杖携帯を禁止する「規則」等の改正を求める要望書


杖携帯を禁止する「規則」等の改正を求める要望書
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2015年3月3日
(名宛人)様

※名宛人それぞれに対して提出しました。

衆議院議長 町村信孝 様
参議院議長 山崎正昭 様
総務大臣 高市早苗 様
全国都道府県議会議長会 会長 林正夫 様
全国市議会議長会 会長 佐藤祐文 様
全国町村議会議長会 蓬清二 様
愛知県議会 議長 三浦孝司 様
鹿児島県議会 議長 池畑憲一 様

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議
議長 平野みどり
障害者欠格条項をなくす会
共同代表   福島智 大熊由紀子

杖携帯を禁止する「規則」等の改正を求める要望書

 2014年末にかけて、「規則」に白杖の携帯禁止があるからと鹿児島県で、そして愛知県で、議会を傍聴しにきた視覚障害者が「杖を預けよ」と言われることが起きました。
 報道によれば、愛知県議会事務局は「(白杖は)議場に投げ入れられれば凶器になる」 という理由をあげられたということですが、これは理解に苦しむ見解です。重要なことは、何であれ議場に投げ入れられる可能性がある物品かどうかではなく、その物品が人に危害を加える「凶器」となることが十分に予測できるかどうかということだと思われます。そうであれば、刃物などの、文字どおりの凶器・危険物の持ち込みを警戒するのが妥当であり、それは既に行われている検査で対応可能と考えられます。また、自治体には以前から「杖」携帯禁止の規則をもたないところもありますが、禁止する規則がないことによって問題が生じたという事例は報告されていないと認識しています。

 「会議のあいだ杖を預かっても不都合はないのでは?」と見られる向きもあるかもしれません。しかし、杖は、白杖でも歩行補助の杖でも、日々それを必要として使っている人にとっては身体の一部です。もしメガネをかけているならば、いつでもどこでもメガネをかけるのはあたりまえのことです。それが、メガネを外して預けるよう求められたらどうでしょうか。杖の携帯を禁止する、会議のあいだ預かると言うのは、つまりは、自分の身体の一部を外して預けよと言うことです。

 この数年間、障害がある人自身が委員となって(障害者と関係者をあわせて構成員の過半数)、障害者にかかわる国内法制度の改革について集中した議論をおこない、昨年、国連障害者権利条約を批准しました。来春からは新設の障害者差別解消法が施行されるところです。
 それにもかかわらず、いまだに制度の障壁(障害者基本法、差別解消法が、除去しなければならないとしている、社会的障壁のひとつ)を設けていることは、権利条約と差別解消法に照らしても恥ずかしいことです。障害や病気のある人にとって杖とは何か、ぜひ、その基本からしっかりと考えて議論をしてください。

 障害がある人の政治・社会への参画が今以上に難しい状況下で、多数の規則や条例がつくられてきました。そのなかには、結果として障害者を排除する規定が相当含まれていました。障害者の議会や委員会の傍聴を制限する規則や条例は、障害者にかかわる欠格条項の見直しも背景に2001年前後に改正されたものも多くありますが、現状は定かではありません。改めてこの機会に、参画を妨げるような規定を、杖携帯を禁止する規則のほかにも残していないかという観点から、現行の「規則」「条例」および、その標準を示している文書を洗い直して、的確に改正されることを、要望します。
項目
1 会議や委員会の規則および傍聴規則、条例、そして「標準規則」等から、「杖」を削除すること。
2 上記1の規則や標準規則や条例において、「杖」以外にも、障害者の社会参画を阻むような規定を残していないか、洗い直す点検をすること。
3 上記2の点検結果をふまえて、既存の条例や規則の改正を的確におこなうこと。

以上

―――――
添付資料1〜3について
1 現行規則について (※略。衆議院ならば衆議院規則と衆議院傍聴規則など、各名宛人に対応した資料を添付した)
2 各地の規則 いくつかの実例と解説
3 報道から (※略)

※下記に資料2を掲載します。

資料2 各地の規則 いくつかの実例と解説

■福岡市議会傍聴規則(最終改正 2011年2月17日)
第3条 (傍聴席に入ることができない者) 次の事項に該当する者は,入場することができない。
(1) 銃器,凶器,火薬,劇毒薬,その他人身,建物,器具等に危害又は損害を及ぼすと認める物品を携帯する者
(2) 旗,ポスター,プラカード,メガホン,楽器,動物(身体障害者補助犬法(平成14年法律第49号)第2条第1項に規定する身体障害者補助犬を除く。)等議事又は傍聴を妨害すると認める物品を携帯する者
福岡市公式ウェブサイト上
http://www.city.fukuoka.lg.jp/d1w_reiki/reiki_honbun/q003RG00000030.html
(解説)「杖」の記述はないため「白杖」や「補助杖」などは該当しません。動物について補助犬は除くと明示しているので、補助犬も該当しないことが明らかです。

■福岡県議会傍聴規則(最終改正 2011年9月26日)
第11条 傍聴人は静粛を旨とし、次の事項を守らねばならない。
2 帽子、外とうの類を着用したまま傍聴しないこと。ただし、病気その他の事由により議長の許可を得た場合は、この限りでない。
福岡県公式ウェブサイト上
下記のURLをクリックして、ログインボタンを押し、「福岡県議会傍聴規則」をクリックしてください。
http://www1.g-reiki.net/pref_fukuoka/reiki.html
(解説)最終改正で、つえの携帯制限が撤廃されました。

■南阿蘇村 議会傍聴(公式サイト更新 2012年2月15日 、現行)
◎下記に該当する方の傍聴はお断りします。
(1)銃器、棒、つえその他人に危害を加え、又は迷惑を及ぼすおそれのある物を携帯している者
(7) 精神に異常があると認められる者
南阿蘇村公式ウェブサイト上
https://www.vill.minamiaso.lg.jp/site/gikaisaite/gikaiboutyou.html
(解説)南阿蘇村は、2012年2月に更新された新しい傍聴案内であるにもかかわらず、「つえを携帯している者」と「精神に異常があると認められる者」を傍聴拒否の対象としています。

■笠間市大池田財産区議会傍聴規則(1955年制定、現行)
第3条 傍聴席にあるものは,次の事項を遵守しなければならない。
(2) 傘,杖の類を携帯してはならない。
第4条 次に記載した者には傍聴を許さない。
(4) 狂人,精神障害と認める者
笠間市公式ウェブサイト上
http://www.city.kasama.lg.jp/reiki/reiki_honbun/r358RG00000755.html
(解説)「杖の類を携帯してはならない」という傍聴者の遵守規定に加えて、「傍聴を許さない」という禁止規定で、「狂人,精神障害と認める者」と記されています。これは、精神障害を理由にした絶対欠格条項であり、精神障害者を一律に拒否した差別的取り扱いにあたります。

※上記の各URLは、全て、2015年3月2日にアクセスして確認したものです。


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