〜はじめに〜
 DPIとは、「われら自身(障害当事者)の声」をスローガンに国際障害者年である1981年12月、シンガポールに世界53ケ国の障害者の代表が集まり結成された障害当事者による国際組織です。
 これまで、障害者の「完全参加と平等」の実現に向けて取り組みを進めてきたDPIは、現在、全世界で100ケ国以上が加盟し、国連経済社会委員会(ECOSOC)、世界保健機関(WHO)及び国連教育科学文化機関(UNESCO)の諮問機関としての立場にあり、国際労働機関(ILO)でも、協力関係にある団体として特別リストに載っている世界最大の障害当事者による非政府組織(NGO)です。日本では1986年3月にDPI日本会議が設立されました。
 DPIは、人権を基本とし、障害種別を越えた障害当事者による活動を基本理念としており、4年に1度、福祉・人権・平和・環境・女性などの各分野が抱える課題について、世界の障害者の視点で考え行動提起などをする「DPI世界会議」を開いています。
 過去においては、第1回が1981年12月にシンガポール、第2回が85年9月にバハマ諸島のナッソー、第3回が92年4月にカナダのバンクーバー、第4回が94年12月にオーストラリアのシドニーで開催され、昨年12月、メキシコのメキシコシティーの第5回大会で、2002年の第6回大会の開催地として札幌が正式に発表されました。

〜三つのスローガン〜
 私たちはこれまで北海道で三つのスローガンを掲げてこの誘致に向けた取り組みを進めてきました。一つは、「We have a dream ,too. 」です。これは、「I Have a Dream. 」という米国の公民権運動の指導者であった故キング牧師の有名な言葉に由来しています。「私には夢がある。いつの日か白人も黒人も差別のない、共に生きる社会の実現を・・・。」そう訴えたこの演説と同じく、私たちもまた夢をもっています。「私たちにも夢がある。高齢者も子どもも若者も、女性も男性も、障害があってもなくても、そして、どんな病を抱えていてもそうでなくても、だれもが安心して暮らすことのできる社会となることを。すべての人々が等しく価値あり、尊重される社会となることを。そして、本当の意味で共に生きる社会が実現されることを・・・。」
 もう一つは、「ハートのオリンピック」です。DPIを開催する2002年は、「アジア・太平洋障害者の10年」と「障害者プラン」の最終年といった障害者福祉の大きな節目の年ですが、1972年に札幌で冬季オリンピックが開催されており、この年は、いわば札幌冬季オリンピック30周年の年でもあります。このオリンピックの開催で、地下鉄などが設置され札幌の都市基盤が整備されました。また、多くの外国の人々が訪れ、歴史的に国際都市サッポロが誕生する大きな起点になった催しとなりました。しかし、当時には、「ノーマライゼーション」「バリアフリー」といった共生理念はなく、当時つくられた地下鉄南北線などの施設は、障害者の利用を全く想定したものではありませんでした。
 であれば、その30年後に開催する、DPI世界会議は、こうした共生理念に基づく街づくり、生活空間づくりの歴史的起点にしたいという「願い」を込めて、このスローガンを掲げました。
 そして最後は、「もうひとつの2002年」です。2002年で今、道民、市民の注目と関心が集中しているのは、サッカーの「ワールドカップ」でしょう。札幌にも「コンサドーレ」が地元のチームとして頑張っています。こうしたコンサドーレの熱い戦いは北海道の「YOSAKOIソーラン祭り」や「エア・ドゥ」とともに大きなエネルギー源となっています。私たちもこうした道内の動向に大きな喜びをもっていますが、私たちは思っています。2002年には、もうひとつの大きな出来事があるということを、多くの人々に知っていただきたいと・・・。それが「2002年第6回DPI世界会議札幌大会」の開催であることを・・・。こうした「想い」を込めて私たちはこのスローガンを掲げました。

〜おわりに〜
 私たちが、今、一番目標にしているのは「2002年第6回DPI世界会議札幌大会」の開催です。しかし、同時に一番大切にしたいのは、その開催に向けたプロセスです。いかに社会的弱者、福祉の対象者としてみられてきた障害当事者及び関係者などが主体となり、その障害種別と団体を越え、お互いを尊重しあいながらこの活動を進めるのか。いかにより多くの障害のない人々へ支持・協力・参加の輪を広げることができるのか。いかに自主・自律的に活動を展開できるのか。いかに、ノーマライゼーション、バリアフリー社会を実現していくのか。そして、この大会開催準備のなかで、何をつくり大会開催により何を残すことができるのか・・・。
 北海道では、今、元気な北海道づくりをめざして始めた「北海道イメージアップキャンペーン」により、全国から寄せられた61,054作品の中から、キャッチフレーズとロゴタイプを1998年9月に決定しています。そのキャッチフレーズの「試される大地。」は、「試される」を決してつらい意味でのものではなく、「自らに問いかける」あるいは「世に問う」というプラス志向をしめす言葉であるとともに、「TRY」の意味が込められています。これは、新しい時代に挑戦することも意味しています。私たちは、このなかにある「一歩前に出る勇気があれば きっと何かがはじまる」と信じて今日まで行動を起こしてきました。
 私たちは、「2002年第6回DPI世界会議札幌大会」の開催とそれに向けた取り組みが、21世紀という新時代の社会の方向性を示すものにしたいと思っています。


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