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「障害のある人の欠格条項ってなんだろう?Q&A」 出版記念イベント(2023年) |
その4 |
瀬戸山/それでは引き続いて法律家の立場から藤岡さんにお願いします。 |
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(写真:藤岡さん(左端)とご家族 BuzzFeedNews 2021年12月2日付) |
藤岡/始めさせていただきます。スライドを使いますので、視覚障害のかたにもわかりやすくというのを心がけてお話します。法律家の立場から「欠格条項にぶつかったらどうしたらよいか」という項目を執筆させていただきました。 |
自己紹介ですが、弁護士の藤岡毅です。1962年生まれ、1995年に弁護士登録で、今月で28年2カ月ほど弁護士をやっています。藤岡毅法律事務所を2001年に開設しています。 2021年の12月1日から3日間、私に関する記事をBuzzfeedネット上で配信してもらいました。これは2日目の記事で、「ぼくらのところによく来てくれたね、重度の知的障害がある次男と切り拓いてきたこと」というテーマで書いています。写真の左から2番目が次男、25歳で、重度の知的障害と発達障害を持っています。関心あればお読みいただければと思います。 著書ですが『障害者の介護保障訴訟とは何か』という本を、長岡健太郎弁護士と共著で出しました。『ケーススタディ障がいと人権』、『障害者差別よ、さようなら!』、『支援を得てわたしらしく生きる!』などを書いています。 手前味噌ですが、おすすめが、2021年2月に発行した『Q&A障害のある人に役立つ法律知識 よくある相談例と判例から考える』という、私が初めて最初から最後まで書いた本です。さまざまな相談例や判例から、担当した事件や見聞きした事柄などを書いた本で、一般論をという反面、私自身の考えも展開していますので、今日の話を聞いて関心のある方はお手に取っていただけるとありがたいです。 |
障害のある弁護士が、大勢活躍しています。欠格条項の相談キャンペーンの代表をつとめた竹下弁護士も視覚障害のある弁護士です。私より一回り上、もう40年ぐらい、社会保障の分野、生活保護、障害者の権利など、さまざまな分野でパイオニアとして力強く活躍しています。視覚障害者団体の代表もつとめられています。 田門浩弁護士、ネイティブのろう者の弁護士です。25年間、聴覚障害の弁護士として活躍して、全国のろう者のみなさまから頼りにされて、すごく精力的に活躍されています。 若林亮弁護士は、全ろうの弁護士で、12年ほど、弁護士としてさまざまな公益的な活動も含めてがんばっています。次の写真は、私の事務所に所属している松田崚弁護士、聴覚障害がある弁護士です。 ほかにも、視覚障害のある田中伸明弁護士、大胡田誠弁護士、幡野博基弁護士、板原愛弁護士、聴覚障害のある久保陽奈弁護士など、たくさんの弁護士が活躍しています。たとえば発達障害を看板に掲げている伊藤弁護士など、精神障害のある弁護士は全国にたくさんいます。みんな本当に普通の弁護士活動をしており、熱心で優秀です。 もし、何々障害のある人は弁護士・裁判官・検察官になれない、そんな「欠格条項」があったとしたら、いま言った彼、彼女らは弁護士になれていません。本当に恐ろしいことだと思いませんか。もっとも、弁護士法の第12条には「心身に故障があるとき」「弁護士の職務を行わせることがその適正を欠くおそれがあるもの」の登録を弁護士会は拒絶できる条項があり、登録を拒否されることはありえますが、障害があるから弁護士になれないという条項にはなっていません。逆にいうと、もしそういう絶対的な欠格条項があったら、今活躍しているような弁護士たちがいなかったということを考えると、欠格条項の理不尽さがわかるのではないかなと思います。 日本には、全ろうの裁判官というのは聞いたことはありませんが、アメリカですと、目の見えない裁判官、耳の聞こえない裁判官は、別に珍しくもない存在ということです。司法試験は、かつては最難関の国家試験といわれていたわけですが、そういうものでさえ、何々障害があるから受験できない、仕事ができないとか、そういうことはまったくないということは今の話でも分かるわけですから、そのことひとつとってみても、さまざまな資格試験において、特定の障害を理由に制限するような条項があったとしたら、それは人々の思い込み、偏見が生み出した差別にほかならない、と言えるのではないでしょうか。 これは法律論で言うと憲法14条の「法の下の平等」違反が問われます。また、障害者権利条約違反、障害者基本法違反が問われます。基本法も、差別の禁止を明確に書いていますね。また、障害者差別解消法違反ではないかということが厳しく問われるということになりますね。 そんなことを言ったって、実際に、欠格条項には甘いんじゃないの、障害者権利条約なんて、そんなに裁判所相手にしないじゃないの、というような向きもあろうかと思います。あるいは、法律が、欠格条項が、憲法違反とされることはなかなかないんじゃないの,っていう話もあろうかと思います。 最近の法律に関する裁判例で、注目すべきものとしてご紹介するのが、警備員になるための資格の法律、警備業法です。今は修正されていますが、絶対的欠格条項が数年前までありました。成年後見制度を使って、後見対象になったり保佐対象になったりした場合は、警備員の資格を失うという欠格条項があったんですね。 