障害者欠格条項をなくす会ニュースレター 78号 2020年3月末 2020年9月改訂版 ※改訂箇所について 「障害者にかかわる欠格条項のある法令数の推移」の算出元である調査データのうち、「毒物及び劇物取締法施行規則」について、視覚、聴覚言語障害の欠格条項ありとしていた誤記載を修正(これらの欠格条項は2001年に削除された)。この結果、視覚、聴覚言語障害のカウントは、各年についてマイナス1となった。同施行規則には「精神の機能の障害」にかかわる欠格条項があり、総数については変更がない。 「視覚の機能の障害の欠格条項がある法令」「聴覚・言語機能の障害の欠格条項がある法令」から、それぞれ、「毒物及び劇物取締法施行規則」を削除した。 本号のもくじ 障害者欠格条項は今 … 1 2019年以後の変化と現状 … 2 法令数の推移 2009年・2016年・2020年 … 3 精神の機能の障害の欠格条項がある法令 … 4 視覚の機能の障害の欠格条項がある法令 … 5 聴覚・言語機能の障害の欠格条項がある法令 … 6 身体の障害の欠格条項がある法令 … 7 会社法・一社法の大幅改正で変わったこと … 8 雇用促進法施行令、除外職員に外務公務員を新規追加 / DPI日本会議、厚生労働大臣宛の要請書 … 9 報道から/電話リレーサービス、公共インフラとして整備へ … 11 ■障害者欠格条項は今 2009年・2016年・2020年の法令調査から作成した折れ線グラフ 数字は本文の表の記載を参照のこと。 下記はグラフのビジュアルの説明として。 前回2016年調査と2020年調査とで大きな違いがある。 欠格条項のある法令総数が、右上約45度の急増の軌跡を描いていることと、 精神の機能の障害の増加の軌跡は、相似している。 「心身の故障・心身の障害」も急増している。 成年被後見人又は被保佐人に対する欠格条項は、ほぼゼロとなった。 視覚・聴覚言語・身体・権利制限については、ほぼ変化がない。 このニュースレターは点字版などを用意しています。案内は裏表紙にあります。 ■2019年以後の変化と現状 2001年に、「耳が聞こえない者又は口がきけない者には薬剤師免許を与えない」のような条文は、一括削除となりました。聴覚障害ゆえに免許交付申請を却下された人の声、全国的な運動と世論を背景に、63件の資格や免許に関する欠格条項が見直されました。 ただ、欠格条項を全廃した法律は一部で、大部分の法律に「心身の障害により○○の業務を適正に行うことができない者として省令で定めるものには免許を与えないことがある」といった条文が設けられました。各法律の省令で、「心身の障害」とは「視覚の機能の障害」、あるいは「精神の機能の障害」などと規定する形で、欠格条項が残されてきました。また、「心身の故障」を理由に委員を罷免できるなどとする欠格条項は多数あり、その見直しは行われてきませんでした。 2019年、公務員法など約180本(註1)の見直しで、成年被後見人や被保佐人には免許を与えない、役員や委員になることができない、等としてきた欠格条項が、削除に到りました。被保佐人になると同時に失職してしまった知的障害のある公務員の提訴も、法を動かしました。 しかし、成年被後見人等に対する欠格条項を削除するにとどめた法律は一部であり、大部分の法律は、それまでは「心身の故障」欠格条項が何もなかった法律も含めて、「心身の故障により○○の業務を適正に行うことができない者として省令で定めるもの」などの条文を設けました。 では、省令や政令はどのように変更されたのか、全体としてはどう変わったかを調べたものが、次頁の一覧表です。表紙のグラフは一覧表のデータによるものです。 「心身の故障」または「心身の障害」欠格条項のある法令は、前回調査(2016年)では283本だったものが413本に増大、そのうち129本は、2019年に新設されました。 この「心身の故障」欠格条項を新設した129本の法律において、新たに160本以上の政省令で、「心身の故障」とは「精神の機能の障害」であると規定されました。追いかけるようにして同様の条文を新設するものも出ています。その結果、前回調査では75本だった「精神の機能の障害」欠格条項がある法令は、257本に急増、すでに、成年被後見人等に対する欠格条項があった法令数を上回っています。 視覚、聴覚や言語、身体の機能の障害の欠格条項は、2009年以降はほぼ変化していません。 2001年の法改正は、課題も残しましたが、障害を理由に一律に制限・否定してきたことを転換し、個別に可能なことや補助者・補助手段があればできることへの着眼を促しました。その後の機能障害の欠格条項の新設には抑制が働いてきました。 しかし、この間の動きは、その抑制をも外してしまい、障害を理由とする法的差別を強化することになっています。障害者権利条約で法制度の差別の廃止が求められていることからも、障害者基本法・障害者差別禁止法の趣旨からも、大きく矛盾し、時代に逆行しています。国連では日本報告の審査期間にあたっており、国内の障害者関係者団体においてもパラレルレポート検討が重ねられてきました。