【提言】今こそ、障害を理由とする欠格条項の廃止を!
―最高裁大法廷の違憲判決を受けて―




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2026年7月6日
【提言】今こそ、障害を理由とする欠格条項の廃止を!
―最高裁大法廷の違憲判決を受けて―

障害者欠格条項をなくす会
(共同代表 福島智・大熊由紀子)

■ 条文ひとつで閉ざされる人生、開かれる人生
 「私の人生は、条文ひとつで閉ざされかけました。でも、条文ひとつで開かれもしました。これからは、未来の誰かの夢や幸福が、条文で消されることのない社会へどうかなってほしいと心から願っています。」耳が聞こえない医師・今川竜二さんの言葉[1]です。
 今川さんは中学生の時、進路指導で「免許を与えない」という医師法の欠格条項を示され、一度は夢を諦めました。しかし高校生だった2001年の法改正で条文が「免許を与えないことがある」に変わり、不安を抱えながらも医師になる道を選んだといいます。
 岐阜県に住む知的障害がある男性Aさんも、法律に人生を左右されたひとりです。交通誘導の警備員をしてきたAさんは、「警備員の仕事にやりがいを感じていました」「ある時、急に休む人が出て、会社から私に電話があって、出てくれん?と言われた時は、会社から信頼されていると思いとてもうれしかったです」[2]と語っています。しかし、親族からの経済的虐待から逃れるために「保佐[3](成年後見制度)」を利用したことで、当時の警備業法[4]の絶対的欠格条項に該当し、仕事を失いました。
 Aさんは「保佐だからといって仕事をやめなければいけないのは、おかしい。自分と同じような人が他にもいると思う」[5]と、国を訴えました。Aさんの裁判は岐阜地裁、名古屋高裁と進み、いずれも当該欠格条項は「違憲」との判決でした。


■最高裁が下した歴史的判決と「パラダイムシフト」
 そしてついに、最高裁が欠格条項と向き合いました。最高裁大法廷は、今年(2026年)2月18日、Aさんから仕事を奪った欠格条項を、「職業選択の自由」(憲法22条)と「法の下の平等」(同14条)に反する「違憲」だと判断しました[6]。裁判では「精神上の障害を理由として職業選択の自由が制約されているか」が審理されました。最高裁で国家賠償請求[7]が棄却されたことは残念でしたが、Aさんが失職した時にはすでに違憲だったと、大法廷の裁判官15名全員が認めたのです。この判決の背景には、政策において、障害者が「保護の客体」から「法的な権利の主体」へと転換したという「パラダイムシフト」[8]があります。この25年間で、国連の障害者権利条約[9]の批准や、障害者差別解消法[10]の制定など、社会は「医学モデルから社会モデル・人権モデルへ」[11]と大きく変化しました。最高裁の違憲判決は、警備業法にとどまらず、あらゆる法制度に対して「障害を理由とした排除は許されない」という重大な意味を持っています。


■姿を変えて増え続ける「相対的欠格条項」
 実は2001年と2019年の法改正[12]により、障害や後見制度利用を理由に“一律に排除する”「絶対的欠格条項」[13]が法律上からは削除されました。しかし、問題は終わっていません。 代わりに、2019年の法改正の場合は、被改正法令の約6割に「心身の故障により●●の業務を適正に行うことができない者」に対する「相対的欠格条項」 [14]が新たに設けられたのです[15]。「心身の故障」は「精神の機能の障害」と定義されました。こうした条項を持つ法令は「コピー&ペースト」で増殖し、2025年時点で700を超えています[16]。
 「一律に排除するのではなく個別に審査するなら良いのでは?」と思われるかもしれません。しかし、審査は医師の診断書などに依存しており、「どのような合理的配慮があれば業務や行為ができるか」という視点は希薄です。せっかく国家試験に合格しても、障害に関する審査が終わるまで免許が交付されず、就職活動も研修もできない事態が起きています[17]。さらに、地方条例[18]や、民間企業の就業規則[19]、あるいはボランティア応募条件[20]、ヨガ教室の入会条件[21]などにまで、法律の欠格条項が悪影響を及ぼしています。その本質は、「前例がない」「危なそう」といった差別・偏見であり、分け隔てであり、排除です。

