障害者欠格条項撤廃の課題と各種試験のありかた等に関する意見書


政府あての意見書

民主党あての意見書

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(補足)2010年3月、政府および民主党との面談時に、資料1と資料3についてより分かりやすく改めたものを提出しました。
上のPDFとテキストデータは、2月に意見書と同時に提出した添付資料のうち、この二点について差し替えてあります。

政府あての意見書テキストデータ(7KB)

民主党あての意見書テキストデータ(7KB)

2010年2月24日
障がい者制度改革推進本部長    鳩山由紀夫 様
内閣府特命大臣             福島みずほ 様

            障害者欠格条項をなくす会    共同代表 福島智・大熊由紀子
            全国障害学生支援センター    代表    殿岡翼
            聴覚障害を持つ医療従事者の会 代表   真島昭彦

                       代表連絡先:障害者欠格条項をなくす会
                       東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5階
                       TEL:03-5282-3137 FAX:03-5282-0017
                       Mail : info_restrict@dpi-japan.org


障害者欠格条項撤廃の課題と各種試験のありかた等に関する意見書

 障害者にかかわる欠格条項については、「法制度の障壁」除去の課題として、様々に取り組まれてきました(註1)。全廃されたものや、以前に比べて可能性が開けたものがあります。また、教育機会も以前に比べて開かれつつあり、障害のある人が高等教育機関に進学して専門知識や技術を身につけることも増えています。
 しかし現在も、「免許を与えないことがある」等の条文で多数の相対的欠格条項が残されています[資料p1]。そのために、勉強しても資格免許を得られないかもしれない不安が、障害者や関係者に広く存在しています。学校も、欠格条項ゆえに免許を与えられないかもしれない学生の受け入れに消極的になることがあります。欠格条項は、このように、修学、資格や免許の取得、その先の就業全般に弊害をもたらしています[資料p6-7]。
 また、進学したいという希望をもっていても、障害ゆえの受験拒否や入学拒否、修学上のサポートが提供されないために、それが叶わない現実があります。障害ゆえの拒否を禁止する法律が国内法にないためです[資料p2-3]。
 さらに、受験資格や、視力や聴力などの一律的な検査基準が、欠格条項に代わる制限(註2)となって、障害のある人の受験と合格を阻んでいます。身体障害者対象の都道府県の職員採用試験でさえ、その殆どが受験資格に、単独で通勤しサポートなしに職務遂行できることを掲げ、点字や手話通訳によって受験できるところは半数もありません[資料p4,10-12]。こうしたことから、国が直轄する資格試験はもとより、各種の資格試験や検定試験、国・地方公共団体の公務員試験について、障害者を排除せずにサポートする包括的なルールづくりが、まずは必要とされています[受験申請書のイメージとして資料p5、関連して註3]。さらに社会の普遍的なルールとして確立していくことで、教育と就業の機会を広く開きます。
 ところが、欠格条項などの法制度の障壁のために、合理的配慮が提供されないために、高等教育機関を卒業しても、自分のもつ力を活かせる仕事・社会的活動が十分にできない現実があります。社会においてトータルに力を発揮する機会を奪われた人が大量に存在することは、その人にとってマイナスであるだけでなく、まわりの人々やあとに続く人たちを含め、社会全体にとっても大きな損失です。
 このような日本の遅れた状況は、国際的にも際立っています。合理的配慮の視点を欠いていることと併せて、2008年に発効した障害者権利条約(註4)にも違反抵触すると言わざるをえません。障害を直接間接の理由とする入学拒否や受験拒否、免許等の不交付、修学や就業で必要な支援が提供されないことがないようにするには、そうした拒否や排除が差別だと明確に規定する差別禁止法が必要です。合理的配慮をおこなわないことは差別として是正できるようにすることが重要です。差別禁止法のもとで現在の法制度にある差別も一掃できます。差別禁止法の制定運用は、全般的にまだ高いとは言えない日本の人権状況を変えていく基盤になります。
