2022年2月24日 内閣総理大臣 岸田文雄 様 共生社会担当特命担当大臣 若宮健嗣 様 障害を理由とした欠格条項にかかわる相談キャンペーン実行委員会 共同代表 大熊由紀子 竹下義樹 障害を理由とした欠格条項にかかわる相談内容に基づく申入書  共生社会の実現に向けた日頃の取組に敬意を表します。私どもは12団体からなる「障害を理由とした欠格条項にかかわる相談キャンペーン実行委員会」と申します。  障害者基本法は第2条で、社会的障壁を「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう」と定義しています。さらに、同法は第4条において、社会的障壁の除去の取組を求めています。障害を理由とした欠格条項は、制度上の社会的障壁の典型です。制度には法令が含まれており、この申入書においてもその意味で記述します。  最近2019年に、成年後見制度と連動した欠格条項については、公務員法、警備業法など約180の法律から法案成立によって削除されましたが、その後、障害者関係団体の調べによれば、「精神の機能の障害」を理由とする欠格条項が、上記の法案成立前までの3倍以上に増加しています。  この状況を危惧し、当実行委員会は、2021年度9月末から10月初めの一週間にわたり、相談窓口を設けました。各団体で日頃取り組んでいる分野の知見を持ち寄り、障害者関係者と弁護士によるチームで、あわせて30名から寄せられた、ひとつひとつの相談に対応しました。  その結果、相談の半数が、精神障害、知的障害、発達障害などの「精神の機能の障害」のある人からのもので、内容は過半数が、運転免許と雇用の関連であり、生活に直結する深刻な影響が明らかになりました。障害を理由とする欠格条項が、人生の幅を狭めているのです。かつ、欠格条項があるから無理と決めつけられていたり、種々の不安を抱かざるをえない人は、はるかに多くいます。そればかりか、現行の法令における欠格条項の有無や内容について、官公庁の職員及び相談窓口担当者さえ十分認識していないことを示す事例が、寄せられた相談のなかでいくつも報告されました。いったん作られた欠格条項の甚大な影響がみられます。  遡れば、2001年に法改正された医師法など多数の法令にも、聴覚や視覚や精神の機能の障害がある人を対象に、「免許を与えないことがある」とする相対的欠格条項がいまだに残されています。2001年まで「免許を与えない」という欠格条項によって門前払いされていた人々が、免許をもち従事するようになっているにもかかわらず、包括的な見直し検討が、20年以上なされていません。障害者基本計画や、差別解消法の基本方針にも、欠格条項の必要に応じた見直しが課題に挙げられていますが、2019年以降の変化を含めて、現状の把握、現行法令の調査と見直しが、今まさに必要な状況です。  「障害の有無で分け隔てられることのない共生社会の実現」を目標に掲げる障害者基本法や、差別禁止及び合理的配慮の提供を規定する障害者差別解消法、障害者雇用促進法などの改正されてきた国内法に照らしても、障害を理由とする欠格条項の存在は矛盾しています。日本が批准した障害者権利条約との関係でも大きな問題であり、本年2022年は、国連障害者権利委員会への日本の報告に対する本審査の年にあたっています。  上記のことを受けて、次のとおり申し入れます。  また、障害者基本法を所管される内閣府には、関係省庁への申入書の全てを、前文は略してお伝えします。 申入事項 1 第5次障害者基本計画の中での重要テーマとして、制度上の社会的障壁の典型である、障害を理由とした欠格条項の見直しへの取組を盛り込んで下さい。その検討のため、相談事例にあるような現状を、これ以上放置できない課題として認識されること、ヒアリングや調査の実施を要請します。 2 「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」を、障害者差別解消法等の改正を反映し配慮事項を明確にして改訂すること、及び、個別の試験要綱も見直し改訂することを、要請します。 3 障害がある人と受験について情報や事例を集積している、障害当事者等の参画のもとで、今後の改訂の検討を進めることを要請します。    (上記2の補足)  2001年当時に、障害を理由とした欠格条項が一括的に見直された後も、試験において、障害のある人の受験が想定されていなかったり、同等に受験できる状況になっていなかったりすることが多かったため、「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について*」が策定されました。付表の「申請書等における配慮のイメージ」と共に、現在も国家試験等に適用されています。この文書も策定後17年目になるため、その後に成立した障害者差別解消法や、技術の開発とその普及、障害のある人の状況の変化などを受けた見直し改訂が求められています。 *2005(平成17)年11月9日 障害者施策推進課長会議決定 https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sikaku.html 相談事例 (事例1)  本人は大学生で発達障害による書字障害がある。大学では試験等にPC使用や時間延長の配慮を得ている。建築士試験では一次試験での時間延長、PC回答及び、二次試験でCAD使用が認められるかどうか。 (補足)試験要綱の「受験特別措置希望有無」の選択肢にPC等があるが、想定が身体障害となっています。身体障害以外の障害がある人をも明確に想定した記述が求められています。 (事例2)  診療放射線技師養成課程を受験した。試験面接官に「補聴器を装着しながらMRIは操作できない。そして、実習の際に受け入れ先の病院に受け入れてもらえるか保証できない」と言われた。自分の夢を諦めなきゃいけないと思った。補聴器をつけているだけで人生を左右されなきゃいけないのかと思った。  (補足)欠格条項が現存する医療分野等の職種において、職場実習の受け入れ先が乏しいのならば、それは長年、絶対的欠格条項があり、就業を阻んできた結果と言えます。なお、診療放射線技師の業務と職域も多様であり、MRI設備をもたない医療機関も少なくないなかで、補聴器をつけてMRI室に入れないということだけが問題視されるのも、奇妙なことと言えます。今すぐに必要とされていることは、相対的欠格条項が現存する職種につく夢をもって挑戦する人を後押しし、受け入れ、合理的配慮の提供や修学環境について本人と対話しつつ最善を尽くすことです。既存の実習等のありかたも、合理的配慮の視点から見直す必要があります。 【文部科学省】 文部科学大臣 末松信介 様 高等教育局長 増子宏 様 申入事項 1 学校関係者及び教職員に対して、欠格条項を含む社会的障壁の内容を理解し障害者差別解消法に沿って合理的配慮を提供するための、研修などの実施を要請します。 2 生徒や学生の職場実習を公平に保障するため、欠格条項を理由に拒まれることのないよう、先行事例の集積と共有ができるような取組を要請します。 3 障害の有無で分け隔てない教育を進めるとともに、特に教育や医療や福祉にたずさわる人を養成する学校や学部においては、その必修カリキュラムに、障害がある人と関わる機会を設けることを求めます。 4 研修や取組の立案段階から、欠格条項が現存する職種の養成学校学部に学んだ障害当事者や、その後に従事している障害当事者などの意見を聞き、研修の講師に迎えるなど、当事者参画の下で進めることを要請します。 要請の理由及び相談事例 (基本的な状況)  欠格条項が現存する職種に携わる人の養成課程においては、障害や疾患のある学生は、それ以外の職種の養成課程の場合以上に、先々への不安を抱えて萎縮を余儀なくされていることがしばしば見受けられます。これは、在学している学生だけではなく、進路を決める前の子どもや若者にも、多々見られることです。  特に障害がある生徒や学生にとって実習先を得にくい事例が、このたび寄せられた相談以外にも少なからずあります。実習が実質的な欠格条項のようになっています。  また、教職員や学校関係者も、ともすれば生徒や学生に対して「できない、無理」と言ってしまっており、また、養成校などは、「学生が欠格条項ゆえに資格を付与されないということがあれば、学校の実績にとってマイナスになる」等の発想に陥りがちです。  この背景には、関係者をはじめとする大部分の人が、障害の有無で分け隔てられてきて、障害のある人と共になにかをした経験もなく、障害のある人のことを知らないということがあり、現状では、養成課程の必修カリキュラムに、障害がある人と関わる機会を設けることが必要です。  また、学校や教員が、受験生や学生に合理的配慮を提供できるように、修学環境をつくっていけるように、研修等の取組、先行事例の集積と共有が必要です。  