実態をもとに国内外で声を上げていかなければならない課題です。 (註1)法律案要綱には180本の法律が、法案新旧対照表には197本の法律が掲載されている。「○○法の一部を改正する法律」等をどう数えるかによっても計数が異なる。 (註2)1つの法律が複数の業種を規定し、業種ごとに政省令を設置する場合があるため、法律数よりも政省令数のほうが多い。 ■障害者にかかわる欠格条項のある法令数の推移 1段目は対象の分類 2段目の数字は、2009年,2016年,2020年の順 成年被後見人又は被保佐人 193,210,3 心身の故障,心身の障害 289,283,413 精神の機能の障害 64,75,257 視覚の機能の障害 31,31,31 聴覚・言語の機能の障害 28,28,28 身体の障害 27,27,25 さまざまな権利制限 22,22,22 総数=上記の条文がある法令実数 483,505,661 障害者欠格条項をなくす会事務局調べ 2020年3月 2020年9月改訂※ いずれも法令実数。複数の分類に該当する法令もあるため、分類の計と総数は一致しない。 調査について 対象:法律・政省令(告示と廃止法を除く) 手法:e-Gov法令検索(総務省)、日本法令索引、官報等を使用して法令とその条文を確認 調査の時期: 2009年調査・・・2009年9月から12月・2020年調査時に改めて点検と分類集計 2016年調査・・・2016年3月から6月・2020年調査時に改めて点検と分類集計 2020年調査・・・2020年1月下旬-3月上旬 ※改訂について 算出元の調査データのうち、「毒物及び劇物取締法施行規則」について、視覚、聴覚言語障害の欠格条項ありとしていた誤記載を修正(これらの欠格条項は2001 年に削除された)。この結果、視覚、聴覚言語障害のカウントは、各年についてマイナス1 となった。同施行規則には「精神の機能の障害」にかかわる欠格条項があり、総数については変更がない。 過去の調査とと2020 年調査の詳細データは下記に掲載 http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/data/index.html 補足 ・成年被後見人、被保佐人を対象とする欠格条項が、次の3本の法令に残されている。 1)協同組合による金融事業に関する法律施行規則 2)国家戦略特別区域法施行令 3)会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律 ・さまざまな権利制限について 資格や免許を認めないことがある、与えないことがあるという法令の他にも、障害を理由に権利を制限している法令がある。現在、障害者基本法は「障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため」と法の目的にかかげているが、例えば学校教育法は、障害を理由に分け隔て、共に学ぶ権利の制限ともなっている(P5、P7 条文の例を参照)。最低賃金法には「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」について最低賃金の適用を除外し得る条文があり、障害があれば労働能力が低いといった予断偏見や低賃金などの雇用差別と切り離せない。このような条文を含む法令を「さまざまな権利制限」としている。 ■精神の機能の障害の欠格条項がある法令 ・経過と法令の変化 精神の機能の障害を対象とした欠格条項は、2001年の法改正後も、60本以上の法令に残されてきた。 成年被後見人等に対する欠格条項を2019年の一括法で削除した法律のうち129本に、「心身の故障」欠格条項が新設され、これらの政省令のうち160本以上で「心身の故障」とは「精神の機能の障害」と規定された。右のリストはその政省令の一部である。 ・新たに免許交付を受けた人がいる職種(P7注参照) P5-6に掲載の職種及び、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、歯科技工士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師などで、2014-2016年の3年間に、精神機能の障害がある免許申請者(それぞれの国家試験に合格して免許交付を申請した人)計216名が免許交付を受けており、同期間の障害のある免許申請者全体(270名)の8割に相当する。 