障害者差別解消法の基本方針原案についてのパブリックコメント


 「障害者欠格条項をなくす会」からは下記の4通の意見を2014年12月25日に内閣府障害者施策担当に提出しました。

意見1
 原案1章「障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向」の、障害者権利条約第2条の「障害に基づく差別」と、障害者基本法の「社会的障壁」の定義とその除去の関係に関する記述を、必要不可欠なものとして評価する。大変重要な部分でありこの原案通りに閣議決定すること。
(理由)
 差別解消法の基本的趣旨を理解し実地に移していく上で欠かせない内容であるため。国の機関はもとより、自治体や事業者にむけてもここを強調し丁寧に説明して、趣旨が浸透するように図る必要がある。

意見2
 原案5章の1「環境の整備」に法制度の障壁の除去の課題を書き入れる。
 「また、環境の整備には・・重要である。」のセンテンスのなかに、【】の文言を挿入する。
(文案)
 また、環境の整備には、ハード面のみならず、【法、条例、規則などに残されている制度的障壁を除去して法制度環境の整備を進めると共に、】職員に対する研修等のソフト面の対応も含【める(原案では「まれる」】ことが、【合理的配慮を的確に行なうための環境を整えるために】重要である。
(理由)
 制度の障壁については政策委員会でも意見が出されていたにもかかわらず原案に記述がないため。さらに、原案の「環境の整備」の項には社会的障壁のうち、事物・観念・情報の障壁が挙げられているが、制度の障壁だけは触れられていないため、整合性を欠いている。欠格条項などの法制度の障壁を除去することが、合理的配慮を的確におこなえる環境にしていくために不可欠の課題である。
 実際、法制度が受験や免許交付の障壁となっているために、障害者が合理的配慮を得ながら平等に学び働き暮らすための環境の整備が、その「入口」で阻まれている現状が下記のように存在している。
  • 当会で2013年度に中核市以上の全自治体の障害者対象職員採用試験を調査した結果、71%が「自力で通勤ができ介助なしに職務遂行ができること」、51%が「活字印刷文による出題に対応できること」等の受験資格を設けていて、事実上、障害がある人の受験を阻んでいることが明らかになった。このため合理的配慮の想定も遅れており、点字受験を想定している試験は44%、同じく手話通訳は49%にすぎない。法制度の障壁を除去し、試験における合理的配慮の提供を進める必要がある。
  • 熊本市が点字受験を希望した学生を受験資格「活字印刷文による出題に対応可能な方」を理由に拒否した。
  • 鹿児島県は「杖」を禁止する県議会傍聴規則によって視覚障害者が白杖を持って傍聴することを認めていない。
 (2014年の報道から)
  5月17日<毎日新聞>障害者向け公務員採用試験 受験資格に「自力通勤」条件も 中核市以上の7割で
  9月19日<熊本日日新聞>全盲の人、今年の受験認めず 熊本市職員採用
 11月14日<毎日新聞>鹿児島県議会、全盲男性に「白杖預かる」

意見3
 原案5章の1「環境の整備」に記述されている「人的支援」の内容として、通勤通学の移動支援、学校や職場における介助者・通訳者も含むように、「人的支援」にかかる記述に追加して【】の文言を挿入する。
(文案)
 法は、不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(いわゆるバリアフリー法に基づく公共施設や交通機関におけるバリアフリー化、【学校・職場における通訳者・】意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・【通勤通学などの移動支援や】介助者等の人的支援【制度】、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティの向上等)については、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための環境の整備として実施に努めることとしている。(引用中略)障害者差別の解消のための取組は、このような環境の整備を行うための施策と連携しながら進められることが重要であり、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策、【通訳や介助等の人的支援制度の整備】、職員に対する研修等、環境の整備の施策を着実に進めることが必要である。
(理由)
 「人的支援」とはどのようなことをさすかについて分かりやすく書く必要があるため。それと同時に、人的支援を提供していく制度環境の整備が求められているため。
 たとえば、下記の事例から見ても、人的支援を含む合理的配慮を得ながら、障害者が平等に学び働き暮らす環境の整備を進めていくことが求められている。
(事例)
  • 当会で2013年度に中核市以上の全自治体の障害者対象職員採用試験を調査した結果、71%が「自力で通勤ができ介助なしに職務遂行ができること」、51%が「活字印刷文による出題に対応できること」等の受験資格を設けていて、事実上、障害がある人の受験を阻んでいることが明らかになった。このため合理的配慮の想定も遅れており、点字受験を想定している試験は44%、同じく手話通訳は49%にすぎない。法制度の障壁を除去し、試験における合理的配慮の提供を進める必要がある。
  • 熊本市が点字受験を希望した学生を受験資格「活字印刷文による出題に対応可能な方」を理由に拒否した。


意見4
 原案5章の5の(2)「基本方針、対応要領、対応指針の見直し等」に、「各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨や、技術の進展、社会情勢の変化等を踏まえ、適宜、必要な見直しを検討するものとする。」と記載されている。
 このセンテンスを、11月10日の政策委員会で示されていたように「法の施行後3年を経過した時点における法の施行状況に係る検討の際には・・」の文章の前に移動する。つまり、このようになる。
(文案)
 「・・・必要に応じて、基本方針、対応要領及び対応指針を見直し、適時、充実を図るものとする。また、各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨や、技術の進展、社会情勢の変化等を踏まえ、適宜、必要な見直しを検討するものとする。法の施行後3年を経過した・・・」
(理由)
 政策委員会で案に異論がなかったにもかかわらず、原案では文末に「なお、」と付け足しのような書き方に変更されているため、政策委員会に示されていた書き方に戻す。



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