 こうした理念レベルの問題に留まらず、障害者に対する取り組みが社会全体に望ましい波及効果をもたらしうる例はさまざまに存在します。例えば、目や耳に障害がある人の情報アクセシビリティに役立っている、音声と文字を相互に変換する技術は、広く学習や読書の場面で、また日本語が母語ではない人に対して、さらに加齢によって情報を得にくくなっている多くの高齢者にとっても、たいへん役立つ技術だと言えます。このような技術を、障害者の利用を想定した情報通信インフラとして整備していくならば、非常に多くの人に利便をもたらし、新しい雇用と需要を生みだし、経済の活性化にもつながるのではないでしょうか[註5]。
 わたしたちは、障害の有無にかかわらず、誰もが希望をもち、教育をうけ、自分の力を発揮しながら様々な人と共に社会生活を送れるようになることを望みます。その妨げになっている法制度や慣習はなくし、基本的な支えになる法制度をつくり、そして個々の人にとって必要なサポートを合理的配慮として得られる環境を求めて、それぞれの領域から、調査や相談活動や提言をおこなってきています。
 障がい者制度改革推進本部・推進会議が発足した意義は大きく、期待も大きなものがあります。障がい者制度改革推進本部・推進会議において、次の各項目を、智恵を集めてぜひとも解決していく課題として位置づけてとりくまれることを、提言します。
  1. 障害者にかかわる欠格条項がある現行法制度について、国内法が障害者権利条約に違反・抵触しないよう、改正・廃止を推進すること。
  2. 国および地方公共団体が実施する試験で、障害者の受験の障壁となっている受験資格を削除すること。
  3. 国および地方公共団体が実施する試験で、検査基準が障壁となっているものを、改めること。
  4. 受験申請書のひな型を、障害当事者参画のもとで作成し、国が直轄する資格試験への適用はもとより、国が規定する各種の資格試験や検定試験、国・地方公共団体の公務員試験、学校の入学試験等に、その適用を進めること。
  5. 国および地方公共団体が実施する試験について、障害のある受験者・合格者・免許交付者数や合理的配慮提供状況等の年次調査と、結果の公表を行い、状況と課題を明確にすること。
以上
1「法制度の障壁」
政府が「物理、法制度、 文化・情報、意識」という「四つの障壁」の除去を「障害者対策に関する新長期計画(1993)」で掲げて以来、障害者に係る欠格条項については法制度の障壁除去の課題として様々に取り組まれてきました。
2「欠格条項に代わる制限」
2001年の一連の法改正にいたる議論を通じて、業務の本質的部分を補助者や補助手段を得てできることを基準に欠格条項見直しが進められてきました。2001年、第151回国会で、試験や検査が欠格条項に代わる事実上の資格制限や障壁とならないようにするという附帯決議が、衆参両院で採択されました。しかし、本文にあるとおり、試験や検査の制限を除去することと必要なサポートの提供は、現在も極めて不十分な状態です。
3 試験についての政府の取り組み
2005年に「障害者施策推進課長会議」(当時)が、「共通的な配慮事項」および「申請書等における配慮のイメージ」を定め、国が直轄する資格試験には一定の適用が進みました。5年を経た今、その後の変化や受験事例をふまえた検証が必要となっており、かつ、継続した調査が必要です。
4「障害者権利条約」
外務省・障害者の権利に関する条約 (政府仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/Gaiko/treaty/shomei_32.html
障害のある人の権利に関する条約 仮訳 川島聡=長瀬修 仮訳(2008年5月30日付)
http://www.normanet.ne.jp/~jdf/shiryo/convention/index.html
5 インフラの整備
「障害者だけのための特殊な用途のもの」という扱いでは、市場が小さく技術も普及も伸びにくい悪循環が生じます。関連して具体例をあげれば、現在「障がい者制度改革推進会議」は、聴覚障害者むけの生中継(民間放送)と、事後の動画配信(政府サイト)によって、手話も字幕もひとつの見やすい画面で表示され、好評です。これを誰でも生中継で視聴できるようにすることが望まれています。障害の有無の違いをこえてリアルタイムで情報を共有することは、長年の情報格差を埋めて、互いの間にある壁を取り払うことにほかなりません。それぞれの立場から現在進行中のことに参画し、双方向で語り合えるようになります。