医療法施行規則 介護保険法施行規則 家畜商法施行規則 建築士法施行規則 港湾法施行規則 古物営業法施行規則 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律施行規則 産業競争力強化法施行規則 資産の流動化に関する法律施行規則 自然公園法施行規則 児童福祉法施行規則 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則 社会福祉法施行規則 商工会議所法施行規則 使用済燃料の再処理の事業に関する規則 職業安定法施行規則 私立学校法施行規則 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律施行規則 信用金庫法施行規則 森林組合法施行規則 水道法施行規則 精神保健福祉士法施行規則 宅地建物取引業法施行規則 動物の愛護及び管理に関する法律施行規則 特定非営利活動促進法施行規則 土地家屋調査士法施行規則 無尽業法施行細則 旅館業法施行規則 旅行業法施行規則 労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則 労働金庫法施行規則 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 (条文の例) 建築士法施行規則 1条の3 法第八条第三号の国土交通省令で定める者は、精神の機能の障害により一級建築士、二級建築士又は木造建築士の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。 児童福祉法施行規則 6条の2(保育士) 法第十八条の五第一号の厚生労働省令で定める者は、精神の機能の障害により保育士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。 精神保健福祉士法施行規則 1条 精神保健福祉士法(平成九年法律第百三十一号。以下「法」という。)第三条第一号の厚生労働省令で定める者は、精神の機能の障害により精神保健福祉士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。 特定非営利活動促進法施行規則 2条の2 (特定非営利活動法人の役員) 法第二十条第六号に規定する内閣府令で定めるものは、精神の機能の障害により役員の職務を適正に執行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。 ■視覚の機能の障害の欠格条項がある法令 ・経過と法令の変化 法令は、聴覚・言語機能の障害の欠格条項がある法令と、ほぼ重なっている。2001年に「目が見えない者には免許を与えない」といった条文は削除して現在の欠格条項の形になった。つまり、法律に「心身の障害により○○の業務を適正に行うことができない者として省令で定めるものには免許を与えないことがある」といった条文を設け、下記の例にあるように施行規則で「視覚の機能の障害により…」と規定する形で、現在も欠格条項が残されている。 ・新たに免許交付を受けた人がいる職種 医師、看護師、診療放射線技師、救急救命士 1 医師法施行規則 2 外国医師等が行う臨床修練等に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律施行規則 3 家畜改良増殖法施行規則 4 学校教育法施行令 5 義肢装具士法施行規則 6 救急救命士法施行規則 7 言語聴覚士法施行規則 8 航空法 9 航空法施行規則 10 自衛隊法施行規則 11 歯科医師法施行規則 12 歯科衛生士法施行規則 13 歯科技工士法施行規則 14 視能訓練士法施行規則 15 獣医師法施行規則 16 診療放射線技師法施行規則 17 船員法施行規則 18 船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則 19 船舶の配員の基準に関する訓令 20 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則 21 動力車操縦者運転免許に関する省令 22 道路交通法施行規則 23 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律施行令 24 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第九十一条第一項の規定による許可を受けようとする外国医療関係者が厚生労働大臣に提出しなければならない書面等を定める省令 25 ボート、モーター、選手、審判員及び検査員登録規則 26 保健師助産師看護師法施行規則 27 水先法施行規則 28 無線従事者規則 29 薬剤師法施行規則 30 臨床検査技師等に関する法律施行規則 31 臨床工学技士法施行規則 (条文の例) 薬剤師法施行規則 第1条の2 法第五条第一号の厚生労働省令で定める者は、視覚又は精神の機能の障害により薬剤師の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。 救急救命師法施行規則 第1条 救急救命士法(平成三年法律第三十六号。以下「法」という。)第四条第三号の厚生労働省令で定める者は、視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により救急救命士の業務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。 