応じて対応する。

なお、全国集会においては、「障害者雇用と合理的配慮の確保~労働組合運動と訴訟を通して、働く障害者の権利と合理的配慮を考える~」をテーマとした分科会を担当するとともに障害者雇用支援月間である9月には、「障害者雇用・労働フォーラム2023」の開催と厚労省との意見交換を実施する。

(2)障害者の所得保障の確立

権利条約第19条及び総括所見に基づき、障害者の地域生活の保障や施設や病院での長期入所・入院を余儀なくされてきた障害者の地域移行を促進するために、以下の取り組みを関係団体と連携して継続的に進める。
① 障害基礎年金を障害者の生活維持が可能な水準への引き上げを求める。
② すべての無年金状態にある障害者の解消を年金制度改正により求める。
③ 特別障害者手当の支給要件等の見直しと「地域生活支援手当(仮称)」の創設を求める。
④ 生活保護基準引き下げ訴訟(いのちのとりで裁判)を注視する。

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7.障害女性

権利委員会の総括所見でも強く求められた複合的差別解消に向けて、今年度は、障害者基本法改正が視野に入ってきた中、総括所見が確実に反映されるよう、時機を逸することなく取り組んでいく。特に、これまで同様、DPI女性ネットと連携して行ってきた障害者政策委員会の各委員への働き掛けを更に丁寧に行っていく。

優生裁判については、引き続き、裁判を一日も早く終結させ、原告の皆さんへの完全なる謝罪と補償を実現させるため、関係団体と連携しながら、引き続き支援に取り組んでいく。そして、立法機関と行政が、深く反省した後、「優生思想のないインクルーシブ社会の実現に向けて」実効性のある施策を実現するよう今後とも働きかけていく。

12月の政策論の障害女性分科会において、複合差別・交差的差別の実態や現状の課題などを学ぶ学習会を持つ。その後、統計、性的被害、介助など、テーマ別に学習会を開催していく。

障害女性のエンパワメントとネットワーク化を図るための研修を企画する。全国から研修生を募り、系統的な研修を実施し、それぞれの場でさらに多くの障害女性を力づけ、国や各自治体の委員などを増やしていく。

障害者虐待事例が後を絶たない中、被害者である障害女性が利用していた福祉施設の職員から望まない妊娠をさせられ、一人で出産後、支援がない中、0歳児を死なせてしまう事件が起こり、有罪判決を受けるに至っている。意思に反した異性介助を含む、障害女性への性被害防止への適切な対策について、今後とも関連団体と連携しながら国や自治体に求めていく。

いずれの取り組みも、今後ともDPI女性ネットと連携して進めていく。

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8.国際協力

(1)世界・地域レベルの活動

DPI世界会議でのDPIの再統合を目指す韓国での世界会議開催に全面的に協力し、世界評議会が締約国会議などで活躍できるように支援する。

DPIアジア太平洋ブロックの事務局及び一員として、アジア太平洋ブロック評議会のもとアジア太平洋ブロック事務所としての機能を強化し、DPIアジア太平洋事務所として国連を初めとする国際舞台でのブロック団体や評議員の活動を支援し、ブロック活動の強化に寄与する。

さらに、ブロック評議会に協力し、2023年から始まる第四次アジア太平洋障害者の十年についてDPI日本会議内で理解を深め、この十年が効果あるものとなるように国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)に働きかける 。

(2)途上国、特にアフリカや南米の障害者のエンパワメント

南アフリカでの独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)の草の根技術協力事業の第3フェーズ「障害者自立生活センターの拡大と持続的発展」とブラジルの障害インクルーシブな保健事業の実施により、さらなる彼ら/彼女らのエンパワメント推進を目指す。

また、JICAの障害者リーダーコースの受託や、途上国の当事者団体とのオンラインセミナーの開催により、ともに活動していける仲間とのネットワークを構築する。特に障害女性や重度障害者が地域で暮らせるように今まで日本で培ってきた自立生活運動を通して、障害者のエンパワメントと自立生活のスキルを伝えていくことにより彼ら/彼女らが開発から取り残されないよう支援する。

(3)政府の対外政策での障害の強化

2022年末に発表されたSDGsアクションプランが、権利条約に沿ったものとなるように意見を提出していく。政府開発援助(ODA)の指針である「開発協力大綱」の改正に向けても、提言を続ける。そのため、引き続きSDGsジャパンやG7市民社会コアリッションでの活動を継続していく。

(4)SDGsジャパン

障害ユニットは、月1回定期的に開催される事業統括会議に出席しており、2023年度の提言活動として、外務省地球規模統括課と市民社会との協議の場の設定を目指す。この協議を通じて実施指針改定の内容について市民社会からの意見反映の提案や、アクションプラン2024への提言などを行う。また、2023年はイベントが多数あることから、2023年以降も見据えて、SDGsサミット(2023)、その後の未来サミット(2024)最終的な世界社会サミット(2025)につながることに見据えて、ポストSDGs後を目指した活動も行う。

