−1頁− 資料1 今もこれだけある障害者欠格条項 政府が1999年に見直し対象とした63制度に限っても、53制度が相対的欠格として残されています。相対的欠格とは、「免許を与えないことがある」等として、行為や仕事ができるかを障害との関係で審査するものです。 表: 欠格条項が残る53制度  関連表 →資料6 あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゆう師,医師,医薬品等の一般販売業等,医薬品等の製造業等,一般労働者の就業,衛生管理者・作業主任者・クレーン等の運転,家畜人工授精師,火薬類取扱い,改良住宅への単身入居,海技試験(自衛艦),海技従事者国家試験(一般船),外国人の上陸制限,義肢装具士,救急救命士,警備員の制限,警備員指導教育責任者・機械警備業務管理者,警備員等,警備業,けしの栽培,建設機械施工,言語聴覚士,公営住宅への単身入居,航空機乗り組,国家公務員の就業,指定射撃場の設置者及び管理者,視能訓練士,歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士,自動車等の運転,狩猟,柔道整復師,獣医師,診療放射線技師,水先人,船舶乗務のための身体検査基準,通訳案内業,鉄砲又は刀剣類所持,動力車操縦者運転,特定毒物研究者,毒物劇物取扱責任者,美容師,保健師、助産師、看護師又は准看護師,放射性同位元素等の使用、販売等,放射性同位元素又はこれに汚染された物の取扱い並びに放射線発生装置の使用,麻薬の輸入等,無線従事者,薬局開設許可,薬剤師,理学療法士・作業療法士,理容師,臨床検査技師・衛生検査技師,臨床工学技士 グラフ: 政府見直し対象63制度の変化 (共に、視覚・聴言・心身・精神障害者の欠格条項のみを集計) 見直し以前 2000年 絶対的 13(21%) 相対的 29(46%) 絶対的・相対的が混合 21(33%) 見直し以後 2009年 全廃 10(16%) 相対的 53(84%) 表: 欠格条項の総合調査から 最新の調査によれば、443の法律に、障害者にかかわる欠格条項があります 。特定の病気や障害についての欠格条項の新設は2007年以後は見あたらず、 1999-2004年当時の見直しで相対的欠格となったものが、ほとんどそのまま 存続しています。成年後見の欠格と「心身の故障」などの取得後の欠格は、 法律の新設・改定時に、似た法律からコピーされ自動的に追加されて、増加 しています。 欠格条項の内容 対象,数,例 資格を認めない・認めないことがある 成年被後見人・被保佐人のみ,128,公務員、馬主 成年被後見人のみ,18,選挙権・被選挙権 心身の障害,69,行政書士、通訳案内士 精神の機能の障害、精神の著しい障害、等,56,船員、狩猟 視覚や聴覚の機能の障害,27,薬剤師、医師 もっている資格を取り消す・取り消すことがある 「心身の故障」、成年被後見人・被保佐人、何らかの障害,344,各種の委員会の委員、法人役員、学校教員 資格や免許に限らない権利の制限 さまざまな権利制限,35,精神病院の入退院の自己決定、遺言の立会人 情報元: http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/data/data2009.html 2009年9-12月の総合調査から計数。 複数の分類にあてはまる法令が多く法律数443と表の単純合計は一致しません。 −2頁− 資料2 大学における障害学生受け入れの現状 (2008調査より)  全国障害学生支援センター  障害学生の受験を認めるかどうか、入学試験や入学後に、障害学生の支援をするかどうかは、各大学に任されており、対応が不十分。そのため、障害学生が希望する大学を受験できない、障害をもたない学生と同質の学生生活が送れない状況が、各地で起こっている。 表1 障害学生の在籍状況 ※「在籍あり」と回答した大学295校の内訳 障害種別,大学数(校),人数(人),平均在籍人数(人) 肢体障害,235,756,3.2 聴覚障害,180,543,3.0 内部障害,87,355,4.1 視覚障害,101,222,2.2 発達障害,33,110,3.3 精神障害,25,78,3.1 重複障害,22,24,1.1 知的障害,5,4,0.8 1.