道路交通法施行規則 第23条 一種免許(大型・けん引を除く)の適正試験 視力が両眼で〇・七以上、かつ、一眼でそれぞれ〇・三以上であること又は一眼の視力が〇・三に満たない者若しくは一眼が見えない者については、他眼の視野が左右一五〇度以上で、視力が〇・七以上であること。色彩識別能力 合格基準 赤色、青色及び黄色の識別ができること。 学校教育法施行令 第22条の3 法第七十五条の政令で定める視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者の障害の程度は、次の表に掲げるとおりとする。 視覚障害者 両眼の視力がおおむね〇・三未満のもの又は視力以外の視機能障害が高度のもののうち、拡大鏡等の使用によつても通常の文字、図形等の視覚による認識が不可能又は著しく困難な程度のもの ■聴覚・言語機能の障害の欠格条項がある法令 ・経過と法令の変化 法令は、視覚の機能の障害の欠格条項とほぼ重なる。2001年に障害者欠格条項を見直した医薬や安全衛生分野の法律の多くは、省令に次のような条文を追加した。現在の「合理的配慮」の概念に通じることも含まれている。 医師法施行規則の場合 (障害を補う手段等の考慮) 第一条の二 厚生労働大臣は、医師免許の申請を行つた者が前条に規定する者に該当すると認める場合において、当該者に免許を与えるかどうかを決定するときは、当該者が現に利用している障害を補う手段又は当該者が現に受けている治療等により障害が補われ、又は障害の程度が軽減している状況を考慮しなければならない。 ・新たに免許交付を受けた人がいる職種 医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、診療放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士、言語聴覚士、救急救命士、バス運転手 1 医師法施行規則 2 外国医師等が行う臨床修練等に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律施行規則 3 家畜改良増殖法施行規則 4 学校教育法施行令 5 救急救命士法施行規則 6 言語聴覚士法施行規則 7 航空法 8 航空法施行規則 9 自衛隊法施行規則 10 歯科医師法施行規則 11 歯科衛生士法施行規則 12 視能訓練士法施行規則 13 獣医師法施行規則 14 診療放射線技師法施行規則 15 船員法施行規則 16 船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則 17 船舶の配員の基準に関する訓令 18 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則 19 動力車操縦者運転免許に関する省令 20 道路交通法 21 道路交通法施行規則 22 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律施行令 23 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第九十一条第一項の規定による許可を受けようとする外国医療関係者が厚生労働大臣に提出しなければならない書面等を定める省令 24 ボート、モーター、選手、審判員及び検査員登録規則 25 保健師助産師看護師法施行規則 26 水先法施行規則 27 無線従事者規則 28 臨床工学技士法施行規則 (条文の例) 医師法施行規則 第1条 医師法(昭和二十三年法律第二百一号。以下「法」という。)第四条第一号の厚生労働省令で定める者は、視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により医師の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者とする。 道路交通法施行規則 第23条 適正試験の聴力の合格基準(要約) 一 大型、中型、準中型、普通免許、大型特殊免許・牽引免許、第二種免許及び仮免許 両耳の聴力(補聴器使用を含む)が10mの距離で、90デシベルの警音器の音が聞こえること。 二 準中型、普通免許、準中型仮免許、普通仮免許 両耳の聴力が10mの距離で、90デシベルの警音器が聞こえない人も、特定後写鏡等の使用を条件として、その準中型自動車又は普通自動車の安全な運転に支障を及ぼすおそれがないと認められること。 ■身体の障害の欠格条項がある法令 1 家畜改良増殖法施行規則 2 学校教育法施行令 3 教育職員免許法 4 クレーン等安全規則 5 競馬法施行規則 6 建設業法施行令 7 高気圧作業安全衛生規則 8 航空法 9 航空法施行規則 10 皇室典範 11 公証人法 12 国会職員法 13 最低賃金法 14 自衛隊法施行規則 15 獣医師法施行規則 16 船員法施行規則 17 船舶職員及び小型船舶操縦者法施行規則 18 船舶の配員の基準に関する訓令 19 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律施行規則 20 動力車操縦者運転免許に関する省令 21 道路交通法施行規則 22 ボイラー及び圧力容器安全規則 23 ボート、モーター、選手、審判員及び検査員登録規則 24 水先法施行規則 25 労働安全衛生規則 ・経過と法令の変化 条文に「身体」の語句を使っている法令は起源が古いものが多く変化も少ない。