なお、既存の調査に「大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」があり、その報告書に、実技や実習について配慮した学校の総数は記載されていますが、どのような配慮が必要とされ、実際にどのような配慮が提供されているのか、現在の課題などの内容は含まれていません。 相談事例 (事例1)  診療放射線技師養成課程を受験した。試験面接官に「補聴器を装着しながらMRIは操作できない。そして、実習の際に受け入れ先の病院に受け入れてもらえるか保証できない」と言われた。自分の夢を諦めなきゃいけないと思った。補聴器をつけているだけで人生を左右されなきゃいけないのかと思った。  (補足)欠格条項が現存する医療分野等の職種において、職場実習の受け入れ先が乏しいのならば、それは長年、絶対的欠格条項があり、就業を阻んできた結果と言えます。なお、診療放射線技師の業務と職域も多様であり、MRI設備をもたない医療機関も少なくないなかで、補聴器をつけてMRI室に入れないということだけが問題視されるのも、奇妙なことと言えます。今すぐに必要とされていることは、相対的欠格条項が現存する職種につく夢をもって挑戦する人を後押しし、受け入れ、合理的配慮の提供や修学環境について本人と対話しつつ最善を尽くすことです。既存の実習等のありかたも、合理的配慮の視点から見直す必要があります。 (事例2)  保育士養成の短大で、発達障害を理由として実習を許可されず、保育士資格は得られずに卒業した人がいる。 (補足)本人の人生に与えた被害はもとより、可能性を握りつぶしたことで社会が被った損失も、重いものがあります。レアケースとして片付けたり、大学の責任のみに帰したりすることなく、同様のことが起きないように省庁の垣根を越えた取組が必要です。   (事例3)  介護福祉士養成校に入学後に、教員に精神障害者手帳を取得していることを伝えたところ、「修学できるように合理的配慮のために同級生や実習先にそのことを伝えるべきだ」と繰り返し説得され、やむなく承諾した。同級生の前で障害について告知され、教員側はもし善意であっても、学生側は苦痛と負担が大きく、退学にいたった。復学の気持ちはない。問題がある対応だったことを教員や学校側が理解するように、公的な機関から言ってほしい。 (補足)障害を告げるかどうかは本人の意思によることで、強要してはならないことであり、かつ、この教員は「合理的配慮」を根本的に誤解し、対応を誤っていたと言えます。まず、この学生と修学上のニーズについて対話し、ニーズがあることについては対話を重ねて学校や教員の立場でできる合理的配慮を提供すれば、このような事態にはならなかったと考えられます。更に、教育機関などにおいて、障害や疾患のカミングアウトが合理的配慮提供の前提であるかのような認識と対応が、広範にあるという指摘も受けています。国の機関として深刻に受けとめて、認識と対応の是正がされるような積極的なアプローチを求めます。 【国家公安委員会、警察庁】 国家公安委員長 二之湯智 様 警察庁長官 中村格 様 申入事項  寄せられた相談のなかで、道路交通法、警備業法について、欠格条項見直し以前のままの認識が、公安委員会にも運転免許の窓口にも警備業研修教官にもあることが報告されています。その認識でもって、免許を希望して来た人への対応がなされたり、有資格者むけの研修が行われたためです。  せめて現行法を遵守できるように、欠格条項の変遷と現行法の規定について、また、障害者差別解消法などの障害者にかかわる最新の法令について、公安委員会や警察で携わる全ての職員、研修教官をつとめるような人が研修を受ける機会を設け、一度きりではなく継続して定期的に実施することを要請します。 次の質問事項については、2022年3月25日までに、ご回答をお願いいたします。 質問事項 1 相談事例1にある、「お薬手帳」のコピーをとることの、法的根拠、及び、実態状況について、お示し下さい。 2 道路交通法にかかわる欠格条項の変遷と現行法について、公安委員会や、運転免許の交付や更新にかかわる窓口の職員のための研修は、行われていますか? 3 行われているならば、対象、回数、講師の属性(経歴)の概要等をお示し下さい。 