2010年2月24日
民主党幹事長 小沢一郎 様

            障害者欠格条項をなくす会    共同代表 福島智・大熊由紀子
            全国障害学生支援センター    代表    殿岡翼
            聴覚障害を持つ医療従事者の会 代表   真島昭彦

                       代表連絡先:障害者欠格条項をなくす会
                       東京都千代田区神田錦町3-11-8 武蔵野ビル5階
                       TEL:03-5282-3137 FAX:03-5282-0017
                       Mail : info_restrict@dpi-japan.org


障害者欠格条項撤廃の課題と各種試験のありかた等に関する意見書

 障害者にかかわる欠格条項については、「法制度の障壁」除去の課題として、様々に取り組まれてきました(註1)。全廃されたものや、以前に比べて可能性が開けたものがあります。また、教育機会も以前に比べて開かれつつあり、障害のある人が高等教育機関に進学して専門知識や技術を身につけることも増えています。
 しかし現在も、「免許を与えないことがある」等の条文で多数の相対的欠格条項が残されています[資料p1]。そのために、勉強しても資格免許を得られないかもしれない不安が、障害者や関係者に広く存在しています。学校も、欠格条項ゆえに免許を与えられないかもしれない学生の受け入れに消極的になることがあります。欠格条項は、このように、修学、資格や免許の取得、その先の就業全般に弊害をもたらしています[資料p6-7]。
 また、進学したいという希望をもっていても、障害ゆえの受験拒否や入学拒否、修学上のサポートが提供されないために、それが叶わない現実があります。障害ゆえの拒否を禁止する法律が国内法にないためです[資料p2-3]。
 さらに、受験資格や、視力や聴力などの一律的な検査基準が、欠格条項に代わる制限(註2)となって、障害のある人の受験と合格を阻んでいます。身体障害者対象の都道府県の職員採用試験でさえ、その殆どが受験資格に、単独で通勤しサポートなしに職務遂行できることを掲げ、点字や手話通訳によって受験できるところは半数もありません[資料p4,10-12]。こうしたことから、国が直轄する資格試験はもとより、各種の資格試験や検定試験、国・地方公共団体の公務員試験について、障害者を排除せずにサポートする包括的なルールづくりが、まずは必要とされています[受験申請書のイメージとして資料p5、関連して註3]。さらに社会の普遍的なルールとして確立していくことで、教育と就業の機会を広く開きます。
 ところが、欠格条項などの法制度の障壁のために、合理的配慮が提供されないために、高等教育機関を卒業しても、自分のもつ力を活かせる仕事・社会的活動が十分にできない現実があります。社会においてトータルに力を発揮する機会を奪われた人が大量に存在することは、その人にとってマイナスであるだけでなく、まわりの人々やあとに続く人たちを含め、社会全体にとっても大きな損失です。
 このような日本の遅れた状況は、国際的にも際立っています。合理的配慮の視点を欠いていることと併せて、2008年に発効した障害者権利条約(註4)にも違反抵触すると言わざるをえません。障害を直接間接の理由とする入学拒否や受験拒否、免許等の不交付、修学や就業で必要な支援が提供されないことがないようにするには、そうした拒否や排除が差別だと明確に規定する差別禁止法が必要です。合理的配慮をおこなわないことは差別として是正できるようにすることが重要です。差別禁止法のもとで現在の法制度にある差別も一掃できます。差別禁止法の制定運用は、全般的にまだ高いとは言えない日本の人権状況を変えていく基盤になります。
 こうした理念レベルの問題に留まらず、障害者に対する取り組みが社会全体に望ましい波及効果をもたらしうる例はさまざまに存在します。例えば、目や耳に障害がある人の情報アクセシビリティに役立っている、音声と文字を相互に変換する技術は、広く学習や読書の場面で、また日本語が母語ではない人に対して、さらに加齢によって情報を得にくくなっている多くの高齢者にとっても、たいへん役立つ技術だと言えます。このような技術を、障害者の利用を想定した情報通信インフラとして整備していくならば、非常に多くの人に利便をもたらし、新しい雇用と需要を生みだし、経済の活性化にもつながるのではないでしょうか[註5]。