障害学生の受験可否 受験可:障害学生が大学に志願する前の段階で、受験を認めている状態。 受験可否未定:個々の障害学生の障害程度や、入学後のサポート可否を検討した上で、大学が受験を認めるかどうかを判断する状態。 受験不可:障害学生の受験を認めていない状態。 表2 障害学生の受験可否 障害,受験可(大学数(校),有効回答比),受験可否未定(大学数(校),有効回答比),受験不可(大学数(校),有効回答比) 肢体障害,(244,56.5%),(181,41.9%),(7,1.6%) 聴覚障害,(230,53.2%),(187,43.3%),(15,3.5%) 視覚障害,(194,44.9%),(218,50.5%).(20,4.6%) 内部障害,(188,43.5%),(233,53.9%),(11,2.5%) 精神障害,(112,25.9%),(284,65.7%),(36,8.3%) 発達障害,(85,19.7%),(305,70.6%),(42,9.7%) 知的障害,(78,18.1%),(301,69.7%),(53,12.3%) 2.受験時の配慮  何らかの配慮をする大学は増えてきているが、必ずしも障害学生が望む形になっていない。受験を認めても、配慮が不十分なため、結果的に障害学生の能力が十分に評価されない現実がある。 表3 肢体障害 受験時配慮内容 ※「入学試験で配慮あり」と回答した大学350校の詳細 配慮内容,大学数(校),有効回答比 拡大文字用紙に解答,52,14.9% チェックによる解答,32,9.1% 代筆での解答,19,5.4% パソコンによる解答,16,4.6% 車での来校を認める,149,42.6% 試験室入り口までの付き添いを認める,137,39.1% 別室受験,132,37.7% −3頁− 表4 聴覚障害 受験時配慮内容  ※「入学試験で配慮あり」と回答した大学332校の詳細 配慮内容,大学数(校),有効回答比 面接時の筆談,66,19.9% 手話通訳者の利用,18,5.4% 手書き要約筆記者の利用,11,3.3% パソコン通訳者の利用,3,0.9% 座席位置の配慮,141,42.5% 補聴器の使用,126,38.0% 注意事項の文書伝達,104,31.3% 表5 視覚障害 受験時配慮内容 ※「入学試験で配慮あり」と回答した大学324校の詳細 配慮内容,大学数(校),有効回答比 拡大文字による出題,94,29.0% 点字による出題,67,20.7% パソコンでの出題,6,1.9% 車での来校を認める,130,40.1% 別室受験,128,39.5% 試験室入り口までの付き添いを認める,125,38.6% 3.入学後の支援  障害学生は、入学後もさまざまな分野での支援が必要だが、下表のように実施は不十分。 表6 入学後の支援内容 支援内容,大学数(校),有効回答比 一般講義での配慮,210,48.6% 定期試験での配慮,193,44.7% 体育実技での配慮,162,37.5% 語学授業での配慮,101,23.4% 実習での配慮,92,21.3% 実験での配慮,55,12.7% 肢体障害学生への支援,174,40.3% 聴覚障害学生への支援,139,32.2% 視覚障害学生への支援,111,25.7% 注1:上記の表は、全国障害学生支援センターが実施した「大学における障害学生の受け入れ状況に関する調査」の結果をもとにしている。 調査期間:2006年12月〜2007年3月実施調査対象:全国すべての大学・大学校 745校  回答数:420校(56%) 数字は、特別な表記がない場合、回答大学数420校に学部別回答を含めた、計432校中の内訳。各大学の詳細なデータは、書籍『大学案内2008障害者版』にて公表。 注2:調査・書籍について参考 154国会 衆議院 厚生労働委員会6号 2002年4月5日 石毛えい子議員 154国会 参議院 内閣委員会8号 2002年4月9日 田嶋陽子議員 注3:全国障害学生支援センターは、障害をもつスタッフが中心に、調査、相談・情報提供、機関誌の発行、障害学生交流会の開催等を行うボランティア団体。平成20年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰の「内閣府特命担当大臣表彰優良賞」に選ばれた。 