■障害の有無と、業務や行為を行う能力は別なこと
 ある業務や行為を適正に行えるかどうかということと、障害の有無とは、それぞれ別のことです。最高裁も今回の判決で、「成年後見等が開始したとしても、その余の能力が直ちに欠如しているとはいえないなどと評価されるようになった」と述べています。
 かつては門前払いだった医師や薬剤師等の領域でも、現在は障害のある人が免許交付を受けて[22]各地で活躍しています[23]。過去の「生命や安全に関わるから」という消極論は、単なる差別・偏見だったことが明らかとなっています。重要なのは、ある業務や行為を行うための本質的な能力の有無なのです。
 Aさんは鋭く指摘しています。「障害があってもなくても、できることはできるし、できないことはできない」[24]。Aさんが言われるとおり、ある業務を遂行できるかどうかと、障害の有無を関連づけるのは、差別と偏見以外のなにものでもありません。

■今こそ、障害を理由とする欠格条項の廃止を
 国連は2022年、日本政府に対し「心身の故障に基づく欠格条項等の廃止」を勧告しています[25]。しかし政府は現状維持の姿勢をとり、対応を先延ばしにしてきました。
 法律そのものが差別と偏見の根拠となり、弊害を広げている悪循環を、もうこれ以上放置してはなりません。国会と政府が、障害を理由とする欠格条項の廃止にただちに取り組むことを、強く求めます。不合理な障壁を取り除くために、それぞれの立場から行動しましょう。
以上

[1](2026 年 2 月20日「『障害者』をとりまく法制度のバリア」イベントにて)下記は抜粋引用
 私が医師を志したきっかけは、漫画『ブラック・ジャック』で、小学生のころ図書室で何度も何度も読みました。耳が聞こえず、入ってくる情報が限られていた私にとって、『ブラック・ジャック』は社会や世界を知る良い教科書でもありました。「医師になりたい」と、小学1年生のころから、迷いなくそう思っていました。
 初めて「欠格条項」に出会ったのは、中学3年生の三者面談でした。進路の話になり、私は迷わず「医師になりたい」と言いました。すると担任の先生に、難しい顔をされました。翌日、その先生は医師法第3条が書かれた紙を持ってきてくれました。そこには、「耳が聞こえないものには免許を与えない」という内容が書かれていました。その瞬間、9年間抱いてきた夢が、音もなく崩れました。医師の夢は、棚に上げたのではなく、ゴミ箱に捨てました。ところが、高校1年の夏に転機が訪れます。医師法などが改正されたという新聞記事を見つけました。改正後の条文には「免許を与えないことがある」と書かれていました。医師になれる可能性は開かれた、でも「与えないことがある」という言い方に、不安も残りました。それでも可能性にかけたいと思い、私は理系に進み、必死に勉強し、現役で医学部に合格しました。
 当時の私は、障害は目立たないほうがいいと思っていました。「医師免許を与えないことがある」という条文があるからこそ、障害によりできないことが目立たないように静かにしまっておこうと、そう思うようにさせていました。医師国家試験に合格したあと、医療現場での勤務は、想像以上に厳しいものでした。聞こえないことで指導医の指示が理解できない。会話についていけない。迷惑をかけたくない一心で、「聞こえるふり」をしました。でも、それは自分を追い詰めるだけでした。
 私は「できない医師」というレッテルを自分に貼り、失意のどん底におちいっていき、医療現場を一度離れ、そのときに、ろう者のコミュニティに接する機会を持つことができました。聞こえないことを隠さず、自然に生き、誇りをもって働く人たちがそこにたくさんいました。そこで初めて「セルフアドボカシー」という考え方を知りました。1年ぶりに復帰した医療現場では、恥を捨てて自分のことを周りにしっかり伝えました。そしてどうすれば一緒にスムーズに働けるかを、批判的ではなく建設的に楽しく話し合いました。そこから職場の環境が少しずつ変わりました。自信を取り戻すことができました。
 私の人生は、条文ひとつで閉ざされかけました。でも、条文ひとつで開かれもしました。これからは、未来の誰かの夢や幸福が、条文で消されることのない社会へどうかなってほしいと心から願っています。
動画 開始後1 時間から1時間18 分まで
https://youtu.be/1OIoCDAwPxE