2021年10月に一審判決がおりた、この事件の原告は、欠格条項を理由に、2017年3月に、警備員としての雇用契約を解除されました。裁判としては、“そのような法律をいつまでも放置していたのは憲法違反じゃないか”ということで、2017年当時に欠格条項が存在していたこと自体も憲法違反ではないかという裁判を、国に対して起こした事件です。 今言った一審の2021年10月の岐阜地裁の判決、そして控訴審二審の、2022年11月の名古屋高裁判決、いずれも、2017年当時から欠格条項は憲法違反だと明言して原告を勝訴させました。 ちなみに、警備業から保佐の対象となった人に対する欠格条項が廃止されたのは、2019年でした。 一審判決は、憲法22条1項の「職業選択の自由」に反するとしました。そして2010年から憲法違反が明白だったと言い切りました。そして、名古屋高裁の二審判決は、一審判決をもとに、さらに踏み込んで、憲法14条「法の下の平等」に反することも明らかだとして、障害者権利条約を非常に高く評価してその意義を述べています。名古屋高裁判決は次のように言っています。 障害者権利条約は、障害者の多様性を認め、障害者に関する定型化された観念・偏見・有害な慣行と戦うための即時の効果的かつ適当な措置をとることを約束するとしている。3条で無差別を原則とし、5条で全ての者が法律の前に平等であり、いかなる理由による差別に対しても平等かつ効果的な法的保護を障害者に保証するとされている。障害者権利条約を批准しても、求められている措置が国政において実施されなければ、国際的に条約に加わったという形だけのものになってしまうのである。 つまり、批准したのはアリバイなのか、条約を批准した以上は、条約のとおり法律を変える、行政措置をとるなどの対応をしなければ憲法違反だ、ということを言っているわけですね。 今述べたように、欠格条項の条約違反は、司法でもかなり明らかになってきているということです。 欠格条項の壁にぶつかった場合、どうすればいいでしょうというのは、これは書籍に書いてあるとおりですけれども、まず1つは、ひとりで悩まず信頼できる相談機関、専門家などに相談し、一緒に考えてくれる人、サポート機関につながることが重要です。具体的な相談先は113ページに記載しています。 次に欠格条項問題への対処の一歩として、やはりご自身で事案を整理することが大事ですね。112頁に相談シートのひな形があるので、ぜひご利用ください。どういうことが問題だと考えているかとか、いつどこで何を言われた、何があったとか、箇条書きで書いておくと事案が整理できるかなと思います。 法律家としては問題の位置づけを整理することが必要です。1)法律自体が問題なのか。2)運用するための政令が問題なのか。1)と2)でなにが違うかというと、1)は法律自体が問題すなわち法律を変えないと仕事につけないのであれば、もはや国会を動かすしかないということです。法律が憲法違反であり、法律を改正しなければならないということです。 2)は、法律自体が問題ではないのだけど、法律の運用、政令とか、大臣告示、部長通達などが問題だということもあります。逆にいうとそれは行政の人たちと交渉すれば解決する可能性があります。 3)は、確かに行政は正しい解釈をしているが、それがまったく人々に知られていない、事業所や関係機関もわかっていないから、正しい解釈が現場に適応されないという場合があります。 4)は、その業界の古くからの悪しき慣行などが問題になる場合です。 5)は、業界としてはちゃんとしているはずなんだけれども、当該事業者が正しい理解をしていない場合があります。 6)は、たとえば大学ホームページで「○○障害がある人が受験できます」と書いてあっても、担当社が “こんな障害があったら受験できない”と思い込んでいるような、不勉強が原因になっているものです。 さまざまな理由があるので、どの位置が問題になっていて、どこを攻めればいいのかを知るのが大切です。対処方法は、抽象的ですが、(1)自力解決が可能なのか、(2)身近な支援者や友達が協力できるか、(3)公的な相談機関に介入を依頼するか、(4)紛争解決のための各種の調停機関などを活用するか、(5)弁護士に相談、依頼するか、(6)訴訟などの法的手続きをとるべきか。本人だけで考えるのは容易ではありませんので、信頼できる相談機関や専門家と一緒に考えることがやはり重要だ、というのが、弁護士としてのアドバイスになります。 基本に戻れば、そもそも障害者差別解消法が禁じている、障害に基づく不当な差別とは、お店に入ろうとすると、車いすの人は入れませんと言われるような、障害者お断りの差別のことですね。欠格条項というのは、差別解消法や権利条約が言うところのストライクゾーンともいえる、典型的な差別なわけです。今日の話が少しでもヒントになれば私としては幸いです。以上で私からの話は終わります。 瀬戸山 藤岡さんありがとうございました。 |
(連載終了) |
P4の写真:BuzzFeedNews 2021年12月2日付 https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/lawyer-fujioka-2 |
------- 初出:障害者欠格条項をなくす会ニュースレター92号(2024年11月発行) |
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