新潟県の障害者公務員非常勤採用の募集案内について


再度の意見書(2月8日付) PDF ( 184 KB ) テキスト ( 6 KB )
新潟県からの回答書(2月7日付) PDF ( 97 KB ) テキスト ( 2 KB )
意見書(2013年2月6日付) PDF ( 90 KB ) テキスト ( 3 KB )

2013年2月8日
新潟県知事           泉田裕彦 殿
新潟県総務管理部人事課長 橋本一浩 殿
DPI日本会議 議長   三澤了
障害者欠格条項をなくす会 共同代表 福島智 大熊由紀子
(公印略)
担当連絡先:東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5F
DPI日本会議 事務局長 尾上浩二
TEL 03-5282-3730 FAX 03-5282-0017
Mail office@dpi-japan.org


 2月7日付のご回答を確かに受領いたしました。ご多忙ななか、速やかなご回答ありがとうございました。
 「点字、手話通訳及び筆談による対応は行いません」「自力により通勤ができ、かつ、介助なしに職務の遂行ができる人」の箇所の削除について、迅速適切なご判断をなさったものとして、積極的に評価させていただきます。

 ただ、今後は、文言を削除するだけでなく、実際に、手話、点字、筆談(筆記通訳)などを提供する考査をどのように準備するかが重要になると存じます。考査会場へのアクセスや設備もそのひとつです。応募申込みの書面にも、点字、手話通訳、筆記通訳、考査会場の車いすで使えるトイレやスロープなど、応募者が書き込めるようにし、細部は応募者本人と相談調整することが肝要かと存じます。「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について(2005年11月9日障害者施策推進課長会議決定)」について、参考に文末に所在を記載いたします。

 一方、【なお、「勤務場所にはエレベーターがありません」という記載につきましては、応募を検討されている方に対して、建物の構造上の情報をお知らせする必要があることから、今後も記載することといたします】と、回答されています。
 「応募を検討されている方に対する情報提供」を理由に、今後も記載するとされていることについて、きわめて遺憾に存じます。
 前回お送りした意見書にも記しましたが、三条地区の募集では「車いすを利用しての勤務はできません」と、特定の障害に関連した記述を明記して除外対象としておられました。これは障害を理由にした差別にほかならず、障害者基本法に明記されている障害を理由にした差別禁止の理念に、明らかに抵触するものだと言わざるをえません。「情報提供」と言われていますが、こうしたことが実質的に下肢障害者や車椅子ユーザーの排除、すなわち、事実上の差別的取り扱いと位置づけられる可能性がきわめて高い点に留意願います。また、エレベーターがない職場でも執務室が1階であれば決定的な問題にはならないと存じます。さらに、また、そこを利用する障害のある市民の存在は当然想定されるわけですので、公共施設として計画的にバリアフリー化を進めることは、地方自治体としての当然の責務でもあり、そうであれば、「勤務場所にエレベーターはありません」などと、募集案内に堂々と明記なさる姿勢・感覚自体、理解に苦しむところです。「どうすれば共に働けるか、そのための工夫や調整を検討していこう」という観点を欠いた形での一方的な「情報提供」は、応募を検討しているかたがたを躊躇させる圧力にもなり得ます。
 今回、職員採用の主体は新潟県であり、一括して募集採用を行った後、状況に応じて、新潟県下の適切な職場に配置するというのが、県主体で職員を採用なさる場合の基本的な方針であるべきではないかと存じます。そうすれば、事業所ごとの構造上の問題を記載する必要はないと存じます。もしも募集案内に設備がないと記載されるのなら、「本来は設備が整っていなければならないのですが、障害ある人々には様々な不備があり申し訳ない限りですが、出来る限り気持ちよく考査を受けていただけるよう配慮いたしたくご相談に応じます」といった記載であれば、受け取るほうも、貴県の基本姿勢を知ることができます。

 次回の募集からは変更するが今回はこのままの記載内容で募集するとされたことについても非常に遺憾に存じます。「混乱を招く恐れがある」とおっしゃっていますが、なにの混乱なのか理解できかねます。たしかに、たとえば、当初の募集の文面から当該記述部分を削除することで生じる文面の変更によって、いったん応募を断念していた障害者が応募を改めて検討し、問い合わせをして来られるということはあるかもしれません。しかし、仮にそうしたことがあったとしても、これは「混乱」などとは呼ぶべきものではないでしょうし、仮に一定の煩雑さが貴職に生じたとしても、その原因は貴職において作成なさった当初の募集の文面自体にありますので、それゆえに生じるある程度の煩雑さは受忍限度内のものかと存じます。また、当該記述を変更したことによって、考査の公正さが阻害されるという事態も起こり得ないと存じます。さらに申し上げるならば、事前に障害当事者の意見を聴きながら検討されていたら、そもそもこうした問題は生じていなかったものと存じます。こうしたことを未然に防ぐためにも、今後、本件関連での先進的な他自治体の事例を調査なさると共に、貴県内などの障害当事者を交えた検討が不可欠だと思量いたします。

 募集・採用方法だけでなく、職場で共に働けるように人的支援や設備面など職場環境の調整を絶えず進めていくことも、肝要な課題だと存じます。これらの課題に的確に対処できるように、障害当事者参画のもとで、試験や考査のありかたとあわせて、設備面の改善や、職務分掌、人の配置、そのほか多様な合理的配慮の提供について、計画性をもって検討に着手されることを提言させていただきます。