[2]Aさんの言葉 2026年1月14日最高裁大法廷弁論におけるAさんの発言の部分引用

[3]当時の「成年後見制度」には「後見」「保佐」「補助」という類型があり、Aさんは「保佐」を開始して「被保佐人」となった。

[4]「警備業法」は2019年まで「成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの」を絶対的欠格条項としていた。この絶対的欠格条項は削除されたが、警備業法の場合は、成年被後見人・被保佐人に対する欠格条項とは別に、1982年改正で「精神病者」を欠格条項の対象としていた。これは2002年の法改正で「精神の機能の障害により警備業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通ができない者」に対する相対的欠格条項に改められた。そして現行の警備業法は、第3条第7号で「心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの」に「該当する者は、警備業を営んではならない」と規定しており、この欠格条項は警備員にも適用される(警備業法第14条)。国家公安委員会規則とは「警備業法施行規則」を指しており、法第3条第7号に該当しないことが明らかであるかどうかが記載された「精神機能の障害に関する医師の診断書」の提出を求める内容である(警備業法施行規則第4条)。

[5]Aさんの言葉 2026年1月14日最高裁大法廷弁論におけるAさんの発言の要約

[6]最高裁大法廷の判決文を下記のリンクから読むことができる。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-95548.pdf

[7]Aさんは、失職の原因となった警備業法の欠格条項を違憲ととらえて、欠格条項を改廃しなかった国に対して、国家賠償法に基づく損害賠償を求めて提訴した。岐阜地裁と名古屋高裁は、警備業法に禁治産者・準禁治産者(当時)に対する欠格条項が追加された1982年から違憲であり、その欠格条項を放置した国に対して、国家賠償法上も違法であると判断して、国に損害賠償金の支払いを命じた。最高裁大法廷は、10名の裁判官が、国家賠償法上は違法ではないと判断し、これを多数意見として、国家賠償法上の違法性の訴えを退けた。障害者差別解消法が施行された2016年頃には違憲となっていたが、Aさんの失職は2017年と時期が近かったことなどを理由に、国会の不作為を認めなかった。これに対して、5名の裁判官は、遅くとも2002年から2013年頃には違憲となっていたと判断し、国会が迅速に法改正をせず人権侵害を放置し続けたことを問題として、国家賠償法上も違法であるという趣旨の反対意見を述べた。

[8]障害者の権利にかかわるパラダイムシフト(社会における根本的な認識の転換)が、最高裁大法廷の裁判官が全員一致で警備業法の欠格条項を違憲と判断する根拠となった。判決理由の多数意見(法廷意見)において、「障害者権利条約の批准に伴い整備された国内法は、障害者の定義を新たなものとした上で、障害者が人権を保障され、尊厳を尊重されるべき旨を明示するなどしており、社会における障害の捉え方の変化等を受けて、福祉や保護を中心とした障害者施策を法的な権利の保障を中心とするものへと転換していく流れを反映させたものであったということができる」と、パラダイムシフトを認めた。おなじく法廷意見で「障害者の労働、雇用との関係でも、障害者差別解消法等の成立から施行までに約3年の準備期間が設けられ、その施行に向けた準備の過程で障害を理由とする差別の禁止等に関する考え方が行政機関等や事業者に周知されるなどしたことにより、労働者について障害を理由とする差別が禁止されるべきであるとする考え方が確立するに至ったというべきである」と断言している。

[9]「障害者権利条約」(引用)第4条1項 締約国は、障害に基づくいかなる差別もなしに、全ての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。
(a) この条約において認められる権利の実現のため、全ての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとること。
(b) 障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するための全ての適当な措置(立法を含む。)をとること。

[10]障害者基本法(2011年改正)、障害者差別解消法(2013年新設、2022年改正)は、「障害の有無で分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」を目的として、差別の禁止、社会的障壁の除去、合理的配慮の提供を義務づけている。2022年には障害者差別解消法改正によって、障害者に対する「合理的配慮」の提供が、国・地方公共団体・民間事業者の全てに義務づけられた。
(引用)障害者差別解消法 第1条
この法律は、障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。
https://laws.e-gov.go.jp/law/425AC0000000065

[11]医学モデルは、個人の障害や疾患に問題があるという見方で、障害を理由とする欠格条項の、障害者に対する見方は、医学モデルそのものと言える。社会モデルは、その社会が障害や疾患がある人の権利の平等を認めず分け隔ててきた社会的障壁を除去しなければ問題は解決しないという見方で、障害を理由とする欠格条項は、社会的障壁のなかでも大きな強制力と影響力をもつ法制度の障壁である。障害者権利条約は、障害者は「長期的な身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害であって、様々な障壁との相互作用により他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げ得るものを有する者を含む」と定義している。最高裁大法廷判決は、障害者権利条約の定義を引用して、障害を単なる個人の心身の機能不全としてではなく、社会的な文脈で捉える考え方を示した。