全国障害学生支援センター 問い合わせ先 〒228-0818 神奈川県相模原市上鶴間本町3-14-22 田園コーポ3号室  電話・FAX 042-746-7719 E-mail info@nscsd.jp URL   http://www.nscsd.jp/ −4頁− 資料3 障害者むけ試験でも横行する門前払い この表は、都道府県の身体障害者を対象にした職員採用試験の、主に一般事務職についてです。障害者対象の試験にもかかわらず、通勤や勤務にサポートがいらないことを受験資格にしており、点字で受験できると明記しているのは20都道府県、手話通訳の必要を受験申込書で聞いているのは22都道府県だけです。 記号の黒丸●は「あり」,白丸○は「なし」で、「OK」は試験案内や受験申込書に、点字受験できる、希望に応じて手話通訳を用意する等の記載がある。「No」は試験案内・申込書に点字や手話について記載されていません。 たとえば1の北海道は、自力で通勤できる・介助者なしで職務遂行できる・口頭の試験(面接試験)に対応できる・活字印刷文に対応できる・という受験資格はいずれも「ない」。そして、点字試験、手話通訳をつけた試験が「ある」です。北海道のようなところは表のとおりわずかです。「活字印刷文に対応できる」という受験資格は、点字試験を行わないことを意味し、点字ユーザーを門前払いしています。また、「口頭の試験に対応できる」受験資格はないところでも、手話通訳や文字通訳をつけない実態が少なからずみられます。 表: 都道府県の身体障害者対象採用試験 通番,自治体名,受験資格の記述(自力通勤,介助なし勤務,口頭面接,活字印刷文),試験において(点字試験,手話通訳) 1,北海道,○,○,○,○,OK,OK 2,青森県,●,●,○,○,OK, 3,岩手県,●,●,○,○,OK,OK 4,宮城県,●,●,○,○,OK,OK 5,秋田県,●,●,○,○,OK,OK 6,山形県,●,●,○,●,No, 7,福島県,●,●,○,●,No,OK 8,茨城県,●,●,○,●,, 9,栃木県,●,●,○,●,,OK, 10,群馬県,,,,,, 11,埼玉県,●,●,○,○,OK, 12,千葉県,●,●,○,○,OK,OK 13,東京都,●,●,○,●,, 14,神奈川県,●,●,○,○,OK,OK 15,新潟県,●,●,○,●,, 16,富山県,,,,,, 17,石川県,●,●,○,●,, 18,福井県,●,●,○,●,, 19,山梨県,●,●,○,●,, 20,長野県,●,●,○,●,No,OK 21,岐阜県,●,●,○,●,, 22,静岡県,○,○,○,○,OK,No 23,愛知県,●,●,○,●,No,OK 24,三重県,●,●,○,●,No,OK 25,滋賀県,○,●,○,●,No,OK 26,京都府,●,●,○,○,OK, 27,大阪府,○,○,○,○,OK,OK 28,兵庫県,○,○,○,○,OK,OK 29,奈良県,●,●,○,●,No,OK 30,和歌山県,●,●,○,○,OK,OK 31,鳥取県,○,●,○,●,No,No 32,島根県,●,●,○,●,No,OK 33,岡山県,●,●,○,●,No, 34,広島県,●,●,○,●,, 35,山口県,●,●,○,●,, 36,徳島県,●,●,●,●,No,No 37,香川県,●,●,○,●,No,No 38,愛媛県,●,●,●,●,No,No 39,高知県,●,●,○,○,OK,No 40,福岡県,●,●,○,○,OK,OK 41,佐賀県,○,●,○,●,, 42,長崎県,●,●,○,○,OK,OK 43,熊本県,●,●,○,○,OK,OK 44,大分県,●,●,○,●,No,OK 45,宮崎県,●,●,○,○,OK,OK 46,鹿児島県,●,●,○,○,OK, 47,沖縄県,●,●,○,○,OK, 1,札幌市,○,○,○,○,OK, 2,仙台市,●,●,○,○,OK,OK 3,新潟市,○,●,○,○,OK,OK 4,さいたま市,●,●,○,○,OK, 5,千葉市,●,●,○,○,OK, 6,川崎市,○,●,○,○,OK,OK 7,横浜市,○,●,○,○,OK,OK 8,静岡市,○,●,○,○,OK,OK 9,浜松市,●,●,○,○,OK,OK 10,名古屋市,●,●,○,○,OK,OK 11,神戸市,○,●,○,○,OK,OK 12,大阪市,○,○,○,○,OK,OK 13,堺市,●,●,○,○,OK, 14,京都市,○,●,○,○,OK, 15,岡山市,,,,,, 16,広島市,○,●,○,○,OK, 17,福岡市,●,●,○,○,OK, 18,北九州市,●,●,○,○,OK,OK 19,都特別区,●,●,○,●,No, 情報元および詳細: http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/koyou.html −5頁− 資料4.