アピール



1. 運転に聴力は必要ですか?!

 日本の法制度(道路交通法施行規則23条)では、適性試験で「聴力検査(10メートルの距離で、90デシベルの警音器の音がきこえるものであること)」を課しております。補聴器をつけて聴力検査を合格した人の免許証の条件欄には、「補聴器」と記載することになっていて、「聴力検査」の基準に満たない聴覚障害者は運転免許の交付を受けることができませんでした。
 今般、警察庁は、いくつかの条件を課す可能性を示しながらも、全ての聴覚障害者の運転免許の交付を可能にすることを発表しました。これは条件付きでありながらも「聴力検査」の基準に満たなかった聴覚障害者の運転免許取得の門戸を広げたものであり、ろうあ者をはじめとする永年の運動の大きな成果であると評価することができます。しかしながら、聴覚障害者が標準装備を施している自動車の運転を危険視する風潮は払拭されていません。
 運転に聴力は必要でしょうか?
 今まで多くの調査研究を実施されてきましたが、未だに運転免許交付に「聴力検査」を求めることの科学的かつ合理的な根拠を見いだすことができません。むしろ、聴力の有無が問われるような客観的なデータは存在していないのが実状です。
 昨年度に実施した警察庁の委託調査は、補聴器を外した状態で特別な装備がない標準的な自動車で走行実験をして、安全性において問題がないことを示しております。
 諸外国においても、非商業用の交付条件として聴力の有無を問わないのは、欧州連合(25カ国)、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スイス、韓国など多数であり、一方、日本と同様に制限を設けているのは、イタリア、スペインで、少数です。

2. 聴力基準を削除し、個人が選んで利用できる法制度を

 補聴器を必要とするかどうかも、人によって、また場面や環境によって、異なります。補聴器を免許の条件にするのではなく、補聴器をつけるか、つけないか、またどんな時につけるかは、個人が選択できるようにすることを望みます。さまざまな補助機器についても同様です。誰にとっても使いやすいワイドミラーであれば、それは聴覚障害者のみに装備するものではなく、標準的な装備にしていく必要があります。障害者マーク等についても、補聴器と同様に個人の選択肢とすることが好ましいと思います。

3. 情報・コミュニケーションなどの環境整備を

 今までは聴力の有無を問題にしてきましたが、むしろ「情報・コミュニケーション・道路交通」の環境の整備を進めることが大切であり、全ての人にやさしい街を作ることが大切ではないでしょうか。
 過去に実施したアンケート結果から、免許行政窓口・試験場・教習所・講習などで、手話通訳、文字通訳、ビデオ字幕などの情報・コミュニケーション保障が不十分な状況であることが明らかになりました。
 まず、運転免許を取得するにあたって、情報・コミュニケーション保障、合理的配慮(障害者が実質的に権利を行使できるようにするために必要な配慮)の実施を求めたいと思います。また、免許試験等での日本語の表現が難しいために、聴覚障害者にとって不利な状況になっており、聴覚障害者に配慮した免許試験制度に改めていく必要があります。
 さらに、道路交通環境においても、信号や交通標識は誰でもが見やすい大きさ、形状に工夫を施していく等、聴覚障害者だけでなく他の人も安全かつ快適に運転できる環境にしていくことが望ましいと思います。

(まとめ)

 道路交通法施行規則23条の聴力基準を削除し、聴力の有無を問わない法制度に変更し、かつ、補助機器などは一般の人にも活用できるように標準的なものにしていき、個人が装備を選択し決定できる仕組みにすることを求めます。
 さらに、ノーマライゼーション、ユニバーサルデザインの視点から、情報・コミュニケーション・道路交通・まちづくりの環境全体を改めて見直し整備を進めていくことを、私たち参加者一同はここに提言します。

2006年10月15日
公開シンポジウム 「運転に聴力は必要ですか?!−欠格条項見直しと運転免許−」
                                  参加者一同



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