4 成年後見制度と連動した欠格条項が2019年の法改正で削除されて以降、法改正にかかわる、職員研修は行われていますか? 5 行われているならば、対象、回数、講師の属性(経歴)の概要等をお示し下さい。 6 警備業の業務研修の教本や、教官用マニュアルなどは、旧法の記述を削除するなどの、法改正後の洗い直しと改訂は行われていますか? 7 警備業にかかわる受験や応募の資格として、また、受験者や応募者が提出する書類として、成年被後見人や被保佐人ではないことの確認や証明を求めるものが、法改正後も残されていないか、点検は行われていますか? 相談事例 (事例1)  これまでも精神疾患の症状を伝えて運転免許更新できてきたが、今回の免許更新手続きでは警察に「お薬手帳」のコピーをとられた。これから医師に診断書を書いてもらうが、更新がどうなるか不安。   (事例2)  ゴールド免許だったが、精神科通院中の2016年に、免許更新時期を迎えた際、(以前にはなかった)病気の報告を求められた。精神科通院を伝えるべきか福祉課にも相談した。「大丈夫だから、伝えて下さい」と言われた。通院歴を伝えたところ、そのまま免許を失うことになった。公安委員会からは「あなたから話を聞いても結論は同じです」と言われ聴聞も行われなかった。異議申立てをしても結論は変わらないと言われた。 (事例3)  一種普通免許で毎日運転している。新たな仕事のために2種免許をとろうとしていて公安委員会に相談したら、「補聴器なしで90dbのクラクション音を10mの距離から聞こえない場合は新たに2種免許を付与できないし、すでにある普通免許も取消になる」と言われたので弁護士に相談し、その弁護士も公安委員会の説明はおかしいとの見解だったが、不安があるので連絡した。 (事例4)  成年後見制度と連動した欠格条項を削除する法案が成立した後で施行される前の時期に、警備業の面接を受けた。採用が決まる寸前で、成年被後見人、被保佐人ではないことを証明する書類を求められた。そして被保佐人ゆえに採用を拒否された。その後、2021年に警備業に就職して受けた研修では、教官が、成年被後見人・被保佐人は警備員になれない旨のことを発言していて、精神障害者や知的障害者を指す差別的な言葉も用いられた。 【厚生労働省】 厚生労働大臣 後藤茂之 様 医政局長 伊原和人 様 職業安定局長 田中誠二 様 社会・援護局長 山本麻里 様 申入事項 1 医療・福祉分野の従事者及び、障害者雇用支援の関係機関や相談窓口の職員に、現行の欠格条項について、及び、障害者差別解消法や雇用促進法について、学ぶ機会や学習ツールを提供することを要請します。 2 特に医療従事者を養成する学校や学部においては、その必修カリキュラムに、障害がある人と関わる機会を設けることを求めます。とりわけ、医師は、欠格条項にかかわる診断書を書くこともあるため、重点をおく必要があります。 3 事業主も、障害者雇用促進法等と併せて、欠格条項についての学習機会が得られるようにすることを要請します。 4 障害者にかかわる雇用、福祉、そして医療の管轄官庁でもあり、かつ、医療関係職などに古くから欠格条項を設けてきた厚生労働省が、欠格条項の根本からの見直し作業に先駆けて着手されることを要請します。 5 上記の実施のために、障害当事者で欠格条項が現存する職種に従事している人などの意見を聞き、講師に迎えるなど、当事者参画の下で検討を進めることを要請します。 要請の理由及び相談事例 (基本的な状況)  障害の有無で分け隔てられてきた上に、特に医療の分野では、長年にわたって絶対的欠格条項が設けられてきた経過があります。さらに、精神の機能の障害について、相対的欠格条項が存続・増大しています。そのような中で、養成学校や学部や、現場において、障害のある人はまだ限られた存在です。また、従事者が、ほかの分野の従事者以上に、障害のある人のことを知らない傾向が強く、患者あるいは福祉の対象者という側面のみで捉えがちです。  とりわけ、欠格条項にかかわる診断書を書くこともある医師が、現行の欠格条項について、及び、障害や病がある人の社会生活について、どのように理解しているかによっては、できることもできないものとされてしまう場合があります。従って、従事するようになった後の学ぶ機会と併せて、特に医師をはじめとする医療従事者の養成課程では、その必修カリキュラムに、障害のある人とかかわる機会を設けることが必要です。  