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2月10日(日)「尊厳死」に関する学習会報告
Live on. (生き続けて)

2019年02月22日 尊厳生

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「尊厳死」をめぐる動き

「だんだん生きる道が細くなって、タイトロープ(細い綱の上)にいるような気がしています。どうぞみなさん一緒に考えていってください。」

学習会の最後、岡部さん(DPI常任委員・日本ALS協会理事)が述べた言葉です。

2月のDPI常任委員会学習会のテーマは、「尊厳死」。
わたしたちは、障害者が尊厳をもって生きるための社会制度が整えられていない中で、「法制化」や「ガイドライン(後述)」によって「尊厳死」への意思決定をすすめることに反対してきました。

昨年11月の緊急集会で安藤先生(鳥取大学)が説明してくれたとおり、昼食に入った定食屋でメニューが4つしかなく、Aランチが3,000円、Bランチが5,000円、Cランチが1万円、カレーライスが500円だったら、ほとんどの人がカレーライスを選ぶでしょう。

でも、それは「自分で選んでカレー」にしているのではなく、(他のメニューでは負担が過重なため)「カレーを選ばされている」状況と見るべきです。

わたしたちは、重度の障害者になった時、「それでも、生きる」ことを選べる社会に生きているでしょうか。

「尊厳死」について、「法制化」の動きは障害者団体の反対などもあり、たち切れになっています。

他方、2018年3月、厚生労働省は「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」を改訂しています。

新ガイドラインでは、リビング・ウィル(事前指示書)の徹底とACP(Advance Care Planningの略。本人、家族、医療チームが事前に終末期医療について話合い、その結果を記録に随時残す取り組み)の導入が推進されています。

新ガイドライン(たったの2頁)は一読して頂ければわかる通り、「本人の意思を尊重すること」「関係者で繰り返しよく話し合うこと」など、当然のことだけが書かれています。

尊厳死法案のように「延命措置の停止」といった言葉はなく、反対のしようがないのです。

一方、講師の川口さん(さくら会)は、「全国の医療現場に『ACP』はトレンドとして一気に広まりつつある。『ACP』を通じて合意形成ができれば、医療行為の中止はできてしまう」と危惧感を表していました。

そして、「医者が患者と対話をしないから『(リビングウィルを)一筆書いてくれないと困る』ということになる。一筆書いてしまえば、医師と患者は対話を積み重ねなくなる」と指摘していました。

岡部さんとの初トークに想う

今回の学習会があった日、私の中ではこれまでの自分のあり方への反省も含め、心に残った出来事がありました。

わたしは、新しく常任委員になられた岡部さんに、これまで2回の常任委員会で声をかけることができずにいました。理由は、自分が一番よくわかっていました。

私が文字盤でコミュニケーションをとることに慣れていないから、緊張があったのです。

そんな自分を、心の中でよくないな、と思っていました。

今回の常任委員会の1週間前、別件で岡部さんに依頼したいことあった私は、個人的にメールでご連絡をしていました。

そして、この日は「今日はお礼も兼ねて必ずご挨拶しよう・・・」と決めて常任委員会に向かいました。

休憩時間、岡部さんと5分くらいだったでしょうか、話を交わすことができました。

私がしょうもない軽口をたたくと帽子の下でニカッとされたこと、延命治療をした母について想うことを話すと「ぜひこれから一緒にがんばりましょう」と言ってくださったことが印象的でした。

私は、気軽に岡部さんに話しかけられなかった自分自身のことを、いろいろと考えていました。

そして、「ひとりひとりが生きるに値する命」だと主張するのであれば、その価値観が日ごろの自分の言動や表情に映し出されているようにありたいと思いました。

そうすることで、自分の中の価値観を本物にしていきたいと思いました。

さいごに

学習会は、川口さんの以下のような問いかけで終わりました。

「ガイドラインには反対しようがないが、私たちはどう運動を展開していくべきか・・・。」

私は、アメリカの自立生活センターが製作した”Live on.(生き続けて)”という1分半の動画のことを思い出していました。

この動画の元のアイデアは、LGBTQの若者が将来に絶望し自らの命を絶ってしまうことが続く中、LGBTQのオトナたちが「LGBTQとして人生は楽しめるんだよ」というメッセージを送った動画だそうです。

“Live on.”の動画では、さまざまな障害種別のオトナたちが出てきます。

そして、過去のハリウッド映画の「問題」シーン(人工呼吸器をつけてベッドに横たわるヒロインが「こんな身体で生きていたくないわ(涙)」と彼氏に告げるシーンなど)を次々に映し出しながら、「こんなメッセージばかり受け取っていたら、自分は生きている価値なんてないと思ってしまうわよね」と語りかけます。

そして、「でも、あなたの人生は生きる価値があるんだよ。だって、私の人生は生きる価値があるものだから。」と、車いすや手話で笑顔で語りかけるのです。

人生をなんだか大変そうも楽しそうに生きている障害者が身近にいないなら、まずはSNSやメディアを通じてでもいいかもしれない。

社会の「障害者観」を変える姿を見せ、メッセージを伝え続けることこそ、わたしたち当事者にできる大切な仕事だと思いました。

曽田 夏記(DPI特別常任委員、自立生活センターSTEPえどがわ)


▽参考:緊急集会「安楽死・尊厳死の問題点と介助者確保について」開催報告(PDF)
2019年2月25日発行
編集・発行:特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンターさくら会

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