国土交通省との「円卓会議」報告


公営住宅の法制度を、精神・知的障害者が単身入居できるものに!

記録・文責:瀬山紀子(障害者欠格条項をなくす会・事務局)
「障害者に係る賃貸住宅問題」についての市民円卓会議より
2003年9月9日13:00〜14:30 @衆議院第2議員会館にて

 9月に、「市民がつくる政策調査会」の市民円卓会議として、障害者に係る賃貸住宅問題についての国土交通省との話し合いが、石毛^子さん(衆議院議員)のコーディネートで行われました。
 この会議は、欠格条項をなくす会、こらーる・たいとう、ピープルファースト、DPI日本会議などが連携して、これまで継続して取り組んできた公営住宅への知的・精神障害者の単身入居問題と、民間の賃貸住宅への居住支援制度について、さらに話を進めていくための会議として設けられました。公営住宅の欠格条項と最近の取組について、ニュースレター22,23,26号にも記事があります。
 会議は、事前に国土交通省に質問状を出し、当日、同省から出された回答をもとに、話し合いを進めるかたちで行われました。

 会議では、国土交通省の公営住宅担当官が、公営住宅法施行令の改正の内容を把握していないことを露呈する発言(「今も、重度の身体障害の方の、単身入居はできない」等)をし、担当官が、その場で誤りを認め謝罪をするなど、唖然とする一幕もありました。こうした発言があると、果たして、これまでの話し合いの積み重ねは、どこにいってしまったのかと疑いたくなります。
 会議では、知的障害、精神障害をもつ人たちの入居のための支援制度及び基盤整備等が整っていないため、公営住宅への単身入居は困難であり、グループホームへの入居をすすめていきたい、という同省に対して、当事者の側から、地域での自立生活を希望する障害当事者の声に耳を傾け、実態にそった制度改正を行うようにという声が多数出されました。
 問題提起者は、DPI日本会議、こらーる・たいとう、ピープルファースト、障害者欠格条項をなくす会、他で、国土交通省は、公営住宅管理対策官、住宅局総務課指導係長、他2名でした。以下、同省からの回答を受けての主な質疑応答をご報告します。

<医療面を含めた基盤整備について>
【問題提起】
・国土交通省は、医療面を含めた基盤整備ということをくり返すが、そもそも、医療的なケアが必要な人ばかりではないのではないか。
・基盤整備が整わないと入居できないというのは、おかしいということをすでに実態から提示したはずだが、今回の説明が、それを検討した上でのものとは考えがたい。
・今、まさに、住宅を必要としている人がいるという実態を知って、問題が医療面を含めた支援基盤の整備とは別の問題であるということを理解して欲しい。
・医療面も含めた日常生活上のケア等の支援が必要ということは、当事者が一番よくわかっていることで、国土交通省が心配することではない。当事者は、わかった上で、今、単身入居を望んでいるという実態をどう考えているのか。とても不思議な説明の表現だと思う。
・医療面のサポートといっても、実態は、さまざま。基盤整備というのは、さまざまな環境を合わせて考えないと、一面的な制度整備だけを念頭においても実態とはそぐわないのではないか。

<グループホームについて>
【問題提起】
・グループホームは生活の場であって、そもそも、医療とは切り離して考えるべきではないか。
・地域での自立した生活の最終目標は、一人暮らしということであって、グループホームではあり得ない。
・「グループホームなら、どうぞ」という話はよく聞かされるが、グループホームで満足する人ばかりではなく、本当に自立したいと思ったら、公営住宅や民間アパートをかりて、自分で地域で生きていきたいと思う。
・グループホームはミニミニ施設であり、自分のお金も自分で管理できない。虐待も行われている。
・知的・精神の単身入居の可能性を検討しているのか、それともグループホームだけという方針なのか、省としての方針を聞きたい。
・グループホームであっても、医療面のサポートは整っているとは言えないのではないか。そのあたりの整合性がはっきりしない。本当に、医療面が整う、整わないというのが問題なのか。
【国土交通省からの応答】
・グループホーム事業はまだ端緒についたばかりの事業なので、これから拡大していきたい。

<実態の把握、及び実態調査について>
【問題提起】
・実態調査が必要という意見に対する回答、及び、当事者の方々の生活の実情をどのようなものとして認識しているのか、という二つのことについて国土交通省から回答をもらいたい。
【国土交通省からの応答】
・実態調査については、公営住宅の供給主体である各個別自治体がやるべきことだと考えている。
・実情についても、国よりも、各個別自治体が把握するべきだと思う。それで問題があれば、自治体が国に問題を提示して欲しい。

<制度改正の可能性について>
【問題提起】
・実際の当事者の声を聞いてほしい。
・住宅問題は、人権問題であるという認識を持ってほしい。
・現実をみて、より本人が望んでいるサービスを提供するという方針を大切にしてほしい。
・安心して住めるところを提供していくという方針があるのであれば、私たち当事者を交えて話し合っていってほしい。
【国土交通省からの応答】
・公営住宅の現場やその多面的なことについて不勉強なので、今後、勉強していきたい。
・制度改正の可能性を検討して行きたい。

<自治体と省の連絡会について>
【問題提起】
・自治体と省の連絡会があるのなら、そこに参考人として当事者が出席することは可能か。また、そうした可能性について検討することを考えているのか。
【国土交通省からの応答】
・自治体との連絡会などがあるので、そうしたいろいろな場面で、入居ニーズを聞きながら、制度を改正していくつもりはある。
・連絡会は、もしも参加できる機会があれば呼ぶが、必ずしも参加してもらうことはないのではないか、と考えている。

<民間アパート問題について>
【問題提起】
・問題は家賃が高いということばかりではなく、民間アパートをかりる際に受ける障害を理由とする入居拒否や、ローンを組むことができない問題などなど様々ある。
・高齢者向けの制度では、やむを得ない事情で家賃の不払いがあったときや保証人が見つからない場合などをサポートする仕組みができている。障害者に関しても同様のニーズがあることを理解し、必要な支援制度を検討していってほしい。


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