ただし、労働安全衛生管理やボイラーやクレーンの操作、ガス溶接などにかかわる法律は、2001年の障害者欠格条項見直しの際に、「障害を補う手段等の考慮」の条文と併せて、「条件付免許」も設けた。 (条文の例) 獣医師法施行規則 第1条 法第五条第一項第一号の農林水産省令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。 二 上肢の機能の障害により獣医師の業務を適正に行うに当たつて必要な技能を十分に発揮することができない者 労働安全衛生規則 第65条の1 第3項 ガス溶接作業主任者免許に係る法第七十二条第三項の厚生労働省令で定める者は、身体又は精神の機能の障害により当該免許に係る業務を適正に行うに当たつて必要な溶接機器の操作を適切に行うことができない者とする。 第65の3(条件付免許)都道府県労働局長は、身体又は精神の機能の障害がある者に対して、その者が行うことのできる作業を限定し、その他作業についての必要な条件を付して、発破技士免許又はガス溶接作業主任者免許を与えることができる。 2 都道府県労働局長は、身体又は精神の機能の障害がある者に対して、その取り扱うことのできる揚貨装置の種類を限定し、その他作業についての必要な条件を付して、揚貨装置運転士免許を与えることができる。 学校教育法 第22条の3(抜粋) 法第七十五条の政令で定める視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者の障害の程度は、次の表に掲げるとおりとする。肢体不自由者 一 肢体不自由の状態が補装具の使用によつても歩行、筆記等日常生活における基本的な動作が不可能又は困難な程度のもの 二 肢体不自由の状態が前号に掲げる程度に達しないもののうち、常時の医学的観察指導を必要とする程度のもの 注: P4-6に記載の「新たに免許交付を受けた人がいる職種」について 2001年改正法以降、医政局管轄分以外では、新たに薬剤師や獣医師の免許交付を受けた人がいる。バス運転手(P6)は、道路交通法施行規則(聴覚障害関係)の見直しで可能になった。 その他の職種については、医政局管轄分の下記を元に記載している。法令に障害者に係る相対的欠格条項が残されている部分のみの集計のため、2001年法改正で聴覚言語障害については欠格条項が削除された臨床検査技師や毒物劇物取扱責任者、視覚障害については欠格条項がないあん摩マッサージ師、作業療法士などは、集計されていない。 相対的欠格事由(心身の機能の障害)に該当する者に対する免許付与件数について(医政局管轄分)2016年7月 http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/menkyofuyokensu.html ■会社法・一社法の大幅改正で変わったこと 会社法と、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一社法)は、2019年6月に成立した成年後見欠格条項一括見直し法には含まれず、同年12月に大幅改正法が公布されました。成年後見制度に関する改正はその一部にあたります。 会社法には、第331条の2が追加されました。要約すると、成年被後見人若しくは被保佐人は取締役となることができない等としていた旧条文(第331条第1項第2号)は削除され、取締役や執行役、監査役などの役員に就任できることになりました。就任については後見人の承諾あるいは保佐人の同意が必要とする条文、そして、就任後の資格に基づく行為は取り消すことができないとする条文も、追加されました。 一社法も、成年被後見人若しくは被保佐人は役員になることができない等としていた旧条文(第65条1項2号)は削除され、第65条の2が追加され、役員について会社法とほぼ同じような内容となっています。 また、各種の法令には、会社法○○条に準ずるといった条文が多数あり、それぞれの法令の定め方によっては、会社法第331条の2と同様の内容をもつ場合もあります。 会社法 第三百三十一条の二  成年被後見人が取締役に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない。 2 被保佐人が取締役に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない。 3 第一項の規定は、保佐人が民法第八百七十六条の叫第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合について準用する。