登録被災者援護協力団体に関する内閣府令(仮称)案についての意見


2025年5月28日
障害者欠格条項をなくす会(共同代表 福島智 大熊由紀子)

内閣府令に「●●の機能の障害」を入れるべきではなく、その点で、示されている内閣府令案「被災者援護協力業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」に賛成するが、そもそも、「災害対策基本法等の一部を改正する法律案」に、「心身の障害により」という言葉を、入れてはならない。
従来、「心身の障害」欠格条項に対応する政省令の規定には、「●●の機能の障害により」が入れられてきた。内閣府令案には無いが、法案条文に「心身の障害により」が入れられているため、「心身の障害」と「業務を適正に行うことができない」という、本来別のことが、結びつけられてしまう。障害理由の欠格条項の廃止を国連から勧告されているにもかかわらず、なぜ、前例を機械的に踏襲して、役員に「心身の障害により被災者援護協力業務を適正に行うことができない者として内閣府令で定めるもの」(法案33条の2の3のホ)を新設しているかが、根本的な問題である。2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議以来の、インクルーシブ防災が提唱され、障害当事者もその主体として参加することが当然とされる時代に、逆行している。

【意見2】
法令の解説・Q&A集などにおいて、障害者による災害時の救援活動を紹介し、解説やQ&A集などは、障害者団体の参画の下で作成を。
国連防災世界会議を機に国際的にも提唱されているインクルーシブ防災、その先駆となってきた、特に阪神淡路大震災以来の、障害者団体による救援活動の実績、障害者差別解消法との整合といった観点から、不可欠なことである。
従来から、被災自治体において障害者の死亡率が高く、東日本大震災では総人口に対する死亡率の二倍と報告されている。避難所の環境や一般支援策のありかたが、障害者が利用できないものになっていると、繰り返し指摘されてきた。障害がある人の日常を知っている障害者団体だからこそ、被災した障害者に必要な情報や支援を迅速に提供して救援することができ、地域防災にもかかわってきた。こうした体験をふまえて、インクルーシブ防災にむけたガイドラインが障害当事者も参画して作成される等の、取組が進んでいる。障害者団体をはじめ、心身の障害がある人が役員に含まれる団体が排除されることが決してないように、強く意識して積極的に取り組む必要がある。

【意見3】
(意見)国や地域の防災・災害救援に関する会議体における、障害当事者団体の参画の状況について、複合差別を被っている当事者の参画にも着眼して、定期的に調査して公表を。
(意見の理由)インクルーシブ防災の基礎になることである。かつ、障害のある人のなかでも女性やマイノリティとされる人の困難が、災害時は特に、複合差別ゆえに増幅することが経験され、問題が指摘されてきている。「心身の障害により」が法案に入れられるような状況だからこそ、当事者参画を強く意識して積極的に取り組む必要がある。

【意見4】
全般にかかわる意見(このパブリックコメントの情報アクセシビリティ)
このパブリックコメント募集はPDFでしか資料提供されず、意見提出はフォームと郵送に限定されており、視覚障害のある人にとって特にバリアフルなことは問題である。改善するには、要領や概要はPDFのみでなくテキストデータも併せて提供すること、意見提出先としてフォームだけでなく電子メールアドレスも記載することが必要である。
(意見の理由)
フォームは、視覚障害のある本人が記入することが困難または無理な形式である。電子メールアドレスが表示されていれば、何らかの手段で入力して送信できる人は、少なからずいる。
音声読み上げを使っていない人や使えない人もいることをふまえなければならない。PDFしか提供されていない場合、PDFからテキストに変換する操作は、視覚等に障害のある本人には困難な場合が多く、可能な人であっても誤変換のチェックを含めて余分な手数と時間をかけなければならない。テキストデータは、盲ろう者を含めて、障害のある本人がダイレクトに利用できる。従って、最初から、PDF文書だけでなく、テキストデータを提供することが必要である。


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