 今回の事態を奇貨として、今後とも障害者の完全参加と平等にご尽力を頂きますことをお願い申し上げます。なお、今後貴県の前向きな取り組みが進展なさるよう、貴県の対応に注目させていただきますと共に、内閣府および厚生労働省の関係部局とも県レベルの障害者雇用促進の実例の一つとして、貴県の対応の動向を共有してまいりたいと存じますので、一言申し添えます。


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障害者施策推進課長会議決定の文書は、下記に掲載されています。
資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について
平成17年11月9日 障害者施策推進課長会議決定
・本文
 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sikaku.html
・申請書等における配慮のイメージ
 http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sinseisyo_image.pdf

人事480号
平成25年2月7日
障害者欠格条項をなくす会
 共同代表 福島 智    様
        大熊 由紀子 様
新潟県総務管理部人事課長 橋本 一浩

身体障害者の方を対象とした非常勤職員の採用選考考査に関する
御意見に対する回答について

 時下、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
 このたび、当県が募集しております身体障害者の方を対象とした非常勤職員の採用選考考査につきまして、貴重な御意見をお寄せいただき、ありがとうございました。
 お寄せいただいた御意見に対しまして、担当課長である私から回答いたします。
 当県では、障害者の雇用を促進するため、平成23年度から身体障害者の方を対象とした非常勤職員の募集・採用を行っておりますが、皆様からの御意見を踏まえ、次のとおり改善を図ることといたしました。
 [次回の募集から削除する記載]
 ・「点字・手話通訳及び筆談による対応は行いません」
 ・「自力により通勤ができ、かつ、介助なしに職務の遂行ができる人」
 なお、「勤務場所にはエレベーターがありません」という記載につきましては、応募を検討されている方に対して、建物の構造上の情報をお知らせする必要があることから、今後も記載することといたします。
 また、今回の募集につきましては、募集開始後に記載内容を修正することにより、混乱を招くおそれがあることから、現行の記載のまま、選考考査を実施いたしますが、今後、皆様からの御意見などを参考にしながら、障害をお持ちの方を対象とした職員の募集・採用につきましては、改善を図ってまいりますので、御理解を賜りますようお願いいたします。

2013年2月6日
新潟県知事 泉田 裕彦 殿
DPI日本会議 議長   三澤了
障害者欠格条項をなくす会 共同代表 福島智 大熊由紀子
(公印略)
担当連絡先:東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5F
DPI日本会議 事務局長 尾上浩二
TEL 03-5282-3730 FAX 03-5282-0017
Mail office@dpi-japan.org

 私たちは、障害者の人権確立をめざして、障害に基づく法制度の制限(障害者欠格条項)を撤廃するよう、それぞれの立場から長年取り組んできている団体です。これまでの取組を反映し、国レベルで医薬安全衛生、運輸交通、住宅などの分野で、障害や病気があれば受験からも排除したり業務や行為をおこなう資格を認めないとされてきた障害者欠格条項は、削除などの見直しが行われて来ました。
 公務員採用制度についても、地方公共団体の障害者職員採用試験において、「介助なしに通勤かつ職務遂行できる」ことが受験資格とされていること等の問題を提起してきました。このような受験資格に示されている、障害があるからできない・できないからあらかじめ受け入れないという障害者観と姿勢が極めて旧弊であり、どうすれば共に働けるかという視点をもって、適切な介助や支援、雇用環境の調整のもとで、これまで締め出してきた障害や病気がある人の就業を可能にすることが、公正平等な社会への第一歩だからです。
 上述のことと併せて、点字・手話通訳・筆記通訳・拡大文字・音声読み上げパソコンといった、それらを欠くならば受験自体が成り立たないニーズを把握したうえで、ニーズに沿って試験を実施するようにと要請してきました。
 既に、都道府県や政令指定都市のいくつかは、上述のような受験資格を廃止し、実質的に公正平等な試験になるように取り組んできています。
 これらの課題は、障害者権利条約の批准にむけて設置された内閣府障がい者制度改革推進会議、および、障害者政策委員会に設置された差別禁止部会の議論においても重視され、昨年末にかけて詳細な意見文書が提出・公表されています。

 以上の認識に基づき、以下の点を提起します。



1.このたび公表された新潟県(県庁及び地域出先機関)の障害者非常勤職員募集案内は、障害を理由にした受験資格の制限であり、合理的配慮の否定でもあります。これは、現行障害者基本法第四条の差別禁止の規定に明らかに反するものだと考えられると共に、障害者権利条約の批准という喫緊の課題に向けたわが国の制度改革という潮流に逆行する、極めて後ろ向きな対応だと言わざるをえません。

2.貴職が、本件がはらむ前述のような問題点を認識されたうえで、
@ 応募の要件等のイ「自力により通勤ができ、かつ、介助なしに職務の遂行ができる人」を廃止すること
A 応募の要件等の「勤務場所にはエレベーターがありません」(村上,新発田,長岡,魚沼,十日町,上越,佐渡)、「勤務場所は、執務室内が狭く広い机が置けない箇所と、エレベーターが設置されていない箇所のため、車いすを利用しての勤務はできません」(三条)の記述も、「どうすれば共に働けるか」という視点を欠き、車いすユーザーなどを特定して排除するものなので、削除すること
B 考査についての「点字、手話通訳及び筆談による対応は行いません。」という記述を削除した上で、点字・手話通訳・筆記通訳・拡大文字・音声読み上げパソコンなど、受験者のニーズに沿った方法での試験を実施されること
C 上記の点について、2月7日までに、文書にて回答すること
の四点を要請します。

以上


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