特に障害がある生徒や学生にとって実習先を得にくい事例が、このたび寄せられた相談以外にも少なからずあります。実習が実質的な欠格条項のようになっています。  欠格条項が現存する職種やその養成課程において、外見にあらわれる障害等の人は排除されることやハラスメントを受けることが多々あります。外見にあらわれない疾患や障害がある人の大多数は、知られたらどうなるかという不安から隠さざるを得ないような抑圧を受けています。  この間、障害者雇用促進法、障害者差別解消法が改正されてきましたが、障害者雇用支援の関係機関や相談窓口の職員さえも、改正の内容を正確に理解していない例が、相談内容から明らかになっています。事業者などにおいても同様です。 相談事例 (事例1)  精神疾患歴があるが服薬で寛解しており仕事に支障はない。勤務先の毒物劇物取扱責任者が退職するに伴い、毒物劇物取扱者の資格をもつ自分に就任の打診がきた。相対的欠格条項があることから、主治医が消極的な反応を示している。また、勤務先に知られてしまうことも心配。 (補足)一般的には喜んで受けるような打診について、深く悩み、ご相談がありました。現行の欠格条項において、服薬で寛解しており仕事に支障がない毒物劇物取扱者が、職場で取扱責任者になれない理由はないはずですが、欠格条項ゆえに医師の診断書が必要とされており、診断書を書く医師が「疾患歴があるから」と躊躇することはありがちです。せめて医師が現行の欠格条項を理解したうえで診断書を書けるように、学ぶ機会や学習ツールの提供が不可欠です。 (事例2)  複数の国家資格をもち障害福祉の管理者をしている。今後、司法書士と行政書士を受験するが、精神疾患をオープンにして仕事をするかどうか迷っている。 (補足)司法書士と行政書士はどちらも「心身の故障」欠格条項があり、司法書士の場合は施行規則で「精神の機能の障害と規定されています。このように欠格条項がある職種の場合は一層、希望する人をためらわせています。 (事例3)  片眼が見えないが手帳はなく、一般雇用枠で就労し、運転免許や国家資格ももっている。業務に支障はないが、同僚からのハラスメントがあり退職せざるをえなかった。上司からは「障害者雇用枠ではないので障害者ではない」等と言われ、公的機関に相談しても、「手帳がなく障害者雇用枠でもないので対応できない」とされるか、「ハラスメントの相談は受けない」との姿勢だった。今後の就労においては、個人モデル(医学モデル)から社会モデルへの転換、手帳がなくても障害者として認められることなど、障害者雇用促進法がめざしているところを会社へ説明したい。合理的配慮として障害への理解を深めて、ハラスメントをなくしてほしい。 (事例4)  看護学校に通いながら病院で看護助手をしている。目の疾患を知られてからは、同僚から「出来ない人」扱いされたり嫌みを言われたりするようになっている。障害者になった瞬間から腫れ物扱いされていると感じる。 (事例5)  診療放射線技師養成課程を受験した。試験面接官に「補聴器を装着しながらMRIは操作できない。そして、実習の際に受け入れ先の病院に受け入れてもらえるか保証できない」と言われた。自分の夢を諦めなきゃいけないと思った。補聴器をつけているだけで人生を左右されなきゃいけないのかと思った。  (補足)欠格条項が現存する医療分野等の職種において、職場実習の受け入れ先が乏しいのならば、それは長年、絶対的欠格条項があり、就業を阻んできた結果と言えます。なお、診療放射線技師の業務と職域も多様であり、MRI設備をもたない医療機関も少なくないなかで、補聴器をつけてMRI室に入れないということだけが問題視されるのも、奇妙なことと言えます。今すぐに必要とされていることは、相対的欠格条項が現存する職種につく夢をもって挑戦する人を後押しし、受け入れ、合理的配慮の提供や修学環境について本人と対話しつつ最善を尽くすことです。既存の実習等のありかたも、合理的配慮の視点から見直す必要があります。   (事例6)  視覚障害者のガイドヘルパーとして仕事を続けたかったが、精神疾患があることが事業者に知られて会社に呼び出され、自主退職となった。 (補足)ガイドヘルパーについては、法律の欠格条項はありませんが、相談者はこの事業者から「誰でも病気になったら辞めてもらう」と言われたということです。障害者雇用促進法や障害者差別解消法の改正法に沿うように、民間事業者においても研修や学習の機会が必要です。 以上