[12] 2001年の法改正は、通称「欠格条項見直し法」、正式名称「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律」(平成13年6月29日法律第87号)被改正法令28。同法の附則第二条「政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律における障害者に係る欠格事由の在り方について、当該欠格事由に関する規定の施行の状況を勘案して検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と明記されていたものの、現在まで包括的な見直し作業はなされていない。
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/15120010629087.htm
2019年の法改正は、通称「成年後見制度適正化法」、正式名称「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和元年6月14日法律第37号)被改正法令191。

[13]「絶対的欠格条項」の典型として、2001年改正前の医師法第4条「目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者には、免許を与えない」を挙げることができる。

[14]「相対的欠格条項」の典型として、2001年に改正された現行の医師法第4条1項「心身の障害により医師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」に「該当する者には、免許を与えないことがある」を、挙げることができる。この「厚生労働省令」とは「医師法施行規則」であり、「医師法施行規則」第1条で「医師法第4条第1号の厚生労働省令で定める者は、視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により医師の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする」と規定している。

[15]例えば「社会福祉士及び介護福祉士法」は、2019年に成立した「成年後見制度適正化法」によって、法第3条において「心身の故障により社会福祉士又は介護福祉士の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの」に「該当する者は、社会福祉士又は介護福祉士となることができない。」と定められた。そして、厚生労働省令つまり「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則」第1条の2において、「法第3条第1号の厚生労働省令で定める者は、精神の機能の障害により社会福祉士又は介護福祉士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。」と規定された。なお、「社会福祉士及び介護福祉士法」には、2019年まで「心身の故障」に関する欠格条項も「精神の機能の障害」に対する欠格条項もなかった。

[16]「障害者を職業などから除外する欠格条項をもつ法律のデータ集」(障害者欠格条項をなくす会事務局調べ)がある。障害を理由とする欠格条項がある法令実数は2009年に483、2016年に505、2020年に661、2023年に699、2025年に705を確認している。障害別では「精神の機能」の障害が2016年に75、2020年には257に急増し、2025年調査では278を確認している。
https://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/data/index.html

[17]相対的欠格条項に基づいて医師国家試験合格後に課されている審査について
守田稔さん(2024 年 11 月19日「可能性、もっと広がる」イベントにて)
下記は抜粋引用(一部は要約しました)
 病気をしてから、「目が見えるようになってほしい」、「医師になりたい」という2つの願いがずっとありました。法律改正前は、失明は医師になれないことを意味し、どちらの願いも同時に絶たれました。その思いの強さは絶望に形を変え、うつになりました。
 しかし法律が改正されたことで、失明により「目が見えるようになってほしい」という願いは絶たれたものの、「医師になりたい」という願いは再び持つことができました。願いは「目が見えなくても医師になりたい」というものに形を変え、その思いの強さは希望になり、意欲と元気を取り戻すことができました。
 2003年3月に受験し、医師国家試験に合格しました。初めて視覚障害者が受験し、合格した医師国家試験となりました。しかし、すぐには医師免許は交付されませんでした。それは相対的欠格条項があるため、免許を与えて大丈夫かどうかの面接を受ける必要があったからです。免許が交付されるかどうかわからないため、不安な日々を送りました。資格がないため、合格しても仕事ができませんでした。母校の精神科に入局していましたが、身分は見学生でした。面接の結果、8月7日付けで医籍登録が行われ、医師免許が交付されました。
 現在、国は「医療 DX」を進めており、2030 年までに電子カルテの標準化を目指しています。今の電子カルテのほとんどは、音声ソフトでは十分読めない、あるいは一人で操作できないなど、いくつもの問題があります。せっかく欠格条項の法律が変わっても、働くために必要な道具が視覚障害者にとって使えないものになると、私たちは仕事を続けていくことができなくなります。
動画 開始後17 分から 34 分まで
https://www.youtube.com/watch?v=cnXPYMGiiCs&t=12s

[18]精神障害を理由に会議の傍聴や公共施設利用を制限するなどの、地方条例の権利制限が、2023年の心の旅の会「市民精神医療研究所」の調査によると、333件以上確認されている。
かつては知的障害や精神障害のある人の市民プールや図書館利用を不可とする地方条例や規則が全国的に設けられていた。地方条例や規則の権利制限は、記事にもあるように、障害当事者や関係者による調査を含む問題提起が行われてきたが、今なお多数存在する。
朝日新聞2024年5月9日
「精神障害、なお残る差別条項 公園・プール・庁舎など利用制限、全国に333件」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15930323.html

