欠格条項とは 「資格や免許をもつこと」や「ある行為をすること」の制限を法律が決めているものです。 資格や免許というと、英検、簿記などの資格や、教員免許、運転免許などがイメージされるでしょう。 欠格条項は、もっと幅広く、たとえば受験資格、公的な役職につくこと、選挙、議会の傍聴、公共施設の利?などを制限しています。 欠格条項には、障害を理由とするものの他にも、年齢によるものや、刑罰を受けた経歴にかかわるものなどがあります。 障害にかかわる 欠格条項とは 障害にかかわる欠格条項は、今も661の法令に存在します。 視覚や聴覚などに障害があったり、身体や精神に疾患があると、業務や行為を適正にできないのでは?という見方から、「○○の機能の障害がある者には〜の免許を与えないことがある」「〜の資格を取り消すことがある」などの条文が設けられています。 会社や団体の役員になること、審議会の委員になることを、「心身の故障」を理由に制限する条文も多数あり、共に生きる社会づくりを阻んでいます。 @ 運転 荒木さんは脳性まひの障害がある男性です。テレビ修理業に自動車運転は欠かせないもので、職業訓練施設のクラブ活動で運転の技能と知識を身につけました。しかし、免許試験を受験することも拒否され、しかたなく無免許で運転して仕事を続けるうちに、裁判にかけられました。樋下さんは聴覚障害のある男性で、移動の多い仕事でバイクを運転していました。 障害があったらなぜダメなのか?と、それぞれの裁判で問いました。 ↓ 運転の欠格条項は、約50年前の裁判以来、何度かの見直しがありました。まず、肢体障害のある人の可能性が広がりました。2010年代になって、普通自動車免許は、聴力に関係なくもてるようになりました。今では聴覚障害のあるバス運転手もいます。一方、疾患によっては制限がむしろ強化されたことなど、残された課題も大きいです。 A 薬剤師・医師・看護師 早瀬さんは聴覚障害のある女性です。薬剤師国家試験に合格したのに、障害を理由に免許を与えられませんでした。医師などになったあと障害をもった人もいますが、必要な支援についても言いにくい状況でした。障害があれば免許を与えない、剥奪するという欠格条項ゆえでした。 早瀬さんは諦めずに発言を続け、就業後に障害をもった医師も、法律を変えるよう訴えました。 ↓ 薬剤師法は聴覚障害の欠格条項を削除し、早瀬さんは晴れて免許を手にしました。このとき医師や看護師などの法律も見直されました。 今では目の見えない医師や耳が聞こえない看護師が各地で働いています。しかし、「免許を与えないことがある」という欠格条項は残されており、学びやすく働きやすい環境づくりも課題があります。 B 選挙・公務員 名兒耶さんは知的障害のある女性です。選挙のたびに必ず投票に行っていました。高齢となった親が後見人となり成年後見制度に入りました。それから選挙のハガキが来なくなりました。 塩田さんは自閉症と知的障害のある男性です。地元の市役所でパソコン入力などの仕事をしてきました。親が病に倒れて、成年後見制度に入ったとたん、仕事をクビになりました。 ↓ 名兒耶さんが参政権を失い、塩田さんが失職したのは、成年後見制度利用者を対象とする欠格条項のためでした。「もういちど選挙に行きたい」「働き続けたい」とそれぞれに裁判で訴えました。これらの欠格条項は2019年にかけて削除が実現しました。 C 住宅 大久保さんは脳性まひの障害がある男性です。民間賃貸住宅で、通いの介助者をつけて、一人暮らしをしてきました。ところが、公営住宅に申し込もうとしたら、申込書ももらえませんでした。「常時の介護が必要」な単身者には原則として入居資格を認めない欠格条項ゆえでした。 ↓ その後、必要な介助や支援を得られるなら単身入居可能な法令に変わりました。現在は自治体が独自に応募要件を定めています。 D 採用試験 国や自治体は障害者対象の公務員採用試験を実施しています。その受験資格のほとんどが「自力で通勤し単独で職務を遂行できること」などとされていました。 ↓ 国や自治体の障害者雇用「水増し」が発覚し、受験資格も改めて問題化しました。このような受験資格はほぼ削除されてきましたが、共に働きやすい職場にする課題は今も大きいです。 欠格条項の150年 1870年代 知的障害者、精神障害者には被選挙権を「認めない」、ろうあ者や盲人には医師免許や運転免許を「与えない」などの欠格条項がつくられ始めました。 1960-70年代 障害や病があっても運転などをできるのに、法律が認めないのは差別ではないかと、いくつかの裁判が起こされました。 1990-2000年代 試験に合格したのに免許を交付されなかった人の声と世論によって、障害を理由とする欠格条項が初めて見直されました。 2010-20年代 成年後見制度利用者に対する欠格条項が削除されました。しかしその大部分に「心身の故障」欠格条項が新設され、さらに「心身の故障」とは「精神の機能の障害」と定める法令が急増しています。 障害者欠格条項をなくす会 Mail  info_restrict@dpi-japan.org Web https://www.dpi-japan.org/friend/restrict/