こんな受験申請書ならば−検討のたたき台として (まえがき)障害や病気があり何らかのニーズをもつ人が実質的に平等に受験できるようにするために、事前に連絡相談、調整を進める目的で、ニーズのある人は、提出してください。その趣旨から当然のことですが、提出による不利益取り扱いを行わないことを申し添えます。この申請書には障害者手帳の写し又は医師の診断書等を添付してください。障害や病気がなくニーズがない人が、それにもかかわらず申請することを避けるためであり、現状においては必要な手続きとしてご了解ください。 項目1.選択肢のなかにニーズと一致するものがあれば、その番号を右の枠内に記入してください。 機器、器具を選択した場合は、それは受験者が持参できるものかどうかを記載してください。 記入例 (番号は一行に一つだけ記入してください) 選択肢(複数選択可) 1、試験方法を口頭試問・口述回答に変更すること ※ 2、点字による出題と解答 ※ 3、音声PCによる問題読解と解答 ※ 4、拡大問題用紙・拡大解答用紙の提供 5、マークシートに代わる文字記入解答用紙の提供 6、マークシートに代わるチェック解答用紙の提供 7、拡大鏡等の使用 8、照明器具の使用 9、代筆者(手書き解答が必須の試験について) 10、PCやワープロによる解答記入 ※ 11、車いすで座れる机の提供 12、介助者の同伴 13、手話通訳者 14、文字通訳者 15、補聴機器の使用 16、注意事項等の文字による伝達(板書・プリント等) 17、試験時間中の糖質類等の捕飲食及び服薬等 18、別室においての受験 ※はあらかじめ別室受験が想定されるものです 項目2.選択肢に記載があることのほかに、希望する配慮事項があれば具体的に記入してください。 項目3.上に選択または記述されたことが必要な理由を記入してください。(例:聴覚言語障害により音声言語での応答にかわるものとして文字通訳が必要です) 項目4.上に関して試験実施者と詳しく相談調整したい点、確認したい点があれば記入してください。(例:PC文字通訳者を希望します) 項目5.受験者の連絡先 ※ 障害のため、FAX又はメールによる連絡を希望される場合には、FAX番号又はメールアドレスを記入してください。 ふりがな 氏名 現住所 〒 電話番号 FAX番号 メールアドレス −6頁− 資料5.寄せられた受験体験から ■ 修学や資格試験受験に合理的配慮がない障壁 □看護師(2008-) メッセージ:幼いときから看護師になろうと思ってきて、地元の看護学校を受験して合格した。入学に際しての面接で聴覚障害があることを伝えたら、学校から入学辞退を求められ、結局、別の遠隔地の看護学校を受験して入学した。ストレスと疲労も重なって聴力が大幅に低下し、国家試験を受験できるか、指導を受けている教員に相談するなかで、入学した学校には聴覚障害学生の修学をサポートする姿勢がないことがはっきりした。退学して四年制大学看護学部をめざして勉強中。 補足:2001年の法改正以降、聴覚障害学生がいる医療系の大学等は倍増し、看護学部・学校に入学する聴覚障害者は、その中でもとくに多数を占めている。それにもかかわらず、調査によると、看護学部の66%が、「特に配慮はしていず、学生自身の努力に任せている」と回答しており、手話・ノートテイク・パソコン通訳の実施は皆無である。現状では、看護学部や学校に進学する人は比較的聴力がある人が多いとみられるが、いくらかの聴力があっても、集団の議論や実習は、音声言語と補聴によるカバーは不可能で、目でみてわかるように文字情報などでサポートすることが必須である。文科省をはじめとして国からも積極的に支える必要がある。調査は「医療系大学等における聴覚障害学生への講義保障のための調査研事業報告書」(2009年 社会福祉法人全国手話研修センター発行)を参照。 □精神保健福祉士,社会福祉士試験(2008−) メッセージ:働きかけた結果、模擬試験では受託事業者が音声パソコンによる受験を認めた。