SDGsの観点から、5月の広島でのG7(先進7か国首脳会議)の重要性に公式関与グループである世界中の市民社会組織が集まるC7(Civil 7)、ジェンダーでの関与グループW7(Women 7)、関連大臣会議で障害分野からのインプットを行う。

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9.尊厳生

尊厳死法制化の動きや人工呼吸器等の停止といった生命に関する施策の動向に注視し、終末期医療におけるACP(事前ケア計画)を根拠とした延命治療の制限拡大の動向に注意を払う必要がある。

コロナ禍での障害者の医療を受ける権利に関し世界の動きにも着目しながら、状況にあわせて学習会等の開催を検討する。コロナ禍では、入院中にヘルパーを利用できず、絶望して呼吸器をつけないで生きることを諦めてしまうALS患者も出ているため取り上げていきたい。一連の活動を通じ、尊厳死等法制化の反対運動の基盤を広げる。また、患者の権利を守るための法律の制定を働きかけていく。

2028年の権利委員会と日本政府の第2回目の建設的対話に向け、生命に価値基準や優生思想を助長する動きにストップをかける活動を続け、関係団体等を巻き込みながら、尊厳死法制化に反対する世論の醸成にもつながる新たな動きを形成していきたい。

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10. 優生保護法と優生思想

優生保護法は障害者を不良な子孫と位置づけて、性と生殖の健康・権利を否定し、優生思想を広く社会全体に根付かせた。しかし、国は未だ憲法違反を認めず、反省も謝罪もせず、国賠裁判においては、控訴・上告受理申し立てを行っている。今年度も優生連の活動に参画し、全国原告団や全国被害者・家族の会、全国弁護団と連携して、全面解決に向けた活動を行う。

また、北海道・江差町の「不妊措置」問題のような、母体保護法下での不妊手術や中絶手術の強要が行われることがないよう再発防止への取り組みに向け、事業所や地方自治体、国などに働きかける。現在もなお、障害者の妊娠・出産・育児は、特に医療や福祉現場で肯定的に捉えられず、十分な育児支援が保障されていない。

そのため、障害者の育児を更に困難なものとしている。子を持つことを願うカップルに対して、障害があるなしに関わらず、適切な支援が権利として保障されるべきであり、福祉サービスの充実が急がれる。
その他、生殖医療に関する法律や検討会などの審議において、障害者が排除されるような動きがないかを注視していく。

① 優生連に引き続き構成団体として参画する。
② 地域の裁判傍聴や支援する会、集会等に積極的に参加するとともに、DPIメールマガジンやホームページ上で参加を呼びかける。
③ 「不妊措置」問題に関する全国的な調査・検証を行うよう国及び自治体に要請する。
④ 障害者の育児支援を充実させるため、国及び自治体に働きかける。
⑤ 母体保護法下での優生手術被害者の尊厳回復に向けて、取り組む。
⑥ 出生前検査や着床前検査を含めた生殖医療において、優生思想を助長する動きがあった場合には、関係団体ともに広く連携をしながら取り組みを進めていく。

以上の活動を通じて、津久井やまゆり園事件に象徴される障害者排除が繰り返されることのないように、また、生きることを諦めざるを得ない障害者が再び現れることのないように、優生思想の歴史に終止符を打ち、総括所見を実現していけるよう取り組む。

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11.欠格条項をなくす

視覚や聴覚の障害や精神障害など「心身の障害」を対象とする欠格条項が2001年の一括見直し後も残され、2019年からは「心身の故障」を「精神の機能の障害」と規定する新たな欠格条項が増大し、法令総数は661にのぼる(2020年時点)。引き続き、なくす会と連携し、情報や課題を共有して、障害者が直面している欠格条項に関する諸問題に取り組む。

障害者差別解消ピアサポートや各部会等、 DPIに持ち込まれる様々な差別事例や相談の中に、欠格条項に基づく事例がある場合、関係者の了解を慎重に得た上で、なくす会とも共有していく。

また、新刊書籍『障害のある人の欠格条項ってなんだろう? Q&A ―資格・免許をとって働き、遊ぶには』(解放出版社、2023年4月12日発売)について、対面イベントでの販売、ウェブサイトでの紹介等、積極的に活用し欠格条項をなくす運動に繋げていく。
欠格条項廃止のための一括的な見直しを求めつつ、中期課題として、欠格条項の廃止を求める国連勧告(報告案を参照)を受けた国内法・施策整備が求められる。

