「道路交通法改正試案」に対する意見


「道路交通法改正試案」に対する意見
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2013年2月28日
「道路交通法改正試案」に対する意見
障害者欠格条項をなくす会
「1一定の病気等に係る運転者対策−(1) 免許の拒否事由等とされている一定の病気等に該当する者を的確に把握するための規定の整備」について反対です。
【理由】
根本的な問題は、「病のある人の運転は危険ではないか」「運転できないような症状があるのにそれを隠して運転するのではないか」「徹底して取り締まらなければならない」という疑いの目と姿勢をもって対していることです。古くからの障害や病がある人への差別そのものと言えます。実際に各地で問題が起きています。更新時に病名を知らせただけで診断書提出や再検査を求められ、免許を保持するために心身ともに疲弊した体験が、長年問題なく運転してきた人たちから伝えられています。
1−(1)アの、(免許交付・更新時および随時に)「病気の症状に関する必要な質問ができる」制度を設けることは、特定されている病名の診断は受けていても運転にさしつかえる症状はない人や、症状が出ている時期は運転せずに生活している人に対しても、これまでにも増して大きなプレッシャーとなり、症状をも悪化させかねません。かつ、「当該質問に虚偽の回答をする行為について、罰則を設けます」とすることは、申告の強制です。懲役刑・罰金刑を科す犯罪行為とすることは、病のある人をあたかも犯罪予備軍のように見なすことにもつながります。
1−(1)イの、「一定の病気等に該当する者を診断した医師による任意の届出制度」は、日本精神神経学会や日本てんかん学会のような専門学会からもすでに少なからず指摘されてきているとおり、患者と医師のあいだで治療上不可欠な信頼関係を損い、必要な医療からも遠ざけます。少しでも想像すればわかるはずです。診察を受けに行ったら知らない間に警察に通報されるかもしれないとなれば、誰が安心して医者にかかれるでしょうか?
その人個人の病気や障害の有無をこえて、その人の運転が「明らかに故意に危険をおかした」とみなされる場合、個別の事件として扱うことが現行法において可能です。また、交通死傷事犯の処罰規定の中に意識喪失を伴うような病気を要件とするものは諸外国のなかでドイツにみられる程度との報告が、法制審議会でなされています。試案は、病気があれば危険と疑う差別偏見を強化しつつそれをバックにする法律を今から新設しようとしており、日本で新たにこの試案のような制度を設けるならば、障害者権利条約、差別禁止法の制定など国際的潮流にも逆行します。
現行道路交通法とその政省令が相対的欠格条項に特定の病名を挙げていることを含めて、根本から改める必要があります。交通の安全ということからも、真に求められていることは、本人から十分に聞き取りをして安全な運転を支えていく基本姿勢と、それに沿った制度を確立することです。

以上


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