しかし、本番の試験については、実施主体の社会福祉振興・試験センターが、導入に消極的で実現していない。 □日本語検定試験(2007−) メッセージ:リスニング試験の代替試験がなく、聴覚障害者が合格することがほぼ不可能な状況がある。同じ語学試験でも「英検」は、テロップを流してリスニング試験の代替試験を実施している。日本語検定試験に合格できるかどうかは、日本での就学や就業に直結するため、外国出身の聴覚障害者らがリスニング試験の代替試験を実施するよう要望を出し働きかけをしているが、試験実施者は応じていない。 □税理士試験(2007−) メッセージ:褥瘡のできやすい全身性障害で、移動や受験時の外泊が大きな負担となるため、自宅で受験することを希望しているが、認められていない。 ■自治体職員採用試験における障壁 □地方公共団体の教員採用試験(2008−) メッセージ:十代で失明し、学生のときから、音声パソコンによる教員採用試験受験を希望して、いくつかの自治体に要望してきた。2008年度から、大阪市と大阪府が全国で初めて、行政職採用試験で音声パソコンによる試験を導入したが、教育委員会は導入していず受験できない。大学院に進学して勉強中。 補足:視覚障害者のなかで、試験で使えるレベルで点字の読み書きをこなしている人の割合は低く、「1.5倍」といった試験時間延長の範囲では回答が困難といわれる。現在は視覚障害者の間で、音声パソコンも普及しているため、点字試験と合わせて、音声パソコン試験も実施されることが望まれている。身体障害者採用試験で、2009年度から、仙台市が新たに導入した。教育委員会の教員採用における障害者の雇用率は著しく低いことからも、積極的な取り組みが必要である。 □地方公共団体の保育士採用試験(2008−) 民間保育園で7年の勤務実績をもつ全盲の保育士が、市の保育士採用試験の受験申し込みを拒否された。この件は新聞でも取り上げられ、その後、受験(点字受験)が認められた。詳しくは資料6を参照。 −7頁− □地方公共団体の障害者職員採用試験の受験資格(2008−) 横須賀市は、従来から点字試験をおこなっていなかったうえに、拡大文字、面接での手話通訳なども不可とする障害者職員採用試験を2008年度に行った。それに対する抗議を受けて、市は、2008年度に、点字試験以外は認める再試験を実施した。同時に「自力通勤」受験資格は削除し「自力(介助者なしに)職務遂行」を受験資格に残した。続いて2009年には点字試験を認めることとした。 □地方公共団体の障害者職員採用試験(手話通訳)(2009−) メッセージ:「口頭による試験に対応できること」という受験資格は設けていない地元自治体に対して、毎回、面接試験に手話通訳者をつけてほしいと要望しているが、受け入れられない。その自治体を毎回受験して、一次試験を通過しながら、二次面接で不合格とされ続けている。 補足:「介助者なしに職務を遂行できなければならない」という考え方が、手話通訳や文字通訳、点字などを必須とする人を採用対象から除外することにつながっている。 ■自動車運転免許や電車の運転士の検査基準の障壁 □自動車の運転免許・聴力検査基準と制度のありかた(2008-) メッセージ:長年、毎日のように運転している。「聴力基準以下だから、ものを積載できる構造の4ナンバーの自動車を運転できない、原付も自動二輪もだめ」という制度に納得できない。なぜ運転について聴力を基準にするのか理解できない。 □自動車の運転免許・視力検査基準と制度のありかた(2007-) メッセージ:自分は矯正視力0.5程度のロービジョンで、日本では運転免許を交付されない。米国の大半の州では、日本では基準以下とされる0.7未満の視力の人も、運転免許をもち、運転することができる。 □電車の運転士(2008-) メッセージ:高校生で、片耳に聴力障害がある。夢見てきた運転士の仕事をめざして鉄道会社に就職しようとしているが、運転士になれるかどうか、出身校の先生も心配している。 ■外国の空は飛べるのに−諸外国にはない障壁 □グライダーパイロットライセンス(2009-) メッセージ:無事にアメリカのグライダーパイロットのライセンスがとれました!片目でもぜんぜん大丈夫です。日本も変わるといいのですが。