各種委員会等の公的な施策検討の場での提言提出やヒアリング、パブリックコメント提出機会への意見表明の働きかけなど、DPIの関連部会等や加盟団体等とも協働し、活動を行っていく。

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12.コロナ禍への対応

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが2023年5月8日から、季節性インフルエンザなどと同じ5類に移行する方針が示されている中、障害のある人への感染予防対策や検査体制、ワクチン接種、コロナに感染した場合の医療へのアクセス、障害福祉サービス等が適切に提供されるよう、引き続き取り組んでいく。

とりわけ、コロナ感染症対策を理由に入院時のヘルパー利用に制限を課していた病院の対応について実態把握に努めるとともに、適切な対応を求めていく。

また、DPI事務局としても5類への移行に伴い、厚労省の専門家会合が「新たな生活習慣」としてまとめ、感染対策の「5つの基本」として示された「その場に応じたマスク着用」や「換気と3密回避」、「手洗い」などの内容を踏まえて、引き続き職場内や集会開催時における感染予防対策を徹底していく。

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13.文化芸術

新たに発足した「障害者の文化芸術活動を推進する全国ネットワーク」に引き続き参加するとともに、加盟団体の協力も得て日本博を契機とした障害者の文化芸術共同創造プロジェクト等のプログラム実施に取り組む。

特に、改正された差別解消法による事業者の合理的配慮義務化を念頭に置き、オリパラのレガシーを引き継いで「文化芸術分野における合理的配慮とそのための環境整備」が進むよう取り組みを進めていきたい。

とりわけ、「2025大阪・関西万博」に関して、ハード面はもちろん、展示・催事などコンテンツ、プログラムにおけるユニバーサルデザイン・バリアフリー化が進むよう、障害当事者としての意見提起を進めていく。こうした実践的な取り組みを通じて文化芸術分野における必要な環境整備や合理的配慮についてさらに深め、インクルーシブ社会の実現につなげていく。

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14.次世代育成

若手メンバーの実践の場として「差別解消法プロジェクト」を2023年度も継続して取り組む。春から中央省庁で差別解消法対応指針の改定が始まるので、前年度に収集した差別事例を分析し、省庁ごとの意見書を作成し、働きかけを行う。

また、若手メンバーのフォローアップとして、少人数での勉強会や意見交換なども実施する。

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Ⅱ広報・啓発事業

ホームページ、SNSでの情報発信に引き続き注力する。障害者権利条約や国内の障害者関連法制を分かりやすく解説をしたコンテンツをまとめ、活動報告だけではなく、有益な資料を提供できるようにする。また既にあるコンテンツの定期的な見直しを進め、より分かりやすく見やすいウェブサイトにするよう努める。またバナー広告の新規獲得も引き続き目指す。広報・啓発事業全体として、様々な広報活動を企画・検討・追求し、DPIの活動・問題意識をより社会へ広め、支援者を一人でも多く増やす。

中長期的な行動計画である「DPIビジョン2030」については、短期目標であった2024年が来年に迫っているので、進捗の確認と見直しを行う。メールマガジンについては、「ホームページにアクセスせずに情報を得たい」という声もいただいたことからホームページの更新にあわせて積極的に発行していく。特に、「ここに注目!メールマガジン」は毎月初めの定例として、また各部会の活発化のためにも継続して発行をする。

「オンラインミニ講座」は、そのときどきの旬なトピックについて集中的に発信をしていく。活動内容の紙媒体での発信については、賛助会員をはじめとした対象へ、ホームページの内容を凝縮させた「DPI通信」を発行し、紙媒体での情報発信にも力を入れる。

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普及・参画

1. 加盟団体への支援、ネットワーク強化に向けて

2023年度も全国各地で、総括所見を踏まえた行動計画を話し合うタウンミーティングを実施する。また、部会ごとの企画等も積極的に展開する。これらを通じて、DPI加盟団体との関係をより一層強化し、一体となった運動展開を目指す。

さらに、総括所見を活用し、障害者基本法の改正を始めとする法制度の拡充を目指し、DPI加盟団体と連携した運動を展開する。また、各地で取り組まれている条例づくりへの支援、各種講師の派遣も実施し、ネットワークを強化し、さらなる運動の展開を図る。

2. 講師派遣、点字印刷

引き続き、各地の障害者団体が主催する学習会や集会に対し、権利条約や障害者制度改革および差別解消法・差別禁止条例、総合支援法等をテーマとした講師派遣を積極的に行う。

