障害者基本計画(案)に関する意見


2013年9月5日
障害者基本計画(案)に関する意見
障害者欠格条項をなくす会


■国家資格、欠格条項

(基本計画案の引用)
3章「分野別施策の基本的方向」の9「行政サービス等における配慮」の(4)「国家資格に関する配慮等」
○ 各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう,試験の実施等において必要な配慮を提供するとともに,いわゆる欠格条項について,各制度の趣旨も踏まえ,技術の進展,社会情勢の変化等の必要に応じた見直しを検討する。9-(4)-1

(意見)
「障害者基本計画案」の重要なポイントであり賛成する。そして、この基本計画案に書かれている見直しの検討を推進するためには、現況の把握と課題の整理をもとに目標を設定し、省庁横断で取り組む具体的な計画を立てなければならない。

(理由)
障害者基本法第4条(差別の禁止)および、政策委員会の「新障害者基本計画に関する障害者政策委員会意見」(2012年12月)の、1章2項(2)「差別の禁止等」、3章「先送りできない重要課題」の2項「積み残してきた課題」の(1)「欠格条項の見直し」をふまえて推進すべきことである。

(成果目標について)
上記を前提として、具体的に計画をもって取り組むべきことの一つとして、旧障害者施策推進本部課長会議決定による「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」(2005年11月9日)の水準に、現在の国家資格試験が達しているかどうかを点検し明らかにし状況を改善する作業に早期に着手することを提言する。この課長会議決定は、長年かけて政府として定めるに到った水準と言えるもので、その後の音声読み上げパソコンなどの技術の進展や、障害者制度改革など社会情勢の変化もふまえて、さらに充実させるよう、バージョンアップも、併せて進める必要がある。



■雇用・就業

(基本計画案の引用)
3章の4「雇用・就業、経済的自立の支援」
「国の機関や地方公共団体等に対しては,民間企業に率先垂範して障害者雇用を進める立場であることを踏まえ,適切に指導等を行う。」について

(意見)
社会的障壁−法制度の障壁を除去し、民間企業に率先垂範して障害者雇用を進める立場から、国家資格試験と同様、旧障害者施策推進本部課長会議決定による「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」( 2005年11 月9日)の水準に、国家公務員試験、地方公共団体の公務員試験が達しているかどうかを点検し明らかにし状況を改善する作業に早期に着手すべきである。いまだに、大半の地方公共団体が、例えば「自力で通勤でき単独で職務遂行できること」「活字印刷文に対応できること」などの受験資格を、障害者を対象とした職員採用試験でさえ設けており、受験する上で最低必要な配慮も提供していず、障害者基本法の趣旨目的に反する状況がある。まずは都道府県と政令指定都市、そして、中核都市、特例市の、率先した取組が必要ではないか。

(理由)
障害者にかかわる欠格条項は、国家資格だけではなく、地方公共団体が障害者を職員として採用する際の受験資格等にも広汎に存在しており、実質的に平等に受験できない状況があり、受験することをも諦めさせるような大きな障壁になっているためである。

(成果目標について)
本基本計画期間中に、 2005年課長会議決定の水準を達成することを目標とし、計画末期にいまだ達成していないものについては情報を開示して取組を促し、政府として決定文書等のバージョンアップも進めることを成果目標とする必要がある。



■成年後見制度

(基本計画案の引用)
8.「差別の解消及び権利擁護の推進」の(2)権利擁護の推進
○ 障害者本人に対する意思決定支援を踏まえた自己決定を尊重する観点から,意思決定支援の在り方を検討するとともに,成年後見制度の適切な利用の促進に向けた取組を進める。8-(2)-2

(意見)
障害者基本計画にまず必要なのは、成年後見制度に関する実態、課題の把握と今後にむけた検討をおこなうための計画である。現状において、単に成年後見制度の利用を促進するという計画は、法制度の欠陥を是正できず、むしろ弊害を招く。

(理由)
本年の公職選挙法改正が成立するまで、成年後見制度を利用したために参政権を剥奪されてきた人々がいる。現在も、成年後見制度を利用すると、公務員試験を受験できず、就業を続けることもできないので、「一般企業等への就職につなげることを目的として、各府省において知的障害者等を非常勤職員として雇用し,1〜3年の業務を経験するチャレンジ雇用を実施する」( 4-(1)-4)うえでも障壁となってしまうためである。政治参加する力、ある具体的な仕事をする力、財産を管理する力は、それぞれ別個のことであるにもかかわらず、各法制度の欠格条項と連動させている障害者観に根本的な問題がある。その問題を含めて成年後見制度が現在どのような実態、課題を抱えているかを直視して計画を立てていく必要がある。



■公営住宅の単身入居

(基本計画案の引用)
3章の5「生活環境」の(1)「住宅の確保」
○公営住宅を新たに整備する際にはバリアフリー対応を原則とするとともに,既存の公営住宅のバリアフリー化改修を促進し,障害者向けの公共賃貸住宅の供給を推進する。また,障害者に対する優先入居の実施や単身入居を可能とするための取組が地方において行われるよう福祉部局と住宅部局が連携して障害者に対する取組を進めていくよう地方公共団体に対して周知・情報提供を行っていく。 5-(1)-1

(意見)
障害者の単身入居について、国は、地方公共団体等に対して、旧公営住宅法施行令等において進めてきた経緯内容を積極的に周知する必要がある。周知すると同時に、地方公共団体や事業体の現行の募集案内や入居資格における、旧公営住宅法施行令等の水準からも大幅に後退した諸条件の有無を調査のうえ、速やかに是正することが必要である。

(理由)
地方分権一括法で条例委任となる中、各地の地方公共団体で「単身者で入居される場合、介護を受けられていても、自らの力で、食事したりトイレに行ったりするなど、自活要件(一人暮らしができること)が必要です」といった入居条件を設けている事例がみられること、そして、地方公共団体に移管する前から、国土交通省としても継続してフォローアップしていくと明言していたことからも(内閣府障がい者制度改革推進会議ヒアリングで課長答弁)、上記は、当面の障害者基本計画期間中に急ぎとるべき措置である。

(成果目標について)
少なくとも例示したような入居者募集を一掃することが、成果目標の第一に挙げられる。


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