この場合において、第一項中「成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)」とあるのは、「被保佐人の同意」と読み替えるものとする。 4 成年被後見人又は被保佐人がした取締役の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。 会社法の一部を改正する法律(2019年12月11日法律第70号)から部分転載 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第六十五条の二 成年被後見人が役員に就任するには、その成年後見人が、成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)を得た上で、成年被後見人に代わって就任の承諾をしなければならない。 2 被保佐人が役員に就任するには、その保佐人の同意を得なければならない。 3 第一項の規定は、保佐人が民法(明治二十九年法律第八十九号)第八百七十六条の四第一項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合について準用する。この場合において、第一項中「成年被後見人の同意(後見監督人がある場合にあっては、成年被後見人及び後見監督人の同意)」とあるのは、「被保佐人の同意」と読み替えるものとする。 4 成年被後見人又は被保佐人がした役員の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。 会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(2019年12月11日 法律71号)から部分転載 ■障害者雇用促進法施行令、除外職員に外務公務員を新たに追加  昨年末、12月26日に、「障害者の雇用の促進等に関する法律施行令の一部を改正する政令」が公布と同時に施行されました。  同日、厚生労働省職業安定局長が発した通達には、次のように書かれています。 「外務省においても、本年末までに146.0人を採用予定とする計画を立てた上で、雇用の質を確保しながら採用を進め、職域(活動領域)拡大の可能性を追求してきたが、在外勤務の特殊性から、在外公館に勤務する外務公務員も含め一律に雇用義務を果たすことは困難であることが明らかとなった。(中略)施行令附則の規定を改正し、令和6年12月31日までの間、別表第1第2号に、在外公館(政府代表部を除く。)に勤務する外務公務員を加えることとする。」  「除外職員」とは、公務員の特定の職種について障害者雇用促進法の雇用義務から外すものです。その分、障害者雇用率算定式の分母が減るため、数字上は、雇用率が高くなります。官庁が、障害者雇用義務を果たすことが困難という理由で、縮小・廃止することが決まっている除外職員制度に、新規に付け加えるという、本来あってはならない策を弄したのです。  そして今年2月下旬に、「中央省庁が障害者雇用の水増しを解消」「全ての行政機関で障害者の法定雇用率を達成」等と、一斉に報道されました。見かけだけ、障害者雇用の体裁を整えようという姿勢は、百害あって一利なしと言えます。公的機関がまず取り組まなければならないのは、長年消極的に扱ってきた障害者雇用を、これからどのように進めればよいのか、実態から出発し、障害当事者や関係者とよく協議して進めることです。 労働政策審議会が昨年11月に除外職員への在外公館職員追加を審議したことに対して、DPI日本会議は、外務大臣と厚生労働大臣それぞれに対して、背後にある差別偏見への怒りを込めた要請書を出しました。下記に厚生労働大臣宛の要請書を掲載します。 2019年12月6日 厚生労働大臣 加藤 勝信 様 認定NPO法人DPI日本会議 議長 平野みどり 外務省の新たな除外職員追加の撤回と除外率制度の廃止を進める要請書 障害者権利条約の制定と批准に向けたご尽力に厚くお礼申し上げます。 私たちは、全国95の障害当事者団体から構成され、雇用・労働分野も含めて、社会のあらゆる場面で障害の種別や程度に関わりなく障害者が差別や偏見を受けることなく、障害のある人もない人も共に生きることができるインクルーシブな社会(共生社会)の実現に向けて活動している国際組織です。 さて、国は、昨年8月に発覚した中央省庁による障害者雇用の水増し問題を改善するために昨年度中に4,000人の障害者雇用を進める方針を示しましたが、中央省庁が昨年10月以降に採用した3.131人の障害者のうち、161人が6月1日までに離職したことが明らかになりました。 こうした状況の中、外務省では、「在外勤務の特殊性」から、在外公館に勤務する外務公務員を除外職員に追加する施行令改正を検討するとしています。これは、障害者権利条約を所轄する外務省が、条約に逆行した取り組みを進めようとしており、大きな怒りを覚えます。長年にわたって続けられてきた障害者水増し問題が放置されてきたこと、昨年秋以降に中央省庁で雇用された障害者が離職していることの要因には、障害者雇用に対する意識の希薄さと、障害や障害者に対する差別と偏見が満ちていると言わざるを得ません。 