自動運転技術の進展に伴う運転免許の視力基準緩和について(2021年3月)


 山田(仮名)と申します。私は運転歴45年の「弱視運転者(Low Vision Driver)」です。昔から矯正視力が0.7と0.1程度しかありませんが、何とか更新出来ている状態です。
 そんな私から提案ですが、「弱視でも安全に運転できる自動車の開発」とセットで「運転免許の視力基準緩和」ができないものでしょうか。
 2007年に「障害者欠格条項をなくす会」から警察庁へ要望書を提出した時は、「視力を代替する手段がないので緩和は認められない。」との事で却下されております。
 しかしあれから15年経過し、技術は確実に進歩しているのです。
 今、自動車業界は100年に一度の大変革期を迎えていると言われており、数年後には自動運転の商用車(バス、タクシー)がサービスを開始する勢いで実証実験が行われています。
 これはこれでありがたいことであり、そのまま発展・普及していって欲しいと思いますが、私が言いたいのは、国は弱視者自身が運転して自由に移動できる車の開発を考えていないということです。
 技術が進歩して無人タクシーが可能になるのであれば、その手前に視力を補助してくれる技術を登載した車両の開発普及が可能なはずです。この場合、運転免許制度の見直しも必要です。
 ただどのようにすれば弱視者でも運転できる自動車ができるかが問題ですが、以下は私の運転体験を通して考える案です。
 以前は運転していて道案内の看板が見えづらかったのですが、ナビが登場してその問題を解決してくれました。ナビは踏切も事前に教えてくれます。
 そして今見づらいと思うのが信号機の矢印です。以前より増えている上、交差点が大型化しても矢印のサイズは変わっていません。
 これも信号機が情報を発信して、車載器に表示させることができれば、解決できることです。(矢印式信号機だけなら数も多くありません。)
 以上のことができるだけでも多くの弱視者が十分に運転できるようになると思います。
 繰り返しになりますが、運転していて一番視力を要求されるのは、矢印式信号機や補助標識、看板などであり、視力基準の0.7もこれらを見ることができるラインとして設定されているものと思われます。
 逆に人や車に対しては見えづらいと感じたことは一度もありません。0.4程度の視力でも運転は可能です。
 また工事作業員の誘導も見にくい場合があるのですが、これも誘導棒から情報を発信するようにすれば、車載器に表示させることが可能になります。
 そして更に、フロントガラスを大型スクリーン化してリアルタイム画像処理した前方映像を表示させれば、次の様なことが可能となり、運転は更に容易になります。(フロントガラスは透明でなくてはならないという法律を変える必要がありますが。)
 @信号機、歩行者、自転車、自動車などをAR(拡張現実)技術により強調表示させる。
 Aヘッドライト、太陽、日陰、トンネルの出入り口など明暗差が大きい部分は、HDR技術により白飛び・黒つぶれすることなく表示させる。
 B雨、霧、吹雪などは、これらを消去して表示させる。
 C夜間や、日中一面が雪で車道と歩道の見分けが付きにくい場合も、明るさ、コントラストを自動調整する。
 映像だと立体視できないのではと思うかも知れませんが、立体視できなくても私の様に問題なく運転できるのです。
 以上は私が以前から考えていた事ですが、先日「政府の規制改革推進会議は自動運転機能を備えた車に限り運転できる「限定免許」の創設に向けた検討を始めた。」という記事を見ました。
 この制度を弱視者救済の方向で国が考えているなら嬉しいのですが、残念ながらこれは高齢者を対象とした制度でした。
 しかし、私としては上記の様な各種補助装置を盛り込めば、対象を弱視者まで広げても安全を担保できるのではないかと思う次第です。
 一律に「不可」としてきた基準と判定のありかたを見直すことを求めます。個人の状況、および、自動車を含む技術開発や運転環境を考慮して、柔軟に対応する可能性が広がっています。補助装置で完全に補えない場合でも、視力の状況や運転する環境もふまえた個別アセスメントを行うことで、人によっては、運転は昼間の一般道に限るとか、自宅から半径○○q以内に限るとか条件を付けることはありえます。どのようにすればその人が安全に快適に運転ができるようになるかを考えるべきです。
(参考)ニュースサイトから
2020年8月21日<SankeiBiz>
「規制改革推進会議が自動運転の『限定免許』検討 先行海外勢に対抗」
 https://www.sankeibiz.jp/business/news/200821/bsc2008210500007-n1.htm
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初出:「障害者欠格条項をなくす会ニュースレター」81号 2021年3月発行


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