 わたしたちは、障害の有無にかかわらず、誰もが希望をもち、教育をうけ、自分の力を発揮しながら様々な人と共に社会生活を送れるようになることを望みます。その妨げになっている法制度や慣習はなくし、基本的な支えになる法制度をつくり、そして個々の人にとって必要なサポートを合理的配慮として得られる環境を求めて、それぞれの領域から、調査や相談活動や提言をおこなってきています。
 障がい者制度改革推進本部・推進会議が発足した意義は大きく、期待も大きなものがあります。民主党において次の各項目を、智恵を集めてぜひとも解決していく課題として位置づけてとりくまれることを、提言します。
  1. 障害者にかかわる欠格条項がある現行法制度について、国内法が障害者権利条約に違反・抵触しないよう、改正・廃止を推進すること。
  2. 国および地方公共団体が実施する試験で、障害者の受験の障壁となっている受験資格を削除すること。
  3. 国および地方公共団体が実施する試験で、検査基準が障壁となっているものを、改めること。
  4. 受験申請書のひな型を、障害当事者参画のもとで作成し、国が直轄する資格試験への適用はもとより、国が規定する各種の資格試験や検定試験、国・地方公共団体の公務員試験、学校の入学試験等に、その適用を進めること。
  5. 国および地方公共団体が実施する試験について、障害のある受験者・合格者・免許交付者数や合理的配慮提供状況等の年次調査と、結果の公表を行い、状況と課題を明確にすること。
以上
1「法制度の障壁」
政府が「物理、法制度、 文化・情報、意識」という「四つの障壁」の除去を「障害者対策に関する新長期計画(1993)」で掲げて以来、障害者に係る欠格条項については法制度の障壁除去の課題として様々に取り組まれてきました。
2「欠格条項に代わる制限」
2001年の一連の法改正にいたる議論を通じて、業務の本質的部分を補助者や補助手段を得てできることを基準に欠格条項見直しが進められてきました。2001年、第151回国会で、試験や検査が欠格条項に代わる事実上の資格制限や障壁とならないようにするという附帯決議が、衆参両院で採択されました。しかし、本文にあるとおり、試験や検査の制限を除去することと必要なサポートの提供は、現在も極めて不十分な状態です。
3 試験についての政府の取り組み
2005年に「障害者施策推進課長会議」(当時)が、「共通的な配慮事項」および「申請書等における配慮のイメージ」を定め、国が直轄する資格試験には一定の適用が進みました。5年を経た今、その後の変化や受験事例をふまえた検証が必要となっており、かつ、継続した調査が必要です。
4「障害者権利条約」
外務省・障害者の権利に関する条約 (政府仮訳)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/Gaiko/treaty/shomei_32.html
障害のある人の権利に関する条約 仮訳 川島聡=長瀬修 仮訳(2008年5月30日付)
http://www.normanet.ne.jp/~jdf/shiryo/convention/index.html
5 インフラの整備
「障害者だけのための特殊な用途のもの」という扱いでは、市場が小さく技術も普及も伸びにくい悪循環が生じます。関連して具体例をあげれば、現在「障がい者制度改革推進会議」は、聴覚障害者むけの生中継(民間放送)と、事後の動画配信(政府サイト)によって、手話も字幕もひとつの見やすい画面で表示され、好評です。これを誰でも生中継で視聴できるようにすることが望まれています。障害の有無の違いをこえてリアルタイムで情報を共有することは、長年の情報格差を埋めて、互いの間にある壁を取り払うことにほかなりません。それぞれの立場から現在進行中のことに参画し、双方向で語り合えるようになります。


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