除外率制度については、2002年の障害者雇用促進法の改正で2004年4月に廃止し、経過措置として当分の間、業種ごとに設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小すること(法律附則)とされたはずです。そのような中で外務省の在外公館勤務の外務公務員を除外職員に加えることは、厚生労働省自らが進めてきた方針を覆すものであり、障害者権利条約にも逆行していると言わざるを得ず、断じて許すことは出来ません。 つきましては、今回の外務省の方針を撤回させるとともに、除外率制度の廃止に向けて、さらなる取組を進めていただけますよう下記要請します。 要請項目 1. 外務省が行おうとしている在外公館に勤務する外務公務員を除外職員とする方針を撤回してください。 我が国が批准している障害者権利条約では、第27条労働及び雇用で、「1(a) あらゆる形態の雇用に係る全ての事項(募集、採用及び雇用の条件、雇用の継続、昇進並びに安全かつ健康的な作業条件を含む。)に関し、障害に基づく差別を禁止すること。」としています。今回の外務省の除外規定の追加は、条約の規定に逆行しています。速やかに方針を撤回して下さい。 2. 障害者の雇用を進めるために、計画的に取り組んで下さい。 「水増し」問題で信頼は失墜したものの、本来、中央省庁は民間企業のモデルとならなければなりません。雇用率がすぐに達成できないのであれば、まずは現状を率直に認め、その理由を正直に説明し、達成に向けて計画的に取り組んでください。在外勤務は出来ないと決めつけ「除外職員」という裏口入学のような方法を取るのではなく、どのようにすればできるようになるのかを、真摯に議論し、計画的に増やしていく取り組みが必要です。 3. 除外率制度の廃止を着実に進めて下さい 除外率制度は2002年の障害者雇用促進法の改正で2004年4月に廃止し、経過措置として当分の間、業種ごとに設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小すること(法律附則)とされたはずです。そのような中で外務省の在外公館勤務の外務公務員を除外職員に加えることは、これまでの方針を覆すものであり、障害者権利条約の規定に逆行していると言わざるを得ません。2004年と2010年に除外率が10ポイント引き下げられましたが、その後は取り組みがありません。廃止に向けた計画的・積極的な取り組みが必要です。今後の取り組みを明らかにして下さい。 以上 ■報道から 2019年11月〜2020年2月 11月25日 <NHKニュース> 聴覚障害者支援の「電話リレーサービス」再来年度から提供へ 11月26日 <毎日新聞> 緊急通報もリレーします 聴覚障害者向け電話サービス対応へ <山梨日日新聞> 手話通訳の中継21年度開始へ 11月30日 <日本経済新聞> 障害者活躍に向け指針 厚労省、雇用水増し問題 12月5日 <日刊工業新聞> 社説/障がい者雇用の促進 改正法を機に官民で努力を 12月7日 <NHKニュース> 外務省の障害者雇用 「半減」方針に撤回要請 障害者団体 <東京新聞> 外務省の障害者雇用半減 撤回求め要請書 12月10日 <毎日新聞> 県教委、障害者の雇用進まず 水増し発覚後の計画にズレ/大分 12月11日 <岩手日報> 論説/国の障害者雇用 「トップ」の意識改革を 12月13日 <MBS 毎日放送> 旧優生保護法で出産3日後に『強制不妊手術』聴覚障がいのある70代夫婦が提訴 <電波タイムズ> 電話による緊急通報と同レベルの環境に 電話リレーサービスワーキンググループ報告 12月16日 <NHK-TV> 重度障害者「働きたい…」 国 “就労中の介護サービス”見送る <日本経済新聞> 視覚障害者保護規定は合憲 マッサージ師で地裁初判決 12月26日 <毎日新聞> 障害者雇用率算定、在外公館職員を除外 雇用義務半分に 5年限り特例 ▼2020年 1月5日 <大阪日日新聞> 障害者差別、動機解明を 被告に「主張取り消して」相模原殺傷遺族・家族アンケート 1月7日 <朝日新聞> 患者を生きる:職場で 視覚障害:1「いずれ失明」復職は… 1月9日 <信濃毎日> 社説:やまゆり園公判 誤った障害者観の解明を 1月13日 <愛媛新聞> 重い障害がある人への就労支援 助成金拡充 効果に疑問 勤務中公的福祉使えず 1月14日 <毎日新聞> 児童扶養手当、障害者ひとり親にも一部併給可能に 国が法改正案 1月18日 <琉球新報> ほど遠い共生社会 1月19日 <朝日新聞> 公営住宅に保証人廃止の動き 背景に身寄りない高齢者ら 1月20日 <NHKニュース> 旧優生保護法訴訟 控訴審始まる 仙台高裁 <東北放送> 強制不妊訴訟仙台高裁控訴審 原告側「知らない間に賠償請求期限過ぎてた」 1月26日 <産経新聞> 【話の肖像画】(1)元郵政相・八代英太(82)国会に誕生した「3人の後輩」 1月27日 <秋田魁新報> 