[19]民間企業は一般に、「(業務外の傷病による)休職期間の満了時に復職できないときは、休職期間満了の日をもって解雇とする」といった退職規定を、就業規則に設けている。ただし、労働基準法や障害者雇用促進法は、もとの業務に完全に復帰できない場合も、その人が可能なほかの業務に配置を変える対応をすることや環境の調整など、合理的配慮を提供することが、義務づけられている。そうしたことを行わずに、障害や疾患をもったから解雇するという対応は、障害者雇用促進法の「不当な差別的取り扱い」に該当する。

[20]例えば、ボランティア募集側が「心身ともに健康な方」という応募条件を設けていて、障害や疾患がある人の応募を「前例がない」「受入れ態勢がない」「バリアフリーになっていない」「もし何かあったら責任をもてない」等として断っていることがある。「心身ともに健康な方」という漠然とした条件で、ボランティアが行うことや、行うことについて環境を含めてどう調整するかという合理的配慮の提供のための対話もされていないことが多い。このような拒否は障害者差別解消法の「不当な差別的取り扱い」に該当する。

[21]ヨガ教室の入会案内に「医者から運動をやめるよう言われている人、ならびに精神病の人は入会できない」と書かれていた(2024年)。スイミングクラブやスポーツジムなどでも、これと似た入会条件が設けられている。視覚障害のあるパラリンピック選手が、「スポーツジムで『ヘルパーも一般会員と同様に会員登録を』と求められた。ヘルパーは毎回同じ人に頼めるわけではなく、そのジムの利用は諦めた。(中略)誰でもスポーツを楽しめる環境を」と、体験と意見を述べている。
パラリンピック選手の談話は、下記の報道にある。
2025年1月6日<東京新聞>障害者への理解推進を パラアスリートら東京都庁で懇談会 バリアフリーなど整備求める
https://www.tokyo-np.co.jp/article/460111

[22]2023年までの8年間の免許付与件数について、天畠大輔参議院議員が2024年に国の官庁に照会した。37の資格免許について、障害や疾患があり免許交付を申請した人は、全て免許を交付されていた。
障害を理由とした相対的欠格条項にかかわる免許付与件数が把握されている資格免許一覧
https://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/menkyofuyokensu.html

[23]関口麻理子さんの著述から抜粋引用
 「医師になりたい」。周囲からは反対の声が上がりました。それでも背中を押してくれる人がいて、受験勉強の末、医学部に入学しました。医学部での授業や実習は当然、健常者仕様に作られています。友人の手助けで何とか卒業したものの、一人ではできない。本当に医師になれるのか、自信を失うような状況でした。ところが、実際に医師になると、聴覚障害者流のやり方でできることがたくさんありました。聴診器には頼らない診療や、電話の代わりの機器もあります。さらに医療は多様な経験をもつ多職種による相互補完的なチームとして成り立っています。私が助けられることも、助けることもあります。
(書籍『障害のある人の欠格条項ってなんだろう?Q&A』2023 年出版への寄稿)P36 に掲載

[24]Aさんの言葉は、2026年2月18日「東京新聞」の記事からの引用。記事タイトル「成年後見制度を使った人を退職させたのは『違憲』 最高裁が初の判断 旧警備業法訴訟、賠償請求は退ける」

[25]国連障害者権利委員会から日本に対して出された勧告(2022年)政府仮訳
国及び地方自治体の法令において、侮蔑的文言及び「physical or mental disorder(心身の故障)」に基づく欠格条項等の法規制を廃止すること。(総括所見8(c))
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/pdf/data/r05/s2-8.pdf

【資料】略年表
1993年 障害者対策に関する新長期計画(10か年)
1998年 総理府・中障協・各省庁で欠格条項見直し開始
1999年 「総理府障害者対策推進本部」が「障害者に係る欠格条項の見直し」を政府方針として決定
2001年 ★欠格条項見直し法 成立
2011年 障害者基本法 改正
2013年 障害者差別解消法 新規制定
2014年 国連障害者権利条約を批准
2019年 ★成年後見制度適正化法 成立
2022年 障害者差別解消法 改正
同年 ★国連障害者権利委員会、日本に対して「国及び地方自治体の欠格条項等の廃止」を勧告
2026年 ★最高裁大法廷、違憲判決


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