また、点字印刷物の作成については、依頼に対し柔軟に応じ、視覚障害者への情報保障を担い、関係団体・個人への広報活動も積極的に行う。

3. DPI障害者政策討論集会

第12回政策論は、11月26日(土)、27日(日)にオンライン形式で開催する。本集会はDPIとしての政策方針と活動の検証を行う場として、重要な機会となっている。次回の権利条約に基づく建設的対話を見据え、地域での自立生活、インクルーシブ教育、成年後見制度、精神医療のあり方など現状の問題を検証し、より一層の取り組みを進めていかなければならない。

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権利擁護に関する事業

差別解消法などの国内法制度が、より権利条約に沿ったものに改革されるよう、DPIとしての政策提言の働きかけに資するべく、差別相談事例の傾向や課題を提供できるよう2020年度に「DPI障害者差別解消ピアサポート」と名称を改め、一新した体制をより強化していく。具体的には、テレワーク環境が安定し相談件数が増加してきた状況を維持するとともに、障害者差別および虐待、合理的配慮に関する相談について、毎月1回行われる事例検討会議の中で相談員相互の情報共有を密に図るとともに、研鑽・研修の機会を定期的に取り入れていく。また、総務、労務管理を可視化し相談体制の安定化を図る。

差別相談事例の傾向や課題について、辻直哉所長(権利擁護部会長)からの常任委員への報告等を充実し、各部会との連携を一層進めていく。また、相談資源の模索・開発を通じて、加盟団体以外の各地の障害当事者が運営する団体や運動との連携もこれまで以上に求めていく。特に2020年度より相談内容の深刻度が増している就労・雇用関連相談の対応に際し、相談者の了解を得た上で雇用労働・所得保障部会との協働・連携を強化していく。

さらに、差別や虐待実態の把握と新たな施策の基礎資料づくりについて、障害者差別や虐待に関わる内容の分析を、差別解消法プロジェクトチームと連携して行う。また、既存の福祉サービス対象範囲に含まれず、社会的に排除されている障害・疾病者の相談にあたり、構造的な差別を明らかにし、制度の谷間を埋める新たな制度・政策提案の資料作成等を強化する。差別解消法施行前の2009年に発行された「相談事例集」が在庫切れであることから、上記のような諸課題を盛り込んだ今後の改定作業開始も射程に入れていく。

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組織体制整備

1.会員および支援者の増大にむけて

多くの方にDPIの活動について興味を持っていただけるよう、各情報発信媒体(Facebook、メールマガジン等)を使って具体的にわかりやすく発信を続け、徐々に定着してきたクレジットカード決済をさらに活用し、寄付のしやすい環境になるよう整備を進める。
2023年度も引き続き、DPIの活動への理解と周知を得て、加盟団体のない地域における正会員、賛助会員、寄付や支援を獲得できるよう努める。

2.事務局の体制整備について

コロナ禍も落ち着きを取り戻しつつあり、感染拡大防止対策も踏まえて、在宅勤務と事務所勤務を併用していく。特に、事務局員内での情報共有やコミュニケーションをこれまで以上に丁寧に行うことが大切であると考えている。DPIの役割、ならびに求められる業務内容の複雑・多岐化に対応すべく、事務局内の体制を見直し、引き続き事務局体制および環境整備等を行う。

3.財政および予算執行について

DPIの運動の周知および安定的な財源確保のため、加盟団体や関係団体を中心に財政支援の呼びかけ、会員の確保を積極的に行う。また、各部会・プロジェクト内での予算執行状況の管理など、担当部会及び担当者と事務局との共有を図ることで、スムーズな運営に繋げていく。

4. 部会とプロジェクト

(1)部会について

2014年度からテーマ別に8つの部会(地域生活、バリアフリー、権利擁護、教育、雇用労働・所得保障・生活保護、障害女性、国際協力、尊厳生)を設けて運動を展開してきた。2022年度も、コロナ禍で対面での集会等は少なかったが、オンラインを活用し、タウンミーティングやタイムリーな課題を解説するオンラインミニ講座等を実施し、部会の積極的な活動を展開した。2023年度も部会メンバーを拡充し、部会単位でオンラインを活用したセミナー等を企画・開催するなど、さらなる活性化をめざす。

(2)プロジェクトについて

重点的な課題についてはプロジェクトを立ち上げて取り組む。
① 障害者差別解消法プロジェクト
2022年度に引き続き、差別解消法見直しに取り組む。2023年は中央省庁の対応指針の改訂において、事例に基づいた提案を働きかける。
② 障害者権利条約の審査・総括所見を活用した国内法制度整備事業(公益財団法人キリン福祉財団助成事業)
前年度から3年間の事業として継続して実施している。2022年は総括所見を分析し、行動計画を作成し、今年度は、DPI2030ビジョンを、総括所見を踏まえたものにバージョンアップする。さらに、各地でタウンミーティングを開き、総括所見の内容を加盟団体等に普及啓発し、国や自治体レベルにおける法制度の改善につなげていく。

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