障害者配慮、企業も義務 内閣府、検討求める意見案 2月11日 <毎日新聞> 大学 障害のある学生、支援拡充 「差別解消法」施行4年 2月13日 <西日本新聞> 連載:バリアフリーの現在地(7)たとえ遠回りでも…障害者差別なくすには 2月21日 <朝日新聞> 中央省庁、障害者雇用の水増し解消 採用の大半は非常勤 2月22日 <日テレニュース> 全ての行政機関で障害者の法定雇用率を達成 2月22日 <東京新聞> 障害者支援 実態検証を 当事者団体、県に要望書 2月26日 <NHKニュース> 障害者雇用水増し問題 中央省庁で5000人余雇用 電話リレーサービス、公共インフラとして整備へ 2021年度から、公共サービスとして電話リレーサービスを提供する方針が決まり、準備が進められています。 電話リレーサービスは、耳が聞こえない人と聞こえる人との通話を、文字チャットや手話通訳でつなぐ仕組みです。公共サービスとして整備されることで、ようやく、耳が聞こえない人や言語障害がある人も、音声で聞こえる人・声で話す人と同等の電話利用ができるようになります。日本ではこれまで、「日本財団電話リレーサービス・モデルプロジェクト」のように、民間団体によって実施されていますが、24時間いつでも誰でも利用できるように、緊急通報にも使えるように、公共サービスとしての提供が求められてきました。国際的には、米国は1990年代からADA法に基づいて開始、今では、韓国、タイ、オーストラリアなどアジア太平洋地域も含む25か国で実施と、下記の報告書に書かれています。 電話リレーサービスの現状と課題、基本的な考え方、実現にむけた方向性について審議してきた、総務省・厚生労働省共催の「電話リレーサービスに係るワーキンググループ」がまとめた報告書が、公表されています。 公共インフラとしての電話リレーサービスの実現に向けて〜電話リレーサービスに係るワーキンググループ報告 2019年 12 月 https://www.soumu.go.jp/main_content/000658297.pdf 「障害者欠格条項をなくす会」の趣旨 この会は、障害者への「欠格条項」をなくす目的で障害種別や立場をこえてネットワークづくりをすすめます。 1.今こそ、障害者自身の体験と智恵を! 2.外国ではどうなっているかも調べ役立てています。 3.省庁交渉、各政党との協議など進めています。 ■ 会員、読者のみなさまへ ニュースレターは毎年度3回、通例7月・11月・3月に発行しています。本号は2019年度の3回目の発行にあたります。「個人会員」(3000円/年度)・「団体会員」(5000円/年度)および年間購読(600円/年度)のお申込はいつでもお受けしています。個人会費、団体会費にはニュースレターの年間購読料を含んでいます。手続きは、いずれも、下の囲みに記載の郵便振替口座へのご送金のみです。年度途中の新規お申込みにはその年度のバックナンバーも送付しています。 ■ 編集後記  昨年末、自治労障害労働者全国連絡会の全国大会に参加する機会を得た。私が参加した分科会は、知的・精神・発達障害がある働き手の課題を話し合うことがテーマだった。全国から20人ほどの参加者があり、発達障害や高次脳機能障害などをもって働く当事者の発言や、精神障害の人と一緒に働く立場で感じている課題など、さまざまな課題が出されていた。「心身の故障」故に排除する発想を転換して、個々人にあった方法やペースを考えながら働いていく環境をつくっていくことが必要だ。そのためにはスタートラインに立てなくてははじまらない。(せ) 成年後見制度にかかわる欠格条項は削除する一方で、「心身の故障」欠格条項をいわば標準装備する(本紙72号)ことが、どのような政省令の形をとることになるのか、2018年の国会に法案が出された時から危惧し、パブリックコメントも出してきましたが、調査の結果、想像を上回る状況となりました。 本号で概要を掲載した2020年調査について、各法令の題名と条文を、追って、当会ウェブサイト上に掲載する予定です。(う) 編集人 障害者欠格条項をなくす会(共同代表 福島智・大熊由紀子) 事務局 〒101-0054千代田区神田錦町3-11-8武蔵野ビル5F TEL:03-5282-3137  FAX:03-5282-0017 *FAXは共用なので「なくす会」宛とご明記下さい。 メール  info_restrict@dpi-japan.org ウェブサイト http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/ 会費  区切りは「年度」 ・団体会費 5,000円/年  ・個人会費 3,000円/年 振込 郵便振替 00150-8-130574 加入者名「障害者欠格条項をなくす会」 三菱UFJ銀行・本郷支店茗荷谷出張所(店番号564)普通預金口座3765888  口座人名義・障害者欠格条項をなくす会会計 瀬山紀子 発行所 特定非営利活動法人 障害者団体定期刊行物協会  東京都世田谷区祖師谷3-1-17-102 定価  200円