「障害があるから難しい・・・」ではなく、「障害があるから、どうしたらうまくいくんだろう・・・」と考える人が増える世の中になってほしい。 補足:生まれたときから片目が見えない人で、ハワイでグライダーパイロットの教習講習を受けてきた。日本では二種自動車免許も航空免許も身体検査基準で不可、その他にも警察官など身体検査で不可とされる職業が多数ある。上記の自動車免許についても、日本は聴覚障害者を制限しているが、世界的には聴力不問の国が多く、視力基準も日本より低く、かつ、その人がどうやって安全に運転できるかに着目する。 −8頁− 資料6 資格試験等と所轄官庁の一覧 管轄省庁(2010年現在の名称),許可・届出(1)講習(2),試験名,資格免許名(63制度),法律名 経済産業省,1,,火薬類取扱い,火薬類取締法 環境庁,,狩猟免許試験,狩猟免許,鳥獣保護及び狩猟の適正化に関する法律 警察庁,,警備業務検定試験,警備員等の検定資格,警備業法 警察庁,2,,警備員指導教育責任者・機械警備業務管理者,警備業法 警察庁,1,,警備業の認定,警備業法 警察庁,,警備業務検定試験,警備員の制限,警備業法 警察庁,1,,指定射撃場の設置者及び管理者,指定射撃場の指定に関する内閣府令 警察庁,1,,鉄砲又は刀剣類所持に係る許可,銃砲刀剣類所持等取締法 警察庁,,自動車運転免許試験,自動車等の運転免許,道路交通法 警察庁,1,,風俗営業の許可,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 警察庁,1,,風俗営業の営業所の管理者,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 警察庁,1,,風俗営業の許可基準に係る調査業務,風俗環境浄化協会に関する規則 厚生労働省,1,,けしの栽培許可,あへん法 厚生労働省,,あん摩マッサージ指圧師試験,あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゆう師の免許,あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 厚生労働省,,はり師試験,あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゆう師の免許,あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 厚生労働省,,きゆう師試験,あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゆう師の免許,あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 厚生労働省,,医師国家試験,医師免許,医師法 厚生労働省,,医師国家試験予備試験,医師国家試験・予備試験,医師法 厚生労働省,,管理栄養士国家試験,管理栄養士免許,栄養士法 厚生労働省,1,,栄養士免許,栄養士法 厚生労働省,,技士装具士国家試験,義肢装具士免許,義肢装具士法 厚生労働省,,救急救命士国家試験,救急救命士免許,救急救命士法 厚生労働省,,言語聴覚士国家試験,言語聴覚士免許,言語聴覚士法 厚生労働省,,視能訓練士国家試験,視能訓練士免許,視能訓練士法 厚生労働省,,歯科医師国家試験,歯科医師免許,歯科医師法 厚生労働省,,歯科医師国家試験予備試験,歯科医師国家試験・予備試験,歯科医師法 厚生労働省,,歯科衛生士試験,歯科衛生士免許,歯科衛生士法 厚生労働省,,歯科技工士試験,歯科技工士免許,歯科技工士法 厚生労働省,,柔道整復師試験,柔道整復師免許,柔道整復師法 厚生労働省,,診療放射線技師試験,診療放射線技師免許,診療放射線技師法 厚生労働省/都道府県,,製菓衛生師試験,製菓衛生師免許,製菓衛生師法 厚生労働省/都道府県,,調理師試験,調理師免許,調理師法 厚生労働省/都道府県,,毒別劇物取扱責任者試験,毒物劇物取扱責任者,毒物及び劇物取締法 厚生労働省,1,,特定毒物研究者の許可,毒物及び劇物取締法 厚生労働省/財団法人理容師美容師試験研修センター,,美容師試験,美容師免許,美容師法 厚生労働省,,保健師国家試験,保健師、助産師、看護師又は准看護師免許,保健師助産師看護師法 厚生労働省,,助産師国家試験,保健師、助産師、看護師又は准看護師免許,保健師助産師看護師法 −9頁− 管轄省庁(2010年現在の名称),許可・届出(1)講習(2),試験名,資格免許名(63制度),法律名 厚生労働省,,看護師国家試験,保健師、助産師、看護師又は准看護師免許,保健師助産師看護師法 厚生労働省/都道府県,,准看護師試験,保健師、助産師、看護師又は准看護師免許,保健師助産師看護師法 厚生労働省,2,,麻薬の輸入等に係る免許,麻薬及び向精神薬取締法 厚生労働省,,薬剤師国家試験,薬剤師免許,薬剤師法 厚生労働省,1,,薬局開設許可,薬事法 厚生労働省,1,,医薬品等の製造業等許可,薬事法 厚生労働省,1,,医薬品等の一般販売業等の許可,薬事法 厚生労働省,,理学療法師国家試験,理学療法士・作業療法士免許,理学療法士及び作業療法士法 厚生労働省,,作業療法士国家試験,理学療法士・作業療法士免許,理学療法士及び作業療法士法 厚生労働省/財団法人理容師美容師試験研修センター,,理容師試験,理容師免許,理容師法 厚生労働省,,臨床検査技師国家試験,臨床検査技師免許,臨床検査技師等に関する法律 厚生労働省,,,衛生検査技師免許※2005年に資格廃止、臨床に統合,臨床検査技師等に関する法律 厚生労働省,,臨床工学技士国家試験,臨床工学技士免許,臨床工学技士法 厚生労働省,,,一般労働者の就業禁止,労働安全衛生規則 厚生労働省,,衛生管理者試験、作業主任者免許試験、クレーン運転士免許試験,衛生管理者・作業主任者・クレーン等の運転免許,労働安全衛生法 国土交通省,,建設機械施工技術検定試験,建設機械施工の技術検定,建設業法施行令 国土交通省,,,公営住宅への単身入居,公営住宅法施行令 国土交通省,,,航空機乗り組のための身体検査基準,航空法 国土交通省,,,改良住宅への単身入居,住宅地区改良法施行令 国土交通省,,水先人試験,水先人免許,水先法 国土交通省,,,船舶乗務のための身体検査基準,船員法 国土交通省,,海技従事者国家試験,海技従事者国家試験(一般船),船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則 国土交通省,,,地域伝統芸能等通訳案内業免許,地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律 国土交通省,,通訳案内業国家試験,通訳案内業免許,通訳案内士法 国土交通省,,動力者操縦者試験,動力車操縦者運転免許,動力車操縦者運転免許に関する省令 人事院,,,国家公務員の就業禁止,人事院規則 総務省/財団法人日本無線協会,,無線従事者国家試験,無線従事者免許,電波法 農林水産省,2,,家畜人工授精師免許,家畜改良増殖法 農林水産省,,獣医師国家試験,獣医師免許,獣医師法 文部科学省,1,,放射性同位元素等の使用、販売等の許可,放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律 文部科学省,1,,放射性同位元素又はこれに汚染された物の取扱い並びに放射線発生装置の使用の制限,放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律 法務省,,,検察審査員,検察審査会法 法務省,,,外国人の上陸制限,出入国管理及び難民認定法 防衛省,,海技試験,海技試験制度(自衛艦),船舶の配員の基準に関する訓令 −10頁− 資料7 報道から 2009年7月7日 毎日新聞 全盲女性「受験させて」 保育士採用試験 大阪市が門前払い 同年、大阪市は保育士試験で点字受験を認め、次いで、保健師についても実施することとしました。大阪府枚方市も複数の職種で点字試験を行う決定をしました。 −11頁− 2009年12月21日 毎日新聞 点字実施20道府県のみ 身障者枠公務員試験 民間団体調べ −12頁− 2009年12月21日 毎日新聞 職場介助者と二人三脚 先進的取り組み 「障害者雇用は責務」 前頁は一面に掲載され、右は続きの記事として社会面に掲載されました。 法律の欠格条項も、受験資格も、入口に設けられたバリアであり、入口のバリアをなくさなければ入ることもできませんが、入ってからのことも重要です。 学校や職場や生活上の介助や情報アクセスを保障する通訳など、個人をトータルにサポートできる制度が求められています。