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船形コロニー建て替えへの抗議と地域生活の推進・脱施設化を求める声明

2020年09月10日 地域生活要望・声明障害者権利条約の完全実施

 9月1日(火)に宮城県の知的障害者支援施設「船形コロニー」が建て替えられ、「船形の郷」としてスタートしましたが、最終的には300名の定員になると報じられています。

これは、日本が批准している障害者権利条約が求める脱施設化に逆行する政策であり、抗議の意思を表明するとともに、地域生活の推進・脱施設化の取り組みを求める声明を、全国自立生活センター協議会(JIL)との共同で出しました。

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2020年9月10日

船形コロニー建て替えへの抗議と地域生活の推進・脱施設化を求める声明

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議 議長 平野みどり
全国自立生活センター協議会(JIL) 代表 平下耕三

 私たちは、どんなに重度な障害があっても地域で当たり前に生活し、障害のない人と同じ権利を持ち、地域の中で共にある社会の実現を目指して活動する障害当事者団体である。

 さて、9月1日に宮城県の知的障害者支援施設「船形コロニー」が建て替えられ、「船形の郷」としてスタートしたが、最終的には300名の定員になると報じられている。これは、我が国が批准している障害者権利条約が求める脱施設化に逆行する政策であり、抗議の意思を表明するとともに、地域生活の推進・脱施設化の取り組みを求めるものである。

 宮城県福祉事業団は、船形コロニーを2010年までに解体し、入所者全員を地域生活に移行させる「施設解体みやぎ宣言」を2002年に発した。さらに2004年には浅野史郎知事(当時)が「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発表し、宮城県内にある知的障害者の入所施設を解体して、知的障害者が地域の中で生活できるための条件を整備することを宮城県の障害者施策の方向とすることを宣言していた。しかしながら、村井嘉浩知事によって方針が修正され、船形コロニーが建て替えられ、地域移行が進められないままに大規模収容施設が存続している。

 我が国が2014年に批准した障害者権利条約第19条では、締約国に対し「全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる」ことを求めている。

 さらに、「(a) 障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと」「(b) 地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること」としている。

 さらに、19条に関して、国連・障害者権利委員会が2017年にまとめた文書(一般的意見・第5号)には、「第19条の下での障害のある人の権利の尊重は、締約国が施設収容を段階的に廃止しなければならないことを意味する。締約国による新規の施設の建設は認められず、古い施設も、入居者の物理的安全の確保に必要な最も緊急の措置以上の改築は認められない。

 施設は拡大されるべきではなく、施設を出る者の代わりに新規の入居者を入れるべきではない」と明確に記されている。このように、船形コロニーの建て替えは、世界的な潮流に逆らい、障害者権利条約の諸規定に反するものと言わなければならない。

 どんなに建物をきれいにし、接遇の改善が図られたとしても、少ない人数で大勢に対応するというのが施設運営の手法であることから、どうしても入所者の生活は管理的になり、個々の行動や選択の自由は制限される。そうした空間、環境下での虐待事例は未だ後を絶たない。

 今年新型コロナウィルス感染症のパンデミック対策として世界各地で都市のロックダウンがなされ、日本でも緊急事態宣言により外出の自粛が呼びかけられた。これにより世界中の人々がほぼ同時期に行動と選択の自由を奪われ、他人に制限されるということの不自由さがどういうものであるかを経験したはずである。入所施設での生活とは、コロナ禍で皆が経験した不自由さを終わりなく続けることと同様と言っても過言ではない。

 障害者は、必要な支援を受けることが出来れば、地域で自立した生活を送ることができる。現在福祉先進国と言われる北欧諸国をはじめ、多くの国々もかつては大規模な入所施設が障害者施策の中心であった時代があったが、これは人権侵害にあたるという反省から、脱施設への政策転換が進められた。

 一方、我が国では、21世紀に入ってから地域移行の取り組みは一定進められてきたが、障害者権利条約批准以後、地域移行は進展するどころか、国の基本方針が見直される度に、その数値目標は下げられ続けてきている(15%→12%→9%)。家族依存の制度の下、地域生活を支えるサービスや体制、予算の不備・不足が背景にある。

 先ほどの障害者権利委員会の文書では、「障害のある人のあらゆる形態の孤立、隔離又は施設収容を撤廃するために、脱施設化のための明確な、的を絞った、具体的な時間枠と適切な予算を伴う戦略を採用すること」を締約国に求めている。

 ところが、我が国は未だに「脱施設化のための戦略」が不在な状態にある。今回の大規模施設の建替えの背景には、こうした国策レベルにおける問題があることもあわせて指摘しなければならない。

 宮城県には、ぜひとも障害者権利条約の理念を再確認し、見守り支援も含んだサービスである重度訪問介護や小規模で生活するグループホーム等地域支援サービスを拡充し、障害者の地域生活を推進し、脱施設化を進めることを強く求める。併せて、マスコミ各社においても、障害者権利条約に照らし合わせることなく建て替えに好意的な報道を流したことに問題はなかったのかを検証し、何らかの形で検証結果を公表されることを求める。

 さらに、国に対して、障害者権利条約の批准国にふさわしい「脱施設化のための戦略」を障害当事者参画の下で作成し実行することを求めるものである。


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静岡県CIL連絡協議会
NPOインフォメーションギャップバスター

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宮地あゆみ(AJU車いすセンタースタッフ)
八木郷太(CILいろは事務局長)
殿村 久子(CILくにたち援助為センターCILくにたち援助為センター 代表)
笠原賢二(CILこねくと)
川畑昌子(CILもりおか代表)
佐藤祐(CILラピタ代表)
宇高竜二(CIL星空当事者スタッフ)
菊地 宝英(CIL星空)
結城 遼平(CIL星空介助者)
三ツ井真平(CIL星空当事者スタッフ)
重見陽児(CIL星空)
村上 志保(CIL星空ヘルパー)
村瀬太一(CIL星空)
塚田 芳昭(ILみなみTama事務局長)
櫻井育子(NPO石巻広域ソーシャルスキルトレーニングの会アドベンチャークラブ代表)
栁沼 康裕(NPO法人 あいえるの会)
奥山葉月(NPO法人 自立生活センター・立川理事長)
馬場 直樹(NPO法人 自立生活夢宙センター事務局次長)
菅谷拓斗(NPO法人UBUNTU理事)
廣瀬 朋(NPO法人アクティブセンターうだ理事長)
田所浩厚(NPO法人ネセサリーフォー代表)
宮崎芳彦(NPO法人メインストリーム協会スタッフ)
佐藤 誠(NPO法人メインストリーム協会)
中西竜也(NPO法人メインストリーム協会利用者)
清田仁之(NPO法人月と風と代表理事)
田中雄平(NPO法人自立生活センターぶるーむ事務局長)
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大瀧涼子(STEPえどがわSTEPえどがわ)
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藤原勝也(メインストリーム協会副代表)
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下尾直子(下尾直子洗足こども短期大学 幼児教育保育科 准教授)
赤崎倫夫(企業組合カトレア・サービス代表理事)
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平下耕三(自立生活夢宙センター理事長)
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水流源彦(社会福祉法人ゆうかり理事長)
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